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吸血鬼と異父兄弟
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アキの部屋に戻り、ベッドに座っているセイカを背後から抱き締めているアキの様子を確認する。今はセイカの身体をまさぐったりはしていないようだ。
《半分くらい冗談だって、機嫌直してくれよセイカ。本気でヤりたくなってた訳じゃないんだってば。調子乗りすぎたよ、ごめんな? お願いだから嫌わないでくれよ》
「ただいま。ほむらくんプールで遊ばせてきたよ、向こうは健全に遊んでるだけだから平気だろ」
「……悪いな。なんか知らねぇけど秋風も落ち着いたみたいだ、ほむらの前だから俺が過剰に嫌がるの面白がってただけなんだろうな」
「はは……アキそんな子かなぁ」
少なくとも今のアキは、ツンとした態度のセイカの気を引こうと必死に話しているように見える。俺には理解出来ない言葉だけれど。
《なぁ頼むよ考え直してくれよセイカ、たった一度の過ちではいおしまいなんてアンタにとってもよくないはずだ。もうからかったりしないから、嫌だって言ったらちゃんと信用するからさぁ、俺のこと嫌いにならないで》
パソコンに向かうための椅子にはネザメが座っており、ミフユはその隣に立っている。カンナは床に置かれたクッションの上にちょこんと乗っている。俺もクッションが欲しいなと思いつつ床に直接腰を下ろす。
「狭雲くん? 秋風くんが何か話しているようだけれど」
「あぁ、うん……嫌わないでって言ってる。なんでだろうな、なんで俺なんかにそんなこだわってんだろ。もう、なんか怖い……」
「セイカが大好きだからだよ、俺もアキもな。返事してやってくれるか? アキもう泣きそうな顔しちゃってるからさ」
《セイカ、ごめんな、せーかぁ、許して》
ロシア語は分からないけれど、セイカの名前を呼んでいるのは分かる。ネザメが羨ましそうな目でセイカを見つめ、セイカは居心地悪そうにしている。
《……嫌ってねぇからもう静かにしてくれよ》
《セイカ! あぁよかった、ごめんなセイカ、愛してるぞ》
《ほむらの前でとか最悪だし、俺鳴雷以外とああいうのする気ねぇから》
《えー……3Pしようぜー? 兄貴も絶対したがるって。俺はセイカに入れねぇし、しゃぶらせたりもしないからさぁ…………まだダメ? でもキスはなぁ、したいし……》
セイカが返事をするとアキに笑顔が戻った。
「アキのこと許してくれたのか?」
「え、あぁ、うん……別にそこまで怒ってないし…………あのさ、鳴雷は……俺が秋風に抱かれてたら嬉しい?」
「えっ、いや、本番はダメだ。セイカのお尻は俺のものだ」
「俺の尻は俺のもんだよ」
「ペッティングなら是非見せて欲しい! 美少年同士のイチャイチャちゅっちゅ最高」
「美少年なのは秋風だけだろ……」
セイカだって美少年だ。和風の上品な顔立ちは異国情緒のあるアキの美顔と相性がいい。今は髪と肌の調子が悪く、疲れが顔に滲み出ているけれど、健康を取り戻せばきっともっと美しくなる。
《セイカ、兄貴なんて?》
《……スェカーチカって呼べよ、調子狂う》
《機嫌悪かったからやめとこうかと思って。あはっ、機嫌直ったみたいでよかった。可愛いぜスェカーチカ》
《…………どうせ汚れきった身体なんだ、鳴雷とだけなんて、そんな……今更清純ぶっても、な……いいぞ、秋風。ヤろう》
《いいのか!? やったぁ!》
何の前触れもなくアキがセイカを押し倒した。
「ア、アキ! セイカ、今日、疲れる、する! セイカ、今日、ゆっくり、寝るする!」
《……そういやなんか疲れた顔してんな。しょうがねぇなぁ、じゃあまた今度な》
《今度……ね。会えるの、今日が最後かもしれないのに》
《いつも言ってんなそれ。俺も兄貴も急にスェカーチカ放り出したりしねぇよ》
《……今度はマジなんだけどな》
俺の制止が効いたのかアキはセイカを仰向けに寝かせたまま一人で起き上がり、退屈そうに会話を続けていた。セイカとの会話が終わるとアキはシャツの襟を引っ張って鎖骨をネザメに見せつけた。
