冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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辛い話バトルしようぜ!

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クマのぬいぐるみを抱いたセイカを膝の上にのせ、背後から優しく抱き締める。

「ごめんな、セイカ……引っ掻いちゃって」

「いいよ別に……気にするなよ」

「ちょっと血滲んでたじゃん

「大したことないって。それに鳴雷、なんか嬉しそうだったし……引っ掻くの好きならいつでもしていいぞ?」

「好きじゃない……」

「そう? ま、好きなようにしてくれよ。縛った時みたいにあんまり楽しくない結果になっちゃうかもしれないけどさ、俺他のヤツらが嫌がることでも何でもするから」

健気なセイカを抱き締める腕の力が自然と強まる。意識して腕を緩め、後頭部に頭を押し付ける。

「……っ!? す、吸うなよぉっ」

「何でもさせてくれるんじゃなかったのか?」

「そうだけどっ、そういうのじゃ……吸うなって、ぅあぁ……」

なんてイチャついているとプールと部屋を繋ぐ扉が開き、プール上がりらしいアキとホムラがやってきた。途端にセイカは俺の腕の中から逃げたがった、弟の前ではあまり俺とベタベタしたくないらしい。

「残念……じゃあパイセン吸お」

「は!? ちょっ、うわわわ…………嗅ぐだけタイプも痴漢になる理由を心で理解した、とんでもなく不愉快、水月ですら鳥肌が止まらん」

「さっき風呂入ったばっかな上に同じシャンプー使ったから面白みがない……」

「ムカつく! せめて喜べ変態!」

ホムラは俺と歌見への軽い挨拶の後、勉強を開始。彼の勤勉さに肩身が狭い思いをしつつ、アキにセミ集めの真意を聞こうとセイカに翻訳を頼んだ。

「まずは、なんであんなにセミを集めて網戸に引っ付けてたんだって聞いてくれ」

「……英語ならまだしもロシア語とかこんにちはすら分からんな」

「コンニツィーワ」

「殴られろ」

ロシア語分からないコンビでバカやってるうちに翻訳が終わった。

「えっとな、要約すると暇潰しだ」

「暇潰しでセミ集めるぅ!? お兄ちゃんセミにトラウマ出来たんだが! だが!」

「プールとサウナと筋トレ以外やることないから暇って…………ごめん、いつもは俺と勉強したり遊んだりするんだけど、俺今日ほぼ寝てたから」

「セイカ縛ったの俺だからセイカは気にしなくていいよ……えっとな、昆虫採集するなとは言わないけど、網戸に引っ付けるとか俺の目に入るとこではやらないでくれって言ってくれ」

退屈だとか寂しいだとか、そういうことを言われては怒れない。

「……虫苦手なのかって、軟弱者的なこと言ってる」

アキはニヤニヤと煽るような笑顔を浮かべている。

「ふふっ、アキくんも結構言うなぁ」

「お兄ちゃんは虫食わされかけてから虫苦手なの!」

微笑ましそうに笑っていた歌見の表情が凍りつく。教科書を読み込んでいたホムラが顔を上げて俺を見る。

「あの時は囃し立てて本当にごめんなさい……ぁ、そういえば俺が食わされたのも鳴雷に食わそうとしてたヤツだったな……」

「マジかよあのクソ野郎虫に食われて死ね! えっセイカも食わされたの? え……飲んだ? 俺チャイムに助けられてギリ吐けたけど」

「あれくらい……別に。俺、お前にもっと酷いことしたんだし、お腹壊さなかったし……」

「いやいやセイカ様殴る蹴る金と物盗るくらいの発想貧困イジメばっかだったじゃないですか、虫食わされたのが一番酷いから……いや、服剥かれたの……いや虫のがキツいか……うーん、瞬間最大風速はやっぱり虫かな。セイカは?」

「体売らされたの入れていいなら二本同時に突っ込まれたのが一番キツかったかな……ゃ、でもやっぱりトラックの前に飛び出しのが一番痛かった。まだちょくちょく痛むし」

「こまった、ちょっと勝てない」

「勝ちを目指すなもう話すな心が痛い! クソ……今度何かあったら俺に言うんだぞお前ら! 高校の時柔道の成績そこそこ良かった歌見お兄さんが守ってやるからな」

歌見にセイカと共に抱き締められながら、思う。あの時本当に辛かったのはセイカの豹変と味方が居ない孤独感だったから、セイカが俺のものになりたくさんの彼氏が居る今は、とても幸せだと。

「ありがとうございます歌見先輩……大好きです、これからも甘えますねっ」

「……ありがとう、歌見」

「兄様をよろしくお願いします」

「いつの間にっ! お前は俺の何なんだよ、勉強してろ!」

「弟です、ふふ……」

くすくす笑いながら机に戻っていくホムラを見て、彼も随分人間らしくなったなと胸が温かくなった。

「そういえばアキも虐められてたよな、一番強いエピソードってやっぱ目潰されかけたヤツ? でもアレ相手の顎割ってるから辛さポイント軽減されるよなぁ」

「辛いからもうやめてくれってば……!」

「聞いた感じじゃ親父にやらされた訓練のが色々痛そうだし辛そうだったけど……今まで話してくれたエピソードで言えば、近所のおっさんがクマに食われたヤツが一番怖かったな」

「とうとう人が死んだ……」

歌見は俺達を離し、アキを抱き締めた。アキは不思議そうな顔をしつつも歌見に構われたことを喜び、満面の笑顔で歌見を抱き締め返した。可愛い。

「ななー、なな!」

「そのクマ確か歌見くらいって言ってなかったかな」

「あれ、意外と小さい。ロシアのクマってグリズリーだよな? ホッキョクグマだっけ?」

「おい抱き締めてていいのか迷うぞ!?」

「クマの分布と分類には詳しくないけど……そんなに大きくないからこそ怖くないか? そりゃデカいのも怖いけどさ。実際おっさんはサイズ的に追い払えるって油断しちまってやられたらしいし」

「あー……恐竜映画でもティラノよりラプトルのが怖いしな……一番嫌なのコンピだけど。でもコンピに襲われんのってちょっと興奮もするよな」

「恐竜はよく分からないけどなんか違う気がする……」

「なぁ! トラウマ刺激しないか!? なぁ!」

「歌見は背格好が親父に似てる方がトラウマ刺激してるからクマのことは心配するなよ」

「トラウマ連想の可能性を秘め過ぎじゃないか俺!? ごめんアキくん……」

歌見はアキを離してベッドを背もたれにして床に腰を下ろした。アキは首を傾げながらセイカに何か言った。翻訳を頼んだようだ。

「……久しぶりなんだからもっと話そう、スキンシップしよう、足座っていいだろ? だってよ」

「え、まぁ、そりゃいいけど」

《いいってさ》

足を伸ばして座っている歌見の右太腿にちょこんと座ったアキは歌見の顔を見上げ、ニコニコと微笑む。

《やったぁ。へへっ、なぁ歌見、兄貴とのセックスどうだった? 薄らデカくてイカついアンタが情けなく鳴くとこ見てぇなぁ、今度三人でヤろうぜ。ゃ、スェカーチカ入れて四人っつーのも捨て難ぇな。でも人数増やし過ぎるとヤりにきぃんだよなぁ、アンタは何人プレイが好き?》

「狭雲……翻訳頼む」

きっと、父親ともクマとも関係のない、楽しくて可愛らしい話題を振っているのだろう。
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