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自分の意思を騙って

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歌見の口内を舐め回しながら、その濡れた粘膜の触れ心地と後孔を掻き回していた指が得ていた感触を重ねて勝手に興奮する。

「ん、はぁ……水月、クソ……綺麗な顔しやがって」

潤んだ瞳を擦り、改めて俺を見つめた歌見は左右の瞳のサイズと色が違っていた。右目は紫色で少し大きく、左目は三白眼気味……カラコンが片方外れてしまっているようだ。

「先輩、カラコン……」

「ん? あぁ、お前の誕生日だしな、ちゃんとつけてきてるぞ。今更気付いたのか?」

「や、最初から気付いてましたけど……その、片っぽ外れてます。左目。動かないで、多分その辺に…………あった」

歌見の手の甲に張り付いていた紫色のカラーコンタクトを発見。慎重につまんで歌見に渡す。

「ありがとう。これ……このままつけるのは目に悪いと思うか?」

「ダメじゃないですかねー……俺コンタクト持ってないんで分かんないです。洗浄液? いるんですよね、レイもアキも持ってないと思いますし……外しておきます?」

「…………お前の誕生日なのに」

紫色のカラーコンタクトは歌見にとってオシャレの重要なポイントらしい。俺の誕生日だからとおめかししてくれたことも、継続させたいと思ってくれていることも、何もかも嬉しい。

「確かに紫のカラコンはアッシュグレーの髪によく合ってて素敵ですけど、俺はちょっと目付き悪い感じの先輩の素の目も好きですよ」

「…………本当か? じゃあ……うん、外す……」

右目のカラーコンタクトも外した歌見はそれらをコンタクトケースに直し、俺の目をじっと見つめた。つけていない日の方が多いくせに、裸眼の感想を今言って欲しいのだと察して思わず笑みが零れた。

「やっぱりどっちでも可愛いですよ、先輩」

「可愛いはおかしいだろ……そういうのは霞染辺りに言うことだ」

「俺にとってはみんな可愛い彼氏なんですよ」

「……っ、霞染、お前の後に入るヤツは居るか? 居ないなら予約しておきたい」

頬を赤く染めた歌見は照れ隠しに俺から顔を逸らし、ベッドからも離れてハルに話しかけた。意図せず一人にされてしまった俺はそろそろリュウに構うかと腰を上げ、ネザメに微笑みかけられた。

「空いたかな?」

「え、えぇ……一応、空きましたよ。ネザメさんお相手してくださるんですか?」

ネザメにはまだ手コキをしてもらった程度だ。彼の尻を揉めてすらいない。セックスだけが付き合う目的ではないし、相手の望みしだいではプラトニックな関係もやぶさかではないが、ネザメは案外と俗っぽい上に性欲もあるらしいので、是非とも手を出したい。

「僕は見学だけだよ。ね、ミフユ」

「…………」

ネザメの隣に控えているミフユは俯いている。普段の気が強く元気で明るい様子とは打って変わってしおらしい。

「ミフユは君に愛される君の彼氏達を見るうち、どうやら羨ましくなってしまったようなんだ。けれどもミフユは素直に口がきける子ではなくてね、僕がこうして代弁してあげているんだよ」

「えっ……と、つまり」

「ミフユが君に抱いて欲しがっているから抱いてあげてくれないかい?」

二つ返事で今すぐベッドになだれ込みたいところだが、ミフユには不審な点が多い。そもそもネザメを慕っているだろうミフユが俺に告白してきたこと自体妙だった。

「ミフユ、ほら、照れていないで前に出なさい」

告白された時には舞い上がってしまって何も考えていなかったが、その前日に俺と付き合わないかと尋ねた時には「死んでもごめんだ」なんて手ひどい返事をされたのに、半日足らずで考えを180度変えて告白してくるなんてやはりおかしい。

「あ、あのっ、待ってください……それ本当にミフユさんの意思ですか?」

ネザメは確か「ミフユにもう少し自分の人生を楽しんで欲しい」だとか、そのために「恋愛をさせたい」とか「恋人にしてあげて」とか話していた。まさかとは思うが、ネザメがお節介で俺と恋仲になるよう命令した訳じゃないだろうな?

「ネザメさんが命令してるとかじゃないですよね?」

「水月くん……ミフユは勇気を振り絞ってここに立っているのにその気持ちを疑うなんて、少し無礼過ぎやしないかい?」

「……すいません」

ミフユがネザメを慕っているのはほぼ間違いない。その想いはさて置いて俺にも興味が湧いただとかならいい、十一股をしている分際で二股にどうこう言う資格はないし、夫婦キャラを丸ごといただくというのも美味しいものだ。
だがしかし、ミフユが俺に対して恋愛的な興味を抱いていないのなら俺はミフユには手を出せない。

「鳴雷一年生、貴様は自分の恋人だろう。恋人が抱かれたいと言っているのに渋るとはどういう了見だ。今まで散々他の男は抱いてきたくせに!」

「す、すいません……ミフユさんがその気ならいいんです」

今まで長々と考えてきたのが俺の妄想ならそれでいい。カンナよりも背が低い合法ショタであるミフユを抱けるなんて素晴らし過ぎるから、既に俺の愚息は臨戦態勢。

「……さっさと抱け」

「はい! では失礼して……ベッドへどうぞ」

脇に避けるとミフユはわざとらしくため息をついてベッドに乗り、真ん中に寝転がった。

(三世ダ~イブ!)

低身長でありながらスタイルはよく足が長い彼の後孔の浅さを想像しながら彼に覆い被さる。

「……っ!」

ミフユは自分を抱き締めるような姿勢を取って身体を強ばらせ、頬に触れるとビクンと大きく身体を跳ねさせた後、小さく震えた。

「愛してます、ミフユさん」

まずは軽い愛撫とキスをしようと顔を近付けたその時、ぎゅっと閉じられた目から涙が滲んだ。

「…………すいません、抱けません」

緊張や恐怖から来る震えや涙のようには感じられない。好きな男の命令で好きでも何でもない男に抱かれなければならない悔しさや虚しさの、苦痛の涙のように感じた。
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