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嘘ついたら針千本じゃ許せない
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どうにかバレなかった。その安堵は全員で共有しているものだ。
「……すいませんっす、なんか俺のせいで無駄に緊張させちゃったみたいで、ホント申し訳ないっす」
「本当ですよ。あんな化け物流石にどうしようもありません」
シュカがあっさりと負けを認めるなんて意外だ、それだけ恐ろしい強さだということだろう。
「このめん、アレ元カレなん? 一ヶ月くらい行方不明や言うてたけど、何も言わんと居らんくなったらそらアカンわ。ちゃんと別れる言うたか? 怖いやろからもう電話でもええから言うといたら?」
「えー……このままどうにか死んだ扱いにならないっすかね」
「なんで逃げたわけ~? 一ヶ月もずっと探してるとか、聞いてたより一途な感じでキュンとするけど~」
「騙されないで欲しいっす! くーちゃんは俺のこと都合のいい穴だと思ってるんすよ! だから嫌いなんす、大っ嫌い! お気に入りのオナホ見つからずにずーっとイライラしときゃいいんす!」
レイの剣幕にハルは黙り、すっとリュウの後ろに下がった。
「せんぱい……俺のこと渡さないでくれるっすよね?」
「絶対に渡さないよ、レイはもう俺の彼氏なんだから」
座り込んだままのレイの傍に膝をつき、細身ながらも骨太な身体を抱き締める。フード越しに頭を撫でると首に腕が回されたので唇を重ねた。
「せんぱい……せんぱい、せんぱいっ、好きっす、好き、大好きっす」
重ねた唇を離した後もレイは俺にしがみつくようにして愛を語り続けた。想いを伝えているというより、好きだから捨てないでと言っているように感じる。その必死な様子に胸を打たれ、あの大男への怒りが高まった。
「あぁ……俺も好きだよ、大好きだ。可愛いな、レイ」
頭を撫でながら返事をしてやるとレイは目を見開いて俺を見上げた。死んだ魚のような目で真っ直ぐに見つめられると気圧される。
「本当っすか? 本当に俺のこと好きっすか? 信じていいんすよね、俺調子に乗るっすよ?」
「いいよ。愛されてるって自覚持ってくれ、ワガママも好きなだけ言ってくれ。甘えられるの好きなんだ」
レイは俺の左手を両手できゅっと握る。子供のような仕草にときめき、切り傷を見つめていることに気付くのが遅れた。
「リュウせんぱいのために不良の巣に乗り込んで、シュカせんぱいのためにこんな怪我して……俺を必要に隠してくれた…………せんぱい、口だけじゃないっすよね。本当に愛してくれてる、自信持っちゃうっすよ」
「持って欲しいんだってば」
「…………せんぱいの背中すっごく安心したっす、温かくて、大きくて……ずっと手握っててくれたっすよね、すっごく嬉しかったっす」
背に隠したレイの気持ちが少しでも落ち着くようにと俺は常に片手を後ろに回して繋いでいた。些細な行動を喜んでくれると俺は味をしめて今後も丁寧に接しようと気を張ってしまう。
「くーちゃんに話しかけられてる時は、流石のせんぱいも手ちょっと震えてて……それでも俺を突き出して逃げようとかしなくて……もしあの時俺が見つかってても、せんぱいはシュカせんぱいの時みたいに俺を庇って…………酷い怪我、してたと思うっす」
「あぁ、何十発も殴られて気ぃ失ってもお前を離さなかったと思うよ」
「嬉しいっすけど、怖いっすよ。せんぱいに怪我して欲しくないっす」
「…………怪我、早く手当てしましょう。もうこんな埃っぽいところに居る意味もないでしょう」
彼氏達は皆空気を読んで黙っていたようだが、俺の傷口をずっと睨んでいたシュカが痺れを切らした。
「そうだな、もう行こうか。レイ、大丈夫か? 立てそうか?」
「…………くーちゃんのこと、俺は本当に大好きだったんすよ。でも、くーちゃん的には俺は適当に好きって言って機嫌取る価値もないオナホで……せんぱいは違うっすよね?」
