452 / 2,016
穴兄弟トーナメント優勝
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ようやくミフユと恋仲になれた。腕の中の小さな身体を強く抱き締めて、彼の身体の厚みを知る。
「……ミフユさん、結構鍛えてるんですか?」
「貴様ほどではないが、ネザメ様の近侍として必要な程度には鍛錬を積んである」
俺の筋肉は見せ筋だ、ウケのいい身体を作ったに過ぎない。運動神経は良くないし、喧嘩だって出来ない、見た目以外に意味がない身体だ。ミフユの想いと目的の詰まった肉体とは尊さが違う。
「早く肉眼で確認したいなぁ……次、いつ家に来てくれますか?」
「ネ、ネザメ様と相談して決めるっ」
抱きたいと言ったのだと察してくれたらしいミフユは顔を真っ赤にして俺から目を逸らした。満更でもなさそうなので、予定さえ合えばすぐに抱けそうだ。
「ふふ、はぁい……楽しみに待ってます」
真っ直ぐに立って向かい合うと俺の胸辺りにミフユの頭が来る。小さい。きっと後孔も浅い、奥まで犯せる、ネザメが調教していたのなら感度も良さそうだ、楽しみで仕方ない。
昼休みが終わり、五時間目の授業が終わってまた休み時間がやってきた。
「カンナ、図書委員の当番って何だったんだ?」
「……! ひる、休み……と、放課後……に、うけつけ、する。いっしゅうか……ごと、とーばん……まわる」
「一週間ごとの当番なのか、受け付けって……あの、本にピッてバーコード当てるヤツか?」
「ぅん……」
「へぇ、他に図書委員の仕事ってないのか? 本棚の整理とか」
俺は本は漫画とラノベ以外は設定資料集くらいしか読まないが、書店でバイトをしている身としてはカンナの仕事ぶりに興味がある。
「へん、きゃく……戻したり、する。せーりは……月に、いっか…………ぁ、あと、本の、おすすめの……ぽすたー、作ったり……も、する……らしい。まだ、つく、て……ない」
(月に一回せーりですか……でゅふふ)
「ふぅん……カンナのオススメの本気になるなぁ、もうどれオススメするのかは決めたのか?」
カンナは頷いて本のあらすじを教えてくれた。
「群れ、でね……いちば、よく跳ねる……うさぎ、がね……ある日、はねすぎ、て……月に、行っちゃう。月は、体が軽くなって……もっと、跳ねられる。けど、誰も……見て、くれな……て、うさぎ、さみしく、な……て、ない、ちゃう…………お話」
(……絵本?)
「ど……? 読み、たい?」
(正直あんまりですなぁ)
「カンナに読み聞かせして欲しいな」
ポスターが貼り出されたら大勢の生徒が見ることになる、高校生にもなって絵本をオススメしていたらからかわれるかもしれない。明日図書室に行って、それとなくオススメの本を小難しい純文学にでも変えるよう勧めよう。
「何の話してんの~? 混ぜて混ぜて~」
「よーしーてー」
彼氏達がわらわらと寄ってきた。
「カンナが図書委員のお仕事頑張ってるって話だよ」
「おぉせや、俺も委員の当番回ってきとるから放課後カピバラに餌やらなあかんねん」
当番の順番はクラスで決まっているのだろうか。とか言ったらシュカあたりに「以前の委員会で話し合いましたよね?」とか言われそうだから黙っていよう。
「しぐ図書委員だったね~、明日図書室行こっかな~。みんなで行ってなんか借りな~い?」
「俺長い文章見ると頭痛なんねんなぁ」
俺からすれば数式を見ている方が頭が痛くなりそうなものだが、そこは得意科目の違いか。何も言うまい。
「しゅーは本どーぉ?」
「本はあまり読まないですね。あぁ、でも……子供の頃に読んだ、デカくて強いヤギが怪物をボッコボコにする絵本をもう一度読みたいです。ありますかね」
「高校の図書室に絵本なんかあるかな……図書館行った方がいいんじゃないか?」
絵本か、懐かしいな。母の彼女達に色んな絵本を読んでもらったりしたっけ。肝心の内容はよく覚えていないけれど、蝶よ花よと育てられていたことだけはよく覚えている。
