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ファミレスで見るゲーム配信
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彼氏達と共にファミレスにやってきた。もちろん年中忙しいカミアや、テスト期間だからと休ませてもらっている俺の穴を埋めるため本屋で頑張っているレイと歌見は居ないけれど──俺が穴を埋められる側なのは解釈違いです!
「ファミレスなんて超久しぶり! 何頼もっかな~……ん~、やっぱカルボナーラ、いや和風タラコも捨てがたいしぃ」
「ぼく、ちー、は……」
「カンナはチーハンな。なぁ、せっかく五人で来てるんだしさ、たくさん頼んでちょっとずつ分けるとかどうだ? 色んな料理楽しめるぞ」
「……さんせ~! みっつんアッタマい~!」
全員ドリンクバーを頼むだろうから飲み物を考える必要はないな、料理選びに集中しよう。
「分けやすいのはやっぱピザかな」
「水月ぃ、俺ポテト欲しい」
「私はステーキが欲しいです、ソースは和風で」
「俺パスタ食べたい~!」
「……ちーはん」
まず欲しいものを聞き、五人で分けるなら何人分食べられるのかを考えた。五人分だと思うだろう? だが毎日三人前の弁当を平らげるシュカが居るし、シュカほどでなくとも帰宅部だろうとも、男子高校生の食欲を侮ってはいけない。
「……よしっ、決まったな」
「もー頭パンクしそう。どれ頼むんだっけ、聞いたそばから忘れてっちゃったんだけど」
「では注文は私にお任せください」
「俺ベル押したい!」
身を乗り出したリュウがシュカが押そうとしていた呼び出しベルを鳴らし、シュカに睨まれる。店員が来るとシュカは柔らかい微笑みを浮かべた。
「ミートソースパスタ、カルボナーラパスタ、和風タラコパスタ、マルゲリータ、山盛りポテト、サイコロステーキ和風ソースと普通のソース一つずつ、チーズインハンバーグ、チーズオンハンバーグ、デミグラスハンバーグ、和風おろしハンバーグ、山賊焼きチキン、照り焼きチキン、ドリンクバーは全員……五人ですね。以上です」
「……チキンの話なんかしたっけ」
「今食べたくなりました、残しはしませんのでご心配なく」
注文を終えてジュースを用意したら歓談タイム──のつもりだったが、ハルが俺の隣にぴったりと座ってイヤホンを差し出してきた。そういえばカミアの配信を一緒に見ようと約束していたなと思い出しつつ、イヤホンを受け取る。
(カンナたそに配信見てることは知られたくないですな~)
俺は周囲を見回し、メニュー表が何枚か立てられている場所に使えそうなものを見つけた。
「カンナ、まちがいさがしあるぞ。やるか?」
「……! ゃ、る」
「お、ここのまちがいさがしえらい難問やよう聞くで、俺もやるわ」
リュウがカンナの隣に移動してきて、向かいにシュカが一人ぽつんと取り残される。しかしシュカは既に通学鞄から参考書を取り出して読んでいたので悲壮感はさほどなかった。
「……ハル、イヤホンは有線派か?」
「ワイヤレスも持ってるけど~……落としたらヤダから外では有線かな~。学校でこっそり聞く時はワイヤレス使うけど」
俺はヘッドフォン派かな。
(しかしアレですな、有線イヤホン半分こして聞くとかなんか……Qのポスター感あってオタク魂がザワザワしますな)
ハルはシークバーを弄っている、生配信には待機時間というものがあるのだ。アーカイブで見る際は今のハルのように飛ばす人が大半だろう。
「……有線の方がみっつんと引っ付く口実出来ていいよね」
「スマホの画面ちっちゃいんだからそんな心配ないだろ?」
ハルがスマホの画面から手を離す。再生位置を見つけたようだ。画面の八割はゲーム画面が閉めているが、右下にカミア……いや、カンナが映っている。グリーンバックで合成? とかかな? 詳しくないけど。
「見て見てラフなカミア~! ゆるい部屋着着てる! 超可愛い!」
パーマのカツラを被り、特殊メイクレベルの化粧によって火傷跡を消し、つけまつ毛などで整えられたカンナはカミアと見分けが付かない。今でもあの重たい前髪の向こうにキラキラと輝く瞳があるのだと思うと胸が締め付けられた。
(カンナたそ~、配信なんて出来るんですか? 全然話せなくて放送事故とかなってませんか? 水月は心配でそ……)
心配のあまり心象風景で涙を流してしまったが、次の瞬間イヤホンから聞こえてきた明るい声に涙を消し飛ばされた。
『生配信見に来てくれたみんな、こんにちは~! カミアだよ~! アーカイブの人はおはようかな、こんばんはかな、カミアはみんなの太陽だからみーんなおはようでいいかな? うんうん……いいってコメントすっごい来た! みんなありがと★』
カンナが普通に話してる。
『じゃ、やってくよー。ぼくが今ハマってるゲームでね、いわゆるバトロワ系なんだけどー』
ゲームがロード中の間にサッとゲームの概要説明を済ませ、ゲームが始まってからは解説と雑談とリアクションをちょうどいいと感じるバランスで行い、テンポが悪くなりがちな生配信だというのに少しも退屈させなかった。
『この間バラエティ番組にお邪魔させてもらったんだけどー』
カンナ……だよな? どうしてカミアの出演番組の話が……カミアから話す内容のメモでももらっていたのか? それとも番組をチェックしていたのか?
