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最悪暴力も考慮する
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電話越しにアキの涙混じりの拙い声を聞いて、俺は自分の酷い勘違いを察した。俺は遠回りをしてきたのだ。
(全然察せてなかった、思い込みでアキきゅんが天使ではないと決めつけて冷たく接して……わたくし最低でそ)
昨晩、俺は自惚れてよかった。アキのことを好きだと言ってよかったんだ。アキは俺を兄としてだけではなく好いてくれていたんだ、いくらスキンシップの文化が日本とは違うと言っても突然出来た兄にあれだけベッタリするのはおかしいと、俺が気付くタイミングは無数にあったはずだ。
右も左も分からない異国に来て、突然出来た兄(超絶美形)に構われたらそりゃ恋をする。兄弟という禁断さなんてスパイスにしかならない。
そんな淡い恋心を自分が寝ている真横で彼氏とセックスをするなんて蛮行で穢され、それでも自分にチャンスがないかと拙い日本語で尋ねてみれば「性的な目では見ていない」なんて酷い言葉を返された。
今朝俺を無視したのはきっと失恋直後で俺の顔を見るのも辛かったからだ。身体を触らせるなんて直接的な方法で誘ったのは俺を諦め切れなかったからだろう。
なのに、俺は……
「……好きだよ。俺は、アキが、大好きだ」
両想いだったのに俺は被害妄想を膨らませてアキを傷付けた。ちゃんと気持ちを伝えなければ。義母との関係なんてどうでもいい、兄弟恋愛は禁断だなんて風潮は無視する、俺は可愛いあの子と愛し合いたい。
「家族、好きです?」
「違う。家族としての好きじゃない。えっと……なんて言えばいいのかな、恋愛的な……うーん、ごめん…………帰る、したら、話す、する」
「……にーに早く帰るです。ぼく、待つするです」
「うん、ごめんな、好きだよ、アキ」
電話を切り、トイレを出る。ため息をつきながら手を濡らし、頬に手を当てて顔を冷やす。
(ふぅー……ふぉお、マジですかアキきゅん。昨日は自惚れててよかったんですな、わたくし超絶美形ですもんな。はー、お義母様の話を聞いてたからつい、アキきゅんも同じだと……)
アキが俺を好いていてくれた感動に打ち震える。同時に昨晩の被害妄想を反省し、今後同じことがないように自身の美しさを自覚し直す。
「俺ってば超絶美形……俺に惚れない美少年なんて居ない。よし!」
自覚が終わったら教室に戻った。
十分間の休み時間は彼氏とイチャついて過ごし、昼休みにはいつも通りシュカを抱いた。そして放課後、俺はシュカに引っ張られて委員会に出た。
「水月、土曜は予定ありますか?」
会議室に着いたが委員会が始まるまでは時間がある、シュカは雑談を選択したようだ。
「弟と過ごそうと思ってたけど、シュカが会いたいって言うなら空けるよ」
「家の用事があるので私は忙しいんですよ、今暇なので聞いただけです」
「そっか。日曜日がカラオケだったよな、楽しみだよ。シュカは?」
「……まぁ、それなりに楽しみにはしていますよ」
会議が始まると選挙管理委員会と候補者に別れることになり、シュカと少し離れてしまった。心細く思いつつシュカに視線を送ると、彼は柔らかい笑みを浮かべた。
「選挙運動期間中の選挙管理委員会の活動は──」
二年生の話をぼんやりと聞きながら候補者達を眺める。シュカに教えられた生徒会長と副会長の最有力候補はすぐに見つかった、美形は目立つものだ。
(TRPGでAPPが高いと隠密が失敗しやすいってのが感覚で分かりますな)
まずは生徒会長候補の紅葉 寝覚だ。
目元まで垂れたウェーブがかかった亜麻色の髪は、後ろはうなじを隠す長さで、彼の高級感のある美しさを支えている。同じ色の睫毛は長く、黒目がちな美しい瞳は優しげなタレ目、通った鼻筋や艶やかな唇も素晴らしく、非の打ち所のない美形だった。言わばこの学園の王子だな。
(お耽美~、えっちなとこが想像しにくいタイプですな。ああいうのを穢すのがまた滾るのでそ)
お次は副会長候補の年積 三冬だ。
紅葉の隣に控えている彼はカンナより背が低い。眉にかかる程度の短い黒髪で、若干くせっ毛。大きな猫目が特徴的な可愛らしい子だ。目付きが悪い訳ではないが、警戒心が強いのか周りを睨んでいる。生意気そうな雰囲気が劣情を煽る。
(お耽美な紅葉サマの露払い気取っちゃってるんですかな!? かわゆす~!)
