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自分よりも大きな男

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俺をソファに押し倒した歌見は俺の服を脱がし、自分も服を脱いだ。

(……ソファの上、パンツ一丁で向かい合う男達。うーむシュールな光景。どうするおつもりですかなパイセン、しばらくはお任せ致しますぞ)

歌見の動向を見守ろうと決め、オロオロとしている彼をウフフと眺めていると大きな手が突然顔に触れた。

「み、水月……」

俺よりも三センチほど背が高いだけだ、手の大きさも比べてみればほとんど変わらないどころか指の長さだけなら俺が勝っている。しかし筋肉質なせいか歌見の方がかなり大柄に感じてしまう、今は俺が座っていて歌見が中腰というのもあるだろう。

(なんでしょう、この胸のざわめき……キュン系の良い感情じゃない。恐怖……とか?)

自分よりも力の強い男に優位を渡すことにより本能的な怯えが生まれていたことに遅れて気付いた。歌見は俺の怯えを察することなく俺の顔や首を撫でている。

「えっと……この後は……」

多分、俺の愛撫を真似ている。俺はどの彼氏に対してもまず頬に触れ、それから首や肩へと降りていきながら同時にもう片方の手で脇腹や腰を撫でる──という愛撫を行うことが多い、それが俺の癖なのだろう。

(えぇぇ……わたくしの彼氏達、ずっとこれに耐えてたんですか? なんか申し訳ないですな)

歌見以外の彼氏達は全員俺より背が低く、シュカとアキ以外は俺に力で勝つことは出来ない。そんな俺に迫られてハル以外は怯えを全く見せないなんて……なんて健気な子達だろう、今後はいっそう優しく可愛がってやらなければ。

「クソ……顔がいい、思考を乱すなちくしょうこの顔面強者が」

「意味分かんないこと言わないで欲しいですな」

俺の顔を見ないようにするためなのか、歌見は俺の首筋に唇を触れさせた。背や後頭部を撫で回されながら首を吸われるのはなかなか心地いい。

(…………あ、なんか怖くなくなってきましたな)

自分よりも力の強い男に優位を渡したことによる恐怖が安心に変わってきた。

(大型犬と初めて会った時に似てますな)

幼い頃、母の彼女の一人が大型犬を家に連れてきたことがあった。その犬は人懐っこかったが、はしゃいで暴れ回る大きな犬は当時園児だった俺には恐ろしくて仕方なかった。けれど疲れたのか場に慣れたのか犬が大人しくなって静かに寄り添ってくれると、毛並みと体温にほだされて犬を枕に眠った。その思い出が今、脳裏に浮かんだ。

(別にパイセンあの時の犬ほどわたくしとサイズ差がある訳でもはしゃいでる訳でもないのですが)

カンナが俺の背に隠れたり、ハルが俺の腕を抱き締めたり、シュカが俺の傍でだけは眠ってくれるのは、彼らに俺が安心感を与えられているということなのだろうか。だったら嬉しい。

「……パイセン」

「な、なんだ、下手くそなのは分かってるからわざわざ言わなくていいぞ」

顔を上げた歌見はふてくされたような顔をしていた。

「わたくし彼氏側にこんなに好きなように触らせたことはありませんので、なーんか新鮮で変な感じしつつも結構心地いいのですよ。それを伝えたくなっただけでそ」

「……そう、か」

歌見はホッと安心したような顔になり、俺の顔を両手で包み込むようにして唇を重ねてきた。俺は歌見の首に両腕を回し、舌を伸ばした。

「んっ……」

他人の口の中を味わうのにも随分慣れた。上顎を軽く舐めた後はあまり動かさず、歌見に主導権を渡した。

「ん、ん……んんっ」

喘ぎながら俺の舌をぐにぐにと押す歌見の舌は俺よりも少し分厚く、短い。不器用な舌での愛撫は可愛らしく、心地いい。

「……っ、ん」

舌では上手く出来ないと悟ったのか歌見は俺の舌をぢゅうぢゅうと吸った。流石にこれには快感を覚え、自然と呼吸が乱れて声が漏れた。

「はぁっ……」

息が切れるまで俺の舌を吸い、口を離した歌見はぼんやりとした目で俺を見つめる。

「……キス、本当はもう少し上手いんだからな。緊張して上手く出来てないだけだからな、前はもっと上手くやれてたんだ」

「女の子とは勝手が違いますかな?」

「そっ、そういう意味じゃない! そりゃ違うが、口はそんな変わらないし……俺は、今は水月だけが……」

俯いたってアッシュグレーの短髪では顔を隠せず、歌見は赤らんだ顔を誤魔化すようにわざとらしい大きな動きで俺の隣に腰を下ろした。

「降参! 降参だ、水月……もう何をやればいいか全く分からん。主導権を返させてくれ」

「おやおやパイセン……ふほほっ、そんな正直に言わなくたって、かるーく手コキでもしてお茶を濁せばよろしいのに」

「あっ、ぁー……クソ、思い付かなかった。なんでだちくしょう、前は水月に、ほら、その、見せつけたり……したのにな」

中間テストの結果が振るわなかった罰として自慰を見せつけ俺を悶々とさせた時のことを言っているのか?

「手コキすら思い付けないとか重症では?」

「心に重傷を負ったよ……」

「ではわたくしがパイセンのハートを癒して差し上げまっする!」

立ち上がり、ソファの裏に回って歌見の胸を背後から鷲掴みにする。歌見が俺を撫で回している間ずっとこのはち切れんばかりの胸筋と埋まった乳首が気になっていたのだ。

「わ、わざわざ後ろに回ってお前っ……」

「パイセンのハートはこの辺ですかな~?」

むにむにもみもみ、鍛え上げられた胸筋を揉みしだく。

「んっ……」

「先程レイどのとアキきゅんを寝かしつけた際、パイセンに使って差し上げようと寝室から玩具をいくつか持って参りました。以前使った吸引器もありまそ」

「……水月の手がいい」

「光栄ですなぁ」

乳首を避けて胸をぎゅっぎゅっと強く揉みながら耳に唇を寄せる。ビクッと震えた歌見の耳の端をかぷりと甘噛みしてやると、歌見は甲高い声を上げた。

「ひぁんっ!?」

「……パイセン、マジにガチの全身モロ感ですよな。可愛いでそ~……どぅふふふ」

「み、耳元で笑うっ、にゃ、ぁあっ!? ぁ、ひっ……耳っ、耳ぃ、やっ、ぁ、あぁあっ……!」

耳を半分ほど口に含んで唾液をたっぷり絡めた舌で舐め回すと、歌見は次第に溶け始める。埋まったままだが乳首もかなり硬くなってきた、しかし絶頂は彼がおねだりするまでお預けだ。たっぷり虐めてやろう。
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