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仕方がないので勉強開始……しない!
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玄関のチェーンを外し、ダイニングに戻る。母が帰ってくるまでレイとイチャつこうと思っていたが、彼は今四人の間を行ったり来たりして忙しそうにしている。
(むー……まるで塾でそ。わたくしも勉強しますかな)
勉強道具の準備をするため部屋に向かおうとしたが、途中で足を止めてスマホを持った。
「もすもすぱいせーん?」
『水月? どうしたんだ、木芽はもう着いた頃だろう? 木芽、お前のテスト勉強手伝ってやるんだって張り切って高校生用の参考書読み込んでたぞ。電話なんてしてこずに木芽に集中してやれ』
歌見も寛容になったものだ。六股が発覚した当初は歌見も俺も大泣きしたのに。
「いやー今日家で勉強会してて、彼氏全員居るんですよな。んでせっかくですからパイセン、来ません? 打ち上げのカラオケで初対面もキツいと思いますぞ」
『……まぁ、一度顔を合わせておきたいが……高校生ばかりのところに行って空気を壊すのも怖いんだよな』
「大丈夫ですぞ、パイセンよりレイどののが歳上ですから」
『…………それもそうだな、そういえばアイツ酒飲める歳なんだよな。そのうち捕まるんじゃないか?』
「はは……ま、来れそうなら来てくださいませ」
通話を切り、私室に戻る。窓を開けて換気を始め、シーツを取り替え、消臭剤を撒く。精液の匂いを感じなくなり、ふぅとため息をつく。
(……あ、いいこと思い付きましたぞ!)
小袋に分けられたローションを二袋取り、前立腺マッサージ器具をビニール袋に入れてダイニングに戻った。
「あ、おかえりなさいっすせんぱい。どこ行ってたんすか?」
「ちょっと部屋の片付け」
「言ってくれれば手伝ったっすよー」
レイは今、リュウの隣について勉強を見てやっている。リュウは数学以外はからっきしのようで、社会科の課題をやっている彼の顔色は悪い。
「ふふ……ハル、今ちょっといいか?」
彼氏達の微笑ましい勉強風景を横目にハルの隣に屈む。ハルはシャーペンを置いて俺を見下ろし、機嫌良さそうに微笑んだ。
「貸しときたいものがあってさ」
「貸す?」
「これなんだけど」
ビニール袋に入れた前立腺マッサージ器具を渡す。ディルドなどとは違い、知らなければ卑猥だとは思えない滑らかで奇妙な形をしたそれをハルは不思議そうな顔で見ている。
「……なにこれ」
「お尻で気持ちよくなる練習が出来るやつ」
目を見開いて前立腺マッサージ器具から俺に視線を移したハルは、一拍遅れて顔を真っ赤に染めた。
「嫌ならいいけど、どうする?」
「……いる。俺だってみっつんと……したい、し」
「ハル……! ありがとう。じゃあ使い方説明しておくよ」
「今言われても覚えらんないからメッセで送ってくんない?」
「分かった。ローションも渡しておくよ、とりあえず二回分」
ハルは静かに頷いて鞄の中にローションと前立腺マッサージ器具を落とし、照れを誤魔化すようにシャーペンを持った。しかし集中出来ないようで一向に文字は書かれない。
「……みっつんは勉強しないの?」
「後じゃ忘れちゃいそうだから使い方今送っとく。それが終わったら流石にやらなきゃな」
さて、ローションと前立腺マッサージ器具の使い方を分かりやすい文章にしてメッセージアプリで送らなければ──説明してくれているサイトのURL送ればよくね?
(……いえ、ハルどのはわたくしに教えて欲しいのでそ。うむ……しかし参考にはしましょう、コピペとは呼べない程度に)
サイトを見つつ文章を作っていく。どうしても箇条書きになってしまって不格好だが、分かりやすいはずだ。
「よし出来た。送っとくな」
「……うん、ありがと」
羞恥心から大人しくなったハルは淑やかな美少女のように思える。男物の制服を着ていたって表情次第で女性的に見えるのだから、クラスメイトにハルを想っている男子は複数人居るだろう。
(ハルどのが靡くとは思えませんが、強く迫られたりフった後逆恨みされたらまた怖がっちゃいそうですな。彼氏であるわたくしが、彼氏として気にかけてやらないといけませんな!)
