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すれ違っているが問題はない
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顔にべっとりと付着した精液を手で拭う。その白さは人類共通だろうにアキらしさを感じた。
《エッロ……》
アキがじっと俺を見つめているのに気付いた俺は、舌を必要以上に伸ばしてアキに見せつけるように自分の手を舐め回した。
《飲んじゃうのかよ、激烈エロいわ》
「んっ……顔、綺麗になったかな」
一応ウェットティッシュで顔全体を拭き、さっぱりした状態でアキに向き直った。
「……そろそろ晩ご飯の時間だな。食べる、するぞ」
「да! 行くです、にーに」
立ち上がるとアキが俺の左手を握った。手を繋いでダイニングに入ると、いつの間にか帰っていたらしい義母が皿を運んでいた。
「あ、おかえりなさい葉子さん」
「ただいま。あ……アキ慰めてくれたの?」
「はい。ちょっと誤解があったみたいで……俺に嫌われてると思っちゃってたので、ちゃんと話し合って仲直りしました。俺もロシア語覚えるべきですかね、コミュニケーション上手く取れなくて」
「……水月くんに嫌われてるって思って泣いてたの? アキが?」
義母は驚いた顔で俺とアキを交互に見つめている。会ったばかりの兄にそこまで思い入れがあるのはおかしいと感じたのだろうか? 俺の嘘は不自然だったのか? 緊張から手のひらに汗が滲んできた。
「え、えぇ……そうだと思います。翻訳アプリが間違っていなければ。何か変ですか?」
「…………なんでもない。アキのこと可愛がってあげてね」
そりゃもちろん、夜の方でも。なんて正直な返事はせずに席に着き、キッチンでの母と義母の会話に耳を澄ませる。
「唯乃ぉ、アキが変なのよ。アキって嫌うヤツには嫌わせておけって言うか……媚びない子なの。自己中で、周りを気にしない子で……なのに、水月くんに嫌われたかもって勘違いして泣いてたって言うのよ。本当かしら、そんなアキ全然想像出来ない」
嘘の物語を作るのは難しいしリスクが高いからと恋愛関係を伏せてほとんど事実を話したのだが、伏せた部分が不自然さを出してしまったようだ。俺の失敗だな。
「それ、他人の話でしょ? 私も他人にどう思われようとどうでもいいけど、葉子や水月、アキくんに嫌われたらすごくショックよ。アキくん水月のこと本当にお兄ちゃんとして好きなのね」
「……そう、なのかな。アキは……私も、旦那、ぁ、元旦那も、どうでもよさげなんだけど」
「思春期の子は親に反発するものよ、辛いかもしれないけど、健全な成長の証拠」
俺してないかもしれない。
「……水月くんいい子じゃない、私も水月くんみたいな子が欲しかった」
「そう思うのはきっと、水月がまだ緊張してるからね。猫被ってんのよ」
「そうなの……? もうよく分かんない、唯乃に頼りきりになっちゃうかも」
「っしゃキタコレ……! じゃなくて、任せて、葉子」
アキは周りを気にしない子、か。いいじゃないか、超絶美形の天使なアキが誰彼構わず好かれようと微笑みを振りまいたら人生が狂う人間が大量に出てしまう。義母は自己中心的なんて評していたが、自分をしっかり持っているということだろう? そういう子、俺は好きだ。
「ふふ……なぁ、アキ……アキ? こら、先に食べちゃダメだぞ」
つまみ食いをしていたアキを注意すると、彼はイタズラっ子のような笑顔を浮かべて俺の口に食べかけのハムをねじ込んできた。共犯だとでも言うのだろうか?
「……ったく」
天使のような見た目通りではない、年齢に合った性格をしているようだ。
夕食の後、すぐに部屋に戻った。アキはサングラスを外して赤い瞳で俺を見つめる。虹彩も瞳孔も血のように赤い、アニメによく居るアルビノキャラとは違って瞳孔までも真っ赤なのは新鮮さがあっていい。
(まぁちゃんと瞳孔まで赤いアルビノキャラも居るんですがね)
綺麗な肌はすぐに色付く。照れやすいのではなく色素が薄いから微かな紅潮でも分かりやすいだけだと分かっていても、俺に照れてくれているのだと嬉しくなってしまう。
(そんなに見つめちゃ恥ずかしいよお兄ちゃん……って感じですかな!? でゅふふふ)
じっと俺を眺めて顔を赤くしたアキに俺は勝手な解釈をして喜んだ。
《あぁ、クソ……いいツラしやがって。何俺見てゆるっゆるの笑顔してんだよ、可愛いなクソ。あぁもう兄貴可愛い、興奮してきた、ヤりてぇ~……》
(まぁ本当に恥ずかしがってたら目を逸らすなり何なりしますよな。だから照れとかじゃないんでしょうけど、他に顔を赤くする理由って……? 緊張とか? 緊張してるならガン見しないでしょうから、これも違いますな。怒ってるとか? いやいや)
怒る理由に見当はつかないが、顔を赤くしてじっと見つめめるのは怒りを示す仕草に思える。
「アキ……ぁー、なんで、俺、見る、するんだ?」
「にーに、可愛いです」
可愛い? 俺が? 綺麗とかカッコイイではなく? 日本語での細かいニュアンスがまだ分からないのかな?
