上 下
352 / 1,971

第二の家にただいま

しおりを挟む
電車内でリュウを抱いた、しかもリュウが眠っている間に挿入してしまうという下衆な犯罪行為をしてしまった。射精後の賢者タイムは俺の自己嫌悪を深く重いものにした。

「水月ぃ、着いたで」

「あ、あぁ……」

「まだケツ痛いんか? 思いっきり打っとったもんなぁ」

「いや……もう平気だ」

射精直後に尻もちをついた俺を心配してくれているリュウの手を借り、立ち上がって電車を降りた。駅に人影はない。

「……っ、とと……すまん、まだちょっと足が……なんか」

「掴まれ」

ふらついたリュウの背に腕を回し、首に掴まらせ、膝の裏に腕を通して抱き上げる。つまりお姫様抱っこだ。

「あっ……おおきに。別に歩かれへんってほどでもないんやけど」

「恋人にお姫様抱っこしてやるってのは男の夢なんだよ」

「……そぉ? へへへ……俺はされる方が好き」

こつん、と俺の胸に頭を押し付けるリュウは緩んだ笑顔を浮かべている。こんな可愛い顔を見下ろせるのなら、お姫様抱っこくらい何度だってやってやる。



レイの家に帰ってすぐ、リュウと二人で風呂に入った。五度注いだ精液を掻き出すため、胡座をかいた俺の上に座ったリュウの後孔にシャワーを当てながら三本の指で穴を掻き回した。

「……っ、あ……んんっ! ぁひっ……ひ、ぁあ……!」

「全部出たかな?」

「わからっ、ぁ、んっ! 拡げんの嫌やぁ……!」

「拡げないと出ないだろ。一回見るから立ってくれ」

震える足で立ち上がったリュウの尻を鷲掴みにして割れ目を開き、ヒクヒクと震えている後孔を間近で見る。目で見える範囲に俺の精液は残っていない。

「大丈夫そうだな。腹に残ってると腹痛くなるらしいし、あんまり中出しはしない方がいいんだけど……まぁ、今日は初めてだったからな。次からはゴム付けるよ」

「えー……ええやん子供出来へんねんし、今んとこ病気とかもあらへんし……水月のんがドロって注がれとる感覚好きやねん。腹痛も一回味わってみたいわぁ」

「そういう痛みでもいいのかよ……」

「水月のんが原因やったらどんなんでもええの」

汗、精液、砂などで汚れた身体を洗い、湯船に浸かる。もちろん二人一緒に、足を伸ばした俺の上にリュウが座る形でだ。

「温かいなぁ……寝てしまいそうやわ」

リュウの腹に腕を回し、もう片方の手ですべすべの太腿を撫でる。湯に浸かっているのもあってかリュウは俺の愛撫に興奮せずリラックスしているようだ。

「リュウ、お前今日は泊まるんだよな。明日はどうするんだ?」

「んー……ま、適当に明るいうちに帰るわ」

「朝飯は食うよな。目玉焼きは半熟でいいか?」

「両面焼きで頼むわ、堅焼きな」

なんて話をしているうちに身体が温まったので風呂を上がり、今度は身体を拭きながら話した。

「立てるか?」

「もう大丈夫やて。あ、なぁ、病院の子ぉどうなったん?」

「あぁ、一応キスは出来たよ」

「順調やん! やったなぁ水月、その調子やで」

「…………うん」

中学時代の記憶を捨てようとするのはやめたけれど、彼氏達に話そうとは一生思えないだろう。中学時代の前提がなければ伝わらない心配事なんて話せない。

「お湯先もろたで~。やー綺麗でええ風呂やったわ」

「俺一人だと結構長風呂するタイプなんでお二人は先に寝といていいっすよ」

「ほんま? おおきになぁ」

今日泊まると決めていたリュウは着替えや歯ブラシなどのお泊まりセットをちゃんと持ってきていた。寝支度をさっさと済ませたリュウと共に寝室に入ると、ベッドに座ってスマホを弄っていたアキが立ち上がった。

