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ややこしい真実
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放課後にカンナと会うことを考えていたら、カンナのゲーム配信がどんなものになっているのか気になってきた。上手く操作出来ずに一方的に敵に倒されてしまっているのだろうか? いや、戦闘系のゲームとは限らないか。
「……なぁ、カンナが今配信してるゲームって何なんだ?」
授業中でも小声なら会話は可能だ。
「バトロワ系だよ。百人くらいの同時対戦、銃で撃ちまくって一位になるのが目標……みたいなゲーム。大型アップデートしたから配信してくれって頼まれてね」
そんなゲームをカンナが出来るとは思えない、勝てなくて半泣きになるカンナ……妄想だけで勃つ、見たい。
俺は教師の視線を気にしつつ机の下でスマホを弄った。
『ハル』
『今ちょっといいか?』
『みっつん最前列なのにメッセ送ってくるとかやばすぎ』
『なんか用?』
『カミアの配信俺も見たくてさ』
『でも予約してないと見れないんだよな?』
『今度一緒に見たいんだけど』
『みっつんもカミアはまったー?』
『じゃ明日ね』
『みっつんの家行きたいな~』
よし、視聴の目処は立った。楽しみだな。
学校が終わり、彼氏達と共に下校、結局カンナがカミアと入れ替わっていることは俺以外の誰にもバレなかった。
「じゃ、行こうか」
一旦家に帰って着替えた後、駅のトイレで着替えたらしいカミアと落ち合う。配信場所はカンナの自宅ではないらしく、彼の案内に従うことにした。
「お兄ちゃんにお昼ご飯買っていってあげようよ。お兄ちゃんの好物分かる?」
「うーん……? そういえば知らないな」
「好み変わってなければチーズインハンバーグなんだけど……あ、あの店売ってるよね。買って行こっか」
「子供はだいたい好きだろうけどな。まぁ嫌いにはなってないだろうしいいんじゃないか」
途中ファミレスに寄ってお持ち帰りを頼み、またカミアの案内に従う。
「アイドル様はこんな安物お口に合うのか?」
「変なやっかみやめてよ、食生活は別に普通だから」
「へぇ? じゃあ昨日の昼飯なんだ?」
「のり弁、五百円だったかな」
「じゃあ今まで食べた中で一番美味しかったものは?」
「釣りロケで食べた幻の高級魚! 釣ってすぐ捌いてもらったから口の中で切り分けた肉がピチピチして……! あれもう一回食べたいなぁ。でも滅多に売られもしないんだよね」
買えたとしてもその思い出には勝てないだろうな。
「着いた、ここだよ」
到着したのはホテルだ、ラブはつかない普通のホテルだ。
「……配信は終わってるし、入ってよさそうだね。お兄ちゃーん! ただいま~!」
スマホを確認した後、カミアは部屋に駆け込んだ。三人分の昼食を持っている俺は深いため息をつき、彼の後を追った。
「カミアー、カンナ……ひぃっ!?」
スリッパに履き替えようと視線を落とすと、廊下に頭が……いや、カミアが脱ぎ捨てたヅラが落ちていた。
「もぉお……! ふざけんなよなぁっ……!」
手が塞がっているのでヅラを跨ぎ、カミアに文句を言ってやろうと開け放たれた扉の先へ急いだ。そこには素晴らしい景色が広がっていて、文句を言おうなどという穢れた思考は浄化された。
「お兄ちゃんお兄ちゃんっ、僕久しぶりに学校ちゃんと行ったよ。楽しいとこだねぇ。お兄ちゃんの彼氏と、彼氏の彼氏さん達もいい人ばっかりだし。心配だったけど一安心だよ~。無理言ってごめんね、配信の方は大丈夫だった? お兄ちゃん何でも出来るから平気だったよねっ」
カミアがカンナに抱きついて頬擦りをしていたのだ。やはり美少年同士の絡みは尊い……ん? 椅子に座ってる方がカンナだよな? 制服を着ている方がカミアだよな?
