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恋人の服を着たくま

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病院に来る前に反社会的な雰囲気のある男達に車に連れ込まれかけたことを面白おかしく話してやろうと考えながらセイカの待つ病室に入ると、甘い声が聞こえてきた。

「んっ、ん、ぅ、んんっ、んんんっ……!」

セイカの声だ。俺は足音と息を殺し、静かに扉を閉めてベッドへと近付いていった。

(……ふぉおおお!)

ベッドの上に仰向けになったセイカはテディベアを強く抱き締めており、上半身をほとんど隠していた。昨日渡したばかりのズボンと下着が中途半端に脱げており、腰がカクカクと情けなく揺れている。

(まさかセイカ様のオナニーシーンが見られるとは。ふほほっ、襲われかけて下がっていたテンションが最高潮ですぞ)

右膝を立て腰を揺らしているこの仕草、ほぼ間違いなく俺が以前渡した前立腺マッサージ器具を使っている。残念ながら後孔の様子はよく見えないけれど、それ以外にセイカが使う物なんて思い付かない。

「セーイカっ」

名前を呼ぶと大きく身体が跳ねた後、テディベアがゆっくりとズレてセイカと目が合った。

「な、鳴雷っ? ゃ、見ないっ、んんっ! ま、待ってぇっ……今、抜くぅっ……!」

俺は自身の後孔へと向かうセイカの左手を掴み、テディベアを完全にどかしてセイカの顔を見た。自慰の真っ最中だからか、俺に自慰を見られた恥ずかしさからか、はたまたその両方なのか、セイカの顔は真っ赤だ。

「いいよ、続けて。まだイってないだろ? 手伝うよ」

「は……!? て、手伝う!? 何言って……おっ、おい、やめっ、ぁ、ぁあぁああっ!」

靴を脱いでベッドに乗り、セイカの右膝と左太股を掴んで足を開かせ、先走りの汁にまみれた陰茎を口に含んだ。咥えてしまえば大丈夫だと足を押さえる手を離し、後孔を探ると予想通り前立腺マッサージ器具が挿入されていた。

「今前されたらっ、ぁ、あぁっ! んんっ、ゃ、ぁああっ! あぁあっ!? 後ろ触るのぉっ……やめっ、ゃ、ぁあんっ! きもちぃっ、ひっ、腰溶けるぅっ!」

前立腺マッサージ器具を満足に締め付けられないほどセイカの後孔は緩い。マッサージ器具に添えた指にさほど力を入れなくてもぐちゅぐちゅと水音が鳴るくらいにマッサージ器具を揺らせる。

「あっ、ぁ、ああっ! なるっ、かみぃっ……! だめっ、出る、出るからぁっ!」

セイカの腸壁の震えが指に伝わってくる。

「いいよ、出して」

一瞬だけ口を離してそう伝え、跳ねた腰を片腕で抱いて陰茎を強く吸うと口内に精液がどぷっと溢れた。

「ん……」

今朝のレイを思い出しつつ中に残った精液をしっかり吸い出してから口を離し、まずは咀嚼せずに口内で舌を揺らして味わった。

「ぁ……ご、ごめんっ、えっと、洗面所は……」

「……ん、大丈夫。美味しかったよ」

もちろん咀嚼もしてから飲み込んでそう言うとセイカは分かりやすいドン引きの顔を見せてくれた。これはこれで可愛い。

「このままキスは嫌かな、じゃあ名残惜しいけどうがいしてくるよ」

「あ、あぁ、うん……頼む」

うがいを終えて戻った頃にはセイカは前立腺マッサージ器具を抜いて下着とズボンを履き直していた。

「ただいま」

「おかえり……? えっと、鳴雷……その」

「あぁ、勉強会のお迎えに来たよ。申請書出してくれたよな?」

「うん……いや、そうじゃなくて……今の…………忘れて欲しい」

「オナニーしてたことか? 嫌だよ、脳内メモリに永久保存決定済みだ」

セイカはむすっと拗ねた顔になる。そんな彼の隣のテディベアは俺のシャツを着せられている、ここに来た直後見たセイカの自慰の姿を思い返してみると、更に可愛い事実に気が付いた。