「ありがとう。キスするか?」
背を少し曲げて顔を近付けてみると、アキの方から俺の首に抱きついてキスをしてくれた。
「……にーに、すきです」
照れさせてやろうと思ったのだが、積極的なアキはキス程度では照れてくれないらしい。
(何なら照れますかな。迫って嫌がられたり怖がられたりするのはダメですし、目の前で脱いでみるとか? いや、不自然ですな)
考え込んでいるとスマホにメッセージが届いた、母から「とっとと風呂に入れ」とのお達しだ。
「アキ、お風呂先に入るか?」
「……おんせん、です。にーに、おんせんするです!」
「えっと……俺と一緒に入るのか?」
「にーに、ぼくいっしょする、嫌です?」
「まさか! 嬉しいよ。一緒に入ろう」
恋人関係になって一日どころか数時間しか経っていないのに一緒に風呂に入ろうと誘ってくれるだなんて、積極的にも程がある。
(アキきゅんの裸! 裸! 今まで全然見れてこなかった裸がとうとう見れますぞぉお!)
《やっと兄貴の裸体が拝める、温泉様々だぜ。温泉文化最高だな》
通じ合えないながらに愛し合い始めた俺達は着替えを持って手を繋いだ。
(すぐイラマされちゃったので、アキきゅんのかわゆいてぃんてぃんちゃんと見れてないんですよな。裏とか玉とか見たいのですが、風呂で自然に見るのは難しいですかな)
《兄貴のチンポもっかい見てぇな。つーか兄貴にもっとガツガツ来て欲しいんだけど……ケツかな、やっぱ。ケツ見せときゃ襲ってくるか。よっしゃ》
俺が淫らなことばかり考えているなんて知ったら、アキは俺に幻滅するのだろうか。
《エッロ……》
アキがじっと俺を見つめているのに気付いた俺は、舌を必要以上に伸ばしてアキに見せつけるように自分の手を舐め回した。
《飲んじゃうのかよ、激烈エロいわ》
「んっ……顔、綺麗になったかな」
一応ウェットティッシュで顔全体を拭き、さっぱりした状態でアキに向き直った。
「……そろそろ晩ご飯の時間だな。食べる、するぞ」
「да! 行くです、にーに」
立ち上がるとアキが俺の左手を握った。手を繋いでダイニングに入ると、いつの間にか帰っていたらしい義母が皿を運んでいた。
「あ、おかえりなさい葉子さん」
「ただいま。あ……アキ慰めてくれたの?」
「はい。ちょっと誤解があったみたいで……俺に嫌われてると思っちゃってたので、ちゃんと話し合って仲直りしました。俺もロシア語覚えるべきですかね、コミュニケーション上手く取れなくて」
「……水月くんに嫌われてるって思って泣いてたの? アキが?」
義母は驚いた顔で俺とアキを交互に見つめている。会ったばかりの兄にそこまで思い入れがあるのはおかしいと感じたのだろうか? 俺の嘘は不自然だったのか? 緊張から手のひらに汗が滲んできた。
「え、えぇ……そうだと思います。翻訳アプリが間違っていなければ。何か変ですか?」
「…………なんでもない。アキのこと可愛がってあげてね」
そりゃもちろん、夜の方でも。なんて正直な返事はせずに席に着き、キッチンでの母と義母の会話に耳を澄ませる。
「唯乃ぉ、アキが変なのよ。アキって嫌うヤツには嫌わせておけって言うか……媚びない子なの。自己中で、周りを気にしない子で……なのに、水月くんに嫌われたかもって勘違いして泣いてたって言うのよ。本当かしら、そんなアキ全然想像出来ない」
嘘の物語を作るのは難しいしリスクが高いからと恋愛関係を伏せてほとんど事実を話したのだが、伏せた部分が不自然さを出してしまったようだ。俺の失敗だな。
「それ、他人の話でしょ? 私も他人にどう思われようとどうでもいいけど、葉子や水月、アキくんに嫌われたらすごくショックよ。アキくん水月のこと本当にお兄ちゃんとして好きなのね」
「……そう、なのかな。アキは……私も、旦那、ぁ、元旦那も、どうでもよさげなんだけど」
「思春期の子は親に反発するものよ、辛いかもしれないけど、健全な成長の証拠」
俺してないかもしれない。
「……水月くんいい子じゃない、私も水月くんみたいな子が欲しかった」
「そう思うのはきっと、水月がまだ緊張してるからね。猫被ってんのよ」
「そうなの……? もうよく分かんない、唯乃に頼りきりになっちゃうかも」
「っしゃキタコレ……! じゃなくて、任せて、葉子」
アキは周りを気にしない子、か。いいじゃないか、超絶美形の天使なアキが誰彼構わず好かれようと微笑みを振りまいたら人生が狂う人間が大量に出てしまう。義母は自己中心的なんて評していたが、自分をしっかり持っているということだろう? そういう子、俺は好きだ。
「ふふ……なぁ、アキ……アキ? こら、先に食べちゃダメだぞ」
つまみ食いをしていたアキを注意すると、彼はイタズラっ子のような笑顔を浮かべて俺の口に食べかけのハムをねじ込んできた。共犯だとでも言うのだろうか?
