477 / 1,986
あなたのためのアクセサリー
しおりを挟む
休日で開店セール中、当然人は多い。二人で横に並んで店を歩き回るのは邪魔になるだろう、しかしいつの間にか俺と腕を組んでいるハルに「縦に並ぼう」と言うのは心苦しい。
「みっつんみっつん、あっち見に行こ」
しかし、そんな悩みは杞憂だったようで客達はササッと商品棚の隙間に入って俺達に道を譲ってくれた。そういえば母が言っていたな、視線は集めるけれど人には避けられる、度が過ぎる美形とはそういうものだ……って。
(聞いた時は「またママ上がなんか言ってる」とか思って聞き流してましたが、マジなんですな)
電車内はともかく、混雑する駅構内でも歩きやすさを感じるのはそういう訳か。
「……みっつんめっちゃ見られてるね」
アクセサリーショップというだけあって女性客が多い、男性は居ても俺のような恋人の付き添いらしき方ばかりだ。
「可愛い恋人連れてるからかな?」
「みっつんの顔のせいでしょ! 分かってるくせに。ま、優越感あっていいけどね~」
「ふふ……それで、どんなのが欲しいんだ? えっと、部位って言えばいいのかな」
「あはっ、部位って……も~、モンスター狩ってるんじゃないんだからぁ~」
ハルは姉の影響で案外と漫画やゲームにも造詣が深い。俺の専門は恋愛ゲームなので、例のモンスターを狩るゲームはやったことがないけれど、簡単な用語くらいは分かる。オタクの嗜みだ。
「まずはこの辺かな~」
「ピアスか?」
「イヤリング。俺穴空けてないからピアスは無理だよ」
ハルの穴は未開通、と。興奮するなぁ。
「空けないのか?」
「ツイ姉がデカピアス着けててさ、どっか引っ掛けて耳裂けてさぁ……ちょっと怖い」
「なるほど。イヤリングは挟むだけだもんな、落ちやすそうだけど……どれもキラキラしてるなぁ」
目がチカチカしてきた。
「いいよねぇ~。みっつんどれが好き? せっかく一緒に来たんだしさぁ、みっつんの好みのアクセ買ってみたいなぁ~」
ショッピングデートとなれば必ずこの手の試練があるだろうと覚悟はしていたが、いざとなるとやはり悩む。俺のオシャレ知識は付け焼き刃にすらなっていない、デートに着ていく服すら母に選んでもらうレベルのダサ男だ。
「俺の好みでいいのか?」
「うん! ねぇ、どれどれ~?」
服や髪飾りならともかく、イヤリングに似合うも何もないだろう。耳の形なんかみんなほとんど一緒だ。と思いつつもハルの耳をじっと観察する。
「えへへっ、そぉそぉ、ここに着けんの」
ハルの耳たぶは薄めだな、カンナやカミアはもう少し分厚かった気がする。リュウは耳が若干前を向いているし、シュカは逆にぺったり頭に引っ付いている。ほとんど一緒だと言ったのは訂正しよう。
「みっつんはどれ着けてる俺が見たい?」
「…………これ、かな」
俺は三日月モチーフのピアスを指した。自分のセンスに自信がない俺には、こんな小細工しか出来ない。
「これ~? あはっ、可愛いじゃん。買おっかな~」
「俺に買わせてくれよ、俺が選んだんだから」
「買ってくれる~? 嬉しい~。ねぇみっつん、これ、三日月ってさぁ……そういうこと?」
レイのタトゥーの相談がなかったら思い付かなかっただろう。自分の名前に入っている字をモチーフとしているアクセサリーを選ぶなんて。
「う、うん……ちょっと気持ち悪いかな」
「ううんっ、なんか嬉しい。独占欲出されてるみたいな感じぃ? ある種のマーキングだよねぇこれ。ふふふふ……じゃあこれはみっつんに買ってもらって、みっつんに着けてもらおっ」
スーパーで使われているカゴの四分の一程度のサイズの小さなカゴに三日月のピアスを入れたハルは、上機嫌そうにニコニコと笑っている。
「あ、これ夏っぽ~い。買っとこ」
ハルが躊躇なくカゴに入れたのは風鈴のような模様が入った青く丸いガラス玉のイヤリングだ。
(まぁホントにガラスならこんな値段じゃないと思いますが)
夏休みのデート用なのかハルは夏らしいものを探しているようだ。
