冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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気を取り直してプレゼント

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ハルからのプレゼントの中身は……何だこれ、輪っか?

「バングルだよ~。どぉ? イイっしょそれ」

バングル……確か腕にはめるアクセサリーだったな。飾り気のない銀色のシンプルさは男の俺でも使いやすく、またどんな服にも合いそうだった。流石と言うべきだろう。

「なんか地味やな」

「はぁ~!? 超オシャレだってのダサダサエセ関西人!」

「生粋やわ!」

「喧嘩するなよ。これすごくいいよ、オシャレだと思う。下手に飾り付いてると組み合わせ難しいしな、やっぱシンプルなシルバーっていいよ。軽いし」

左腕にはめてみたが、腕時計のようなずっしりとした感覚がない。細さと薄さから予想は出来ていたが、軽くて使いやすそうだ。

「だよねーっ? 使ってってくすんでも味ある感じになると思うから、普段からどんどん着けてねっ」

軽度のコレクター気質なオタクなので透明な箱に入れて飾っておきたいのだが、ハルは使って欲しそうだし、キモオタデブスの俺ではなく超絶美形の俺ならプレゼントは飾らずに使うだろうから、使おう。

「あぁ、そうするよ。ありがとうな、ハル」

「えへへ……」

ハルは最近よく緩んだ笑顔を浮かべてくれるようになった。俺への警戒心が薄れてきた証拠だろうか?

「次は私ですね」

渡されたプレゼントは比較的大きめだが、薄くて柔らかい。布……服か何かだろうか? 包装紙を剥がすと予想通り服が、Tシャツが現れた。

「お、服か。ありが……と、う」

白いTシャツを広げると前面に大きく「古今無双」と書かれていた。ゴシック体で。

「いいでしょう? 四十分ほど悩んだんですよ」

これ以上ないほどのドヤ顔だ、ネタなどではなく本気なのだろう。どこで買ったんだ、いくらだったんだ、俺に似合うと思ったのか、なんで「古今無双」なんだ、などなどの聞きたいことは一旦飲み込もう。

「四十分も? ありがとうな、その気持ちが嬉しいよ。シャツに透けそうだから学校には着ていけないけど……普段着に使わせてもらうよ」

「今度それ着てデートしてくださいよ」

「もちろん……ところで、なんで古今無双なのか聞いてもいいか……?」

どうしても気になって聞いてしまった。シュカは目を丸くし、何故そんな当然のことを聞くのかとでも言いたげに──

「古今無双の意味は昔も今も並ぶものがないこと、ですよ」

──と、辞書に載っていそうなことを教えてくれた。俺が聞きたいのは四文字熟語としての意味ではない、シュカの心境だ。

「う、うん?」

「……水月ほどのイイ男は他に居ないって意味です」

「シュカぁ……! へへっ、嬉しいこと言ってくれるなぁ。デートいつにする~? ふふふっ」

シュカは「死屍累々」とか着てくるのかな? と思いつつ近いうちにデートをすることだけを約束した。

「次は俺っすね、俺のはこれっすよ」

レイに手渡されたのは一枚の紙だ。チケットのような形とサイズに整えられてはいるが、ただのノートの切れ端だ。紙の真ん中には「なんでも好きなモノ描いてあげましょう券」と手書きで書かれている。

「こ、これは……!」

「なんや、肩叩き券みたいなんかいな」

「まぁそんなとこっす、引き換え券っすね」

「えー、なんかガキっぽ過ぎなーい? 雑~、俺らちゃんと考えたのに~」

「いや、いや……これはやばいぞ、一次も版権もアリなんだよな? 数万の価値がある……」

どのくらいのサイズの絵を描いてくれるのか、何人までいいのか、色塗りはどのレベルまでしてくれるのか、差分はアリか、などによっても変わってくるが最低でも五桁は確実に必要だろう。

「え、なんで?」

「まぁまぁいいじゃないっすか、霞染せんぱいの誕生日にも同じもんあげるっすよ」

「え~余計気になるぅ~、みっつん見せてよぉ~」

「あ、あぁ……引き換えたらな」

引き換えられるだろうか? もったいなくて使えない、何を描いてもらうか迷ってしまう。ラストエリクサー病が発症する。

「次は俺だな、いいか?」

「あっ、はい! もちろん」

「ん、誕生日おめでとう」

歌見は俺の膝の上に紙袋を置いた。中身は黒をベースとして白い英文字がビッシリと書かれたデザインの長財布だ。

「ブランドもんじゃん! 大人の財力ムカつくぅ~! ん……? よく見るとスペルなんか違う」

「えっ? うわ、ほんとだ……PALENC1AKAだ……」

「Iじゃなくて1だし。どう読むのこれ」

「パッと見分かんないだろ?」

誕生日プレゼントに偽ブランドって……いや、男子高校生へのプレゼントならこんなものなのか? いやいや……

「こういうのって非合法な品では?」

「本物じゃないってデカデカと書いてたし、多分ジョーク枠として見逃されてるんじゃないか? せいぜいグレーだろう」

「……よかったですね水月、カッコイイですよ……ふふっ」

デザインは某ブランドそっくりなので当然カッコイイ、書かれている文字を声に出して読むとちょっと間抜けな感じになるだけだ。よく見ないと分からないだろうし、まぁ、いいか。使おう。

「ありがとうございます先輩」

「微妙な顔だな」

「い、いえそんな、嬉しいのは嬉しいですよ。ただちょっと反応に困ると言うか、どういう顔をするべきか……」

「……! 笑えばいいと思うよ」

「ここだ! みたいな顔しないでくださいよ、なんかムカつく」

プレゼントを渡し終えた上に某名台詞まで言えて歌見は実に満足そうだ。

「次はアキくんっすね、アキくん、プレゼント渡すっすよ」

「月で目覚めた訳だ」

「そういや色合いいい感じ……って怒りますよ先輩」

「にーに、おたんじょーび……おめでとー、です。ぷれーでん、と? あげるっす」

何を言って渡すかはレイに教わったのだろうか? 口調が移っている。

「やりましたね水月、大統領就任です」

「プレジデントじゃないんだよ。ありがとうなアキ、開けてもいいか?」

俺が何を聞いているのか分からなかったようでアキは返事をしなかったが、俺をじっと見つめていることからプレゼントのリアクションを楽しみにしていると察せる。

「開けるぞ」

俺は受け取ったプレゼントの小ささと重さに戸惑いながら包装紙を丁寧に剥がしていった。
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