冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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おまけ

おまけ 治安の悪い町の歩き方

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前書き
※ リュウ視点。334話「胎動するトラウマ」にてお見舞いに行く水月と別れ、レイの家に向かうリュウのお話。本編とは何の関係もありません、ただのおまけです。



二週連続日曜日に来た覚えのある隣町。過保護な水月に駅で待つよう言いつけられとるけども、迎えに来てくれよるはずのアキの姿はまだ見えへん。

「駅や言うても駅のどこら辺か……ぉ?」

駅構内から出て、ハルがナンパされた自販機の前を通る。駅で待ち合わせとる以上、駅が見えん場所まで離れるんは良ぉない。

「ぅうん……ちゃんと伝わっとるんやろか」

水月からアキにちゃんと話が通っとんのかを心配しぃ出したその時、車道を挟んだ向こう側の歩道に日傘を差した全身黒づくめの怪しい少年を見つけた。

「おっ、アキくーん! アキくーん! 俺や! 天正や! こっちやで~!」

「…………! てんしょー!」

スマホ片手にふらふらと歩いとったアキは俺を見つけて手を振った。大方駅の場所が分からんとマップアプリにでも頼っとったんやろう。
アキが渡ろうとしとる横断歩道のとこへ行くため、歩道の柵ギリギリに立つんをやめて一歩下がる──ドン、と後ろに居ったらしい男にぶつかってもうた。

「あ、すまん」

「……あぁ!? んだてめぇコラ!」

「おぉっ……分かりやすいチンピラやのぉー……すまんて、後ろ見てへんかってん。堪忍してぇや」

こんなことにならへんようにと水月がアキに頼んでくれたんに情けない。アキがこっち来るまでに対処せなアキにまで危害が及んでまう。

「ん……? あっ、す、すいません! センパイのセフレさんっすよね」

「はぁ? なんやねん急に……」

何がなんやらよう分からんが、見逃してくれるんやったら乗らん手はない。

「あーそやそやせんぱいさんのせふれさんや。ぶつかってすまんかったわ、通してや」

「は、はい……すいませんでした」
「おい待てよ、センパイのはこの人だぞ」

不良は二人組やったらしく、もう片方が今俺に謝った方にスマホを見せた。

「……全然違うじゃねぇか! てめぇ誰だ!」

「知らんがな! なんやねん離せや!」

「つーかこの人今行方不明だしな。この町で平気で金髪で居るってことは他の町のモンだろ。センパイんとこ連れてきゃご褒美もらえるんじゃねぇか?」
「あー……そっか、そうだな、評判立ちすぎて最近金髪居ねぇもんな。センパイ機嫌悪くてたまんねぇし、それ名案」

詳しいことは分からへんままやけども、この町で金髪晒して歩く言うんはホンマに良ぉないことらしいいうことはよぉ分かった。
どないする? 先手を打ってぶん殴ってアキを連れて逃げるか──

「てんしょー! お待たせするしたです、来るするしたです」

「ぁ? んだコラァ!」
「てめぇの知り合いか?」

「ア、アキくん……ちょおどっか交番にでも」

「てんしょー、ともだちです?」

「いや友達やのぉて、交番……」

交番と連呼したんが気に入らんかったんか不良の一人が俺の胸ぐらを掴み、もう片方の手で握り拳を作った。水月以外に殴られるんはもう嫌や、けどこれは避けられへん。目を閉じて歯を食いしばる……が、いつまで待っても痛みが来ぉへん。

「……っ、え……?」

黒い薄手の手袋に包まれた手が拳を止めとった。アキの思わぬ反射神経に驚いたんも束の間、日傘を肩に引っ掛けたアキはもう片方の手で男の腕をポンと叩いた。

「あっ……? ぇ……ま、曲がらっ、はっ? お、折れた! 折りやがったぁっ!」

「……大袈裟言うダメです。外すするしたです」

アキの手が離れた途端男の手はぷらーんと垂れた。肘の間接を外した……んかな? 呆然とする俺の手をアキが握った。

「てんしょー、行くです」

「なっ、待っ……!」

肘の間接を外されたんとちゃう方の不良が追いすがる──か思たら次の瞬間には不良は上を向いとった。その真下にはアキの足……アキが顎を蹴り上げたんは明白やった。

「собака……てんしょー、行くです」

普通ハイキックと言やあ回転を加えたもんや、こめかみやら頭の側面やらを狙うもんや。せやけども今アキが見せてくれたんは違う、真っ直ぐやった。缶蹴りでもするみたいな、蹴る足以外が一切動かん見慣れへん動きやった。あんな予備動作のあらへん蹴りそうそう避けられるヤツぁ居らんやろう。

「お、おぉ、アキくん強いんやねぇ」

コサックダンス? やったかを踊れるんはこないだ見せてもうたから知っとるけども、膝を伸ばしたまんま股関節を曲げるだけで人の頭を真下から蹴り飛ばすやなんて、そんなとんでもない真似まで出来るたぁ思てへんかった。

「傘入るするです?」

「おぅ、あんがとさん。傘持つわ」

アキが日傘の影からはみ出さんようにしつつ、この町で悪目立ちする金髪が隠れるように日傘を自分に引き寄せた。

「……? てんしょ~」

俺が日傘の下に隠れたがっとるんが分かったんか、アキは俺の腕にぎゅーと抱きついて全身を擦り寄せてきよった。

「おぉぉ……アカンでアキくん可愛いんやからそんな人懐っこぉしたら」

抱きつかれてへん方の手でアキの頬をぷにっとつついてみたら、アキは楽しそうに笑いよる。ホンマに人懐っこい子や。

「……目ぇ見えてへんのがもったいないわぁ」

水月のカッコ良さをちょい減らして可愛さを足したような顔をしとるアキにはついついときめいてまう。サングラスをかけとるんをもったいない言うか、かけとって助かった言うか……まぁ、弟と軽ぅイチャついた程度で怒るような水月とちゃうし、お仕置きプレイもええかもしれん。

「んふふ……俺て便利な男やなぁ」

駅からこのめんが住んどるマンションまでは、可愛いアキを愛でて歩いとったからか時間を忘れてもうてえらい近くに感じた。

「いらっしゃいっすリュウせんぱい! 無事に着いてよかったっす、俺ちょっと仕事……大事な用事があって部屋にこもらなきゃならないんで、おもてなしとかは出来ないっす。申し訳ないっす」

「ええてええて、俺が無理言うて来てんねんしな」

このめんはパソコンやらが置いとる部屋に引っ込んだ。水月が病院の見舞いから帰ってくるまでは暇やな。

「てんしょー、てんしょー、何するです?」

「ん? おぉ……暇やな、何しよか。遊ぼかアキくん。あーそーぶ」

「……! 遊ぶです! てんしょー!」

アキは満面の笑みで俺の両手を握り、ぶんぶんと上下に振りよった。
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