上 下
223 / 1,942

ファミレスで見るゲーム配信

しおりを挟む
彼氏達と共にファミレスにやってきた。もちろん年中忙しいカミアや、テスト期間だからと休ませてもらっている俺の穴を埋めるため本屋で頑張っているレイと歌見は居ないけれど──俺が穴を埋められる側なのは解釈違いです!

「ファミレスなんて超久しぶり! 何頼もっかな~……ん~、やっぱカルボナーラ、いや和風タラコも捨てがたいしぃ」

「ぼく、ちー、は……」

「カンナはチーハンな。なぁ、せっかく五人で来てるんだしさ、たくさん頼んでちょっとずつ分けるとかどうだ? 色んな料理楽しめるぞ」

「……さんせ~! みっつんアッタマい~!」

全員ドリンクバーを頼むだろうから飲み物を考える必要はないな、料理選びに集中しよう。

「分けやすいのはやっぱピザかな」

「水月ぃ、俺ポテト欲しい」

「私はステーキが欲しいです、ソースは和風で」

「俺パスタ食べたい~!」

「……ちーはん」

まず欲しいものを聞き、五人で分けるなら何人分食べられるのかを考えた。五人分だと思うだろう? だが毎日三人前の弁当を平らげるシュカが居るし、シュカほどでなくとも帰宅部だろうとも、男子高校生の食欲を侮ってはいけない。

「……よしっ、決まったな」

「もー頭パンクしそう。どれ頼むんだっけ、聞いたそばから忘れてっちゃったんだけど」

「では注文は私にお任せください」

「俺ベル押したい!」

身を乗り出したリュウがシュカが押そうとしていた呼び出しベルを鳴らし、シュカに睨まれる。店員が来るとシュカは柔らかい微笑みを浮かべた。

「ミートソースパスタ、カルボナーラパスタ、和風タラコパスタ、マルゲリータ、山盛りポテト、サイコロステーキ和風ソースと普通のソース一つずつ、チーズインハンバーグ、チーズオンハンバーグ、デミグラスハンバーグ、和風おろしハンバーグ、山賊焼きチキン、照り焼きチキン、ドリンクバーは全員……五人ですね。以上です」

「……チキンの話なんかしたっけ」

「今食べたくなりました、残しはしませんのでご心配なく」

注文を終えてジュースを用意したら歓談タイム──のつもりだったが、ハルが俺の隣にぴったりと座ってイヤホンを差し出してきた。そういえばカミアの配信を一緒に見ようと約束していたなと思い出しつつ、イヤホンを受け取る。

(カンナたそに配信見てることは知られたくないですな~)

俺は周囲を見回し、メニュー表が何枚か立てられている場所に使えそうなものを見つけた。

「カンナ、まちがいさがしあるぞ。やるか?」

「……! ゃ、る」

「お、ここのまちがいさがしえらい難問やよう聞くで、俺もやるわ」

リュウがカンナの隣に移動してきて、向かいにシュカが一人ぽつんと取り残される。しかしシュカは既に通学鞄から参考書を取り出して読んでいたので悲壮感はさほどなかった。

「……ハル、イヤホンは有線派か?」

「ワイヤレスも持ってるけど~……落としたらヤダから外では有線かな~。学校でこっそり聞く時はワイヤレス使うけど」

俺はヘッドフォン派かな。

(しかしアレですな、有線イヤホン半分こして聞くとかなんか……Qのポスター感あってオタク魂がザワザワしますな)

ハルはシークバーを弄っている、生配信には待機時間というものがあるのだ。アーカイブで見る際は今のハルのように飛ばす人が大半だろう。

「……有線の方がみっつんと引っ付く口実出来ていいよね」

「スマホの画面ちっちゃいんだからそんな心配ないだろ?」

ハルがスマホの画面から手を離す。再生位置を見つけたようだ。画面の八割はゲーム画面が閉めているが、右下にカミア……いや、カンナが映っている。グリーンバックで合成? とかかな? 詳しくないけど。

「見て見てラフなカミア~! ゆるい部屋着着てる! 超可愛い!」

パーマのカツラを被り、特殊メイクレベルの化粧によって火傷跡を消し、つけまつ毛などで整えられたカンナはカミアと見分けが付かない。今でもあの重たい前髪の向こうにキラキラと輝く瞳があるのだと思うと胸が締め付けられた。

(カンナたそ~、配信なんて出来るんですか? 全然話せなくて放送事故とかなってませんか? 水月は心配でそ……)

心配のあまり心象風景で涙を流してしまったが、次の瞬間イヤホンから聞こえてきた明るい声に涙を消し飛ばされた。

『生配信見に来てくれたみんな、こんにちは~! カミアだよ~! アーカイブの人はおはようかな、こんばんはかな、カミアはみんなの太陽だからみーんなおはようでいいかな? うんうん……いいってコメントすっごい来た! みんなありがと★』

カンナが普通に話してる。

『じゃ、やってくよー。ぼくが今ハマってるゲームでね、いわゆるバトロワ系なんだけどー』

ゲームがロード中の間にサッとゲームの概要説明を済ませ、ゲームが始まってからは解説と雑談とリアクションをちょうどいいと感じるバランスで行い、テンポが悪くなりがちな生配信だというのに少しも退屈させなかった。

『この間バラエティ番組にお邪魔させてもらったんだけどー』

カンナ……だよな? どうしてカミアの出演番組の話が……カミアから話す内容のメモでももらっていたのか? それとも番組をチェックしていたのか?