「違うってば……彼氏だと思ってるよ」
何度も確認されて苛立ちが声に混じる。悪いのはレイではなく、こんなに可愛いレイを雑に扱ったあの大男だとすぐに怒りの矛先を変え、泣いているレイに微笑みかける。
「声にも態度にも行動にも出すよ、俺はレイが好きだ」
「……怖いんす。最初は愛されてなくていいって思えるんす、見てるだけでいいって、ただの性欲解消の道具でも触れてもらえるだけで幸せだって思えるんす。なのにどんどん欲深くなって、愛して欲しいって思っちゃって……くーちゃんの時も、せんぱいの時も同じっす。でもせんぱいは俺のこと好きで……好きな人に好きになられたことないから、僕、どうしていいのか……分かんない」
「俺はアイツと違ってレイを愛してるよ。彼氏いっぱい居るから不安かな、ごめんな、でも俺の愛情は割り算じゃなく掛け算だから安心して欲しい。いや……安心させる、誓うよ、愛を証明し続けるって。不満があったら何でも言ってくれ、欲深くていいんだ、ワガママになってくれ、ゆっくりでいいから……ほら、もっと甘えてみろよ」
レイを抱き寄せると彼は俺の胸に顔を押し付けてすすり泣き始めた。
「せんぱいは、せんぱいは……毎日好きって言ってくださいっす。セックスもいっぱいして、でもセックスだけじゃ嫌っす、セックスなしのデートもして欲しいっす。もうくーちゃんの時みたいなの嫌っすぅ……」
「そんなの当然だよ、俺はレイのこと大好きだし大切にする。俺がレイの最後の男だ、もっといっぱい甘えてくれ」
「…………嬉しい。僕のこと、ずーっと大好きでいてね……約束」
レイの本当の一人称は「僕」なのだろうか。後輩っぽい「~っす」という口調もキャラ付けなのだろうか。
「あぁ、約束。指切りでもするか?」
「えへへ……したいっす」
「ん、じゃあ小指出せ。ゆーびきーりげーんまーん……」
心配したり嫉妬したり、身体だけでなく心も疲れたけれど、ふにゃっとしたレイの笑顔が見られただけで全てが報われた気がした。
「……すいませんっす、なんか俺のせいで無駄に緊張させちゃったみたいで、ホント申し訳ないっす」
「本当ですよ。あんな化け物流石にどうしようもありません」
シュカがあっさりと負けを認めるなんて意外だ、それだけ恐ろしい強さだということだろう。
「このめん、アレ元カレなん? 一ヶ月くらい行方不明や言うてたけど、何も言わんと居らんくなったらそらアカンわ。ちゃんと別れる言うたか? 怖いやろからもう電話でもええから言うといたら?」
「えー……このままどうにか死んだ扱いにならないっすかね」
「なんで逃げたわけ~? 一ヶ月もずっと探してるとか、聞いてたより一途な感じでキュンとするけど~」
「騙されないで欲しいっす! くーちゃんは俺のこと都合のいい穴だと思ってるんすよ! だから嫌いなんす、大っ嫌い! お気に入りのオナホ見つからずにずーっとイライラしときゃいいんす!」
レイの剣幕にハルは黙り、すっとリュウの後ろに下がった。
「せんぱい……俺のこと渡さないでくれるっすよね?」
「絶対に渡さないよ、レイはもう俺の彼氏なんだから」
座り込んだままのレイの傍に膝をつき、細身ながらも骨太な身体を抱き締める。フード越しに頭を撫でると首に腕が回されたので唇を重ねた。
「せんぱい……せんぱい、せんぱいっ、好きっす、好き、大好きっす」
重ねた唇を離した後もレイは俺にしがみつくようにして愛を語り続けた。想いを伝えているというより、好きだから捨てないでと言っているように感じる。その必死な様子に胸を打たれ、あの大男への怒りが高まった。
「あぁ……俺も好きだよ、大好きだ。可愛いな、レイ」
頭を撫でながら返事をしてやるとレイは目を見開いて俺を見上げた。死んだ魚のような目で真っ直ぐに見つめられると気圧される。
「本当っすか? 本当に俺のこと好きっすか? 信じていいんすよね、俺調子に乗るっすよ?」
