冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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鳴雷家での役割とは

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ホムラは現在通っている中学校の終業式までは我が家で預かることになった。理由は単純、祖父母の家から通うのは大変だから。彼の父親は自分の両親に話を通すため一人で帰り、またいつもの顔だけがダイニングに揃った。この顔ぶれもあと数日、ホムラが祖父母の元に引き取られるまでだ。

「じゃあこれ私と水月の電話番号と、メッセージアプリのID」

「ありがとうございます」

メモを渡されたホムラは満面の笑顔を浮かべた。俺も母も思わず彼を見つめる。不思議そうに見つめ返してくるホムラの瞳はキラキラと輝いて見えた。

(あれ……? ほむほむの目ってもっと死んでませんでしたっけ)

数分見ないうちに可愛さに磨きがかかった。セイカも変わったかな? と腕の中の彼を見る。

(……安定のレイプ目! セイカ様の可愛さに変わりはありませんな)

ホムラの目が濁っていたのは家庭内暴力から逃げられない絶望感からで、セイカの目が濁っているのは過去に俺を虐めた罪悪感からなのだから、そりゃ変わる訳がない。って言ってて悲しくなってきたな。

「お別れになりますね、兄様。長期休暇には遊びに参ります、どうかお話してくださいね」

「あぁ……うん、俺なんかに会いたいなら」

「……あ、離婚したということは、兄様は苗字が変わって早苗さなえ 星火せいかになりますね」

「戸籍上はそうなるな。あのおっさんもお母さんも俺を捨てたんだから、苗字なんてないようなもんだけど」

早苗か……可愛い苗字じゃないか。文字数と頭文字が同じだからさほど違和感もないし。

「じゃあ鳴雷 星火になるか?」

「………………バカ」

一体何を想像したのかセイカはぽっと頬を赤らめ、俯きながら蚊の鳴くような声で照れ隠しの罵倒を呟いた。

「セイカくん」

「はっ、はいっ」

「血の繋がりもない上に割と嫌いなあなたをこれから養ってく訳だし、あなたには家に貢献してもらわなきゃダメだと思うの。そうよね?」

「はい……えっと、何をすれば……ぁ、掃除機かけるくらいなら何とか」

「家事はいいわ、私がやった方が早くて綺麗だもの。他に任せるのは皿洗いまでって決めてるの」

片手でも出来そうな家事を必死に探しているのだろうセイカの顔色はどんどん悪くなっていく。助け舟を出してやりたいが、俺には何も思い付かない。他の家事には全て両手が必要に思える。

「ちゃんとした人に頼めば月数万はかかること、あなた出来るでしょう?」

「えっ……と」

「アキの通訳兼家庭教師、兼安眠抱き枕、兼情操教育の教材」

「あっ……は、はい。頑張ります。あの……最後のだけよく分からないんですが」

俺も分からない。

「……社会から隔離された状態で育つと、どんな生き物でもあんまりよくないことになるのよ。アキには出来るだけ他人と関わって欲しいの」

「俺一人増えただけでそんなに変わりますかね……」

「そこで通訳を兼任してるのが活きてくるのよ。アンタ達には時々商店街へのお使いを頼もうと思うわ。地元の人と交流なさい」

俺なら泣き喚くミッションだな。不特定多数の人とリアルで関わるなんて考えたくもない。

「なるほど……分かりました」

「それと、水月の成績何とかして。留年しない程度でいいから」

「わ、分かりました……」

「あと、十二薔薇の二学期補欠募集に応募しなさい」

「え……そ、それって、あの、俺……鳴雷と一緒のとこ通っていいってことですか? で、でも、あそこ学費高いんじゃ……」

「身障者はちょっと安くなるのよ。それと、補欠募集応募者に出されるテスト、国語数学英語……三教科全て九割以上取れれば更に学費免除! 半額以下よ、頑張ってね」

九割なんて俺には不可能に思えるが、セイカなら可能なのだろうか。

「……でも」

「それまで全く触れてこなかった外国語での日常会話を一ヶ月とかからずこなせるようになったあなたの吸収力には目を見張るものがあるわ。教育の機会を与えないのはもったいないのよ、あなたがどこまで育つか個人的な興味があるの。もう学校なんて嫌だって言うなら無理は言わないわ」

「い、いえっ……十二薔薇、前から行きたいと思ってて……やります、やらせてください。頑張りますっ」

「あらそうなの? じゃあでもでも言わないでよ」

「……だって、こんな……いいことばっかり、俺なんかには」

「そういうウダウダしたのは水月に聞かせて慰めてもらって。私は聞くの嫌。じゃあ、私夕飯の支度するから後は自由に……弟との残り少ない時間でも楽しんでて」

キッチンへと向かう母を視線だけで見送り、膝の上に座っているセイカをひっくり返す。対面に座り直させられたセイカは戸惑った顔のまま俺を見上げた。

「やったなセイカ、二学期から同じとこ通えるぞ。クラスも同じにしてもらえないかな……俺明日先生に頼んでみるよ」

「え……ぁ……あの、本当、だよな。俺の幻聴じゃなくて……俺本当に」

「本当だよ、また一緒の学校に通えるな」

「うんっ、また…………また……同じ学校、で」

パァっと明るくなっていた表情がまたすぐ暗くなる。雲の多い日に太陽を見上げているみたいだ。

「……セイカはもう俺虐めたりしないだろ? そんな顔するなよ」

「鳴雷……思い出して、やな気持ち……ならない?」

「それで嫌がるくらいなら恋人にしてないよ」

「…………そっか」

表情に仄かな安堵が混じる。左腕が首に巻かれ、肘までの右手が肩にぽすんと乗る。

「ありがとう鳴雷……俺のどこでも何でも、いつでも好きにしていいんだからな。全部お前の物だ」

「……ッ、グ……ゥ、ギャンかわ………………うっ、ふぅ…………ありがとうな、セイカ」

唸った俺に若干訝しげな目を向けたものの、すぐに気にしないことに決めて俺の胸に頭を押し付けて甘えてきた。理性を保つのが大変だ。
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