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牧場からのメッセージ
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夕飯の完成を待っているとスマホが鳴った。カンナとリュウからだ、各々が撮った牧場の写真が送られてくる。ウサギだけでなくヤギやブタと戯れる二人の様子はとても愛らしく、生で見たかったという思いが強まっていく。
「……何? メール?」
「あぁ、カンナとリュウから。牧場行ったんだってさ、近所らしいしセイカも今度行こうか」
送られた写真をセイカにも見せる。
「セイカは動物どうだ? 好きか?」
「…………あんまり。昔ハムスター飼ってたけど、何考えてるのか全然分かんなくて……苦手」
「ハムスターって物考えるのかな……」
「三年ちょっとで死んじゃったし、ちゃんと育ててたつもりだったけど……幸せだったのかなって。俺なんかが生き物飼っちゃダメだったんじゃないかなって……あれから、動物ダメ」
何か言ってやらなければと口を開いたその時、母に呼ばれた。皿を運べとのお達しだ。
「行ってこいよ」
「あ……うん、下ろすぞ」
「写真もうちょっと見たい」
俺のスマホには彼氏達とのハメ撮りや裸の写真が記録されている。しかし写真フォルダを開くには更にパスワードが必要だ、問題ないだろう。
「ん、じゃあ貸しとくよ」
椅子にセイカを下ろし、キッチンへと走る。正常な腹時計を持ったアキがダイニングの窓を開けて入ってくる。
《……秋風、写真見るか?》
《何何? おっウサギだ、美味そう》
《…………ロシアでは食うのか?》
《知らねぇ、俺ロシア住んでただけで詳しくねぇから。俺は捕まえて捌いて食ったぜ。二回くらいだけど》
アキも一緒に写真を見ているようだ、どんなことを話しているのだろう。アキの好きな動物は猫だったが、ヤギやブタなどはどうなのだろう。
《みんな若くて健康そうで美味そうだなぁ》
《……可愛いとか言えないのかよ》
《思ってるし言えるぜ? この子とか目がくりくりで最高に可愛い》
《その上で美味そうって言ってるのか……?》
《おぅ、何だよ、スェカーチカはブサイクしか食いたくねぇってのか?》
「……情操教育しろって言われる訳だ」
《なんてー? 日本語話すならゆっくり頼むぜ》
料理を運び終えて六人で手を合わせる。今日の夕飯もとても美味しい。
「……ねー唯乃、セイカくんのご飯おにぎりにしたげた方がいいんじゃないの? 食べにくそう」
セイカは肘下数センチで切断された右腕の先端を茶碗に押し当て、利き手ではない左手でスプーンを握り、米を掬って食べている。茶碗を持って食べるということが出来ない彼の食事の様子は見ていられない。
「ぇ……あっ、大丈夫です。お気遣いなく……慣れてきましたから」
消え入りそうな声でそう言ったセイカの顔はじんわりと赤くなっていった。セイカが甘える気持ちで応えてくれるのなら俺が食べさせてやってもいいのだが、実際のセイカは多分屈辱を感じて夜に枕を濡らすだろう。
「……あっ、そういえばアキ左利きだよな。セイカ、アキにコツとか聞けばお箸とか使えるようになるかもだぞ」
「あー……いいかも。うん……ありがとう」
声は暗いままだが笑顔を返してくれた。左利きになれても茶碗を掴めないという問題は解決しないが、食べやすさは一歩前進するはずだ。
ホムラは月曜日から学校へ再び通い始めることになっている、夕飯を終えてすぐ彼は俺の私室に向かい、鞄に入れる教科書類の取捨選択を始めた。
「ほむらくんは学校でパソコンとか使わないの?」
「月に一回授業があります」
「それだけ? ふぅん……じゃあ操作とか怪しい感じ?」
「ブラインドタッチなどはまだ出来ません」
俺はブラインドタッチの速さと正確さには絶対的な自信がある。兄弟揃って優秀な狭雲兄弟に勝てるのはこれだけだな。
歳下に心の中でマウントを取るという情けない真似をしているうちに夜は更け、入浴の順番がやってきた。心地いい一人の時間を終えてアキの部屋へと向かい、俺の前に風呂を済ませていた彼を抱き締める。
「まーだ起きてるのかアキぃ~! ふふふっ……セイカは?」