「絵本……なつか、し……小さ、ころ……おっき、カステラ……作る、の……読んだ」
「あー、カステラ、大きなお菓子って憧れあったよね~…………ん? それカミアも読んでたの!? ねぇカミアと絵本読んでたの!?」
声が大きいと怒るカンナと、謝りながらも興奮冷めやらぬハル。事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ、今まで読んだどんな本よりも萌えられるリアルな彼氏がここに居る。
「今日だけで何回も聞いちゃってるんだけどさ~……しぐってほんとにカミアのお兄ちゃんなの?」
「しつ、こい」
「霞染さん、そんなに興奮しなくたってあなたもそのカミアさんと兄弟になるんですよ。竿兄弟に」
「……竿兄弟って何?」
首を傾げたハルにため息をついたシュカは俺に視線を寄越した。
「あー……同じ女の人とヤった男達のことを、穴兄弟って俗に言うだろ? 対義語が竿姉妹……同じ男とヤった女の人達のこと。で、同じ男とヤった男となると……まぁ、竿兄弟って言い方がピッタリかなーって、ことだよな? 自分で説明しろよなシュカぁ!」
「竿兄弟でサッカーチームが作れそうですね……」
「……待てよ、俺……シュカ由来の穴兄弟めちゃくちゃ居るんじゃないのか? なぁシュカ、サッカーチームどころか試合が出来る人数集まるんじゃないのか?」
「穴兄弟だけでトーナメント開けますよ」
このビッチめ! と叫びたくなる気持ちを抑えて「ならトーナメントで優勝してやる」と軽口を叩いた。
「わざわざ戦わなくたって水月が優勝なのは決まりきってますよ」
きゅっと俺の腕に抱きつきながらの言葉に俺はあっさりときめいてしまった。
「……ミフユさん、結構鍛えてるんですか?」
「貴様ほどではないが、ネザメ様の近侍として必要な程度には鍛錬を積んである」
俺の筋肉は見せ筋だ、ウケのいい身体を作ったに過ぎない。運動神経は良くないし、喧嘩だって出来ない、見た目以外に意味がない身体だ。ミフユの想いと目的の詰まった肉体とは尊さが違う。
「早く肉眼で確認したいなぁ……次、いつ家に来てくれますか?」
「ネ、ネザメ様と相談して決めるっ」
抱きたいと言ったのだと察してくれたらしいミフユは顔を真っ赤にして俺から目を逸らした。満更でもなさそうなので、予定さえ合えばすぐに抱けそうだ。
「ふふ、はぁい……楽しみに待ってます」
真っ直ぐに立って向かい合うと俺の胸辺りにミフユの頭が来る。小さい。きっと後孔も浅い、奥まで犯せる、ネザメが調教していたのなら感度も良さそうだ、楽しみで仕方ない。
昼休みが終わり、五時間目の授業が終わってまた休み時間がやってきた。
「カンナ、図書委員の当番って何だったんだ?」
「……! ひる、休み……と、放課後……に、うけつけ、する。いっしゅうか……ごと、とーばん……まわる」
「一週間ごとの当番なのか、受け付けって……あの、本にピッてバーコード当てるヤツか?」
「ぅん……」
「へぇ、他に図書委員の仕事ってないのか? 本棚の整理とか」
俺は本は漫画とラノベ以外は設定資料集くらいしか読まないが、書店でバイトをしている身としてはカンナの仕事ぶりに興味がある。
「へん、きゃく……戻したり、する。せーりは……月に、いっか…………ぁ、あと、本の、おすすめの……ぽすたー、作ったり……も、する……らしい。まだ、つく、て……ない」
(月に一回せーりですか……でゅふふ)
「ふぅん……カンナのオススメの本気になるなぁ、もうどれオススメするのかは決めたのか?」
カンナは頷いて本のあらすじを教えてくれた。
「群れ、でね……いちば、よく跳ねる……うさぎ、がね……ある日、はねすぎ、て……月に、行っちゃう。月は、体が軽くなって……もっと、跳ねられる。けど、誰も……見て、くれな……て、うさぎ、さみしく、な……て、ない、ちゃう…………お話」
(……絵本?)