『え、出たい番組? んー、釣りロケまた行きたいかな。過酷なんだけどその場で捌いてくれる魚が美味しいのなんのって! おっ、敵はっけ~ん。やったぁ倒した★』

高速で流れていくコメントを拾いつつ、コンマの世界だろう対戦ゲームをこなしていく。

「今回カミア調子いいよね、いつもはヘッショ全然出来ないんだよ~? だいたいサイト覗いて撃つのに、今回腰撃ちばっかりだし」

そういえばホテルでもカンナの方がゲームを上手くやれたようなことを話していたな。

『あっ……スナイプされちゃったかぁ、惜しかったなーあと三人だったのに……でもでもっ、おかげで強ポジ一個分かったね★』

ゲーム画面はほとんど見ずに右下のカンナを注視しているが、コロコロと変わる表情はどれもカンナのものとは思えない。カンナはこんなに明るく笑わない。実はカミアが事前に撮っておいたものを放送しているだけなんじゃないかとさて思えてきた。

(でもコメント拾ってますし、カンナたんあの時カミアそっくりにメイクしてましたし……)

カミアに対しては流暢に話していたし、生配信中は部屋に一人だろうからいくら何千人の視聴者が居ると言ってもハキハキ喋れていることに納得は出来る。
しかし、しかしだ、普段のカンナを見ているとどうにも納得出来ない、脳がバグる。

(カンナたそ……主演男優賞、受賞でそ)

ショートした思考回路は「カンナはやる時はすごくやる子」というバカ丸出しの結論を出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる

海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?

犬用オ●ホ工場~兄アナル凌辱雌穴化計画~

雷音
BL
全12話 本編完結済み  雄っパイ●リ/モブ姦/獣姦/フィスト●ァック/スパンキング/ギ●チン/玩具責め/イ●マ/飲●ー/スカ/搾乳/雄母乳/複数/乳合わせ/リバ/NTR/♡喘ぎ/汚喘ぎ 一文無しとなったオジ兄(陸郎)が金銭目的で実家の工場に忍び込むと、レーン上で後転開脚状態の男が泣き喚きながら●姦されている姿を目撃する。工場の残酷な裏業務を知った陸郎に忍び寄る魔の手。義父や弟から容赦なく責められるR18。甚振られ続ける陸郎は、やがて快楽に溺れていき――。 ※闇堕ち、♂♂寄りとなります※ 単話ごとのプレイ内容を12本全てに記載致しました。 (登場人物は全員成人済みです)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ポチは今日から社長秘書です

ムーン
BL
御曹司に性的なペットとして飼われポチと名付けられた男は、その御曹司が会社を継ぐと同時に社長秘書の役目を任された。 十代でペットになった彼には学歴も知識も経験も何一つとしてない。彼は何年も犬として過ごしており、人間の社会生活から切り離されていた。 これはそんなポチという名の男が凄腕社長秘書になるまでの物語──などではなく、性的にもてあそばれる場所が豪邸からオフィスへと変わったペットの日常を綴ったものである。 サディスト若社長の椅子となりマットとなり昼夜を問わず性的なご奉仕! 仕事の合間を縫って一途な先代社長との甘い恋人生活を堪能! 先々代様からの無茶振り、知り合いからの恋愛相談、従弟の問題もサラッと解決! 社長のスケジュール・体調・機嫌・性欲などの管理、全てポチのお仕事です! ※「俺の名前は今日からポチです」の続編ですが、前作を知らなくても楽しめる作りになっています。 ※前作にはほぼ皆無のオカルト要素が加わっています、ホラー演出はありませんのでご安心ください。 ※主人公は社長に対しては受け、先代社長に対しては攻めになります。 ※一話目だけ三人称、それ以降は主人公の一人称となります。 ※ぷろろーぐの後は過去回想が始まり、ゆっくりとぷろろーぐの時間に戻っていきます。 ※タイトルがひらがな以外の話は主人公以外のキャラの視点です。 ※拙作「俺の名前は今日からポチです」「ストーカー気質な青年の恋は実るのか」「とある大学生の遅過ぎた初恋」「いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました」の世界の未来となっており、その作品のキャラも一部出ますが、もちろんこれ単体でお楽しみいただけます。 含まれる要素 ※主人公以外のカプ描写 ※攻めの女装、コスプレ。 ※義弟、義父との円満二股。3Pも稀に。 ※鞭、蝋燭、尿道ブジー、その他諸々の玩具を使ったSMプレイ。 ※野外、人前、見せつけ諸々の恥辱プレイ。 ※暴力的なプレイを口でしか嫌がらない真性ドM。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

処理中です...