564 / 2,052
嫌よ嫌よも好きのうち……?
しおりを挟む
服の下に水着を着ているから今すぐシャツとズボンを脱ぎ捨ててプールに飛び込むことも可能だが、プールに入らない彼氏も居るのならどうするべきか迷う。
「水月ぃ、ボールとかないん」
「ゴムボールがあるぞ、使うか?」
バレーボールよりも少しだけ大きなピンク色のゴムボールをプールの中のリュウへと投げる。
「このめん、歌見の兄さん、ボール遊びしましょうや。本屋対十二薔薇!」
「いいな、対って言うからにはただのキャッチボールじゃないんだろ?」
「ゴールとか決めて投げ合うんすか?」
「ドッジボール! 制限時間内に相手チームにいっぱい当てた方が勝ちや。ハルー、数えといて」
え~、と面倒臭がりながらもハルはプールが見渡せる位置に移動した。
「ドッジなら私歌見さんとのチームがいいです」
「歌見の兄さん的デカいで?」
「ドMと同じチームよりマシでしょう、プールで上手く投げられるとも思えませんし」
シュカはすいーっと歌見の隣に移動し、レイの同意なくチームは変更された。四人ともやる気は満々のようだ。
「……僕は秋風くんの部屋に戻るよ。彼の冒涜的な趣味には少し驚いたけれど、意外性も人には大切なものだからね。もっと彼をよく知りたい、話したいんだ」
冒涜的とか言われるとオタク心がソワソワする。燃える十字架のポスター等が冒涜的だという意味だと分かってはいるけれど、ついついコズミックなホラーを想像してしまう。
「じゃあ俺も……」
水中では勝手が違うのか相手チームの陣地、いや陣水? までボールを投げるのすら苦労している連中のドッジボールなんて見ていても面白くない。可愛いし萌えるしエロいけど。
「……! ぼく、も」
俺とネザメがアキの部屋に向かうとミフユとカンナが着いてきた。
《どこ触ってんだよバカっ! やめろってば! ひゃうっ! ぅ、内腿はマジでやばっ……!?》
セミダブルのベッドの上では、仰向けに寝たセイカにアキが覆い被さっており、ホムラが隅っこで縮こまっていた。
「な、鳴雷っ……違う、これは秋風が勝手に! こいつなんか力強くてっ! 俺抵抗はしてて!」
セイカが今履いているのは裾口の広い七分丈のズボンだ。その裾口に手を突っ込んだアキはセイカの左太腿を撫で回していたらしい。
「……イイっ、アキセイあり、ありよりのあり。最高……もっと見せて」
「はぁ!?」
「あれ、言ってなかったっけ、彼氏同士の絡み見るのも好きなんだよ俺。セイカが嫌じゃなければどんどん見せてくれ」
「俺何百回も嫌だって言った! ロシア語で! ちゃんと発音してる!」
そうだったのか、それならアキに注意しなくては。
「アキ……えっとな、セイカ……嫌がる、する……ダメだぞ。分かったか?」
「ダメです? にーに、しゅーか、ぼくする、いいです。のに、ぼく、せーかする、ダメです? どうするです?」
シュカとの絡みは喜んだくせにセイカと絡むのは何故ダメなんだと聞いているのかな?
「絡むのはいいんだよ、セイカが嫌がらなければな。セイカが嫌がってるならダメだ。ってアキに言ってくれないか?」
「言って止まるならもう止まってるだろ……」
なんて言いながらもセイカはアキにロシア語で何かを伝えた。会話のラリーがしばらく続くとセイカはキッと俺を睨んだ。
「コイツっ、本当は嫌がってないだろとか喜んでたくせにとか照れてるんだろとか言ってくる!」
指を差して、涙目で訴えて……まるで母親に兄弟のズルを知らせる幼児だ。
「おや、おや……アキくんはそんなことを言う子なのかい? ふふ、悪い子だね。ねぇ、狭雲くんは気乗りしないようだから僕にしないかい?」
「……で、実際セイカはどうなんだ? 本当に嫌ならアキ剥がすけど」
「………………ほむら、が……見てる、から」
ホムラはベッドの隅に腰を下ろしたまま硬直している。表情もピクリとも動いていない。兄の恋人の弟が兄に対して盛り始め、止めていいものか目を逸らすべきか迷った結果石化しているようだ。
《ほむらー……? なんだよスェカーチカ、弟と一緒に可愛がって欲しかったのか》
《……っ!? ち、違う! ほむらは関係ない!》
《俺だけを見て……ってか? イイねぇ唆るねぇ》
《それも違う! なんで伝わらねぇんだよっ、俺ロシア語話せてないのか?》
俺には分からない言葉で何やら揉めているようだ。俺がすべきことはまず、いたたまれない状況にある子を救うことだろう。
「ほむらくん、セイカの様子は俺達が見とくからさ、プール行きなよ。楽しいよ」
「……僕、学校のプール全部見学していて……泳げないんです」
「えっ……じゃあ尚更入っとかなきゃ。今はみんなボールで遊んでるけど、浅い隅っこの方ならボール飛んでこないと思うから、水に慣れる練習しときな」
控えめに頷いたホムラを連れてプールに向かい、あまりにもボールが当たらないため観戦に飽きてスマホを弄っているハルにコーチを頼んだ。
「いいけど~、水着どうすんの~? ま、裸でもいいけどね~」
「俺が海用に買った新しい水着あるからそれ履くか?」
彼氏達と海に行けたらいいな、もし行けたら砂浜をスク水で練り歩くのはな……と思いちょっと早めに購入した水着がある。至って普通の海パンだ。
「持ってきたよ。着替えは、えーっと……そこでしてくれ」
稼働していないサウナを更衣室にすることにした。ホムラはセイカとは違い過剰な遠慮はせず、素直に礼を言ってサウナへ向かった。あの部屋から追い出そうとしているのを察しているだけなのかもしれない。
「着替えました……あの、少し大きいみたいで」
「おっ……俺用、だからな。ウエストは紐で調整出来るから、大丈夫だよ。落ちては来ないだろ?」
ホムラの水着姿を見た俺は一瞬声が裏返った。興奮した訳じゃない、その傷跡の多さに驚いたのだ。アザは腕や背中に多く、これが母親が付けたものであるならば、人前で着替えさせるのを嫌ってプールを禁止したのだろうと推測出来る。
「じゃあ、ハル。コーチよろしく」
「あっ、うん! 初春さんにまっかせなさーい」
ハルも表情が硬くなってはいたが、すぐに明るい声を取り戻してくれた。アキの部屋へと戻る僅かな道中、俺は狭雲兄弟を救う決意を固めた。
「水月ぃ、ボールとかないん」
「ゴムボールがあるぞ、使うか?」
バレーボールよりも少しだけ大きなピンク色のゴムボールをプールの中のリュウへと投げる。
「このめん、歌見の兄さん、ボール遊びしましょうや。本屋対十二薔薇!」
「いいな、対って言うからにはただのキャッチボールじゃないんだろ?」
「ゴールとか決めて投げ合うんすか?」
「ドッジボール! 制限時間内に相手チームにいっぱい当てた方が勝ちや。ハルー、数えといて」
え~、と面倒臭がりながらもハルはプールが見渡せる位置に移動した。
「ドッジなら私歌見さんとのチームがいいです」
「歌見の兄さん的デカいで?」
「ドMと同じチームよりマシでしょう、プールで上手く投げられるとも思えませんし」
シュカはすいーっと歌見の隣に移動し、レイの同意なくチームは変更された。四人ともやる気は満々のようだ。
「……僕は秋風くんの部屋に戻るよ。彼の冒涜的な趣味には少し驚いたけれど、意外性も人には大切なものだからね。もっと彼をよく知りたい、話したいんだ」
冒涜的とか言われるとオタク心がソワソワする。燃える十字架のポスター等が冒涜的だという意味だと分かってはいるけれど、ついついコズミックなホラーを想像してしまう。
「じゃあ俺も……」
水中では勝手が違うのか相手チームの陣地、いや陣水? までボールを投げるのすら苦労している連中のドッジボールなんて見ていても面白くない。可愛いし萌えるしエロいけど。
「……! ぼく、も」
俺とネザメがアキの部屋に向かうとミフユとカンナが着いてきた。
《どこ触ってんだよバカっ! やめろってば! ひゃうっ! ぅ、内腿はマジでやばっ……!?》
セミダブルのベッドの上では、仰向けに寝たセイカにアキが覆い被さっており、ホムラが隅っこで縮こまっていた。
「な、鳴雷っ……違う、これは秋風が勝手に! こいつなんか力強くてっ! 俺抵抗はしてて!」
セイカが今履いているのは裾口の広い七分丈のズボンだ。その裾口に手を突っ込んだアキはセイカの左太腿を撫で回していたらしい。
「……イイっ、アキセイあり、ありよりのあり。最高……もっと見せて」
「はぁ!?」
「あれ、言ってなかったっけ、彼氏同士の絡み見るのも好きなんだよ俺。セイカが嫌じゃなければどんどん見せてくれ」
「俺何百回も嫌だって言った! ロシア語で! ちゃんと発音してる!」
そうだったのか、それならアキに注意しなくては。
「アキ……えっとな、セイカ……嫌がる、する……ダメだぞ。分かったか?」
「ダメです? にーに、しゅーか、ぼくする、いいです。のに、ぼく、せーかする、ダメです? どうするです?」
シュカとの絡みは喜んだくせにセイカと絡むのは何故ダメなんだと聞いているのかな?
「絡むのはいいんだよ、セイカが嫌がらなければな。セイカが嫌がってるならダメだ。ってアキに言ってくれないか?」
「言って止まるならもう止まってるだろ……」
なんて言いながらもセイカはアキにロシア語で何かを伝えた。会話のラリーがしばらく続くとセイカはキッと俺を睨んだ。
「コイツっ、本当は嫌がってないだろとか喜んでたくせにとか照れてるんだろとか言ってくる!」
指を差して、涙目で訴えて……まるで母親に兄弟のズルを知らせる幼児だ。
「おや、おや……アキくんはそんなことを言う子なのかい? ふふ、悪い子だね。ねぇ、狭雲くんは気乗りしないようだから僕にしないかい?」
「……で、実際セイカはどうなんだ? 本当に嫌ならアキ剥がすけど」
「………………ほむら、が……見てる、から」
ホムラはベッドの隅に腰を下ろしたまま硬直している。表情もピクリとも動いていない。兄の恋人の弟が兄に対して盛り始め、止めていいものか目を逸らすべきか迷った結果石化しているようだ。
《ほむらー……? なんだよスェカーチカ、弟と一緒に可愛がって欲しかったのか》
《……っ!? ち、違う! ほむらは関係ない!》
《俺だけを見て……ってか? イイねぇ唆るねぇ》
《それも違う! なんで伝わらねぇんだよっ、俺ロシア語話せてないのか?》
俺には分からない言葉で何やら揉めているようだ。俺がすべきことはまず、いたたまれない状況にある子を救うことだろう。
「ほむらくん、セイカの様子は俺達が見とくからさ、プール行きなよ。楽しいよ」
「……僕、学校のプール全部見学していて……泳げないんです」
「えっ……じゃあ尚更入っとかなきゃ。今はみんなボールで遊んでるけど、浅い隅っこの方ならボール飛んでこないと思うから、水に慣れる練習しときな」
控えめに頷いたホムラを連れてプールに向かい、あまりにもボールが当たらないため観戦に飽きてスマホを弄っているハルにコーチを頼んだ。
「いいけど~、水着どうすんの~? ま、裸でもいいけどね~」
「俺が海用に買った新しい水着あるからそれ履くか?」
彼氏達と海に行けたらいいな、もし行けたら砂浜をスク水で練り歩くのはな……と思いちょっと早めに購入した水着がある。至って普通の海パンだ。
「持ってきたよ。着替えは、えーっと……そこでしてくれ」
稼働していないサウナを更衣室にすることにした。ホムラはセイカとは違い過剰な遠慮はせず、素直に礼を言ってサウナへ向かった。あの部屋から追い出そうとしているのを察しているだけなのかもしれない。
「着替えました……あの、少し大きいみたいで」
「おっ……俺用、だからな。ウエストは紐で調整出来るから、大丈夫だよ。落ちては来ないだろ?」
ホムラの水着姿を見た俺は一瞬声が裏返った。興奮した訳じゃない、その傷跡の多さに驚いたのだ。アザは腕や背中に多く、これが母親が付けたものであるならば、人前で着替えさせるのを嫌ってプールを禁止したのだろうと推測出来る。
「じゃあ、ハル。コーチよろしく」
「あっ、うん! 初春さんにまっかせなさーい」
ハルも表情が硬くなってはいたが、すぐに明るい声を取り戻してくれた。アキの部屋へと戻る僅かな道中、俺は狭雲兄弟を救う決意を固めた。
0
お気に入りに追加
1,243
あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる