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テストよりも難しい問題
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退院するセイカを迎えられず、気持ちは落ち込んでいるがハルと約束があるので一人でファミレスへ向かった。
「あ、みっつ~ん! こっちこっちぃ~、遅かったね~」
テーブル席から美少女が手を振っている……っと、アレはハルだ。美少年だったな。
「あれ、せーかは?」
「あー……今日は来れないって。ごめん」
「え~、せーかに教えてもらおうと思ってたのに~……」
「英語赤点確定やわ」
「お前赤点二十点なんだからもっと頑張れよ」
リュウはケーキセット、ハルはパフェ、カンナはチーズ入りハンバーグを食べている。一番大人しそうなカンナがガッツリしたものを注文しているの、なんかイイな。
「はぁ……お腹減った。パスタ頼もうかな」
「あ、ついでにプリンアラモード頼んでぇや水月」
「はいはい」
ベルを鳴らしてパスタとリュウのデザートを注文し、それを待つ間俺は教科書を開いた。
「ねーねーみっつん、せーか明日は来れる~? 勉強教えて欲しー」
「あ……それがさ、セイカ今日退院しちゃって」
「マジ? 超おめでたいじゃ~ん!」
「……の割に水月顔暗いやん」
「ホントだ、どったのみっつん」
顔が暗い? しまった。クソ、最近表情の制御が上手くいっていない。こんなことではダメだ、ハーレム主としてしっかり誤魔化し──待てよ? 俺個人の悩みや落ち込みならともかく、ハーレム員についてのトラブルは共有しておくべきではないか?
「……居場所が分からないんだ」
「はぁ……? なんで?」
「病院で会ったから家の場所知らないし、セイカはスマホ持ってないから連絡も出来なくて……病院は個人情報漏らしてくれないから住所も家の電話番号も分かんなくてさ。お手上げなんだよ」
こんなことなら事前にセイカから住所を聞いておけばよかった。彼氏達がスマホで連絡が取れる者ばかりだからか、そんな習慣なかったんだ。
「え~……何それ、マジ? そんなことある? えぇ……」
「ほなもうせーか会われへんのか?」
「……しばらく毎週土曜に通院しなきゃいけないらしいから、その時に病院行けば会えると思う。だから今週の土曜は病院に張ろうと思ってて」
「ほな打ち上げは日曜か」
「ナナさんのバイト的に打ち上げは元々日曜じゃない?」
「ほーか。土曜遊ばれへんのは残念やけど、しゃーないな。今度こそしっかり家の場所聞いてきぃや」
当然のようにテストの打ち上げの話をする彼らはセイカの家庭事情なんて知らない。だから気楽に土曜日を待つ選択が出来る。俺も見習わなくてはいけない。
(……大丈夫でそ。そんな毎日殴られ蹴られって感じの虐待受けてる訳じゃなさそうでしたし、殺されちゃったりなんて絶対ありえませんぞ、セイカ様のお母様そこまで馬鹿じゃないでしょう。酷いこと言われて嫌な思いしてるかもしれませんが、土曜日までくらい保ってくれますよな。自殺しちゃったりなんてしませんよな?)
あぁ、ダメだ、見習えない。根がド陰キャのキモオタだからなのか? 俺はポジティブには生きられないのか?
「あ、そーそー。日曜日! ナナさんの誕生日でもあるってちゃんと覚えてる~?」
「忘れとった」
「七夕で~、テストの打ち上げの日で~、ナナさんの誕生日! イベント盛りだくさん! 二人ともプレゼントちゃんと買いなよ~? 俺はもう買った!」
そういえば歌見の誕生日は七夕だったな。テスト最終日の金曜日にでもプレゼントを考えよう。土曜日にセイカと再会して、日曜日はパーティ、その前に立ちはだかるはテスト十五教科(残り十二教科)。頑張らなければ。
母にも相談して日曜日のバースデーパーティは俺の自宅で行うことになった。歌見の誕生日を祝うのが主目的であることは歌見には伏せ、テストの打ち上げパーティだとグループチャットで予定を共有した。水着持参と付け加えると彼氏達はみんな「?」を送ってきていたが、俺はそれをあえて無視した。
全てのテストを終え、疲労困憊の金曜日。歌見のプレゼント探しのために店を回る気力がなかったので、ラッピング用紙だけを学校帰りに買い、歌見が好きそうな同人誌を五冊ほど見繕って包んだ。
「……下手なもん送るよりこれの方が喜びますよな。全部絶版ですし」
俺としてもこの本を手放すのは断腸の思いだが、読み返したくなったら歌見の家に行けばいい。プレゼントにも今後の口実にもなって一石二鳥じゃないか。
土曜日の朝、俺は朝食を食べてすぐに病院へ出かけた。看護師に聞いた予定では午後一時頃だそうだが、間に合わなかったなんて展開を二度もやるのはごめんだ。
(コンビニで漫画買ってきましたし、スマホもフル充電。ポータブルゲーム機も持ってますし、何時間でも待てますぞ!)