「すぇかーちか、ほむー、一緒するです」
「ホムラと一緒か。こっちには戻らずそのまま俺の部屋で寝るかな? それじゃあ朝まで二人きりだ、アキ、明日お兄ちゃん学校だからあんまり遅くまでは出来ないけど……しようか」
小屋が立てられて一番良かったことは、アキを喘がせても義母に聞こえないことだ。二番目に良かったことはプールの脇に設置されたシャワーブースですぐに汗やその他の体液を洗い流せることだ。
淫靡な一夜を終え、鳴り響くアラームに起こされる。腰の重だるさに辟易しつつも立ち上がり、伸びをしてから朝支度をした。
「明日終業式よね?」
キッチンに向かい、朝食を作っている母と話す。
「はい、明後日からは夏休みでそ。遊びたい放題ですな」
「せっかくアンタの弁当作らなくてよくなったと思ったら、まーた昼飯作る日々が戻ってくるわけね……ま、腰壊さない程度に楽しみなさいよ。今日はいつも通り?」
「はい、バイトもありますし」
「そう……今日は曇りらしいし、お昼はアキ達自身で買いに行ってもらいましょうかね」
「大丈夫ですかな、最初はわたくし某おつかい番組のカメラマンのようにストーキングしたいのですが」
「アンタその顔で尾行なんて出来ると思ってるの?」
APPが高過ぎると隠れる系の行動にマイナス補正がかかることがある、電気のいらないRPGを遊んだ人なら分かるだろう。
「そんな心配しなくても迷子になるような歳じゃないし、凶器持ってるヤツらがうようよ居る国でもないわ。大丈夫よ。アンタは一学期ラストの平日頑張って来なさい」
「はーい。行ってきまそ」
キッチンでの会話を終えて玄関へ向かうとアキとセイカとホムラが着いてきた。
「ほむらくんはまだ出なくていいのか?」
「はい、後十分くらいは」
「そっか……少し前まで一人っ子だったのに、三人の可愛い男の子に見送られる日が来るなんてな……俺の人生は最高だよ」
「行ってらっしゃいです、にーに」
「……ちゃんと無傷で帰ってきてくれよ」
「お気を付けて、鳴雷さん」
美少年三人に見送りを受け、幸せな気持ちで道を行く。駅に辿り着けばまた別の美少年が待っている。
「……あ、水月ぃー! おはようさん」
学校に着くまでに後二人、着いたらもう一人、昼休みにはまた二人、更にバイトに行けばもう一人……俺は今幸福の絶頂に居る。
「……何? メール?」
「あぁ、カンナとリュウから。牧場行ったんだってさ、近所らしいしセイカも今度行こうか」
送られた写真をセイカにも見せる。
「セイカは動物どうだ? 好きか?」
「…………あんまり。昔ハムスター飼ってたけど、何考えてるのか全然分かんなくて……苦手」
「ハムスターって物考えるのかな……」
「三年ちょっとで死んじゃったし、ちゃんと育ててたつもりだったけど……幸せだったのかなって。俺なんかが生き物飼っちゃダメだったんじゃないかなって……あれから、動物ダメ」
何か言ってやらなければと口を開いたその時、母に呼ばれた。皿を運べとのお達しだ。
「行ってこいよ」
「あ……うん、下ろすぞ」
「写真もうちょっと見たい」
俺のスマホには彼氏達とのハメ撮りや裸の写真が記録されている。しかし写真フォルダを開くには更にパスワードが必要だ、問題ないだろう。
「ん、じゃあ貸しとくよ」
椅子にセイカを下ろし、キッチンへと走る。正常な腹時計を持ったアキがダイニングの窓を開けて入ってくる。
《……秋風、写真見るか?》
《何何? おっウサギだ、美味そう》
《…………ロシアでは食うのか?》
《知らねぇ、俺ロシア住んでただけで詳しくねぇから。俺は捕まえて捌いて食ったぜ。二回くらいだけど》
アキも一緒に写真を見ているようだ、どんなことを話しているのだろう。アキの好きな動物は猫だったが、ヤギやブタなどはどうなのだろう。
《みんな若くて健康そうで美味そうだなぁ》
《……可愛いとか言えないのかよ》
《思ってるし言えるぜ? この子とか目がくりくりで最高に可愛い》
《その上で美味そうって言ってるのか……?》
《おぅ、何だよ、スェカーチカはブサイクしか食いたくねぇってのか?》
「……情操教育しろって言われる訳だ」
《なんてー? 日本語話すならゆっくり頼むぜ》
料理を運び終えて六人で手を合わせる。今日の夕飯もとても美味しい。