「ど……? 読み、たい?」
(正直あんまりですなぁ)
「カンナに読み聞かせして欲しいな」
ポスターが貼り出されたら大勢の生徒が見ることになる、高校生にもなって絵本をオススメしていたらからかわれるかもしれない。明日図書室に行って、それとなくオススメの本を小難しい純文学にでも変えるよう勧めよう。
「何の話してんの~? 混ぜて混ぜて~」
「よーしーてー」
彼氏達がわらわらと寄ってきた。
「カンナが図書委員のお仕事頑張ってるって話だよ」
「おぉせや、俺も委員の当番回ってきとるから放課後カピバラに餌やらなあかんねん」
当番の順番はクラスで決まっているのだろうか。とか言ったらシュカあたりに「以前の委員会で話し合いましたよね?」とか言われそうだから黙っていよう。
「しぐ図書委員だったね~、明日図書室行こっかな~。みんなで行ってなんか借りな~い?」
「俺長い文章見ると頭痛なんねんなぁ」
俺からすれば数式を見ている方が頭が痛くなりそうなものだが、そこは得意科目の違いか。何も言うまい。
「しゅーは本どーぉ?」
「本はあまり読まないですね。あぁ、でも……子供の頃に読んだ、デカくて強いヤギが怪物をボッコボコにする絵本をもう一度読みたいです。ありますかね」
「高校の図書室に絵本なんかあるかな……図書館行った方がいいんじゃないか?」
絵本か、懐かしいな。母の彼女達に色んな絵本を読んでもらったりしたっけ。肝心の内容はよく覚えていないけれど、蝶よ花よと育てられていたことだけはよく覚えている。
「絵本……なつか、し……小さ、ころ……おっき、カステラ……作る、の……読んだ」
「あー、カステラ、大きなお菓子って憧れあったよね~…………ん? それカミアも読んでたの!? ねぇカミアと絵本読んでたの!?」
声が大きいと怒るカンナと、謝りながらも興奮冷めやらぬハル。事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ、今まで読んだどんな本よりも萌えられるリアルな彼氏がここに居る。
「今日だけで何回も聞いちゃってるんだけどさ~……しぐってほんとにカミアのお兄ちゃんなの?」
「しつ、こい」
「霞染さん、そんなに興奮しなくたってあなたもそのカミアさんと兄弟になるんですよ。竿兄弟に」
「……竿兄弟って何?」
首を傾げたハルにため息をついたシュカは俺に視線を寄越した。
「あー……同じ女の人とヤった男達のことを、穴兄弟って俗に言うだろ? 対義語が竿姉妹……同じ男とヤった女の人達のこと。で、同じ男とヤった男となると……まぁ、竿兄弟って言い方がピッタリかなーって、ことだよな? 自分で説明しろよなシュカぁ!」
「竿兄弟でサッカーチームが作れそうですね……」
「……待てよ、俺……シュカ由来の穴兄弟めちゃくちゃ居るんじゃないのか? なぁシュカ、サッカーチームどころか試合が出来る人数集まるんじゃないのか?」
「穴兄弟だけでトーナメント開けますよ」
このビッチめ! と叫びたくなる気持ちを抑えて「ならトーナメントで優勝してやる」と軽口を叩いた。
「わざわざ戦わなくたって水月が優勝なのは決まりきってますよ」
きゅっと俺の腕に抱きつきながらの言葉に俺はあっさりときめいてしまった。
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