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せーか先生のかりふらわー講座

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チーズがけハンバーグとチーズインハンバーグの違いを説明するとセイカは恥ずかしそうに目を伏せ、顔を赤らめていた。

「ハンバーグにチーズってどういうことだよ……」

「どのハンバーグにするんだ? アキ」

「ちーずぃん、食べるする、欲しいです」

「チーズインハンバーグな。ミフユさん、ベルお願いします」

店員を呼んで注文を終え、メニュー表の裏に載っている子供向けのまちがいさがしを真剣に見つめているセイカとアキを眺める。

「こっちの窓は丸いけどこっちは四角だな」

セイカは左手で傘を持ったまま、右手の先端で見つけた間違いを指している。何とも萌える仕草だ、勃ちそう。

「……! せーか、すごいです」

「すぐ分かるだろ。あーでも、あと一個見つからねぇな……どれだ、雲の形に窓に鳥に……んー?」

「…………間違いする、七、間違いするです?」

「間違いが七個あるってのが間違い? そんな引っ掛け流石にないだろ、答えどっか載ってないのかな」

すっかり仲良くなったようで何よりだ。

「妬んでしまうね、あんなにも早く秋風くんと仲良くなってしまうだなんて。僕は未だに上手く話せずにいると言うのに……」

「アキの写真とか送りましょうか?」

「君達二人の写真をホーム画面に設定しておきたいな」

「二人ですか……いいのあったかなぁ」

「………………ミフユ、ホーム画面の画像ってどこで変えられるんだい?」

アキ単体の写真は結構撮っているのだが、キモオタデブス期間が長かったせいか自分の写真を撮る習慣がないため、俺の写真は俺のスマホにはほとんど保存されていない。レイのスマホやパソコンには大量にあるんだろうな。

「設定から壁紙に……いえ、ストアではなく、設定、それはヘルスケアです。設定です、アイコンが灰色の……それです。そこに壁紙が、いえ画面表示ではなく、違いますテキストサイズを変えないでください、ネザメ様、ネザメ様、自分の指示を聞いてから操作してください、ネザメ様……ミフユに貸してください!」

帰ったらアキと一緒に写真を撮ろうと考えていた俺の傍らで、ネザメがミフユにスマホを取り上げられている。

「……水月くん、またミフユを怒らせてしまったよ。本当怒りっぽいんだから」

「ネザメ様、どの画像に変更するのですか?」

「水月くんと秋風くんが二人笑顔で写っているものがいいな。今度送ってね、水月くん」

「変更先を見つけてから変え方をお聞きください」

ミフユが怒りっぽいとしたら、そうなった原因は間違いなくネザメだ。ネザメがいつもこんなにもミフユに頼ってマイペースに過ごしているのなら、むしろミフユはとても温厚なんじゃないだろうか。

(さて、セイカ様とアキきゅんの方はどうなりましたかな? まちがいさがしが解けなくて泣いたりしていないでしょうか……)

「ふふっ……お前やっぱり弟だな、昔の鳴雷に似てるよ」

(おっ楽しそ……えっ似てる? どこが!? わたくしぶっくぶくに太っておりましたぞ、アキきゅんは見ての通りの天使ですのに……まさかセイカ様事故の影響で視力まで下がったのでは)

目を離していたのが悔やまれる、アキがどんな挙動をすれば昔の俺に似るんだ。

「まっすぐ俺見て、頼って、ニコニコしてさ……ちょっとしたことですごいすごいって……可愛かったなぁ、勘違いさせられたよ……俺はすごいんだって、ほんと悪質」

(キモオタデブスが可愛い? えっ悪質? えっ……わたくし悪口言われてます?)

「秋風……お前も俺を勘違いさせちゃう口? よくねぇなぁー……悪い子、ふふふ…………いいなぁ、何言ってもよく分かんねぇって顔してんの可愛いし、お前相手なら口滑らせても平気だもんな、いいなぁお前、話しやすいわ」

セイカとアキの一方的な会話をこっそりと聞いていたが、注文した料理が運ばれると彼らの会話は中断された。

「わぁ、美味しそうだねぇ。いただきます」

俺はガーリックステーキ、ネザメは鶏のクリーム煮、ミフユはほうれん草のクリームパスタ、そしてアキはチーズインハンバーグ、全員見事にバラバラだ。あーんも期待出来るかもしれない。

「あーん……ん、うま……でも端っこだからチーズなかったぞ、真ん中くれよ」

セイカがアキからのあーんを一足先に受けているだと!? 俺もアキにあーんされたいし、セイカにあーんしてあげたい、羨ましい、二人とも羨ましい。

「せーか、白いです、ぶろっこり」

「伸ばし棒が足んねぇな、ブロッコリーだ。その白いのはカリフラワーだけどな」

「かりふーらわ……цветная капуста?」

「ロシア語は分かんねぇけど、カリフラワーな、カリフラワー。ふーらわじゃなくて、ふらわー」

「ふらわー、ふらぁー……ふらわー、かりふらわー」

「まだイントネーション変だな……カリフラワー、はい」

「かりふらわー……」

「カリフラワー。食べる手は止めなくていいぜ」

「かりふらわー……」

ステーキを一口大に切り分けたのでアキとセイカにあーんしてあげたいしされたいのだが、可愛らしいやり取りを邪魔してしまうのはもったいない。自然と途切れるまで待とう。

「お、それがチーズか、とろっとろだな。一口くれよ、あーん……んっ!? 熱っ、水……水……!」

ハンバーグの真ん中の方を一口食べさせてもらったセイカはその熱さに悶え、水に右手を伸ばしたが持てず、アキがコップを取るまで口を押さえて悶えていた。

「クソ……右手ないとやっぱ不便だな」

アキに水を飲ませてもらったセイカは自身の右手の切断面を睨んでいる。左手で持った傘を離してコップを掴む選択肢がないところ、優しさが滲み出ている。

(アキきゅんもセイカ様の優しさを察知して懐いているのかもしれませんな)

と、熱さに悶えたセイカを見ておきながら冷ますことなくハンバーグを口に入れて涙目になっているアキを見ながら思った。
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