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運命のテスト返し

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アキの後に風呂に入り、アキが一度入った後なのだと興奮して浴槽に溜まった湯を何度もすくって顔にかけた。流石に飲むのは思いとどまった。

「お先です~、おやすみなさーい」

母と義母に一声かけてから部屋に戻り、ストレッチ中のアキに「おかえり」と笑いかけられる。

「ただいま。もう寝るか? 電気消すぞ」

「にーに」

電灯のリモコンを持つとアキが俺の腕を引っ張った。振り向くと胸ぐらを掴まれ、下を向かされて頬にキスをされた。

「おやすみなさいです、にーに」

笑顔でそう言うとアキはベッドに入った。俺はキュン死しそうになりながら布団に寝転がり、電灯のリモコンを操作して部屋を真っ暗に変えた。




翌朝、テスト返しがある木曜日の今日から夏服に更衣だ。長袖のシャツが半袖になり、見た目には分からないがスラックスが薄い生地になった。

「にーに、服違うです」

「夏の服だよ。涼しいんだ」

誰よりも早くアキに夏服をお披露目した。反応は上々だ、露出した腕をきゅっと掴んでいる。

「にーに、転ぶするです。長い服着るする、いい思うです」

「もうコケないよ」

転んで怪我をしたという言い訳のせいか、アキに鈍臭い男だと思われてしまっているようだ。



いつも通り、電車に乗って学校へ向かう。カンナは相変わらず静かだったけれど、挨拶のキスは受け入れてくれた。シュカが合流した後、アキがすごく強いみたいだという話をした。

「昨日来てもらえばよかったですね」

「強くても弟に危険な真似させるのは兄としてなぁ……」

「木芽さんの元カレみたいに別の生き物みたいな人は相手にしたくありませんが、同じくらいの相手だとちょっとウズウズしますね……昨日再燃した喧嘩欲がまだ熱いんですよ。あの三人のせいで暴れ足りなかったので」

「おー、ええやん修羅の国とおそロシア、夢のマッチや」

「何が修羅の国ですか、犯罪発生率ワーストワン府がほざきやがって」

「故郷のディスり合いはやめろ! ったくもう……」

喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったものだ。彼らの関係は友人同士とは呼べないかもしれないが──あぁ、上手く言及出来ないな。とりあえず「ハーレム員同士でのラブとは呼べないイチャつきからしか取れない栄養がある」とでも言っておこうか。



レイと別れ、ハルに挨拶。私語をやめて着席。そして運命のテスト返しが今始まる──

「終わった……グッバイ雄っぱい」

──終わった。中間テストの八教科全てのテストが返ってきた。俺達は昼休みに屋上への扉前に集まって昼食を食べながら結果を話し合った。

「最高点が一番高かったヤツの言うこと何でも聞いてやる、って話だったな。俺の最高点は現国の76点だ」

「…………古文72点」

「あっれあれ~? しゅーが一番のライバルだと思ったんだけどな~。あはっ、まぁ俺に勝てるヤツなんて居ないけどね~! だって俺、100点だもん! 古文! しぐしぐはどうだった? 負けだからもう出さない~?」

カンナは87点を取った数Aのテストを俺達に見せてくれた。ハルは勝ち誇っている。

「リュウは?」

「聞かなくてもいいっしょ、俺満点なんだし俺が優勝!」

「俺数Aと数1両方100点やで」

「はぁ!? 何、賄賂渡した!?」

気持ちは分かるが無礼過ぎる発言だ。数学の特待生とは知っていたが、まさか二つとも満点を取るほどとは……

「同点やったら二番目や言うてたけど、自分二番目は?」

「……現国と総英、両方96~」

驚異的な数字なのにハルの表情は暗い。景品の俺としては嬉しい反応だ。

「ほな俺が一位やな。水月ぃ、俺の言うこと何でも聞いてもらうで」

「……痛すぎるのはナシな」

「…………リュウ英語6点と8点じゃん! みっつんみっつんみっつん~! 総合点にしようよ総合点にぃ~!」

特化型だから出来のいい一教科だけで勝負したいと言っていたのはどこのどいつだ。流石にその変更は認められないが、一位を褒めるくらいはしてやろうと全員の総合点を尋ねた。

「ちなみに俺は342点だ」

「赤点じゃんみっつん……俺は525点」

五十点以下が赤点なので、八教科のテストなので総合点が四百以下だと赤点確定。まぁ、追試が決まるのは期末テストと合わせた結果だからまだ希望はある。

「俺は427や」

「勝ったぁ! しゅーは?」

「………………494ですが、何か。平均の491.8は超えましたよ」

「あはっ、しゅーって見た目ほど頭よくないね~。やなギャップ。みっつんほどじゃないけど……みっつんみっつん、俺総合点は一位だよ~! 俺にもごほーび!」

「……カンナは?」

カンナは申し訳なさそうにハルを見つめた後、八十点以下が存在しない八枚のテストを見せてくれた。

「うっそぉ! えぇ~……うそぉ~……」

「640以上確定だからカンナが総合優勝だな」

「ろ、ぴゃ……ななじゅ、いち」

「671か、すごいなぁ……もしかしたらクラス一かもしれないぞ」

優しく頭を撫でてやりながら「ご褒美は何がいい?」と聞いてやるとカンナは今日初めて笑顔を見せてくれた。
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