『え、出たい番組? んー、釣りロケまた行きたいかな。過酷なんだけどその場で捌いてくれる魚が美味しいのなんのって! おっ、敵はっけ~ん。やったぁ倒した★』
高速で流れていくコメントを拾いつつ、コンマの世界だろう対戦ゲームをこなしていく。
「今回カミア調子いいよね、いつもはヘッショ全然出来ないんだよ~? だいたいサイト覗いて撃つのに、今回腰撃ちばっかりだし」
そういえばホテルでもカンナの方がゲームを上手くやれたようなことを話していたな。
『あっ……スナイプされちゃったかぁ、惜しかったなーあと三人だったのに……でもでもっ、おかげで強ポジ一個分かったね★』
ゲーム画面はほとんど見ずに右下のカンナを注視しているが、コロコロと変わる表情はどれもカンナのものとは思えない。カンナはこんなに明るく笑わない。実はカミアが事前に撮っておいたものを放送しているだけなんじゃないかとさて思えてきた。
(でもコメント拾ってますし、カンナたんあの時カミアそっくりにメイクしてましたし……)
カミアに対しては流暢に話していたし、生配信中は部屋に一人だろうからいくら何千人の視聴者が居ると言ってもハキハキ喋れていることに納得は出来る。
しかし、しかしだ、普段のカンナを見ているとどうにも納得出来ない、脳がバグる。
(カンナたそ……主演男優賞、受賞でそ)
ショートした思考回路は「カンナはやる時はすごくやる子」というバカ丸出しの結論を出した。
「ファミレスなんて超久しぶり! 何頼もっかな~……ん~、やっぱカルボナーラ、いや和風タラコも捨てがたいしぃ」
「ぼく、ちー、は……」
「カンナはチーハンな。なぁ、せっかく五人で来てるんだしさ、たくさん頼んでちょっとずつ分けるとかどうだ? 色んな料理楽しめるぞ」
「……さんせ~! みっつんアッタマい~!」
全員ドリンクバーを頼むだろうから飲み物を考える必要はないな、料理選びに集中しよう。
「分けやすいのはやっぱピザかな」
「水月ぃ、俺ポテト欲しい」
「私はステーキが欲しいです、ソースは和風で」
「俺パスタ食べたい~!」
「……ちーはん」
まず欲しいものを聞き、五人で分けるなら何人分食べられるのかを考えた。五人分だと思うだろう? だが毎日三人前の弁当を平らげるシュカが居るし、シュカほどでなくとも帰宅部だろうとも、男子高校生の食欲を侮ってはいけない。
「……よしっ、決まったな」
「もー頭パンクしそう。どれ頼むんだっけ、聞いたそばから忘れてっちゃったんだけど」
「では注文は私にお任せください」
「俺ベル押したい!」
身を乗り出したリュウがシュカが押そうとしていた呼び出しベルを鳴らし、シュカに睨まれる。店員が来るとシュカは柔らかい微笑みを浮かべた。
「ミートソースパスタ、カルボナーラパスタ、和風タラコパスタ、マルゲリータ、山盛りポテト、サイコロステーキ和風ソースと普通のソース一つずつ、チーズインハンバーグ、チーズオンハンバーグ、デミグラスハンバーグ、和風おろしハンバーグ、山賊焼きチキン、照り焼きチキン、ドリンクバーは全員……五人ですね。以上です」
「……チキンの話なんかしたっけ」
「今食べたくなりました、残しはしませんのでご心配なく」
注文を終えてジュースを用意したら歓談タイム──のつもりだったが、ハルが俺の隣にぴったりと座ってイヤホンを差し出してきた。そういえばカミアの配信を一緒に見ようと約束していたなと思い出しつつ、イヤホンを受け取る。
(カンナたそに配信見てることは知られたくないですな~)
俺は周囲を見回し、メニュー表が何枚か立てられている場所に使えそうなものを見つけた。
「カンナ、まちがいさがしあるぞ。やるか?」
「……! ゃ、る」
「お、ここのまちがいさがしえらい難問やよう聞くで、俺もやるわ」
リュウがカンナの隣に移動してきて、向かいにシュカが一人ぽつんと取り残される。しかしシュカは既に通学鞄から参考書を取り出して読んでいたので悲壮感はさほどなかった。
