冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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気が変わるかもしれない

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寝室で眠る五人を置いて五人でリビングに移動した。️アキは早めに寝かせてやりたいし、俺も完璧な肉体の維持のためにもう眠りたいのだが、彼らはまだ眠りたくないらしい。

「明日は土曜だし、オールしないか?」

「いいですね」

歌見の提案にシュカが乗る。

「レイはサブスク何個か契約してるから映画とか見れますよ。ゲームもありますけど、レイはアクションRPGとかホラゲばっか買ってるんであんまりみんなで楽しめるのはなくて……」

「チューハイ一本もらっていいですか?」

「ダメに決まってんだろ!」

徹夜をするならと歌見に過ごし方を提案しているとシュカが冷蔵庫を開けたので、慌てて止めた。

「……お前まさか不良やってた頃に酒飲みまくってたんじゃないだろうな」

「嫌ですね、流石にそんなことしてませんよ。冗談です冗談」

「ならいいけど……ほら、ジュースやるから。お菓子もいるか? 食い過ぎるなよ。箸も持ってけ」

ジュースとスナック菓子を渡すとシュカは目に見えて機嫌を良くし、リビングに戻ってアキに分け与えた。歌見はゲームをすると決めたらしくソフトを吟味している、ゲームに疎いシュカ達でも楽しめるようなものを選んでくれるといいのだが……

「鳴雷一年生、ネザメ様との話し合いについてなのだが、今いいか?」

「あ、はいもちろん。どうなりましたか?」

「……ネザメ様はもう恋愛の斡旋はしないと約束してくださった。これまで通りだ。貴様はネザメ様の恋人で、自分はネザメ様の近侍……自分がネザメ様とどうにかなることもない」

「そうですか……ミフユさんが納得出来る結果になったならよかったです、俺はちょっと残念ですけど」

俺の彼氏は十一人から十人に戻ってしまうのか。キリのいい数字だし、ここらで我慢しておくべきなのかもな。

「これどういうゲームなんですか?」

「アクションRPGだ。まぁ、敵を倒すゲームだな」

「ふーん……ゲーセンには何度か行ったことありますけど、ゲームまともにやったことはないんですよね。ちょっと貸してくださいよ」

「いいぞ。操作はな……」

シュカもゲームを楽しもうとしているようだ、いい傾向だな。念の為にとスナック菓子を食べる用の箸を渡しておいたのは正解だった、コントローラーを汚したら俺がレイに叱られてしまう。

「この光ってるの何ですか?」

「導きだな。地図開いてみろ、次の祝福の場所が分かる」

「こっち行けばいいんですか?」

「まぁ……オープンワールドゲームだから、好きなように進めていけばいいけど」

超ド初心者にオープンワールドゲームをやらせるのはどうなんだ。操作が簡単なパーティゲームを一つくらい買っておけばよかったな、俺もレイも誰かと一緒にゲームで遊ぶなんて発想はなかったからなぁ……

「鳴雷一年生、聞いているのか?」

「あっ、あぁ、すいません……なんですか?」

「だから、貴様の気持ちを弄んでしまったのは本当に申し訳なかったと思っている……と言ったんだ。恋人が十人越えというふざけた有様だが、どうやら愛情は本物らしいからな……ミフユを好きと言うのも本心なのだろう? それを弄んだのは……その、本当に胸が痛む……」

「……気にしないでください。ミフユさんはネザメさんに喜んで欲しかっただけなんですよね。ネザメさんも俺に…………俺も、二人には幸せでいて欲しいですし」

ミフユと恋仲になれなかったショックは確かにあるのに、俺に対して罪悪感を抱いているらしいミフユの表情につい萌えてしまう。

「気付けてよかったです。好きでも何でもない男に抱かれるなんてトラウマものですもんね、それも好きな人の命令でなんて……」

今まで数多楽しんできたBL作品に習えば、その罪悪感につけ込んで身体を貪るなんて選択肢も浮かぶ。けれど、俺はそんなルート選択しない。現実には二週目もリセットもないのだから。

「……お弁当箱、返してくれますか? せっかくなので月曜から作ることにします」

「え……?」

「俺にお弁当作りたいってのも嘘なんですよね? でも、あのお弁当箱は誕生日プレゼントだし……名前も彫ってあったし、ミフユさんが一日だけでも俺の恋人だった思い出に欲しいなって。だからアレまで取り上げるのは容赦して欲しいんですけど」

「なっ、何を言う、自分は……自分は! 一度言ったことは曲げんぞ! いや、もう曲げてしまった後だが……だからこそ! お弁当はやる、作る!」

大声を張り上げるミフユの心境はよく分からない。

「……ミフユさんが誠実な人なのはいいんですけど、俺の気持ちはどうなるんですか。好きな人にお弁当作ってもらうのは男の夢ですけど……あなたは俺のこと好きになってくれないでしょう? それは、ちょっと……辛いですよ。好意じゃなく意地でなんて」

「あっ……す、すまない、また傷付けてしまったか……そんなつもりはなかったんだ」

「いえ、すいません。十股してるくせに無駄に繊細で」

「十……? 十一じゃなかったか?」

「ミフユさんの分ですよ」

ミフユはネザメから離れないだろうから、彼氏達を集めた時の人数は変わらないだろうけど、恋人の人数としては減らしておくべきだろう。
ミフユは俺に抱かれるのに屈辱を感じるほど俺に興味がないのだから──あ、なんかすっごい傷付いた、泣きそう。

「……な、鳴雷一年生? 泣いているのか?」

「大丈夫です! すいません……もういいですか? 話してるの辛いです」

暇そうにゲーム画面を眺めているアキに慰めてもらおう。そう考えて彼の元へ向かおうとしたが、ミフユに手首を掴まれた。

「ま、待ってくれ! あの……あの、な? その……あんな、寸前の状況でミフユの機微に触れ、中断してくれたのは……本当に、感謝と尊敬に値すると思っている。貴様は素晴らしい男だ」

「……どうも」

「ネザメ様が貴様に惚れた理由があの時分かった気がした。貴様の心を深く傷付けてしまったというのにミフユ達も責めることもしないし……本当に、本当に、いい奴だ、貴様は」

褒めてくれるのは嬉しいが、そこまで言ってくれるのに好意を抱かれていないのは辛い、嬉しさが全て辛さに反転して本当に辛い、早くアキに抱きついて泣きたい。

「……その優しさにもう少し甘えさせて欲しい。あと数日でいいから、猶予をくれないか?」

「はぁ……何の猶予です?」

「…………自分をっ、ミフユを……十一人目から外すのの、だ。貴様が弁当はいいと言ったり、十人と言ったりした時に……妙な気分になった、それも嫌な方面で…………だからな? その……あの、な……簡単に言うと、だな! 気が変わりそうだから……貴様の恋人になりたくなりそうだから…………もう少しだけ、待ってくれ」

「……………………ィイヤッフゥウッ!」

「まだ変わってないからな!? 一晩ゆっくり考えたい……すまんが自分はもう寝室に引かせてもらうぞ」

理由をなくした涙を拭い、はしゃぎながら廊下への扉を開ける。

「あ、あぁ……わざわざありがとう。本当に紳士だな……」

「どこで寝るんですか? あのベッドもう一個あったり?」

「寝袋を持ってきてある。気遣いは無用だ。ではな、鳴雷一年生。貴様もあまり遅くなるなよ」

俺を見上げる童顔は歳上から歳下へ向ける優しさを孕んでおり、今までネザメの恋人として向けられていた嫉妬や敵意の念がほとんど消えていることを示しているような表情だった。
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