冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ヘアセット出来る人〜

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立ち上がってズボンを履き直し、カンナの方へ向かう。

「カーンナっ」

シュカとはヤった、リュウは虐めてやった、レイにはフェラをしてもらった、歌見にはテスト返却までお預けされている。残るはカンナとハルだけで、ハルには俺から迫らない方がよさそうなのでカンナを選んだ。

「今日も今日とて可愛いなぁカンナは、もちもちほっぺ吸わせてくれるだろ?」

左腕を腰に回したまま右手で頬を撫で、違和感を覚える。カンナが無言なのはいつものことだし、緊張して硬くなっているのか抱き寄せられてくれないのもままあること──そうか、頬が熱くないのだ。

「……カンナ?」

俺が触れるどころか近寄っただけでもカンナは顔を真っ赤にして俯く。それなのに今は頬は白さを保ったまま、俯くのではなく目を逸らしている。

「…………ご機嫌ななめかな?」

キスをしようと頬から顎に手を移し、少々強引にこちらを向かせようとすると二つの小さな手に胸を軽く押された。俺の左腕も右手も振りほどけない弱い力だったが、そこには確かな拒絶の意思があった。

「カンナ……どうしたんだ?」

両手を彼から離し、顔を覗き込もうとするとそっぽを向かれた。

「ごめ、なさ……きょ、は…………やだ」

自責の念が強いのだろうか? リュウの誘拐も、俺の怪我も、レイの危機一髪も、全てカンナのせいではないのに……なんて言ったって、気にするなと言いながら無理矢理キスをしたって、カンナの気が晴れることはないのだろう。

「……そっか。分かった、ごめんな。明日はいいかな?」

「…………まだ、分かん……ない」

「帰るまでには少しだけでもその気になってくれないとな。だって、俺達の挨拶はキスだろ? 初めて会った時から欠かしたことないもんな」

「ん…………がん、ばる」

ようやく頬を染めたカンナは俺から三歩ほど離れた。俺は気持ちを切り替えて両手を大きく広げ、爽やかな笑顔を作った。

「ハル、おいで」

俺から触れてはハルの意思に関係なく反射的に怯えてしまうようなので、俺は動かずに待った。頬を赤らめたハルはすぐに俺の胸に飛び込んできてくれた。

「へへー……なぁに? みっつん」

態度と話し方、赤いメッシュと毎日変わる髪型で明るく軽薄な印象があるものの、顔の作り自体はクール系の超美形、それがハルだ。そのハルが俺の腕の中で緩んだ笑顔を見せている。笑顔の根源はおそらく、いや、きっと信頼だ。

「んー? ハルとイチャつきたいと思っただけだぞ」

俺はハルから信頼と笑顔を奪わないよう、ゆっくりと腕を動かして優しく抱き締める。俺の両腕が自身を閉じ込めたことに気付いたハルの表情は一瞬強ばったが、俺の二の腕をきゅっと握るとまた笑った。

「俺もしたーい」

「…………ふふっ」

よかった。受け入れられた。もう少し力を込めても大丈夫だろうか、腰を撫でてもいいだろうか、尻を揉むのはまずい気がする。

「みっつんみっつん、髪触って~。今日は後ろ何もしてないからさ~」

前髪を除いた頭前半分の髪を三つ編みにしつつ後頭部へ回し、左右二本の三つ編みを一つに束ねて結んであるが、頭後ろ半分の髪はそのまま垂らされている。

「みっつんに髪触って欲しくてハーフアップにしてきたんだけど~、似合う?」

「めちゃくちゃ可愛い。ハルはどんな髪型でも似合うよ」

腰まで伸びた髪に指を通す。驚くほどに指通りがいい黒髪は一本一本がしっかりしている。

「もっと頭皮の方から梳いて~?」

「ん……こうか?」

「そぉそぉ」

うなじに触れるギリギリから髪の中へ指を忍ばせ、頭皮を撫で上げ、手を下ろして髪を梳く。

「ん~……みっつんに髪撫でられんの気持ちいい。今度みっつんに髪セットしてもらおっかな~?」

「俺何にも出来ないよ」

「短髪しかしたことない男はだいたい出来ないよね~。この中で出来んの俺くらい……ぁ、このめんは出来る?」

「無理っすよ」

レイは一見半端に長い短髪だが、後ろ髪は伸ばしていて細い髪束がパーカーの中に隠れている。しかしセットするほどの長さではない。

「俺出来るぞ、妹によくやらされてたからな」

「ナナさん出来んの? マジぃ? 意外~、ってか妹居たんだ」

あの甲高い声で喚き散らす妹のことか……と、バイト帰りに歌見の妹と会った日のことを思い出す。レイもきっと思い出している。

「嫌々やってたんだが、やり始めると凝るタチでな。編み込みや結い上げもマスターしてるぞ」

歌見はふふんと得意げな顔だ。可愛い。

「俺姉ちゃん三人も居るんだよね~、男兄弟ちょっと憧れあるかも。えっと、みっつんとしぐは弟居て、ナナさんが妹……他に兄弟姉妹居る人~!」

シュカとレイは無言のまま互いに視線をやる。どうやら二人とも一人っ子らしい。

「リュウは一人っ子だって言ってたぞ」

「マジ!? 歳離れた弟と妹何人か居るイメージあった」

「分かる。俺もそう思ってた。親戚のちっちゃい子の面倒よく見てたんだってさ」

「なる~」

噂をすれば影、とでも言うべきか。リュウがシャワーを終えてリビングに戻ってきた。

「あっ、ねぇねぇりゅー、りゅーって人の髪いじれる?」

「なんやいきなり……人の髪? まぁ結ぶくらいは出来んで。前髪とか」

幼い子供などが前髪が邪魔にならないようにと前髪だけを結び、額を丸出しにしている姿が頭に浮かぶ。

「前髪はこのままがいいかな~。やっぱ準優勝はナナさんかな」

「優勝は?」

「俺!」

「なんの戦いやってたん? 俺負けたん?」

得意げなハルに萌えつつ、ヘアセットの話をしていたんだとリュウに説明し、賑やかな幸せを噛み締めた。
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