「お前より上手くやっちゃった……かも?」
カンナだろう椅子に座っている美少年はカミアと同じくるくると巻いた可愛らしい髪をしていて、丸っこくキラキラと輝く目には長い睫毛があり、当然のように眉毛もあり、前髪の分け目から見える額には火傷の跡はなかった。
「えーやだそれは困る!」
「お前が上達すればいいだけ。ま、ぼくレベルは……無理かな?」
「お兄ちゃんが何でも上手過ぎるの! このゲーム初めてだよね? これ系やったことあるの?」
「初めてで優勝、余裕だったけど……何か?」
「うわぁぁ……お兄ちゃんだぁ! お兄ちゃん懐かしいよぉ……!」
カンナってゲーム上手いんだな、身内の前だとああいう感じなんだな……可愛いなぁ。
ほっこりして何も言わずに眺めていると、カミアが不意にカンナを抱き締めるのをやめて俺を指した。
「そうそう、お兄ちゃんの彼氏連れてきたよ」
「……っ!? 先に言え! ぼくのカツラ取ってこい!」
慌ててパーマヘアのカツラを脱ぎ捨てたカンナは痛々しい火傷跡を晒し、俺の方へ走ってきた。
「みぃくん……! ふつ……か、ぶり……」
「あぁ、二日ぶりだな。これ……メイクか? すごいな」
「……! すぐ、落……す」
「そんな慌てなくていいよ、今はカンナを抱き締めさせてくれ。カンナが居なくて寂しかったんだ」
昼飯を机に置いてカンナを抱き締めて、久しぶりの頼りない抱き締め心地に深く息を吐いた。
「はぁー……たまらん」
「み、くん……かみ、あ……いつ、気付、ぃ、た?」
「妙にハキハキ喋るし、引っ付いてこないし、すぐに変だって思ったよ。まさか入れ替わってるとは思わなかったから気付くのには時間かかったけどな」
「一時間目の授業中にバレたよ。カンナは爪に白斑があるー……とか言って、ちょっと気持ち悪かった」
「……! ほん、とだ……爪、しろ……の、ある」
自分の手なんて何よりも見ているだろうに、気付いていなかったのか? あぁ、やっぱりカンナは可愛いな。独特な手触りの毛のない頭皮を撫で回してやろう。
「…………えへへ」
「お兄ちゃん、カツラ持ってきたけど」
「お前廊下に投げ捨てていっただろ、人の頭落ちてるかと思ってびっくりしたんだぞ」
「投げ、捨て……?」
「……っ、ちがうのお兄ちゃんちがうの! なんでチクるの!? ばかぁ!」
ヅラを受け取ったカンナは振り回したり叩いたりして埃を落とし、じっとカミアを睨みつけながらそれを被った。乱暴な扱いのせいか前髪が崩れて顔が少し見えている。なんというか、ただの超美少年だな。
(おこなカンナたそ萌え~。スカーフェイス属性オフのカンナたそも可愛いですなぁ。カミアで先に答え見ちゃったのが残念でそ)
かなり盛る必要があるようだが、一応メイクで跡を隠すことは出来るようだな。
「みぃくんの前で……お兄ちゃん、呼ぶな」
「えっ、やっぱり隠してたの? 彼氏なんだしいいじゃん」
「…………お前の、ためだった……のに」
カンナは深いため息をつき、じっと俺を見つめた後、深々と頭を下げた。
「みぃくん……今まで、嘘、つい……た。ごめ……な、さ……」
「えっ? いや……嘘って?」
「…………ぼく、が……カミア、なの」
訳が分からない。カンナは今にも泣きそうな顔をしているし、昼飯は冷めそうだし、どうすればいいんだ?