ハルの彼氏であることを心の中で強調し、うぶな美少年を穢す権利があるのは俺だと誰にも知られない主張をした。
「……ぉ? また誰か来よったで」
「母さんかな。迎えに行ってくるよ」
玄関へ行こうと立ち上がると彼氏達もゾロゾロと着いてくる。
「……お前らも来るのか?」
「上がり込んでんのに挨拶しないのは無礼っしょ」
「こんな大勢で出迎えなくても、あの場でお邪魔していますでいいのでは?」
「ほな待っとけばええやん」
「一人だけで待っていたら私が常識ないみたいじゃないですか」
全員での出迎えが決まり、俺は彼氏達が見守る中何故か少しだけ緊張しながら扉を開けた。彼氏達が一斉に「おかえりなさい」と言い、バラバラに頭を下げた。
「…………た、ただいま……?」
戸惑った返事が男の声だったことに驚いたのか頭が上がるのは早く、またほとんど全員同時だった。
「ふふっ……おかえりなさい、歌見先輩。すいません、母さんかもって俺が言っちゃいまして、みんな勘違いしちゃって」
「そうなのか。驚いたぞ。じゃあ彼らが……?」
「はい、俺の彼氏達です。クラスメイトなんですよ」
緊張しているのか歌見の表情は硬い。背が高いだけでなく筋肉質で目つきもあまりよくない彼に無愛想まで乗っかったらみんな警戒してしまう──
「何、誰?」
「水月の彼氏でしょう」
「正解っすシュカせんぱい。俺とせんぱいのせんぱいっすよ」
「ほーん……水月より背ぇ高いやんけ」
──と思って振り返ったが、リュウの背に隠れているカンナ以外はそれほど警戒も緊張もしていないようだった。物怖じしない彼氏達で助かる。
「…………歌見 七夜だ、よろしく」
「ま、立ち話もなんですから自己紹介タイムはダイニングの方でやりましょう」
「あ……あぁ、そうだな、すまない」
歳下相手に緊張してしまうなんて可愛らしい人だ。俺は歌見の手をこっそりと握り、リラックス効果を狙って上目遣いで微笑んだ。
(むー……まるで塾でそ。わたくしも勉強しますかな)
勉強道具の準備をするため部屋に向かおうとしたが、途中で足を止めてスマホを持った。
「もすもすぱいせーん?」
『水月? どうしたんだ、木芽はもう着いた頃だろう? 木芽、お前のテスト勉強手伝ってやるんだって張り切って高校生用の参考書読み込んでたぞ。電話なんてしてこずに木芽に集中してやれ』
歌見も寛容になったものだ。六股が発覚した当初は歌見も俺も大泣きしたのに。
「いやー今日家で勉強会してて、彼氏全員居るんですよな。んでせっかくですからパイセン、来ません? 打ち上げのカラオケで初対面もキツいと思いますぞ」
『……まぁ、一度顔を合わせておきたいが……高校生ばかりのところに行って空気を壊すのも怖いんだよな』
「大丈夫ですぞ、パイセンよりレイどののが歳上ですから」
『…………それもそうだな、そういえばアイツ酒飲める歳なんだよな。そのうち捕まるんじゃないか?』
「はは……ま、来れそうなら来てくださいませ」
通話を切り、私室に戻る。窓を開けて換気を始め、シーツを取り替え、消臭剤を撒く。精液の匂いを感じなくなり、ふぅとため息をつく。
(……あ、いいこと思い付きましたぞ!)