「……ったく」
天使のような見た目通りではない、年齢に合った性格をしているようだ。
夕食の後、すぐに部屋に戻った。アキはサングラスを外して赤い瞳で俺を見つめる。虹彩も瞳孔も血のように赤い、アニメによく居るアルビノキャラとは違って瞳孔までも真っ赤なのは新鮮さがあっていい。
(まぁちゃんと瞳孔まで赤いアルビノキャラも居るんですがね)
綺麗な肌はすぐに色付く。照れやすいのではなく色素が薄いから微かな紅潮でも分かりやすいだけだと分かっていても、俺に照れてくれているのだと嬉しくなってしまう。
(そんなに見つめちゃ恥ずかしいよお兄ちゃん……って感じですかな!? でゅふふふ)
じっと俺を眺めて顔を赤くしたアキに俺は勝手な解釈をして喜んだ。
《あぁ、クソ……いいツラしやがって。何俺見てゆるっゆるの笑顔してんだよ、可愛いなクソ。あぁもう兄貴可愛い、興奮してきた、ヤりてぇ~……》
(まぁ本当に恥ずかしがってたら目を逸らすなり何なりしますよな。だから照れとかじゃないんでしょうけど、他に顔を赤くする理由って……? 緊張とか? 緊張してるならガン見しないでしょうから、これも違いますな。怒ってるとか? いやいや)
怒る理由に見当はつかないが、顔を赤くしてじっと見つめめるのは怒りを示す仕草に思える。
「アキ……ぁー、なんで、俺、見る、するんだ?」
「にーに、可愛いです」
可愛い? 俺が? 綺麗とかカッコイイではなく? 日本語での細かいニュアンスがまだ分からないのかな?
「ありがとう。キスするか?」
背を少し曲げて顔を近付けてみると、アキの方から俺の首に抱きついてキスをしてくれた。
「……にーに、すきです」
照れさせてやろうと思ったのだが、積極的なアキはキス程度では照れてくれないらしい。
(何なら照れますかな。迫って嫌がられたり怖がられたりするのはダメですし、目の前で脱いでみるとか? いや、不自然ですな)
考え込んでいるとスマホにメッセージが届いた、母から「とっとと風呂に入れ」とのお達しだ。
「アキ、お風呂先に入るか?」
「……おんせん、です。にーに、おんせんするです!」
「えっと……俺と一緒に入るのか?」
「にーに、ぼくいっしょする、嫌です?」
「まさか! 嬉しいよ。一緒に入ろう」
恋人関係になって一日どころか数時間しか経っていないのに一緒に風呂に入ろうと誘ってくれるだなんて、積極的にも程がある。
(アキきゅんの裸! 裸! 今まで全然見れてこなかった裸がとうとう見れますぞぉお!)
《やっと兄貴の裸体が拝める、温泉様々だぜ。温泉文化最高だな》
通じ合えないながらに愛し合い始めた俺達は着替えを持って手を繋いだ。
(すぐイラマされちゃったので、アキきゅんのかわゆいてぃんてぃんちゃんと見れてないんですよな。裏とか玉とか見たいのですが、風呂で自然に見るのは難しいですかな)
《兄貴のチンポもっかい見てぇな。つーか兄貴にもっとガツガツ来て欲しいんだけど……ケツかな、やっぱ。ケツ見せときゃ襲ってくるか。よっしゃ》
俺が淫らなことばかり考えているなんて知ったら、アキは俺に幻滅するのだろうか。
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