穏やかに微笑む紅葉と周囲を睨んでばかりの年積には上下関係を感じる。攻略するなら年積からか、それとも紅葉を攻略してしまえば年積もオマケとして着いてくるのか、悩ましい。
(将を射んと欲すればまず馬を射よ、王子を欲すればまず露払いから、でそ!)
年積から攻略すると決め、その後は適当に委員会をやり過ごした。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした……シュカ、帰ろう」
運動場などでクラブ中の生徒達の声が廊下にまで届いてくる。人気のない廊下をシュカと二人で歩きながら、放課後の学校特有の雰囲気を楽しむ。
「……今日はあなたが狙うと言っていた方々が居ましたが、声をかけなくてよかったんですか?」
「同学年ならともかく、一年生から急に話しかけられても困るだろ。あの顔じゃモテるだろうし、下手に声掛けてミーハー扱いはされたくない。俺が惚れて口説くんじゃなく、俺に惚れさせた上で口説かないとハーレム入りは難しいだろ? 何かこう……運命的なものを感じさせる出会い方をしたいな」
「へぇ」
「お前今面倒くさいって思っただろ」
「えぇ」
経験豊富な恋愛初心者のシュカには恋の駆け引きは理解し難いようだ。まぁ、俺もそんな偉そうな顔が出来るようなまともな恋愛経験はないのだが。
(全然察せてなかった、思い込みでアキきゅんが天使ではないと決めつけて冷たく接して……わたくし最低でそ)
昨晩、俺は自惚れてよかった。アキのことを好きだと言ってよかったんだ。アキは俺を兄としてだけではなく好いてくれていたんだ、いくらスキンシップの文化が日本とは違うと言っても突然出来た兄にあれだけベッタリするのはおかしいと、俺が気付くタイミングは無数にあったはずだ。
右も左も分からない異国に来て、突然出来た兄(超絶美形)に構われたらそりゃ恋をする。兄弟という禁断さなんてスパイスにしかならない。
そんな淡い恋心を自分が寝ている真横で彼氏とセックスをするなんて蛮行で穢され、それでも自分にチャンスがないかと拙い日本語で尋ねてみれば「性的な目では見ていない」なんて酷い言葉を返された。
今朝俺を無視したのはきっと失恋直後で俺の顔を見るのも辛かったからだ。身体を触らせるなんて直接的な方法で誘ったのは俺を諦め切れなかったからだろう。
なのに、俺は……
「……好きだよ。俺は、アキが、大好きだ」
両想いだったのに俺は被害妄想を膨らませてアキを傷付けた。ちゃんと気持ちを伝えなければ。義母との関係なんてどうでもいい、兄弟恋愛は禁断だなんて風潮は無視する、俺は可愛いあの子と愛し合いたい。
「家族、好きです?」
「違う。家族としての好きじゃない。えっと……なんて言えばいいのかな、恋愛的な……うーん、ごめん…………帰る、したら、話す、する」
「……にーに早く帰るです。ぼく、待つするです」
「うん、ごめんな、好きだよ、アキ」
電話を切り、トイレを出る。ため息をつきながら手を濡らし、頬に手を当てて顔を冷やす。
(ふぅー……ふぉお、マジですかアキきゅん。昨日は自惚れててよかったんですな、わたくし超絶美形ですもんな。はー、お義母様の話を聞いてたからつい、アキきゅんも同じだと……)
アキが俺を好いていてくれた感動に打ち震える。同時に昨晩の被害妄想を反省し、今後同じことがないように自身の美しさを自覚し直す。
「俺ってば超絶美形……俺に惚れない美少年なんて居ない。よし!」