まぁ、待つとしても三時間程度かな……なんて考えていた俺の考えは甘かった。
「あの、セイカ来てませんよね……?」
四時間待って、午後二時。もしかして見逃したのではと例の腐女子看護師に尋ねてみたが、やはりセイカはまだ来ていないようま。
「時間を過ぎていますから、連絡もしたんですが……電話に出ないんですよ」
ロビーに戻り、それから更に一時間待った。ゲームをする気も漫画を読む気も失せた俺は、スマホで地域ニュースを調べていた。男子高校生虐待死とか、男子高校生自殺とか、そんなニュースを探してしまっていた。
「…………今日も平和ですな」
隅から隅まで探したが、この辺りで高校生が死んだり事故に遭ったりというニュースはなかった。
午後六時、母から「晩飯がいらないなら事前に連絡をしろ」とお叱りの電話があった。
午後七時、看護師が「今日は来ないみたいですね。たまに無断キャンセルする人居るんですよ」なんてボヤいていた。
午後八時、病院から追い出された。病院前のバス停に座って待つことにした。
午後九時、母から「どこかに泊まるのなら先に言っておけ」と心配半分の電話があった。
午後十時、パトロール中の警察に話しかけられた。
午後十一時、パトカーに乗せられて帰ってきたことを母に叱られた。
午後十二時、部屋を暗くして布団に入っているが眠れない。
午前一時、地域ニュースを確認した。高校生が巻き込まれた事件、事故はない。
午前二時、再び地域ニュースを確認した。
午前三時、再び地域ニュースを確認した。
午前四時……
午前五時……
午前六時、起きた。いつの間にか眠ってしまっていたようだ。地域ニュースを確認した。
午前七時、朝食の匂いがしてきた。
「あ、みっつ~ん! こっちこっちぃ~、遅かったね~」
テーブル席から美少女が手を振っている……っと、アレはハルだ。美少年だったな。
「あれ、せーかは?」
「あー……今日は来れないって。ごめん」
「え~、せーかに教えてもらおうと思ってたのに~……」
「英語赤点確定やわ」
「お前赤点二十点なんだからもっと頑張れよ」
リュウはケーキセット、ハルはパフェ、カンナはチーズ入りハンバーグを食べている。一番大人しそうなカンナがガッツリしたものを注文しているの、なんかイイな。
「はぁ……お腹減った。パスタ頼もうかな」
「あ、ついでにプリンアラモード頼んでぇや水月」
「はいはい」
ベルを鳴らしてパスタとリュウのデザートを注文し、それを待つ間俺は教科書を開いた。
「ねーねーみっつん、せーか明日は来れる~? 勉強教えて欲しー」
「あ……それがさ、セイカ今日退院しちゃって」
「マジ? 超おめでたいじゃ~ん!」
「……の割に水月顔暗いやん」
「ホントだ、どったのみっつん」
顔が暗い? しまった。クソ、最近表情の制御が上手くいっていない。こんなことではダメだ、ハーレム主としてしっかり誤魔化し──待てよ? 俺個人の悩みや落ち込みならともかく、ハーレム員についてのトラブルは共有しておくべきではないか?