「……ハル、イヤホンは有線派か?」
「ワイヤレスも持ってるけど~……落としたらヤダから外では有線かな~。学校でこっそり聞く時はワイヤレス使うけど」
俺はヘッドフォン派かな。
(しかしアレですな、有線イヤホン半分こして聞くとかなんか……Qのポスター感あってオタク魂がザワザワしますな)
ハルはシークバーを弄っている、生配信には待機時間というものがあるのだ。アーカイブで見る際は今のハルのように飛ばす人が大半だろう。
「……有線の方がみっつんと引っ付く口実出来ていいよね」
「スマホの画面ちっちゃいんだからそんな心配ないだろ?」
ハルがスマホの画面から手を離す。再生位置を見つけたようだ。画面の八割はゲーム画面が閉めているが、右下にカミア……いや、カンナが映っている。グリーンバックで合成? とかかな? 詳しくないけど。
「見て見てラフなカミア~! ゆるい部屋着着てる! 超可愛い!」
パーマのカツラを被り、特殊メイクレベルの化粧によって火傷跡を消し、つけまつ毛などで整えられたカンナはカミアと見分けが付かない。今でもあの重たい前髪の向こうにキラキラと輝く瞳があるのだと思うと胸が締め付けられた。
(カンナたそ~、配信なんて出来るんですか? 全然話せなくて放送事故とかなってませんか? 水月は心配でそ……)
心配のあまり心象風景で涙を流してしまったが、次の瞬間イヤホンから聞こえてきた明るい声に涙を消し飛ばされた。
『生配信見に来てくれたみんな、こんにちは~! カミアだよ~! アーカイブの人はおはようかな、こんばんはかな、カミアはみんなの太陽だからみーんなおはようでいいかな? うんうん……いいってコメントすっごい来た! みんなありがと★』
カンナが普通に話してる。
『じゃ、やってくよー。ぼくが今ハマってるゲームでね、いわゆるバトロワ系なんだけどー』
ゲームがロード中の間にサッとゲームの概要説明を済ませ、ゲームが始まってからは解説と雑談とリアクションをちょうどいいと感じるバランスで行い、テンポが悪くなりがちな生配信だというのに少しも退屈させなかった。
『この間バラエティ番組にお邪魔させてもらったんだけどー』
カンナ……だよな? どうしてカミアの出演番組の話が……カミアから話す内容のメモでももらっていたのか? それとも番組をチェックしていたのか?
『え、出たい番組? んー、釣りロケまた行きたいかな。過酷なんだけどその場で捌いてくれる魚が美味しいのなんのって! おっ、敵はっけ~ん。やったぁ倒した★』
高速で流れていくコメントを拾いつつ、コンマの世界だろう対戦ゲームをこなしていく。
「今回カミア調子いいよね、いつもはヘッショ全然出来ないんだよ~? だいたいサイト覗いて撃つのに、今回腰撃ちばっかりだし」
そういえばホテルでもカンナの方がゲームを上手くやれたようなことを話していたな。
『あっ……スナイプされちゃったかぁ、惜しかったなーあと三人だったのに……でもでもっ、おかげで強ポジ一個分かったね★』
ゲーム画面はほとんど見ずに右下のカンナを注視しているが、コロコロと変わる表情はどれもカンナのものとは思えない。カンナはこんなに明るく笑わない。実はカミアが事前に撮っておいたものを放送しているだけなんじゃないかとさて思えてきた。
(でもコメント拾ってますし、カンナたんあの時カミアそっくりにメイクしてましたし……)
カミアに対しては流暢に話していたし、生配信中は部屋に一人だろうからいくら何千人の視聴者が居ると言ってもハキハキ喋れていることに納得は出来る。
しかし、しかしだ、普段のカンナを見ているとどうにも納得出来ない、脳がバグる。
(カンナたそ……主演男優賞、受賞でそ)
ショートした思考回路は「カンナはやる時はすごくやる子」というバカ丸出しの結論を出した。
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