小袋に分けられたローションを二袋取り、前立腺マッサージ器具をビニール袋に入れてダイニングに戻った。
「あ、おかえりなさいっすせんぱい。どこ行ってたんすか?」
「ちょっと部屋の片付け」
「言ってくれれば手伝ったっすよー」
レイは今、リュウの隣について勉強を見てやっている。リュウは数学以外はからっきしのようで、社会科の課題をやっている彼の顔色は悪い。
「ふふ……ハル、今ちょっといいか?」
彼氏達の微笑ましい勉強風景を横目にハルの隣に屈む。ハルはシャーペンを置いて俺を見下ろし、機嫌良さそうに微笑んだ。
「貸しときたいものがあってさ」
「貸す?」
「これなんだけど」
ビニール袋に入れた前立腺マッサージ器具を渡す。ディルドなどとは違い、知らなければ卑猥だとは思えない滑らかで奇妙な形をしたそれをハルは不思議そうな顔で見ている。
「……なにこれ」
「お尻で気持ちよくなる練習が出来るやつ」
目を見開いて前立腺マッサージ器具から俺に視線を移したハルは、一拍遅れて顔を真っ赤に染めた。
「嫌ならいいけど、どうする?」
「……いる。俺だってみっつんと……したい、し」
「ハル……! ありがとう。じゃあ使い方説明しておくよ」
「今言われても覚えらんないからメッセで送ってくんない?」
「分かった。ローションも渡しておくよ、とりあえず二回分」
ハルは静かに頷いて鞄の中にローションと前立腺マッサージ器具を落とし、照れを誤魔化すようにシャーペンを持った。しかし集中出来ないようで一向に文字は書かれない。
「……みっつんは勉強しないの?」
「後じゃ忘れちゃいそうだから使い方今送っとく。それが終わったら流石にやらなきゃな」
さて、ローションと前立腺マッサージ器具の使い方を分かりやすい文章にしてメッセージアプリで送らなければ──説明してくれているサイトのURL送ればよくね?
(……いえ、ハルどのはわたくしに教えて欲しいのでそ。うむ……しかし参考にはしましょう、コピペとは呼べない程度に)
サイトを見つつ文章を作っていく。どうしても箇条書きになってしまって不格好だが、分かりやすいはずだ。
「よし出来た。送っとくな」
「……うん、ありがと」
羞恥心から大人しくなったハルは淑やかな美少女のように思える。男物の制服を着ていたって表情次第で女性的に見えるのだから、クラスメイトにハルを想っている男子は複数人居るだろう。
(ハルどのが靡くとは思えませんが、強く迫られたりフった後逆恨みされたらまた怖がっちゃいそうですな。彼氏であるわたくしが、彼氏として気にかけてやらないといけませんな!)
ハルの彼氏であることを心の中で強調し、うぶな美少年を穢す権利があるのは俺だと誰にも知られない主張をした。
「……ぉ? また誰か来よったで」
「母さんかな。迎えに行ってくるよ」
玄関へ行こうと立ち上がると彼氏達もゾロゾロと着いてくる。
「……お前らも来るのか?」
「上がり込んでんのに挨拶しないのは無礼っしょ」
「こんな大勢で出迎えなくても、あの場でお邪魔していますでいいのでは?」
「ほな待っとけばええやん」
「一人だけで待っていたら私が常識ないみたいじゃないですか」
全員での出迎えが決まり、俺は彼氏達が見守る中何故か少しだけ緊張しながら扉を開けた。彼氏達が一斉に「おかえりなさい」と言い、バラバラに頭を下げた。
「…………た、ただいま……?」
戸惑った返事が男の声だったことに驚いたのか頭が上がるのは早く、またほとんど全員同時だった。
「ふふっ……おかえりなさい、歌見先輩。すいません、母さんかもって俺が言っちゃいまして、みんな勘違いしちゃって」
「そうなのか。驚いたぞ。じゃあ彼らが……?」
「はい、俺の彼氏達です。クラスメイトなんですよ」
緊張しているのか歌見の表情は硬い。背が高いだけでなく筋肉質で目つきもあまりよくない彼に無愛想まで乗っかったらみんな警戒してしまう──
「何、誰?」
「水月の彼氏でしょう」
「正解っすシュカせんぱい。俺とせんぱいのせんぱいっすよ」
「ほーん……水月より背ぇ高いやんけ」
──と思って振り返ったが、リュウの背に隠れているカンナ以外はそれほど警戒も緊張もしていないようだった。物怖じしない彼氏達で助かる。
「…………歌見 七夜だ、よろしく」
「ま、立ち話もなんですから自己紹介タイムはダイニングの方でやりましょう」
「あ……あぁ、そうだな、すまない」
歳下相手に緊張してしまうなんて可愛らしい人だ。俺は歌見の手をこっそりと握り、リラックス効果を狙って上目遣いで微笑んだ。
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