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遺伝子的には弟
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「卵子提供」その言葉の意味は大まかには知っている、四人ともそうなのだろう。明確に「それ何?」と聞く者は居なかった。
「卵子提供ってのはね、子供が産めない女の人の代わりに卵子をあげて、体外受精とかで……なんかこう、赤ちゃん作るのよ」
「はぁ……それが何か」
「私それやったの」
「…………えっ、じゃ、じゃあっ、私とママは遺伝子的には親子じゃないってことですか!? この顔で!? 目とかほぼ同じなのに!?」
母は目を見開き、くすりと笑った。
「私がもらったんじゃなくて、あげたの。アンタは私がしっかり産んだわ、頑張って出したもの。こんなデカいもん通ったのかーってビックリしたわ、巨根狩りしててよかったって思った。平均より楽だったかもしれないものね」
後半はいらない話だな。ハルとカンナが恥ずかしそうにしてしまっている。
「私の大学時代の元カノの一人……バイの子なんだけど、セックスする親友って感じで、子供欲しいから卒業したら男と結婚するって言ってたのね」
「はぁ……その方に、卵子を?」
「……私はその子のこと本当に好きだったの。顔も身体もそんなによくなかった、セックスだってあの子は常に受け身で私をよくしてはくれなかったのに……すごく好きだったの。本気で好きになったの、多分あの子だけよ」
唯一本気で愛した人が他の男のものになってしまった悔しさがあるのだろうか? 表情が暗い。俺もいつか経験するかもしれない、俺の彼氏達の中に女性との結婚を将来的に望む者が居ないとは限らない。そう思うと心に暗い影が落ちた。
「あの子、病気になって……卵巣摘出しちゃったの。だから子供産めないって、だから、だから……私、あの子のこと大好きだったから、何でもお願い叶えてあげたくて……卵子提供してあげたの」
「なるほど」
「……女の私が好きな子に自分の子を産ませられるっていうちょっとした興奮もあったわ。孕ませる悦びってのは男だけのもんじゃないのね」
「そ、そうですか」
遺伝子的な弟との禁断の愛なんて展開は望めるのだろうか。二次元的なショタ趣味はあるが犯罪的な少年愛には興味がない、歳が近いといいのだが。
「学生の頃からずっと子供欲しいって言ってたあの子はすごく喜んでくれた。私とロシア男ので作った子供が大好きなあの子のお腹の中で育っていくのは不思議な感覚だったわ」
夫は外国の方だったのか。好きな人を盗られた恨みがあるのかもしれないが、国名呼びはどうかと思う。
「私のことは別に教えなくていいって言ったの、あなた達の子供にしていいって。私はあの子が好きなだけで、あの子の血が混じってない子供には別に興味なかったから」
「……自分の血が入ってるのに、ですか」
「だってアレはあの子の子供だもの……私のお腹には居なかった。私にはアンタが居たから、母性の行き場はちゃんとあったから、別によかったの」
興味がないというのは嘘か、自分に言い聞かせようとしているだけだな。普段の言動で勘違いしがちだが母は愛情深い人だ、別の腹から産まれていようと自分の遺伝子を引く子供に全く興味がないなんて母に限ってありえない。
「ふふっ、それでね、うふふふっ……」
暗い表情が一転、おかしくてたまらないと言ったふうに笑い出す。
「あの子が一目惚れしたロシア男、酒癖悪い上に浮気性で、挙句の果てに急に仔熊拾ってきてあの子にフラれたのよ! あっはっはざまぁ! 私のあの子を取るからよバァーカ!」
母の豹変に俺の彼氏達はたじたじとなっている。
「で、離婚したあの子は子供連れて日本に戻ってくるんだけど、卵子提供とか国際結婚とかのゴタゴタで元々仲悪かった親族との縁がブッチン切れてるから、私しか頼れないって言ってきたのよあの子強かだわ~可愛い! うふふっ、四人家族になるからよろしくね!」
