冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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嫌よ嫌よも好きのうち……?

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服の下に水着を着ているから今すぐシャツとズボンを脱ぎ捨ててプールに飛び込むことも可能だが、プールに入らない彼氏も居るのならどうするべきか迷う。

「水月ぃ、ボールとかないん」

「ゴムボールがあるぞ、使うか?」

バレーボールよりも少しだけ大きなピンク色のゴムボールをプールの中のリュウへと投げる。

「このめん、歌見の兄さん、ボール遊びしましょうや。本屋対十二薔薇!」

「いいな、対って言うからにはただのキャッチボールじゃないんだろ?」

「ゴールとか決めて投げ合うんすか?」

「ドッジボール! 制限時間内に相手チームにいっぱい当てた方が勝ちや。ハルー、数えといて」

え~、と面倒臭がりながらもハルはプールが見渡せる位置に移動した。

「ドッジなら私歌見さんとのチームがいいです」

「歌見の兄さん的デカいで?」

「ドMと同じチームよりマシでしょう、プールで上手く投げられるとも思えませんし」

シュカはすいーっと歌見の隣に移動し、レイの同意なくチームは変更された。四人ともやる気は満々のようだ。

「……僕は秋風くんの部屋に戻るよ。彼の冒涜的な趣味には少し驚いたけれど、意外性も人には大切なものだからね。もっと彼をよく知りたい、話したいんだ」

冒涜的とか言われるとオタク心がソワソワする。燃える十字架のポスター等が冒涜的だという意味だと分かってはいるけれど、ついついコズミックなホラーを想像してしまう。

「じゃあ俺も……」

水中では勝手が違うのか相手チームの陣地、いや陣水? までボールを投げるのすら苦労している連中のドッジボールなんて見ていても面白くない。可愛いし萌えるしエロいけど。

「……! ぼく、も」

俺とネザメがアキの部屋に向かうとミフユとカンナが着いてきた。

《どこ触ってんだよバカっ! やめろってば! ひゃうっ! ぅ、内腿はマジでやばっ……!?》

セミダブルのベッドの上では、仰向けに寝たセイカにアキが覆い被さっており、ホムラが隅っこで縮こまっていた。

「な、鳴雷っ……違う、これは秋風が勝手に! こいつなんか力強くてっ! 俺抵抗はしてて!」

セイカが今履いているのは裾口の広い七分丈のズボンだ。その裾口に手を突っ込んだアキはセイカの左太腿を撫で回していたらしい。

「……イイっ、アキセイあり、ありよりのあり。最高……もっと見せて」

「はぁ!?」

「あれ、言ってなかったっけ、彼氏同士の絡み見るのも好きなんだよ俺。セイカが嫌じゃなければどんどん見せてくれ」

「俺何百回も嫌だって言った! ロシア語で! ちゃんと発音してる!」

そうだったのか、それならアキに注意しなくては。

「アキ……えっとな、セイカ……嫌がる、する……ダメだぞ。分かったか?」

「ダメです? にーに、しゅーか、ぼくする、いいです。のに、ぼく、せーかする、ダメです? どうするです?」

シュカとの絡みは喜んだくせにセイカと絡むのは何故ダメなんだと聞いているのかな?

「絡むのはいいんだよ、セイカが嫌がらなければな。セイカが嫌がってるならダメだ。ってアキに言ってくれないか?」

「言って止まるならもう止まってるだろ……」

なんて言いながらもセイカはアキにロシア語で何かを伝えた。会話のラリーがしばらく続くとセイカはキッと俺を睨んだ。

「コイツっ、本当は嫌がってないだろとか喜んでたくせにとか照れてるんだろとか言ってくる!」

指を差して、涙目で訴えて……まるで母親に兄弟のズルを知らせる幼児だ。

「おや、おや……アキくんはそんなことを言う子なのかい? ふふ、悪い子だね。ねぇ、狭雲くんは気乗りしないようだから僕にしないかい?」

「……で、実際セイカはどうなんだ? 本当に嫌ならアキ剥がすけど」

「………………ほむら、が……見てる、から」

ホムラはベッドの隅に腰を下ろしたまま硬直している。表情もピクリとも動いていない。兄の恋人の弟が兄に対して盛り始め、止めていいものか目を逸らすべきか迷った結果石化しているようだ。

《ほむらー……? なんだよスェカーチカ、弟と一緒に可愛がって欲しかったのか》

《……っ!? ち、違う! ほむらは関係ない!》

《俺だけを見て……ってか? イイねぇ唆るねぇ》

《それも違う! なんで伝わらねぇんだよっ、俺ロシア語話せてないのか?》

俺には分からない言葉で何やら揉めているようだ。俺がすべきことはまず、いたたまれない状況にある子を救うことだろう。

「ほむらくん、セイカの様子は俺達が見とくからさ、プール行きなよ。楽しいよ」

「……僕、学校のプール全部見学していて……泳げないんです」

「えっ……じゃあ尚更入っとかなきゃ。今はみんなボールで遊んでるけど、浅い隅っこの方ならボール飛んでこないと思うから、水に慣れる練習しときな」

控えめに頷いたホムラを連れてプールに向かい、あまりにもボールが当たらないため観戦に飽きてスマホを弄っているハルにコーチを頼んだ。

「いいけど~、水着どうすんの~? ま、裸でもいいけどね~」

「俺が海用に買った新しい水着あるからそれ履くか?」

彼氏達と海に行けたらいいな、もし行けたら砂浜をスク水で練り歩くのはな……と思いちょっと早めに購入した水着がある。至って普通の海パンだ。

「持ってきたよ。着替えは、えーっと……そこでしてくれ」

稼働していないサウナを更衣室にすることにした。ホムラはセイカとは違い過剰な遠慮はせず、素直に礼を言ってサウナへ向かった。あの部屋から追い出そうとしているのを察しているだけなのかもしれない。

「着替えました……あの、少し大きいみたいで」

「おっ……俺用、だからな。ウエストは紐で調整出来るから、大丈夫だよ。落ちては来ないだろ?」

ホムラの水着姿を見た俺は一瞬声が裏返った。興奮した訳じゃない、その傷跡の多さに驚いたのだ。アザは腕や背中に多く、これが母親が付けたものであるならば、人前で着替えさせるのを嫌ってプールを禁止したのだろうと推測出来る。

「じゃあ、ハル。コーチよろしく」

「あっ、うん! 初春さんにまっかせなさーい」

ハルも表情が硬くなってはいたが、すぐに明るい声を取り戻してくれた。アキの部屋へと戻る僅かな道中、俺は狭雲兄弟を救う決意を固めた。
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