「もみじー、飲むするです?」
「白磁の如き肌をそんなもったいぶらずに……! ん? 飲む……? あぁ、そうだね、君のように美しい若い男の血は格別に美味いだろう」
自身が吸血鬼のコスプレをしていることを忘れていた様子のネザメはケープコートを揺らしながら立ち上がり、コートの端をつまんで口元を隠すように持ち上げた。
「俺がダメだと見ると即他の男か。将来有望だな」
「割とマジでやめてくれセイカ、俺の心が死ぬ」
「ブラコンめ……」
ネザメは吸血鬼らしい仕草を心がけながらアキの腰を抱き、後頭部に手を添え、首筋に噛み付いた。いや、実際には歯を立ててはいないようだ。
「少し休ませてもらおう。隣、失礼するぞ」
「あ、うん……どーぞ」
仰向けのままのセイカが壁際に寄り、ミフユがベッドに腰を下ろした。俺も見物に回るべきだろうか、それとも二人は俺の参加を待っているのだろうか。
「ん……可愛いね、秋風くん。本当に美しい。もし君がこの衣装に身を包んで血を啜る怪物へと扮していたならば、僕は一体何リットルの血液を捧げただろう……けれど、今の君は哀れな被害者。僕に食べられてしまうんだよ」
「吸血鬼って噛まれた人も吸血鬼になるタイプですか? ゾンビみたいになるタイプとか、普通に死んじゃうタイプもありますよね」
「……詳しいねぇ。うーん……それじゃあ美しい君には、僕と共に永遠を生きてもらおうかな」
「もみじー……話すする、難しい、です」
「おや、ごめんね。ふふ……」
「ネザメさん、俺は眷属にしてくれないんですか?」
歌見はテスト結果が出た後に抱ける可能性が出た。ハルはもう少し様子を見よう。そろそろネザメに手を出したい。そう考えた俺はシャツを引っ張って首筋を露出させた。
「……! 今日はいい日だね」
細い腕がするりと俺に絡み、唇だけがはむっと鎖骨の少し上に噛み付いた。歯を立ててもいいのになと思いつつ、彼の口の温度と吐息を楽しんだ。
「…………今日から我ら兄弟は貴方様の眷属。早速ご奉仕致しましょうか?」
「それはいいね。じゃあ、ぜひ」
釣れた。俺は内心ほくそ笑み、ネザメとアキを連れて自室へ戻った。
《半分くらい冗談だって、機嫌直してくれよセイカ。本気でヤりたくなってた訳じゃないんだってば。調子乗りすぎたよ、ごめんな? お願いだから嫌わないでくれよ》
「ただいま。ほむらくんプールで遊ばせてきたよ、向こうは健全に遊んでるだけだから平気だろ」
「……悪いな。なんか知らねぇけど秋風も落ち着いたみたいだ、ほむらの前だから俺が過剰に嫌がるの面白がってただけなんだろうな」
「はは……アキそんな子かなぁ」
少なくとも今のアキは、ツンとした態度のセイカの気を引こうと必死に話しているように見える。俺には理解出来ない言葉だけれど。
《なぁ頼むよ考え直してくれよセイカ、たった一度の過ちではいおしまいなんてアンタにとってもよくないはずだ。もうからかったりしないから、嫌だって言ったらちゃんと信用するからさぁ、俺のこと嫌いにならないで》
パソコンに向かうための椅子にはネザメが座っており、ミフユはその隣に立っている。カンナは床に置かれたクッションの上にちょこんと乗っている。俺もクッションが欲しいなと思いつつ床に直接腰を下ろす。
「狭雲くん? 秋風くんが何か話しているようだけれど」
「あぁ、うん……嫌わないでって言ってる。なんでだろうな、なんで俺なんかにそんなこだわってんだろ。もう、なんか怖い……」
「セイカが大好きだからだよ、俺もアキもな。返事してやってくれるか? アキもう泣きそうな顔しちゃってるからさ」
《セイカ、ごめんな、せーかぁ、許して》
ロシア語は分からないけれど、セイカの名前を呼んでいるのは分かる。ネザメが羨ましそうな目でセイカを見つめ、セイカは居心地悪そうにしている。
《……嫌ってねぇからもう静かにしてくれよ》
《セイカ! あぁよかった、ごめんなセイカ、愛してるぞ》
《ほむらの前でとか最悪だし、俺鳴雷以外とああいうのする気ねぇから》