「えっ……あ、この家に住むんですか!? その、えぇと……ママの元カノと、息子さん」
「元カノであり未来の妻よ! うふふふふ……大学時代とはテクが違うわよテクが。二度と男とヤれない身体にしてやるわ……!」
わきわきと動く母の手、特に右手の中指と薬指が恐ろしい動きをしているのは見て見ぬふりをしよう。
「はぁ……それで、私の弟くんはいくつなんです?」
「えーっとね、十四よ」
未成年同士の性交は十三歳がボーダーライン。十三歳以下と以上の組み合わせなら以上がお縄だが、以下と以下や以上と以上の組み合わせならセーフ。まぁそもそも未成年がヤるなという話ではあるが。
「写真とかあります?」
「会ってのお楽しみ。とんでもない美形だから人混みにいてもひと目で分かるわ」
「水月も駅とかで目立ってますわ」
「でしょ? 私も街中に立ってたらよく待ち合わせの目印にされるのよ。ものすっごい美女の近く~とか電話で話してるの聞くの! それでナンパすれば二、三人一気に入れ食いよ! このやり方覚えておきなさい水月」
「私ママほど節操なくなりたくはないので」
浮気性なのが理由で夫と離婚したのなら、母の浮気性と呼ぶことすらはばかられる奔放っぷりは「あの子」とやらと仲良くするにあたってかなり問題なのではないだろうか。
「……水月ってママ呼びなんですね」
「えっ……? あっ!?」
驚きの話題に無意識のうちに本性がチラリと出てしまっていたようだ。四人が常に視界に入っていたおかげで無意識のセーブが効いてママ上呼びはしなかったのは地獄に仏だな。
「ええやん、かぁいらしくて」
「お母さんに敬語使ってたしね~。あはっ、みっつんそういう可愛いとこあんのずるいよね~」
可愛い? ドン引きはされていないようだ。フラれる男の特徴としてマザコンは有名だが、ママ呼び程度ならセーフらしい。
「霞染さんこそママとか呼んでそうですけどね」
「それがそうでもないんだよね~。あ、しぐしぐは?」
「ぼく……ぉか、さ……いない」
「あれ、そだっけ。ごめん。じゃあパパ呼びする?」
「おと、さ……て、呼ぶ」
お母さんお父さん派ばかりで肩身が狭い。新しい家族であるロシアと日本のハーフ男子がママ派に入ってくれることを祈ろう。
「卵子提供ってのはね、子供が産めない女の人の代わりに卵子をあげて、体外受精とかで……なんかこう、赤ちゃん作るのよ」
「はぁ……それが何か」
「私それやったの」
「…………えっ、じゃ、じゃあっ、私とママは遺伝子的には親子じゃないってことですか!? この顔で!? 目とかほぼ同じなのに!?」
母は目を見開き、くすりと笑った。
「私がもらったんじゃなくて、あげたの。アンタは私がしっかり産んだわ、頑張って出したもの。こんなデカいもん通ったのかーってビックリしたわ、巨根狩りしててよかったって思った。平均より楽だったかもしれないものね」
後半はいらない話だな。ハルとカンナが恥ずかしそうにしてしまっている。
「私の大学時代の元カノの一人……バイの子なんだけど、セックスする親友って感じで、子供欲しいから卒業したら男と結婚するって言ってたのね」
「はぁ……その方に、卵子を?」
「……私はその子のこと本当に好きだったの。顔も身体もそんなによくなかった、セックスだってあの子は常に受け身で私をよくしてはくれなかったのに……すごく好きだったの。本気で好きになったの、多分あの子だけよ」
唯一本気で愛した人が他の男のものになってしまった悔しさがあるのだろうか? 表情が暗い。俺もいつか経験するかもしれない、俺の彼氏達の中に女性との結婚を将来的に望む者が居ないとは限らない。そう思うと心に暗い影が落ちた。
「あの子、病気になって……卵巣摘出しちゃったの。だから子供産めないって、だから、だから……私、あの子のこと大好きだったから、何でもお願い叶えてあげたくて……卵子提供してあげたの」
「なるほど」
「……女の私が好きな子に自分の子を産ませられるっていうちょっとした興奮もあったわ。孕ませる悦びってのは男だけのもんじゃないのね」
「そ、そうですか」
遺伝子的な弟との禁断の愛なんて展開は望めるのだろうか。二次元的なショタ趣味はあるが犯罪的な少年愛には興味がない、歳が近いといいのだが。
「学生の頃からずっと子供欲しいって言ってたあの子はすごく喜んでくれた。私とロシア男ので作った子供が大好きなあの子のお腹の中で育っていくのは不思議な感覚だったわ」
夫は外国の方だったのか。好きな人を盗られた恨みがあるのかもしれないが、国名呼びはどうかと思う。
「私のことは別に教えなくていいって言ったの、あなた達の子供にしていいって。私はあの子が好きなだけで、あの子の血が混じってない子供には別に興味なかったから」
「……自分の血が入ってるのに、ですか」
「だってアレはあの子の子供だもの……私のお腹には居なかった。私にはアンタが居たから、母性の行き場はちゃんとあったから、別によかったの」
興味がないというのは嘘か、自分に言い聞かせようとしているだけだな。普段の言動で勘違いしがちだが母は愛情深い人だ、別の腹から産まれていようと自分の遺伝子を引く子供に全く興味がないなんて母に限ってありえない。
「ふふっ、それでね、うふふふっ……」
暗い表情が一転、おかしくてたまらないと言ったふうに笑い出す。
「あの子が一目惚れしたロシア男、酒癖悪い上に浮気性で、挙句の果てに急に仔熊拾ってきてあの子にフラれたのよ! あっはっはざまぁ! 私のあの子を取るからよバァーカ!」
母の豹変に俺の彼氏達はたじたじとなっている。
「で、離婚したあの子は子供連れて日本に戻ってくるんだけど、卵子提供とか国際結婚とかのゴタゴタで元々仲悪かった親族との縁がブッチン切れてるから、私しか頼れないって言ってきたのよあの子強かだわ~可愛い! うふふっ、四人家族になるからよろしくね!」
「えっ……あ、この家に住むんですか!? その、えぇと……ママの元カノと、息子さん」
「元カノであり未来の妻よ! うふふふふ……大学時代とはテクが違うわよテクが。二度と男とヤれない身体にしてやるわ……!」
わきわきと動く母の手、特に右手の中指と薬指が恐ろしい動きをしているのは見て見ぬふりをしよう。
「はぁ……それで、私の弟くんはいくつなんです?」
「えーっとね、十四よ」
未成年同士の性交は十三歳がボーダーライン。十三歳以下と以上の組み合わせなら以上がお縄だが、以下と以下や以上と以上の組み合わせならセーフ。まぁそもそも未成年がヤるなという話ではあるが。
「写真とかあります?」
「会ってのお楽しみ。とんでもない美形だから人混みにいてもひと目で分かるわ」
「水月も駅とかで目立ってますわ」
「でしょ? 私も街中に立ってたらよく待ち合わせの目印にされるのよ。ものすっごい美女の近く~とか電話で話してるの聞くの! それでナンパすれば二、三人一気に入れ食いよ! このやり方覚えておきなさい水月」
「私ママほど節操なくなりたくはないので」
浮気性なのが理由で夫と離婚したのなら、母の浮気性と呼ぶことすらはばかられる奔放っぷりは「あの子」とやらと仲良くするにあたってかなり問題なのではないだろうか。
「……水月ってママ呼びなんですね」
「えっ……? あっ!?」
驚きの話題に無意識のうちに本性がチラリと出てしまっていたようだ。四人が常に視界に入っていたおかげで無意識のセーブが効いてママ上呼びはしなかったのは地獄に仏だな。
「ええやん、かぁいらしくて」
「お母さんに敬語使ってたしね~。あはっ、みっつんそういう可愛いとこあんのずるいよね~」
可愛い? ドン引きはされていないようだ。フラれる男の特徴としてマザコンは有名だが、ママ呼び程度ならセーフらしい。
「霞染さんこそママとか呼んでそうですけどね」
「それがそうでもないんだよね~。あ、しぐしぐは?」
「ぼく……ぉか、さ……いない」
「あれ、そだっけ。ごめん。じゃあパパ呼びする?」
「おと、さ……て、呼ぶ」
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