「……ねー唯乃、セイカくんのご飯おにぎりにしたげた方がいいんじゃないの? 食べにくそう」
セイカは肘下数センチで切断された右腕の先端を茶碗に押し当て、利き手ではない左手でスプーンを握り、米を掬って食べている。茶碗を持って食べるということが出来ない彼の食事の様子は見ていられない。
「ぇ……あっ、大丈夫です。お気遣いなく……慣れてきましたから」
消え入りそうな声でそう言ったセイカの顔はじんわりと赤くなっていった。セイカが甘える気持ちで応えてくれるのなら俺が食べさせてやってもいいのだが、実際のセイカは多分屈辱を感じて夜に枕を濡らすだろう。
「……あっ、そういえばアキ左利きだよな。セイカ、アキにコツとか聞けばお箸とか使えるようになるかもだぞ」
「あー……いいかも。うん……ありがとう」
声は暗いままだが笑顔を返してくれた。左利きになれても茶碗を掴めないという問題は解決しないが、食べやすさは一歩前進するはずだ。
ホムラは月曜日から学校へ再び通い始めることになっている、夕飯を終えてすぐ彼は俺の私室に向かい、鞄に入れる教科書類の取捨選択を始めた。
「ほむらくんは学校でパソコンとか使わないの?」
「月に一回授業があります」
「それだけ? ふぅん……じゃあ操作とか怪しい感じ?」
「ブラインドタッチなどはまだ出来ません」
俺はブラインドタッチの速さと正確さには絶対的な自信がある。兄弟揃って優秀な狭雲兄弟に勝てるのはこれだけだな。
歳下に心の中でマウントを取るという情けない真似をしているうちに夜は更け、入浴の順番がやってきた。心地いい一人の時間を終えてアキの部屋へと向かい、俺の前に風呂を済ませていた彼を抱き締める。
「まーだ起きてるのかアキぃ~! ふふふっ……セイカは?」
「すぇかーちか、ほむー、一緒するです」
「ホムラと一緒か。こっちには戻らずそのまま俺の部屋で寝るかな? それじゃあ朝まで二人きりだ、アキ、明日お兄ちゃん学校だからあんまり遅くまでは出来ないけど……しようか」
小屋が立てられて一番良かったことは、アキを喘がせても義母に聞こえないことだ。二番目に良かったことはプールの脇に設置されたシャワーブースですぐに汗やその他の体液を洗い流せることだ。
淫靡な一夜を終え、鳴り響くアラームに起こされる。腰の重だるさに辟易しつつも立ち上がり、伸びをしてから朝支度をした。
「明日終業式よね?」
キッチンに向かい、朝食を作っている母と話す。
「はい、明後日からは夏休みでそ。遊びたい放題ですな」
「せっかくアンタの弁当作らなくてよくなったと思ったら、まーた昼飯作る日々が戻ってくるわけね……ま、腰壊さない程度に楽しみなさいよ。今日はいつも通り?」
「はい、バイトもありますし」
「そう……今日は曇りらしいし、お昼はアキ達自身で買いに行ってもらいましょうかね」
「大丈夫ですかな、最初はわたくし某おつかい番組のカメラマンのようにストーキングしたいのですが」
「アンタその顔で尾行なんて出来ると思ってるの?」
APPが高過ぎると隠れる系の行動にマイナス補正がかかることがある、電気のいらないRPGを遊んだ人なら分かるだろう。
「そんな心配しなくても迷子になるような歳じゃないし、凶器持ってるヤツらがうようよ居る国でもないわ。大丈夫よ。アンタは一学期ラストの平日頑張って来なさい」
「はーい。行ってきまそ」
キッチンでの会話を終えて玄関へ向かうとアキとセイカとホムラが着いてきた。
「ほむらくんはまだ出なくていいのか?」
「はい、後十分くらいは」
「そっか……少し前まで一人っ子だったのに、三人の可愛い男の子に見送られる日が来るなんてな……俺の人生は最高だよ」
「行ってらっしゃいです、にーに」
「……ちゃんと無傷で帰ってきてくれよ」
「お気を付けて、鳴雷さん」
美少年三人に見送りを受け、幸せな気持ちで道を行く。駅に辿り着けばまた別の美少年が待っている。
「……あ、水月ぃー! おはようさん」
学校に着くまでに後二人、着いたらもう一人、昼休みにはまた二人、更にバイトに行けばもう一人……俺は今幸福の絶頂に居る。
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