「なぁセイカ、もしかしてさ、俺の服の匂いオカズにしてた?」

頬を薄紅色に染めて俯くセイカの頬を撫で、普段とは違う落ち着いた声色で「教えて」と言ってみた。

「…………鳴雷の匂い……最初は安心して、でも本物じゃないって泣けてきて……それでも匂い嗅いでたら鳴雷がぎゅってしてくれたこと思い出せて、また安心して、眠くなって……寝て、起きてまた嗅いでたら…………腹の奥、きゅうって……変な感じ、して……尻、むず痒い感じで、触ったら気持ちよくて…………それ、で」

「…………ふふ、そっかぁ。俺の服一つでそんなに色々感じてくれるんだなぁ。嬉しいよ、可愛い、好き」

素直に教えてくれたセイカを抱き締めて愛の言葉を囁くと彼は眉を緩めて目を閉じ、俺に少しもたれてくれた。

「よし、そろそろ行こうか」

「……車椅子、持ってきてもらってる」

「うん、気付いてるよ。立てるか?」

抱き上げて運んだ方が手っ取り早いだろうが、何でもかんでもやってしまってはセイカが更に自信を失くしそうだし、リハビリも進まない。

(あっ、転けそうっ……ぉ、大丈夫ですな。あぁ心配でそ、ハラハラしまそぉぉ……!)

ベッドの柵を左手で強く掴み、右足を下ろし、立ち上がる。まだバランス感覚が掴めていないらしく、ぐらぐらしている。

「……義足、一応用意してもらったから付けてくれないか?」

「あ、うん、どうやってつけるんだ?」

「靴履くみたいな感じ……」

ベッドの脇に立て掛けられていた義足には太腿を入れるためのソケットらしき部位があり、そこ以外は鉄の棒っぽく、足にしては細過ぎる。

(本当に足の代わりするだけの義足ですな。見た目寄せたりしてない、走るのも向いてない普通の……)

膝の代理をするだろう部位の造りが気になる。足首とその下も気になる。じっくりと観察して触って好奇心を満たしたかったが、我慢してセイカに義足を取り付けた。

(感覚的には長靴が近いですな、すっぽりハマりまそ)

セイカの足は太腿の真ん中辺りから切断されている。細い太腿に興奮しながら左太腿をソケットに収めさせ、そのフィット感に感嘆する。

「おぉ……! ピッタリだな」

「……型取ったからな」

「へぇー、ぁ、どうだ? 歩けるか?」

「まぁ……」

セイカは義足を使って三歩ほど歩いた。

「……まだあんまり慣れてないし、長い間歩くと色々痛くなるけど、歩ける」

「なるほどな。あ、そうそう、立ってくれたからよく分かるんだけどな、その服似合ってるよ」

俺が昨日セイカに貸し与えた服はセイカにはかなり大きくて、俺が着れば鎖骨が見えない半袖シャツなのにセイカは鎖骨がしっかり見えている。肩の縫い目も二の腕まで落ちていて、裾が尻の下に来ているからまるで女性物のような丈に見える。

「……ぶかぶかだろ」

「それが可愛いんじゃないか!」

「あぁ……昨日話してたから知ってる、変な趣味」

「セイカは俺に着て欲しい服とかないのか? スーツとか着物とか、なんかセクシーなヤツでもいいぞ。叶えられるかは分かんないけど言うだけ言ってみてくれ」

セイカはじっと俺を見つめて数秒考えた後「いつも通りの服がいい」と小さな声で言った。

「……正装は、やだ。鳴雷が……どこか行っちゃいそうで怖い。だから……ずっと傍に居てくれる、土曜日みたいな普通の服がいい」

「セイカぁ……あぁもうキュン死しちゃうよ! ぜーったい離さないからな、一生一緒だぞセイカぁ!」

「…………」

熱い抱擁を交わした後、車椅子に座ってもらい、病室を出た。初めてのセイカとの外出に俺の心は躍っていた。
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