「にーに、てんしょー、一緒寝るするです?」

「あぁ、レイの隙間これくらいでいいかな? ちょっと狭いな」

「いっつも三人で寝とるん?」

「レイ元々一人暮らしだからさ、他に寝具ないんだよ。家から布団持ってきてもいいんだけど……幅足りてるからこのままでいいかなって」

四人となると流石に密着しなければならない。俺はレイのスペースを確保して仰向けに寝転がり、リュウに腕枕をしてやった。

「へへへ……あ、ほいで俺がアキくんに腕枕したったええねんや。アキくーん、おいで~」

リュウが腕を広げるとアキは彼の腕を枕にし、服をきゅっと掴んで抱きついて胸に頭を擦り寄せた。俺が腕枕をした時と全く同じ仕草にショックと嫉妬が沸き上がる。

「おー、かぁいらしいなぁアキくん、めんこいめんこい」

「てんしょー」

「ん? よしよししてくれるん? へへ……嬉しいわぁ」

まずリュウがアキの頭に頬擦りをし、アキは笑顔でリュウの頭を撫でた。リュウは心地良さげに頬を緩ませている。

(カワヨ……尊い、尊尊空間でそ、穢してはいけませんぞ)

嫉妬などという醜い感情は尊い光景の前に掻き消え、俺という肉欲の塊のような人間の存在も限りなく薄くなった。

「あ、せや水月聞いてやぁ」

観察者に徹しようとしていたのにリュウに話しかけられてしまった、当然これはこれで嬉しい。

「今日アキくんに迎えに来てもろたやん。あん時またやかられてん」

「……やかられる」

聞き慣れない言葉だな。方言だろうか。

「この町てホンマに金髪厄介招きよんねんなぁ。殴られかけてんけどな、アキくんが助けてくれてん。ホンマすごかってんで」

不良に絡まれた的な意味だったのかな? 後で調べておこう。

「あぁ、アキはすごいんだよ」

「ぱこんってやってなぁ、肘外してまいよってんで。すごいやろ。人の関節外れるん初めて見たわ」

「ひ、肘外す……? それは見たことないなぁ……」

「そん後もう一人の顎すこーん蹴ってまいよるしなぁ、すごかってんでホンマ、普通人の頭蹴る言うたらハイキックやん、回し蹴りやん、アキくんまっすぐ足上げよってん、すごいわホンマ」

そのバレエのような足の動きから繰り出される蹴りは俺も見たことがあるし、三角飛びで人を抱きとめつつ着地が可能なのも知っているが、まさか人の関節をあっさり外してしまえるとは……他人の関節を外すだなんて、ただ運動神経がいいだけじゃ出来ない芸当だ。

(人の関節の外し方を学ぶ機会ってあります?)

ラグビーなんかをやっていると肩が外れやすくなったり、はめるのに慣れたりするとは聞くが……アキはそういうスポーツ系の体格じゃない。

「……なんでアキ、関節の外し方とか知ってるんだろう」

「護身術とか習ってたんとちゃう? 可愛いし」

それならいいのだが。

「……ふわぅ…………んー……」

「お? アキくんもう眠いか。よっしゃ、ねんねしよな~」

リュウは欠伸をしたアキを抱き締め、子供を寝かしつけるように頭と背をぽんぽんと撫でた。俺もそろそろ寝ようかな。
念のため寝る前にスマホを確認すると数時間前にハルからのメッセージが来ていた。

「お、個チャか……」

グループチャットではなく個人チャットだ。

『みっつーん』
『土曜日空いてない?』
『前に言ってたアレお願いしたいんだけど』

『空いてるよ。適当な時間にソレ持って戸鳴町駅に来てくれ、駅まで迎えに行くから着いたら連絡するんだぞ』

夜遅くに返信してしまったからか、返信どころか既読もつかない。ハルももう寝ているのだろうと予想し、スマホを置いて部屋の灯りを消した。
しおりを挟む
感想 440

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...