自覚が終わったら教室に戻った。
十分間の休み時間は彼氏とイチャついて過ごし、昼休みにはいつも通りシュカを抱いた。そして放課後、俺はシュカに引っ張られて委員会に出た。
「水月、土曜は予定ありますか?」
会議室に着いたが委員会が始まるまでは時間がある、シュカは雑談を選択したようだ。
「弟と過ごそうと思ってたけど、シュカが会いたいって言うなら空けるよ」
「家の用事があるので私は忙しいんですよ、今暇なので聞いただけです」
「そっか。日曜日がカラオケだったよな、楽しみだよ。シュカは?」
「……まぁ、それなりに楽しみにはしていますよ」
会議が始まると選挙管理委員会と候補者に別れることになり、シュカと少し離れてしまった。心細く思いつつシュカに視線を送ると、彼は柔らかい笑みを浮かべた。
「選挙運動期間中の選挙管理委員会の活動は──」
二年生の話をぼんやりと聞きながら候補者達を眺める。シュカに教えられた生徒会長と副会長の最有力候補はすぐに見つかった、美形は目立つものだ。
(TRPGでAPPが高いと隠密が失敗しやすいってのが感覚で分かりますな)
まずは生徒会長候補の紅葉 寝覚だ。
目元まで垂れたウェーブがかかった亜麻色の髪は、後ろはうなじを隠す長さで、彼の高級感のある美しさを支えている。同じ色の睫毛は長く、黒目がちな美しい瞳は優しげなタレ目、通った鼻筋や艶やかな唇も素晴らしく、非の打ち所のない美形だった。言わばこの学園の王子だな。
(お耽美~、えっちなとこが想像しにくいタイプですな。ああいうのを穢すのがまた滾るのでそ)
お次は副会長候補の年積 三冬だ。
紅葉の隣に控えている彼はカンナより背が低い。眉にかかる程度の短い黒髪で、若干くせっ毛。大きな猫目が特徴的な可愛らしい子だ。目付きが悪い訳ではないが、警戒心が強いのか周りを睨んでいる。生意気そうな雰囲気が劣情を煽る。
(お耽美な紅葉サマの露払い気取っちゃってるんですかな!? かわゆす~!)
穏やかに微笑む紅葉と周囲を睨んでばかりの年積には上下関係を感じる。攻略するなら年積からか、それとも紅葉を攻略してしまえば年積もオマケとして着いてくるのか、悩ましい。
(将を射んと欲すればまず馬を射よ、王子を欲すればまず露払いから、でそ!)
年積から攻略すると決め、その後は適当に委員会をやり過ごした。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした……シュカ、帰ろう」
運動場などでクラブ中の生徒達の声が廊下にまで届いてくる。人気のない廊下をシュカと二人で歩きながら、放課後の学校特有の雰囲気を楽しむ。
「……今日はあなたが狙うと言っていた方々が居ましたが、声をかけなくてよかったんですか?」
「同学年ならともかく、一年生から急に話しかけられても困るだろ。あの顔じゃモテるだろうし、下手に声掛けてミーハー扱いはされたくない。俺が惚れて口説くんじゃなく、俺に惚れさせた上で口説かないとハーレム入りは難しいだろ? 何かこう……運命的なものを感じさせる出会い方をしたいな」
「へぇ」
「お前今面倒くさいって思っただろ」
「えぇ」
経験豊富な恋愛初心者のシュカには恋の駆け引きは理解し難いようだ。まぁ、俺もそんな偉そうな顔が出来るようなまともな恋愛経験はないのだが。
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