「よく分からないんだけど……」
「だから、入れ替わってたんだよ。ずっと」
「……十年、くらい」
「今日やっと本名名乗って生活してみたけど違和感すごかったよ」
「当たり前。入れ替わってからのが長い」
「もっかい交代する?」
「やだ。ぼく、カンナだもん」
「だよね。僕はカミアだ」
「………………ややこしっ」
驚き過ぎた俺は気付けば言うつもりのなかった本音を漏らしていた。
「……なぁ、カンナが今配信してるゲームって何なんだ?」
授業中でも小声なら会話は可能だ。
「バトロワ系だよ。百人くらいの同時対戦、銃で撃ちまくって一位になるのが目標……みたいなゲーム。大型アップデートしたから配信してくれって頼まれてね」
そんなゲームをカンナが出来るとは思えない、勝てなくて半泣きになるカンナ……妄想だけで勃つ、見たい。
俺は教師の視線を気にしつつ机の下でスマホを弄った。
『ハル』
『今ちょっといいか?』
『みっつん最前列なのにメッセ送ってくるとかやばすぎ』
『なんか用?』
『カミアの配信俺も見たくてさ』
『でも予約してないと見れないんだよな?』
『今度一緒に見たいんだけど』
『みっつんもカミアはまったー?』
『じゃ明日ね』
『みっつんの家行きたいな~』
よし、視聴の目処は立った。楽しみだな。
学校が終わり、彼氏達と共に下校、結局カンナがカミアと入れ替わっていることは俺以外の誰にもバレなかった。
「じゃ、行こうか」
一旦家に帰って着替えた後、駅のトイレで着替えたらしいカミアと落ち合う。配信場所はカンナの自宅ではないらしく、彼の案内に従うことにした。
「お兄ちゃんにお昼ご飯買っていってあげようよ。お兄ちゃんの好物分かる?」
「うーん……? そういえば知らないな」
「好み変わってなければチーズインハンバーグなんだけど……あ、あの店売ってるよね。買って行こっか」
「子供はだいたい好きだろうけどな。まぁ嫌いにはなってないだろうしいいんじゃないか」
途中ファミレスに寄ってお持ち帰りを頼み、またカミアの案内に従う。
「アイドル様はこんな安物お口に合うのか?」
「変なやっかみやめてよ、食生活は別に普通だから」
「へぇ? じゃあ昨日の昼飯なんだ?」
「のり弁、五百円だったかな」
「じゃあ今まで食べた中で一番美味しかったものは?」
「釣りロケで食べた幻の高級魚! 釣ってすぐ捌いてもらったから口の中で切り分けた肉がピチピチして……! あれもう一回食べたいなぁ。でも滅多に売られもしないんだよね」
買えたとしてもその思い出には勝てないだろうな。
「着いた、ここだよ」
到着したのはホテルだ、ラブはつかない普通のホテルだ。
「……配信は終わってるし、入ってよさそうだね。お兄ちゃーん! ただいま~!」
スマホを確認した後、カミアは部屋に駆け込んだ。三人分の昼食を持っている俺は深いため息をつき、彼の後を追った。
「カミアー、カンナ……ひぃっ!?」
スリッパに履き替えようと視線を落とすと、廊下に頭が……いや、カミアが脱ぎ捨てたヅラが落ちていた。
「もぉお……! ふざけんなよなぁっ……!」
手が塞がっているのでヅラを跨ぎ、カミアに文句を言ってやろうと開け放たれた扉の先へ急いだ。そこには素晴らしい景色が広がっていて、文句を言おうなどという穢れた思考は浄化された。
「お兄ちゃんお兄ちゃんっ、僕久しぶりに学校ちゃんと行ったよ。楽しいとこだねぇ。お兄ちゃんの彼氏と、彼氏の彼氏さん達もいい人ばっかりだし。心配だったけど一安心だよ~。無理言ってごめんね、配信の方は大丈夫だった? お兄ちゃん何でも出来るから平気だったよねっ」
カミアがカンナに抱きついて頬擦りをしていたのだ。やはり美少年同士の絡みは尊い……ん? 椅子に座ってる方がカンナだよな? 制服を着ている方がカミアだよな?
