冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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また行方不明かと

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想像以上にあっさりと電話は繋がった。だが、出た者はアキではない、一瞬で嫌な妄想が完成して心臓がバクバクと脈打った。

『もしもし……? 誰……です、か? 日本語分かります……?』

アキよりも少し低い声はスラスラと日本語を操った。聞き覚えのある声だ。

「……その電話の持ち主の兄です」

『あっ、鳴雷か? よかった。俺分かる……? セイカ、だけど……狭雲 星火』

「あぁ、セイカ! 聞いたことある声だとは思ってたんだけど、声小さいからハッキリ分からなくてさぁ……」

セイカだ、そうだ、セイカの声だ。

『表示がロシア語だから誰が電話かけてきたのか分かんなくて怖かったんだよ。はぁー……安心した。秋風なんだけどな、さっき寝ちゃったんだよ』

「そ……そう、なんだ。帰ったらアキが居なかったから焦ってたんだよ」

『え、お前に何も言わずに来てたのか? そっかぁ……報連相はちゃんとするよう教えてやれよ、お兄ちゃん? ふふふ……もう帰らせた方がいいよな、すぐ起こすよ』

「あっ、待ってくれ、セイカっ……」

そういえばセイカは今日電話をかけて来なかった、アキと一緒に居たからなのだろうか。

『ん?』

「……迎えに行くから待たせてくれ。病院……だよな」

『分かった。うん、病院、俺まだ中庭にしか出れないし……今日は出てないけど』

「すぐ行く!」

俺はレイを置いて病院に走った。面会時間はもう終わっていて、日傘を持ったアキが受け付けの手前にある待合スペースで手を振った。

「にーに!」

「アキ! アキ、お前……はぁ……心配したぞ。出かけるなら電話とかメッセとか……帰りながら話すか、行こう」

閉じた日傘を揺らし、黒いレンズ越しではない赤い瞳で俺を見上げて微笑む。

「……セイカ、会う、したかったのか?」

「да」

「出かけるのはいいけど……アキ、次、外出るする時、にーにに、電話する、いいな?」

「電話するです、外出るするです?」

「電話する、その後で、外に出る……」

「да! 遊ぶする、前……にーに、電話するです」

俺が学校やバイトの間、アキもセイカも一人きりで寂しい思いをしていたのだろう。そんな二人が共に時間を過ごすのはいいことだ。



夕飯の話などをしながらレイの家に帰ると、泣きそうな顔で俺達を出迎えたレイに謝られた。

「ごめんなさいっすせんぱい……ごめんなさいっす」

「な、何……どうしたんだよ」

「せんぱいが帰ってくるまでにっ、牛乳とか、野菜とか、冷蔵庫入れとくもん入れとこうと思ったんす。料理出来ないっすから、せめてそれくらいはって、そしたら……」

キッチンの床に卵八個入りのパックが落ちていた。冷蔵庫に入れようとして手を滑らせたらしい、パックの隙間から卵の中身が漏れ出している。

「あー……割っちゃったのか」

「ごめんなさいっす……」

「いや、大丈夫。床に中身零れた訳じゃないから使えるよ。今日は予定変えてオムライスにしようか。半分も割れてないし、気にすんな」

「…………せんぱいホントに優しいっすね」

「よく言われるけど、自分では特別そうは思わないんだよな。あ、床拭いてくれるか?」

「あ、はい! それはもちろんっす」

オムライスを作る傍ら、床を雑巾で拭いているレイを見下ろす。零れていた卵の中身は透明だったから、白身が少し減ったかもしれないな……なんて考えながら、掻き混ぜられ黄色一色に変わった卵に視線を移す。

「……レイがバイト行く前はアキは家に居たんだよな?」

「見送ってもらったっすから間違いないっすよ」

「その後に出かけたのかぁ……俺は居なかったから仕方ないけど、レイにくらい言えばよかったのにな」

「俺が出た後で行こうって思い付いたのかもしれないっすよ」

前日には外出の予定を決めておきたい俺としては、思い立ったその日に外出するという発想はなかった。

「フッ軽過ぎんだろアキ……」

「そうっすかねー」

「……もう一人フッ軽が居たな、他人が撮った写真一つでバイトしに来たヤツが」

「それ俺のことっすか? だってせんぱいカッコよかったんすもん……ちょうど脱出の口実欲しかったってのもあるっすけど。っていうかバイトは急に話しかけられてつい言っちゃっただけっすからね!」

「……やべ、ケチャップ足りない」

「聞いてるっすか、もう! ケチャップなら買い置きがあるっすよ、ちょっと待つっす」

半熟卵だったりデミグラスソースだったりを使っていない、純喫茶で出されるような素朴なオムライスが完成した。

「にーに、ご飯……」

「ちょうど出来たぞ、お箸持ってきてくれ」

着替えを終えたアキと共に三人で楽しく夕食を食べた。母とミフユに食べたものを送信し、風呂が沸くまでまったり過ごす。

「アキ、一番風呂いいぞ」

風呂が沸いたらアキに一番手を譲り、レイと共にソファに座った。抱き寄せて唇を重ね、彼の口内を舐め回した舌はうっすらとケチャップの味を感じ取った。

「レイ、今夜は……」

「遠慮するっす、発散されちゃうといい絵が描けないんで」

「今夜も仕事か? 日付変わるまでには寝ろよ。レイが過労で倒れちゃったりしたら嫌だからな、体大事にしろよ」

嬉しそうに「はーいっす!」と返事をするレイと再び唇を重ね、劣情を溜めた。

「なぁ、レイ……アキのことなんだけどさ、連絡なしで出かけてお兄ちゃんを心配させたのにはお仕置きが必要だと思うんだよ」

「え、お仕置きっすか? それはちょっと……可哀想っすよ、昼間一人で寂しそうっすし……」

「いーやお仕置きは必要だね。だからなレイ、拘束具……貸してくれないか? アイツ、俺を縛って騎乗位しただろ? そのお返しの意味も込めてな」

「……あ、お仕置きってそういうプレイっすか? びっくりしたー……ベランダ放り出すとか、なんか棒で叩くとか、んなこと言い出したらどうしようかと」

俺の信用度ってもしかして低い?

「そんなの虐待じゃないか……する訳ないだろ」

「…………弟を縛って犯すって字面だけだとどっちにしろ虐待な気もするっすけどね」

「十六歳と付き合ってる成人男性が言えたことかよ。あ、法律の話したら青姦してるから俺もダメだな……」

「ま、前あげた監視カメラ入りぬいぐるみはセーフっすよね? せんぱいの同意の元っすし。十六もセーフのはずっす!」

「カメラとマイクは俺がたまたま気付いただけじゃなかったか? 黙ってる気だったろ」

俺達は互いに黙って互いを見つめた。

「……犯罪って、結構簡単に犯しちゃうもんなんすね」

「バレなきゃ犯罪じゃないって名言があってだな」

「……これからは気を付けましょうっす」

「そうだな、この話はもうやめようか」

それはそれとしてアキは縛ろう、縛ってヤろう。

「拘束具貸してくれ」

「こっちの棚っす」

アキが風呂に入っている間に準備を済ませてしまおう。
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