冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ギュンッ!

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ネザメの無茶振りという恐ろしい事故が発生してしまったが、結果的に雰囲気は明るくなった。俺が母を信じて相談する勇気を持てていたならば彼氏達に気を遣わせることもなかったのになと少し不甲斐なく感じる。

「……鳴雷、鳴雷」

彼氏達の喧騒をソファに座ったまま眺めていると、セイカに二の腕をつつかれた。

「ん? 何か食べるか?」

「違う……その、お前のお母さんのこと。俺のこと隠さなきゃいけないの……俺が、お前に、たくさん酷いことしたから……だよ、な」

「…………うん」

違うと嘘をついても意味はない、気にするなと誤魔化すのも不自然だ。

「鳴雷……ごめんなさい。ごめんなさい、俺、鳴雷のこと、鳴雷のことぉっ、めちゃくちゃ虐めて……なのになんでっ、なんで今、俺のこと大事にしてくれてんの?」

「…………なんでだろうな」

好きだからだよ、なんて言って甘い雰囲気を作ればよかった。

「自業自得、だよな……助けてもらえないの。ごめんなさい……困らせて。でも、俺だけならもう捨てていいって言えるけど……でも、ほむらも居るから……ほむらが、助けて欲しがってるから…………鳴雷、お願い……」

「…………助けるよ。絶対に」

「ぁ……ありがとう、ありがと、ほむらだけは絶対に……」

ホムラの方はある程度の尊敬の念はありそうだったが、セイカはホムラを嫌っていると思っていた。なのにこんな健気な兄弟愛を見せられたら、覚悟を決めるしか……いや、とりあえず一旦、歌見の知り合いの知り合いの弁護士とやらに相談してから母に話すかどうか決めようかな……

「……鳴雷」

「ん?」

「ほむらだけなら……何とかなる?」

「セイカ……俺はセイカのことを助けたいんだよ」

「…………聞いてるだけ」

「……分かんないよ」

家庭環境を変えさせればセイカも助かるし、施設や親戚の家に……なんて展開になってもセイカだけがあの家に残されるのは不自然だろう。俺が母にホムラだけを助けてくれと頼んでもセイカも助かる結果になるだろう。

「まぁ、でもそっか……母さんに頼むんならほむらくんが彼氏って嘘ついてたら楽かも。でも……それじゃセイカと一緒に居られないよ。他所の家の子供二人も引き取るなんておかしいし無茶だし……いやそもそも片っぽだけでも無理かも…………どうするにしろ、一緒には……暮らせないかもなぁ」

「…………そっか」

「……で、でもっ、どこか親戚の家とか、何か施設とかに行くことになったとしても、俺が高校卒業して一人暮らし始められたら絶対迎えに行くから」

「うん……」

セイカの表情は暗い。三年弱待たなければいけないかもしれないと言われたのだから、それも当然の反応だ。

「…………お肉持ってこようか?」

「……牛の、薄いの」

「分かった。待っててくれ」

重苦しい空気に耐えられず、席を立った。背後でセイカが泣き出したのに気付いたけれど、戻れなかった。鉄板の上で焼けていく肉を見つめながら、押し殺した泣き声を聞いていた。



シュカさえも満腹になった美味しい楽しい焼肉の時間が終わりを迎えた。俺はセイカとその未来のことばかり考えてあまり楽しめなかったけれど、それを表に出さないように頑張った。

「片付け手伝ってくれてありがとうございます」

「当然だ。むしろ立候補する気概も見せなかった奴らの気が知れんな」

「はは……厳しいですね。ほむらくんもありがとうな」

「食事分の働きはします。何でも仰ってください」

鉄板や皿、箸を洗う俺とミフユの背後でホムラは洗い終えた皿を拭き、戸棚に入れてくれている。
俺が片付けを始めてすぐミフユが隣に立ち、それを見てホムラがやってきた。水音を聞いてカンナと歌見がやってきたが、もう定員オーバーだと断った。キッチンに立つのは三人が限度だというのもあったが、今日が誕生日の歌見に水仕事をさせたくなかったというのが大きい。

「……狭雲のことだが」

「…………はい」

「紅葉家の名が使えるかもしれん。状況報告は怠るな」

「……! ありがとうございます!」

そうだ、ネザメは大富豪の御曹司。金持ちに不可能はない。一般市民の感覚としては、だが。
また微かな希望が増えて内心ニヤニヤ笑っていると、ネザメがキッチンを覗きに来た。

「ミフユ、水月くん、ほむらくん、まだかい? お土産を配りたいから早く戻ってきておくれ」

「ネザメ様が使った物も洗っているのですよ」

「そうかい、じゃあ早く洗って戻ってきておくれ」

「……っ、そのような物言い紅葉家の次期当主として相応しくありません! 上に立つ者は下で働く者への感謝、敬意、労いを失念してはいけません! それらと正当な報酬があって始めて人は喜びを持ち働くのです!」

「…………おつかれさまー?」

ミステリアスな第一印象に似合わない、首を傾げながらの間延びした労りの言葉に胸きゅん、いや、胸ギュンッ!

「ぅぐっ、心臓が……ミフユさん、今ので俺への報酬は支払われました」

「ネザメ様を甘やかすな鳴雷一年生! 貴様にも後で説教だ!」

にも、ということはネザメへの説教はもう確定していたんだな。出会った当初、ミフユはネザメに絶対服従なのだと思っていたが……最近は従者と言うよりも教育係なのではと思い始めている。



洗い物を終えてダイニングへ戻る。ホムラはまだコップを拭いてくれている、ミフユは沖縄土産を机へと運んでいる。ほんの少しの隙間時間を使って俺はセイカの肩を抱き、頬にキスをした。

「…………鳴雷」

「んー?」

髪を撫でてやると質の悪い髪の毛が指に引っ掛かった。

「……この後、二人になれる時間ある? 一時間……いや、三十分くらい」

「んー、まぁ作れないこともないけど、なんで? みんなの前だからって恥ずかしがらずに俺の膝に座っていいんだぞ」

「…………俺を、抱いて欲しい。お前の彼氏の前ならまぁお前らはそういうもんだからいいんだけど、ほむらの前では流石に……ちょっと」

「気持ちは嬉しいけどさ、セイカ……まだ身体の調子悪いだろ? 何日かはダメだよ」

「だって……明日にも、俺達……離れ離れになるかも、だから……だからっ、だから俺、鳴雷の……その…………欲しく、て」

自らの下腹をぐっと押し込むように撫でる仕草に胸がきゅんと、いや、正直に言おう、その仕草が股間にギュンッ! ときた。

「…………ありがとう。でもダメだ、セイカの身体が一番大切だからな。キスだけにしとこう」

「話しただけで勃ったくせにっ……んっ、ん、んん……!」

強引に唇を重ねて腹の代わりに口腔を舌で犯してやった。ネザメとミフユが土産を配る準備を終えたようなので口を離すと、セイカはとろんとした表情ですっかり静かになっていた。

(はゔっ……! かわゆい。ぶち犯してぇでそ。静まるのでそ愚息!)

目を閉じて萎えそうなことを思い出そうとしていると、誰かにくいっと袖を引っ張られた。目を開けてみれば頬を赤くしたカンナが立っている。

「みーく……ぼく、も……して、ほし……」

(三度目のギュンッ!)

どうしたんだと尋ねる前にキスをねだられ、俺は陰茎を萎えさせることを諦めた。
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