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一時中断の理由は

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しかし、どうするべきか。Sなだけでも突っ込みにくいのに、ミフユを抱いて攻め側の経験を積み、俺のことも抱く気満々の彼に突っ込むのはかなり難しそうだ。

「ここのコリコリしたところを……」

「ひぁっ!?」

まぁ、アキやシュカと違って力づくが通用する相手ではあるが、それは俺の美学に反する。それでネザメを抱けたとしても嫌われてしまうだろうし、そうなればミフユも俺の元を去るだろうし、他の彼氏達も俺に幻滅するかもしれない。強姦は選択肢にすら入れてはいけない最低最悪の行為だ、メリットなんて何一つない。

「仔猫を慈しむように優しく撫でてあげるのはどうかな?」

「ぁ、あっ……ぁあぁああっ……!」

「秋風くんは本当に気持ちよさそうな顔と声で魅せてくれるね。僕は羞恥に歪む顔や快楽に困惑する顔も好きなのだけれど、快楽に素直な君もとても可愛いよ。本能に忠実なんだね、やはり君には野生動物のような気配を感じるよ」

ネザメの口ぶりからして前立腺を優しく責められているのだろうアキは、絶頂には至らない快楽が長く続くのを楽しんでいるようだ。

「ぁ、うっ……みゃあっ! ぁ、はっ、ぁあーっ……もみじぃっ……んん、んっ、んんんんっ!」

「……僕もミフユも一人っ子でね、兄弟というものをよく知らない。ミフユのお父上は二人兄弟でいらっしゃるけれど、性格も容姿もあまり似ていなくてね……あぁ、でも、二人とも僕より背が低いんだよ。ふふ……君のお兄さんはどんなふうに鳴いてくれるかな、君と似たところを見つけられたら楽しそうだね」

喘ぐアキの顔をじっと見つめていたはずのネザメの黒目がちな瞳がいつの間にか俺に向いていた。

「…………ミフユさんとは、タイプが違いますよね、アキは」

「正反対と言ってもいいね。ミフユは快楽に抗ったり声を抑えたりしてしまう……まぁ、この間はそんな余裕はなかったみたいだけれど」

つい話を逸らしてしまったが、それを察したのだろうネザメは「慌てて話を逸らす水月くんも可愛いね」なんて言葉にせず微笑みで語りかけてくる。勝てる気がしない。俺は本当にネザメを抱けるのだろうか、受けにされてしまうのでは?

「もみじっ、もみじぃっ……ぼく、イくするっ、したいですぅ……ぅあっ、ぁ、あぁぅっ……ずっとぉ、やですっ、もぉ……!」

「そうだねぇ、僕の指をきゅうきゅう締め付けてきているものね。さて、やっぱりこの弱いところを責めてあげるのがいいかな。他のところは擦らずに、ここをぐっと押して……」

「ぁゔっ!?」

前立腺を指で強く押しているようだ、アキの頭が胸にぐりぐりと押し付けられている。たまに上を向く彼の蕩けた赤い瞳と目が合う瞬間が幸福だ。

「……親指でここを押すと、弱いところが挟めるんだよねぇ」

「ひにゃあぁっ!? あっ……んっうぅっ!」

ネザメの親指はアキの会陰を捉えている。内と外から弱点をくりくりと刺激されて絶頂を迎えたアキは俺の顔に白濁液をぶっかけ、ネザメが指を抜くと足を下ろして俺を見つめたまま呟いた。

「хороший вид……」

「……狭雲くん連れてこようか」

「はらしょーって聞こえた気がします! 満足したみたいですね」

「あぁ、流石に分かるよ、いい意味だよね。すごい、とかかな?」

「ヤバいって感じだと思ってました」

どういう意味だろうと、実際別のことを言っていようと、アキが満足していそうなのは表情を見れば分かる。

《綺麗なツラにぶっかけんのは最高だな。気持ちいいしイイもんが見れる。イマイチ物足りねぇけど今日はちんぽもらえそうにないし、とりあえず出せたからよしとするぜ。我慢してやんよ》

「セイカ連れてこようかな……」

立ち上がったアキは自分にかかった精液を手の甲で拭うと俺の顔をじっと見つめた。

(……アキきゅんぶっかけ好きそうですよな)

過去の経験も合わせてそう予想した俺はサービスとして頬に垂れたアキの精液を親指で拭って舐めた。ゾクゾクッと興奮して雄の顔をしたアキが再び俺に擦り寄ってくる。

「にーにぃ、ダメです、ぼく……にーに」

そんなエロいことしちゃダメだ、とでも言いたいのだろうか? 発情した顔は確かに雄らしいのに、可愛い声と拙い日本語で印象がブレブレだ。

「こらこら、ダメだよ秋風くん。僕、秋風くん、と来たのだから次は水月くんがよくなる番だ」

「……ご奉仕って言ったのに、すっかり順番こになっちゃいましたね」

「僕は美しい君達が乱れる姿で癒されるのだからこれも奉仕の一つだよ」

そんな会話をしている間に俺のベルトは外された。腰を浮かせてスラックスごと下着を脱ぐと、反り返った陰茎がネザメの指先でつぅっと撫でられた。

「んっ……ネザメさん、焦らさないでくださいよ」

「焦っちゃダメだよ、我慢させちゃったのは分かるけれどね」

裏筋を辿ってネザメの指は俺の陰茎の根元へと至り、陰嚢へと移る。ネザメは手のひらに俺の陰嚢を乗せて軽く揺すった。

「……重いねぇ。ご立派。ふふっ……でも、僕が用があるのはここでもないよ」

ぷに、と会陰を押される。ネザメの企みにハッとした頃にはもう遅い、俺の肩を押してバランスを崩させたネザメは素早く俺とベッドの隙間に手を差し込んで俺の穴を狙った。

「ちょっちょちょっ! ネザメさん!」

慌ててネザメの手首を掴み、何とか貞操を守った。

「どうしたんだい? 水月くん」

「いや、だから……えっと、俺受けはやらないので」

「そう言わないで、気持ちよくしてあげるから。僕に君の初めてをちょうだい?」

ネザメに見つめられると従いたくなってしまう。これが御曹司の眼力なのか、生まれながらにして人の上に立つ宿命の男の目は恐ろしい。

「いえ、いえ……俺がネザメさんに教えて差し上げますよ」

「……っ、僕には必要ないよ」

《何してんのアンタら》

負けじとネザメの尻を鷲掴みにするも、俺も手首を掴まれてしまった。なんだこの膠着状態、アキも困惑している。この不毛な時間を突き崩すようにダダダッと激しい足音が部屋に向かってきた。

「鳴雷一年生!」

ノックもなく扉が開け放たれ、足音の主が姿を現す。

「狭雲の様子がおかしい!」

「へっ?」

用件を聞くよりも先に告げられた言葉に俺の身体は自然と動いた。

「すみませんネザメさんちょっと行ってきます!」

そう叫びながらミフユと共にアキの部屋へと走り、開かれたままの扉から中へと入った。

「痛いっ! 痛いぃ……指がっ、ぁあっ、潰れっ……痛い! 痛いぃいっ……!」

「落ち着いてください兄様! もうありません! 痛むはずなどないのです!」

「分かってる! でも痛いもんは痛いんだよぉっ! 右手がっ……ぁああクソっ! ちくしょう痛い痛い痛いちぎれる痛いぃっ!」

「とっくにちぎれてます兄様!」

「んなこた知ってんだよちくしょおぉっ!」

セイカはアキのベッドの上で叫び、のたうち回っていた。水着のままのホムラが声をかけているが、怒りを煽っているようにも見える。

「ぁ……みっつんっ、せーかがね、急に……右手が痛いって言い出して。でもないじゃんっ、だからどうしてあげたらいいか分かんなくて」

セイカが痛がっているのは左手ではなく右手らしい。肘の数センチ下から先はもう存在していないはずなのに、セイカは脂汗まで垂らして痛がっている。彼氏達が呆然と立ち尽くす中、俺は脱ぎかけのスラックスのポケットを探った。
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