「いいよ。愛されてるって自覚持ってくれ、ワガママも好きなだけ言ってくれ。甘えられるの好きなんだ」
レイは俺の左手を両手できゅっと握る。子供のような仕草にときめき、切り傷を見つめていることに気付くのが遅れた。
「リュウせんぱいのために不良の巣に乗り込んで、シュカせんぱいのためにこんな怪我して……俺を必要に隠してくれた…………せんぱい、口だけじゃないっすよね。本当に愛してくれてる、自信持っちゃうっすよ」
「持って欲しいんだってば」
「…………せんぱいの背中すっごく安心したっす、温かくて、大きくて……ずっと手握っててくれたっすよね、すっごく嬉しかったっす」
背に隠したレイの気持ちが少しでも落ち着くようにと俺は常に片手を後ろに回して繋いでいた。些細な行動を喜んでくれると俺は味をしめて今後も丁寧に接しようと気を張ってしまう。
「くーちゃんに話しかけられてる時は、流石のせんぱいも手ちょっと震えてて……それでも俺を突き出して逃げようとかしなくて……もしあの時俺が見つかってても、せんぱいはシュカせんぱいの時みたいに俺を庇って…………酷い怪我、してたと思うっす」
「あぁ、何十発も殴られて気ぃ失ってもお前を離さなかったと思うよ」
「嬉しいっすけど、怖いっすよ。せんぱいに怪我して欲しくないっす」
「…………怪我、早く手当てしましょう。もうこんな埃っぽいところに居る意味もないでしょう」
彼氏達は皆空気を読んで黙っていたようだが、俺の傷口をずっと睨んでいたシュカが痺れを切らした。
「そうだな、もう行こうか。レイ、大丈夫か? 立てそうか?」
「…………くーちゃんのこと、俺は本当に大好きだったんすよ。でも、くーちゃん的には俺は適当に好きって言って機嫌取る価値もないオナホで……せんぱいは違うっすよね?」
「違うってば……彼氏だと思ってるよ」
何度も確認されて苛立ちが声に混じる。悪いのはレイではなく、こんなに可愛いレイを雑に扱ったあの大男だとすぐに怒りの矛先を変え、泣いているレイに微笑みかける。
「声にも態度にも行動にも出すよ、俺はレイが好きだ」
「……怖いんす。最初は愛されてなくていいって思えるんす、見てるだけでいいって、ただの性欲解消の道具でも触れてもらえるだけで幸せだって思えるんす。なのにどんどん欲深くなって、愛して欲しいって思っちゃって……くーちゃんの時も、せんぱいの時も同じっす。でもせんぱいは俺のこと好きで……好きな人に好きになられたことないから、僕、どうしていいのか……分かんない」
「俺はアイツと違ってレイを愛してるよ。彼氏いっぱい居るから不安かな、ごめんな、でも俺の愛情は割り算じゃなく掛け算だから安心して欲しい。いや……安心させる、誓うよ、愛を証明し続けるって。不満があったら何でも言ってくれ、欲深くていいんだ、ワガママになってくれ、ゆっくりでいいから……ほら、もっと甘えてみろよ」
レイを抱き寄せると彼は俺の胸に顔を押し付けてすすり泣き始めた。
「せんぱいは、せんぱいは……毎日好きって言ってくださいっす。セックスもいっぱいして、でもセックスだけじゃ嫌っす、セックスなしのデートもして欲しいっす。もうくーちゃんの時みたいなの嫌っすぅ……」
「そんなの当然だよ、俺はレイのこと大好きだし大切にする。俺がレイの最後の男だ、もっといっぱい甘えてくれ」
「…………嬉しい。僕のこと、ずーっと大好きでいてね……約束」
レイの本当の一人称は「僕」なのだろうか。後輩っぽい「~っす」という口調もキャラ付けなのだろうか。
「あぁ、約束。指切りでもするか?」
「えへへ……したいっす」
「ん、じゃあ小指出せ。ゆーびきーりげーんまーん……」
心配したり嫉妬したり、身体だけでなく心も疲れたけれど、ふにゃっとしたレイの笑顔が見られただけで全てが報われた気がした。
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