「……居場所が分からないんだ」
「はぁ……? なんで?」
「病院で会ったから家の場所知らないし、セイカはスマホ持ってないから連絡も出来なくて……病院は個人情報漏らしてくれないから住所も家の電話番号も分かんなくてさ。お手上げなんだよ」
こんなことなら事前にセイカから住所を聞いておけばよかった。彼氏達がスマホで連絡が取れる者ばかりだからか、そんな習慣なかったんだ。
「え~……何それ、マジ? そんなことある? えぇ……」
「ほなもうせーか会われへんのか?」
「……しばらく毎週土曜に通院しなきゃいけないらしいから、その時に病院行けば会えると思う。だから今週の土曜は病院に張ろうと思ってて」
「ほな打ち上げは日曜か」
「ナナさんのバイト的に打ち上げは元々日曜じゃない?」
「ほーか。土曜遊ばれへんのは残念やけど、しゃーないな。今度こそしっかり家の場所聞いてきぃや」
当然のようにテストの打ち上げの話をする彼らはセイカの家庭事情なんて知らない。だから気楽に土曜日を待つ選択が出来る。俺も見習わなくてはいけない。
(……大丈夫でそ。そんな毎日殴られ蹴られって感じの虐待受けてる訳じゃなさそうでしたし、殺されちゃったりなんて絶対ありえませんぞ、セイカ様のお母様そこまで馬鹿じゃないでしょう。酷いこと言われて嫌な思いしてるかもしれませんが、土曜日までくらい保ってくれますよな。自殺しちゃったりなんてしませんよな?)
あぁ、ダメだ、見習えない。根がド陰キャのキモオタだからなのか? 俺はポジティブには生きられないのか?
「あ、そーそー。日曜日! ナナさんの誕生日でもあるってちゃんと覚えてる~?」
「忘れとった」
「七夕で~、テストの打ち上げの日で~、ナナさんの誕生日! イベント盛りだくさん! 二人ともプレゼントちゃんと買いなよ~? 俺はもう買った!」
そういえば歌見の誕生日は七夕だったな。テスト最終日の金曜日にでもプレゼントを考えよう。土曜日にセイカと再会して、日曜日はパーティ、その前に立ちはだかるはテスト十五教科(残り十二教科)。頑張らなければ。
母にも相談して日曜日のバースデーパーティは俺の自宅で行うことになった。歌見の誕生日を祝うのが主目的であることは歌見には伏せ、テストの打ち上げパーティだとグループチャットで予定を共有した。水着持参と付け加えると彼氏達はみんな「?」を送ってきていたが、俺はそれをあえて無視した。
全てのテストを終え、疲労困憊の金曜日。歌見のプレゼント探しのために店を回る気力がなかったので、ラッピング用紙だけを学校帰りに買い、歌見が好きそうな同人誌を五冊ほど見繕って包んだ。
「……下手なもん送るよりこれの方が喜びますよな。全部絶版ですし」
俺としてもこの本を手放すのは断腸の思いだが、読み返したくなったら歌見の家に行けばいい。プレゼントにも今後の口実にもなって一石二鳥じゃないか。
土曜日の朝、俺は朝食を食べてすぐに病院へ出かけた。看護師に聞いた予定では午後一時頃だそうだが、間に合わなかったなんて展開を二度もやるのはごめんだ。
(コンビニで漫画買ってきましたし、スマホもフル充電。ポータブルゲーム機も持ってますし、何時間でも待てますぞ!)
まぁ、待つとしても三時間程度かな……なんて考えていた俺の考えは甘かった。
「あの、セイカ来てませんよね……?」
四時間待って、午後二時。もしかして見逃したのではと例の腐女子看護師に尋ねてみたが、やはりセイカはまだ来ていないようま。
「時間を過ぎていますから、連絡もしたんですが……電話に出ないんですよ」
ロビーに戻り、それから更に一時間待った。ゲームをする気も漫画を読む気も失せた俺は、スマホで地域ニュースを調べていた。男子高校生虐待死とか、男子高校生自殺とか、そんなニュースを探してしまっていた。
「…………今日も平和ですな」
隅から隅まで探したが、この辺りで高校生が死んだり事故に遭ったりというニュースはなかった。
午後六時、母から「晩飯がいらないなら事前に連絡をしろ」とお叱りの電話があった。
午後七時、看護師が「今日は来ないみたいですね。たまに無断キャンセルする人居るんですよ」なんてボヤいていた。
午後八時、病院から追い出された。病院前のバス停に座って待つことにした。
午後九時、母から「どこかに泊まるのなら先に言っておけ」と心配半分の電話があった。
午後十時、パトロール中の警察に話しかけられた。
午後十一時、パトカーに乗せられて帰ってきたことを母に叱られた。
午後十二時、部屋を暗くして布団に入っているが眠れない。
午前一時、地域ニュースを確認した。高校生が巻き込まれた事件、事故はない。
午前二時、再び地域ニュースを確認した。
午前三時、再び地域ニュースを確認した。
午前四時……
午前五時……
午前六時、起きた。いつの間にか眠ってしまっていたようだ。地域ニュースを確認した。
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