「これ浴衣に合いそうじゃな~い?」
「つまみ細工か」
「うん、でもぉ~……俺が持ってる浴衣赤色なんだよね~。どうせなら合わせたいなぁ、赤色ないなぁ~」
布を折り合わせて作られたつまみ細工のイヤリングは数が少ない、しかもあるのは寒色系ばかりだ。
「赤ってメジャーなのにな」
「ね~残念」
「……作ってやろうか? 俺もっと細かい綺麗なの作れるぞ、赤色の端切れも家にあったと思うし」
和物BLのキャラぬいを作った時に髪飾りや服の飾りにつまみ細工を使った、ぬいぐるみ用だからとても小さなものだ。そんな真似が出来たのだから、人間サイズならそれなりの出来になると考えている。
「え、みっつん手芸出来る系男子~?」
「だ、男子~」
「マジ~? 尊敬しちゃ~う。じゃあお願いしてもい~い?」
「あぁ、一緒にデザイン考えよう。リフォーム終わったら家に遊びに来てくれよ」
「何~、それが目的~? ふふふ……」
なんて話しながらヘアアクセのコーナーへ移動。ヘアゴムヘアピンヘアバンドカチューシャ……種類が多いなぁ。
「ハル、浴衣なら簪とかで頭まとめるのか?」
「簪は家にあるのが超可愛いからいいかなぁ~って」
「へぇ? 見せて欲しいもんだな。しかし種類が多いなぁ……」
「髪は自由度高いからね~。みっつんもヘアピンくらいならイケそうな髪してるね~、どうする?」
「しないよ……」
中途半端な髪の長さの男がヘアピンを着けているのは好きだ、具体的に言うなら金髪の子に黒いヘアピンをバッテンにして着けて欲しい。
「せっかく来たんだしみっつんのアクセも買お~よぉ」
「俺のアクセはこれで十分だよ」
俺は誕生日にハルから贈られたバングルを着けた手首を持ち上げた。
「俺があげたヤツじゃん、も~。急にキュンキュンさせないでぇ? それだけじゃまだまだ足りないっての、ネックレスくらいは着けないと~」
「俺はいいよぉー……」
ハルにもらったバングルを見せた直後に、身体に服以外の物を着けておくのは嫌だとは話せず、ネックレスコーナーへとほぼ無抵抗で引っ張られた。
「みっつんみっつん、あっち見に行こ」
しかし、そんな悩みは杞憂だったようで客達はササッと商品棚の隙間に入って俺達に道を譲ってくれた。そういえば母が言っていたな、視線は集めるけれど人には避けられる、度が過ぎる美形とはそういうものだ……って。
(聞いた時は「またママ上がなんか言ってる」とか思って聞き流してましたが、マジなんですな)
電車内はともかく、混雑する駅構内でも歩きやすさを感じるのはそういう訳か。
「……みっつんめっちゃ見られてるね」
アクセサリーショップというだけあって女性客が多い、男性は居ても俺のような恋人の付き添いらしき方ばかりだ。
「可愛い恋人連れてるからかな?」
「みっつんの顔のせいでしょ! 分かってるくせに。ま、優越感あっていいけどね~」
「ふふ……それで、どんなのが欲しいんだ? えっと、部位って言えばいいのかな」
「あはっ、部位って……も~、モンスター狩ってるんじゃないんだからぁ~」
ハルは姉の影響で案外と漫画やゲームにも造詣が深い。俺の専門は恋愛ゲームなので、例のモンスターを狩るゲームはやったことがないけれど、簡単な用語くらいは分かる。オタクの嗜みだ。
「まずはこの辺かな~」
「ピアスか?」
「イヤリング。俺穴空けてないからピアスは無理だよ」
ハルの穴は未開通、と。興奮するなぁ。
「空けないのか?」
「ツイ姉がデカピアス着けててさ、どっか引っ掛けて耳裂けてさぁ……ちょっと怖い」
「なるほど。イヤリングは挟むだけだもんな、落ちやすそうだけど……どれもキラキラしてるなぁ」
目がチカチカしてきた。
「いいよねぇ~。みっつんどれが好き? せっかく一緒に来たんだしさぁ、みっつんの好みのアクセ買ってみたいなぁ~」
ショッピングデートとなれば必ずこの手の試練があるだろうと覚悟はしていたが、いざとなるとやはり悩む。俺のオシャレ知識は付け焼き刃にすらなっていない、デートに着ていく服すら母に選んでもらうレベルのダサ男だ。