「お前より上手くやっちゃった……かも?」
カンナだろう椅子に座っている美少年はカミアと同じくるくると巻いた可愛らしい髪をしていて、丸っこくキラキラと輝く目には長い睫毛があり、当然のように眉毛もあり、前髪の分け目から見える額には火傷の跡はなかった。
「えーやだそれは困る!」
「お前が上達すればいいだけ。ま、ぼくレベルは……無理かな?」
「お兄ちゃんが何でも上手過ぎるの! このゲーム初めてだよね? これ系やったことあるの?」
「初めてで優勝、余裕だったけど……何か?」
「うわぁぁ……お兄ちゃんだぁ! お兄ちゃん懐かしいよぉ……!」
カンナってゲーム上手いんだな、身内の前だとああいう感じなんだな……可愛いなぁ。
ほっこりして何も言わずに眺めていると、カミアが不意にカンナを抱き締めるのをやめて俺を指した。
「そうそう、お兄ちゃんの彼氏連れてきたよ」
「……っ!? 先に言え! ぼくのカツラ取ってこい!」
慌ててパーマヘアのカツラを脱ぎ捨てたカンナは痛々しい火傷跡を晒し、俺の方へ走ってきた。
「みぃくん……! ふつ……か、ぶり……」
「あぁ、二日ぶりだな。これ……メイクか? すごいな」
「……! すぐ、落……す」
「そんな慌てなくていいよ、今はカンナを抱き締めさせてくれ。カンナが居なくて寂しかったんだ」
昼飯を机に置いてカンナを抱き締めて、久しぶりの頼りない抱き締め心地に深く息を吐いた。
「はぁー……たまらん」
「み、くん……かみ、あ……いつ、気付、ぃ、た?」
「妙にハキハキ喋るし、引っ付いてこないし、すぐに変だって思ったよ。まさか入れ替わってるとは思わなかったから気付くのには時間かかったけどな」
「一時間目の授業中にバレたよ。カンナは爪に白斑があるー……とか言って、ちょっと気持ち悪かった」
「……! ほん、とだ……爪、しろ……の、ある」
自分の手なんて何よりも見ているだろうに、気付いていなかったのか? あぁ、やっぱりカンナは可愛いな。独特な手触りの毛のない頭皮を撫で回してやろう。
「…………えへへ」
「お兄ちゃん、カツラ持ってきたけど」
「お前廊下に投げ捨てていっただろ、人の頭落ちてるかと思ってびっくりしたんだぞ」
「投げ、捨て……?」
「……っ、ちがうのお兄ちゃんちがうの! なんでチクるの!? ばかぁ!」
ヅラを受け取ったカンナは振り回したり叩いたりして埃を落とし、じっとカミアを睨みつけながらそれを被った。乱暴な扱いのせいか前髪が崩れて顔が少し見えている。なんというか、ただの超美少年だな。
(おこなカンナたそ萌え~。スカーフェイス属性オフのカンナたそも可愛いですなぁ。カミアで先に答え見ちゃったのが残念でそ)
かなり盛る必要があるようだが、一応メイクで跡を隠すことは出来るようだな。
「みぃくんの前で……お兄ちゃん、呼ぶな」
「えっ、やっぱり隠してたの? 彼氏なんだしいいじゃん」
「…………お前の、ためだった……のに」
カンナは深いため息をつき、じっと俺を見つめた後、深々と頭を下げた。
「みぃくん……今まで、嘘、つい……た。ごめ……な、さ……」
「えっ? いや……嘘って?」
「…………ぼく、が……カミア、なの」
訳が分からない。カンナは今にも泣きそうな顔をしているし、昼飯は冷めそうだし、どうすればいいんだ?
「よく分からないんだけど……」
「だから、入れ替わってたんだよ。ずっと」
「……十年、くらい」
「今日やっと本名名乗って生活してみたけど違和感すごかったよ」
「当たり前。入れ替わってからのが長い」
「もっかい交代する?」
「やだ。ぼく、カンナだもん」
「だよね。僕はカミアだ」
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