《えー……3Pしようぜー? 兄貴も絶対したがるって。俺はセイカに入れねぇし、しゃぶらせたりもしないからさぁ…………まだダメ? でもキスはなぁ、したいし……》
セイカが返事をするとアキに笑顔が戻った。
「アキのこと許してくれたのか?」
「え、あぁ、うん……別にそこまで怒ってないし…………あのさ、鳴雷は……俺が秋風に抱かれてたら嬉しい?」
「えっ、いや、本番はダメだ。セイカのお尻は俺のものだ」
「俺の尻は俺のもんだよ」
「ペッティングなら是非見せて欲しい! 美少年同士のイチャイチャちゅっちゅ最高」
「美少年なのは秋風だけだろ……」
セイカだって美少年だ。和風の上品な顔立ちは異国情緒のあるアキの美顔と相性がいい。今は髪と肌の調子が悪く、疲れが顔に滲み出ているけれど、健康を取り戻せばきっともっと美しくなる。
《セイカ、兄貴なんて?》
《……スェカーチカって呼べよ、調子狂う》
《機嫌悪かったからやめとこうかと思って。あはっ、機嫌直ったみたいでよかった。可愛いぜスェカーチカ》
《…………どうせ汚れきった身体なんだ、鳴雷とだけなんて、そんな……今更清純ぶっても、な……いいぞ、秋風。ヤろう》
《いいのか!? やったぁ!》
何の前触れもなくアキがセイカを押し倒した。
「ア、アキ! セイカ、今日、疲れる、する! セイカ、今日、ゆっくり、寝るする!」
《……そういやなんか疲れた顔してんな。しょうがねぇなぁ、じゃあまた今度な》
《今度……ね。会えるの、今日が最後かもしれないのに》
《いつも言ってんなそれ。俺も兄貴も急にスェカーチカ放り出したりしねぇよ》
《……今度はマジなんだけどな》
俺の制止が効いたのかアキはセイカを仰向けに寝かせたまま一人で起き上がり、退屈そうに会話を続けていた。セイカとの会話が終わるとアキはシャツの襟を引っ張って鎖骨をネザメに見せつけた。
「もみじー、飲むするです?」
「白磁の如き肌をそんなもったいぶらずに……! ん? 飲む……? あぁ、そうだね、君のように美しい若い男の血は格別に美味いだろう」
自身が吸血鬼のコスプレをしていることを忘れていた様子のネザメはケープコートを揺らしながら立ち上がり、コートの端をつまんで口元を隠すように持ち上げた。
「俺がダメだと見ると即他の男か。将来有望だな」
「割とマジでやめてくれセイカ、俺の心が死ぬ」
「ブラコンめ……」
ネザメは吸血鬼らしい仕草を心がけながらアキの腰を抱き、後頭部に手を添え、首筋に噛み付いた。いや、実際には歯を立ててはいないようだ。
「少し休ませてもらおう。隣、失礼するぞ」
「あ、うん……どーぞ」
仰向けのままのセイカが壁際に寄り、ミフユがベッドに腰を下ろした。俺も見物に回るべきだろうか、それとも二人は俺の参加を待っているのだろうか。
「ん……可愛いね、秋風くん。本当に美しい。もし君がこの衣装に身を包んで血を啜る怪物へと扮していたならば、僕は一体何リットルの血液を捧げただろう……けれど、今の君は哀れな被害者。僕に食べられてしまうんだよ」
「吸血鬼って噛まれた人も吸血鬼になるタイプですか? ゾンビみたいになるタイプとか、普通に死んじゃうタイプもありますよね」
「……詳しいねぇ。うーん……それじゃあ美しい君には、僕と共に永遠を生きてもらおうかな」
「もみじー……話すする、難しい、です」
「おや、ごめんね。ふふ……」
「ネザメさん、俺は眷属にしてくれないんですか?」
歌見はテスト結果が出た後に抱ける可能性が出た。ハルはもう少し様子を見よう。そろそろネザメに手を出したい。そう考えた俺はシャツを引っ張って首筋を露出させた。
「……! 今日はいい日だね」
細い腕がするりと俺に絡み、唇だけがはむっと鎖骨の少し上に噛み付いた。歯を立ててもいいのになと思いつつ、彼の口の温度と吐息を楽しんだ。
「…………今日から我ら兄弟は貴方様の眷属。早速ご奉仕致しましょうか?」
「それはいいね。じゃあ、ぜひ」
釣れた。俺は内心ほくそ笑み、ネザメとアキを連れて自室へ戻った。
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