「俺の好みでいいのか?」
「うん! ねぇ、どれどれ~?」
服や髪飾りならともかく、イヤリングに似合うも何もないだろう。耳の形なんかみんなほとんど一緒だ。と思いつつもハルの耳をじっと観察する。
「えへへっ、そぉそぉ、ここに着けんの」
ハルの耳たぶは薄めだな、カンナやカミアはもう少し分厚かった気がする。リュウは耳が若干前を向いているし、シュカは逆にぺったり頭に引っ付いている。ほとんど一緒だと言ったのは訂正しよう。
「みっつんはどれ着けてる俺が見たい?」
「…………これ、かな」
俺は三日月モチーフのピアスを指した。自分のセンスに自信がない俺には、こんな小細工しか出来ない。
「これ~? あはっ、可愛いじゃん。買おっかな~」
「俺に買わせてくれよ、俺が選んだんだから」
「買ってくれる~? 嬉しい~。ねぇみっつん、これ、三日月ってさぁ……そういうこと?」
レイのタトゥーの相談がなかったら思い付かなかっただろう。自分の名前に入っている字をモチーフとしているアクセサリーを選ぶなんて。
「う、うん……ちょっと気持ち悪いかな」
「ううんっ、なんか嬉しい。独占欲出されてるみたいな感じぃ? ある種のマーキングだよねぇこれ。ふふふふ……じゃあこれはみっつんに買ってもらって、みっつんに着けてもらおっ」
スーパーで使われているカゴの四分の一程度のサイズの小さなカゴに三日月のピアスを入れたハルは、上機嫌そうにニコニコと笑っている。
「あ、これ夏っぽ~い。買っとこ」
ハルが躊躇なくカゴに入れたのは風鈴のような模様が入った青く丸いガラス玉のイヤリングだ。
(まぁホントにガラスならこんな値段じゃないと思いますが)
夏休みのデート用なのかハルは夏らしいものを探しているようだ。
「これ浴衣に合いそうじゃな~い?」
「つまみ細工か」
「うん、でもぉ~……俺が持ってる浴衣赤色なんだよね~。どうせなら合わせたいなぁ、赤色ないなぁ~」
布を折り合わせて作られたつまみ細工のイヤリングは数が少ない、しかもあるのは寒色系ばかりだ。
「赤ってメジャーなのにな」
「ね~残念」
「……作ってやろうか? 俺もっと細かい綺麗なの作れるぞ、赤色の端切れも家にあったと思うし」
和物BLのキャラぬいを作った時に髪飾りや服の飾りにつまみ細工を使った、ぬいぐるみ用だからとても小さなものだ。そんな真似が出来たのだから、人間サイズならそれなりの出来になると考えている。
「え、みっつん手芸出来る系男子~?」
「だ、男子~」
「マジ~? 尊敬しちゃ~う。じゃあお願いしてもい~い?」
「あぁ、一緒にデザイン考えよう。リフォーム終わったら家に遊びに来てくれよ」
「何~、それが目的~? ふふふ……」
なんて話しながらヘアアクセのコーナーへ移動。ヘアゴムヘアピンヘアバンドカチューシャ……種類が多いなぁ。
「ハル、浴衣なら簪とかで頭まとめるのか?」
「簪は家にあるのが超可愛いからいいかなぁ~って」
「へぇ? 見せて欲しいもんだな。しかし種類が多いなぁ……」
「髪は自由度高いからね~。みっつんもヘアピンくらいならイケそうな髪してるね~、どうする?」
「しないよ……」
中途半端な髪の長さの男がヘアピンを着けているのは好きだ、具体的に言うなら金髪の子に黒いヘアピンをバッテンにして着けて欲しい。
「せっかく来たんだしみっつんのアクセも買お~よぉ」
「俺のアクセはこれで十分だよ」
俺は誕生日にハルから贈られたバングルを着けた手首を持ち上げた。
「俺があげたヤツじゃん、も~。急にキュンキュンさせないでぇ? それだけじゃまだまだ足りないっての、ネックレスくらいは着けないと~」
「俺はいいよぉー……」
ハルにもらったバングルを見せた直後に、身体に服以外の物を着けておくのは嫌だとは話せず、ネックレスコーナーへとほぼ無抵抗で引っ張られた。
0
お気に入りに追加
1,228
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる