冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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давай трахаться

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委員会の後、バイトを済ませた俺は家路を急いだ。アキは俺に恋をしてくれていた、まだ確証はないのに俺は今度こそそれが真実だと思い込んで息苦しさも疲れも忘れて走った。

「た、ただいまっ……」

息を切らして玄関扉を抜け、しっかりと鍵をかけてから靴を脱ぐ。カチャ……と控えめな音がして、俺の部屋の扉が開く。

「にーに?」

もう一度「ただいま」と言うとアキはハッとして「おかえりなさいです」と言いながら俺の目の前までやってきた。いつもならハグをしてくれるのだが、今日は何やら躊躇っている様子だ。

「……アキ、おいで」

両手を広げて微笑んでみるとアキは恐る恐る俺に抱きついてきた。強く抱き返してやるとアキの手にも徐々に力が入る。

「部屋、行こう」

「да」

「……それイエスって意味でいいんだよな?」

アキと共に部屋に入り、クッションを彼に譲って俺は床にそのまま腰を下ろした。鞄を置いてアキを見つめる。サングラスを外した彼の瞳は赤い、虹彩と瞳孔は元から赤いが、今は白目まで赤くなっている。俺のせいだ、俺が泣かせてしまったからだ。

「………………えっと」

何から説明するべきだろう、先にアキの気持ちを確かめるべきだろうか。アキに意図が伝わるように簡単な日本語で話しても、その返事が拙い日本語で行われてはアキの意図が俺に伝わらないかもしれない。言語の壁は高く分厚い。

(まずわたくしのことを怖がっていないかの確認と、わたくしのことを好きかどうかの確認……家族愛なのか恋愛的な感情なのかの確認も…………面倒くせぇですぞ! わたくしは超絶美形、賭けに勝つのが超絶美形の務め!)

言語の壁がなんだと言うんだ、愛に言葉は必要ない、愛に性別も人種も関係ない、愛は目と態度で交わすのだ! と一人で勝手にテンションを上げた俺はアキの肩に手を添え、ベッドに押し付けた。

「嫌なら抵抗してくれ、すぐやめるから」

ゆっくりと顔を近付け、アキの頬に唇を触れさせる。赤い瞳からは驚きなどが感じられるが、嫌がる様子はないので今度は唇にキスをしようと覚悟を決め、唾を呑んだ瞬間、アキに顔を掴まれてキスを返された。しかも唇にだ。

「……っ!? ア、アキ……!」

本当に両思いだったのかと感動する暇もなくアキは脛を俺の股間に押し付けた。キスの緊張と興奮で半勃ちになっている陰茎の硬さを確かめるようにぐりぐりと足を揺らされ、乱雑な快感に思わず吐息が漏れた。

「…………にーに、嘘つくするです」

「へっ? 嘘? 嘘なんて……あっ」

もしかして、アキを性的な目で見ることは出来ないと言ったことか? キスだけで勃起なんて童貞臭いところを見せてしまってはアレが嘘だと簡単に分かるだろう。

「にーに、ぼくいいです。嘘つくするダメです」

「……ごめん。アキは、俺にそういう意味で好かれるの嫌なんじゃないかと思ってた」

「謝るしたです、許すです」

「…………ありがとう」

アキは俺に恋をしてくれている、言葉で確認する必要はもうない。けれど彼氏がたくさん居ることや、アキにもハーレムに入って欲しいことは言葉で説明しなければならないだろう。

(ロシア語にハーレムとかあるんですかな、一夫多妻制って中東あたりのイメージありますが、言葉くらいは伝わってるでしょうか……ちゃんと翻訳されてるかどうかって翻訳後の文章見ても分からないんですよな、分かるなら翻訳アプリなんて要りませんしな)

歌見を怒らせ、泣かせた経験から俺はハーレムについて説明して受け入れてもらうまでは手を出してはいけないと考えている。キスまではセーフだが、性器に直接触れるのはアウトだ。

「えっと……トイレ行ってくるよ」

ハーレムの説明の仕方は母に相談しよう、母が帰ってくるまでアキには触れないでいよう。
俺はまず勃っている陰茎を落ち着かせるためトイレに行こうとしたが、立ち上がってすぐにアキが腕にぎゅっと抱きついてきた。

「アキ? お兄ちゃんトイレ行きたいんだけど」

《トイレぇ? バカ言うなよ兄貴、自分のモンから何が出そうかも分かんねぇのかよ。ヤりたいんだろ? 彼氏居るからって躊躇うなよ、ヤれよ俺をよぉ》

「ロシア語お上手ですね……」

《俺が寝てる隣でヤるような兄貴が貞淑なワケねぇよな、俺とヤろうぜ。大丈夫バレねぇって。俺秘密にするから。な? ヤろ》

全身で擦り寄りながら猫なで声で話しかけてくれているが、肝心の内容が分からない。

「давай трахаться! にーに!」

困り果てた俺に天の助け、もとい母が帰宅したらしき物音が聞こえてきた。俺はアキに抱きつかれたまま半ば強引に部屋を出て母を出迎えに行った。

「おかえりなさいませおかーたま」

「ただいま」

母に渡された荷物をキッチンに運び、早速母に相談を開始する。

「ママ上ママ上、アキきゅんと両思いっぽいのですが言葉がイマイチ通じず確証が持てなくて怖いのでそ。後ハーレムについて説明しつつハーレムに入るかどうかも聞きたいのですが翻訳アプリそのままで大丈夫でしょうか」

「にーに~……давай трахаться」

子供がおやつをねだるようにアキは俺に何かを伝えようとしている。

「ついでに今のの翻訳もお頼み申す」

「ファックしようぜ、かしらね」

「アキきゅんがそんなこと言うかァ!」

きっと母の悪意が足されたか、直訳のせいだ。翻訳された結果情緒が失われるのはままあることだ。

《アキ、水月とヤりたい?》

《ヤりたい》

「アキ、アンタのこと好きだってさ」

「それは家族や兄弟的なアレではなく……?」

「恋愛的とか性的とかのアレよ」

俺は心の中でガッツポーズを決め、アキについた嘘を撤回する言葉の翻訳を母に頼んだ。

《水月が昨日言ったことはだいたい嘘。流石に弟に手ぇ出すのはまずいと思ってたんですって。本当は最初っから手篭めにしたがってたわ》

《マジかよ、我慢強ぇなぁ》

《この間来たレイちゃんが水月の彼氏なんだけど、他にも……五人? 六人? なんかとにかく彼氏いっぱい居るのよ水月は。ハーレム作るとかイカれたこと言ってんの。その割にヘタレだからアキが嫌がらないか気にして手を出すの躊躇ってるみたいだけど、アキはハーレムとかどう思う?》

《ガキがデキる訳でもねぇ男同士で気にすることなんざ性病以外にねぇと思ってる》

《嫉妬とかしない? 家で刃傷沙汰とか嫌よ私》

《ご覧の通りアンタ似の超絶美形なもんで、他の男より構われる自信はたっぷりある。つーか一人と一人でガチガチに縛り合う方が嫌》

《……私の遺伝子って強いわねぇ》

俺には分からない言葉でアキとしばらく会話した後、母はくすくすと笑った。

「ハーレム大丈夫よ、水月。この子かなりアンタのこと好きみたい、責任取ってしっかり食べてあげなさい」

「ハーレムOK!? フォウ! ありがとうございますぞママ上! アキ、えっと……ありがとうな、改めてこれからよろしく」

《晩飯まで時間あるしヤろうぜー?》

アキは俺に抱きつきながら廊下へと押し出そうとしている。二人きりになりたいのだろう、可愛い子だ。性的なことにはまだ躊躇いが大きいだろうから、今日はいつもと同じくらいのスキンシップにキスを足すくらいにしておこうかな。
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