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兄の友好関係を調査する

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更衣室の前でしばらく待ち、彼氏達を待つ。全員集まったら五人でゾロゾロと固まって歩く。

「時雨さん、さっき水月を投げてましたよね。柔道の経験がおありなんですか? 私、まともな経験はないのですが引っ越し前の知人が得意で……少し興味があるんですよ、投げ技の一つでも教えてくれませんか?」

「授業でそのうちやると思うけど……」

引っ越し前の知人って舎弟かな、喧嘩相手かな、どっちにしろシュカにとって柔道は喧嘩の武器なんだろうな。ストリートファイト最強は柔道って何かで見たもん。

「しぐぅ、今日えらい声出とんなぁ」

「えっ……そ、そう……?」

「おぅ、偉いで。いつもそんくらいで話してくれとったら何言うとるか分かりやすいわ。せやけど無理したアカンで、喉痛めてもぉたら本末転倒やからな。飴ちゃんやるわ、舐めとき」

「ありがと……ぁ、いちご味ない?」

俺以外はカンナが入れ替わっていることに全く気付いていないみたいだな。

(カミアどのー、カンナたそはそんな図々しくありませんぞー)

リュウの飴玉用ポシェットを漁るカミアにハラハラしていると、不意にハルがずっと黙ってカミアを見つめているのに気付いた。

(カミアオタクが居たの伝え忘れてましたぞ!)

流石にハルには分かるのだろうか? いや、昨日ライブに行ったアイドルがこんなところに居るなんて想像もしないよな。

「…………ねぇしぐしぐー」

「なぁに? はるくん」

「今まで気付かなかったけど……アンタめっちゃカミアに声似てない!? こないだの音楽の授業でカミアっぽい声聞こえたのアンタだったの!? なんで言ってくんなかったの~!」

セーフ! かな? 上手く誤魔化せよカミア。

「自分じゃ似てるか分かんなくて……」

「似てるよ似てる! めっちゃ似てる! そっくり……!」

「……あはは」

「みっつんが前に口元似てるとかふざけたこと言ってたけどさー……確かによく見ると鼻と口そっくり。形似てると声も似るんだね~……ね、ね、顔見せてくれない? ダメ?」

「うーん……顔はやだ。はるくん的にも見ない方がいいと思う」

「え~? なんでそんな顔見られんの嫌がんの~? まぁいいけどさぁ~……」

シュカもリュウもハルもみんなカミアに話しかけている、中心はすっかりカミアだな。流石はアイドルと言うべきだろう。

(ンンン…………ソガイカンッ!)



二時間目の英語の授業では当てられたカミアが完璧な発音の英語を喋るなどしてとても目立った。

「お前カンナっぽく振る舞う気あるのか? 目立ち倒してんじゃねぇか……!」

授業が終わった直後、俺は彼氏達が来るまでに小声でカミアを諌めようとした。

「気を付けてるつもりなんだけどなぁ……困っちゃうね、僕くらいになると目立たないってのが出来ないみたいだ☆」

こういう話してるとちょっとイラッとするタイプももちろん好きなんだよな、俺。口説きたいなぁ、でも流石にアイドルはハードルが高い。

(……っていうかコイツさっきからちょくちょく記号出してません? 何その星! 記号とかアリなんですか!? アリなら超絶美形なわたくしはもっと綺麗な記号使いたいですなぁ)

「ったく、気を付けろよな.。.:*・゚★」

(よっしゃなんか出た気がする。でも……テレビでは嘔吐シーンとかにキラキラエフェクトつけることありますよな…………言いながら吐いたみたいじゃないですか? 違いますぞ!?)

彼氏達が来た、カミアをカンナとして扱わないと。
……予想通り、彼らの話題はカミアの英語がすごいということだ。

(……異世転チート系主人公がちょくちょくヘイト稼ぐ理由が分かった気がしますぞ。おかしいですな、わたくしの顔もチートレベルのはずなんですが)

あまりカミアには関わらない方がいいかもしれない、彼氏を奪われそうで怖い。

(NTRは嫌でそぉお! でもわたくしの彼氏同士の挿入なしの百合おせっせなら見たいので誰かイチャつけ)

しかし可愛い男子達が仲良さげにしている姿は素晴らしいものだ。

「水月、聞いていますか?」

「えっ? ぁ、何?」

「今日から授業は午前まででしょう。ですから、放課後どうします? という話です」

「勉強会やろ言うてたやん」

リュウの目は以前勉強会の提案をしたハルに向いている。

「俺今日カミアの配信見なきゃいけないんだよね~。今日の昼ぐらいには終わるはずだから~、タイムシフト予約してるからさー、ちょうど見れそうだし~……今日はなし!」

「それすぐ見なくても一週間くらい有効だろ?」

今日配信してるのはカンナだしな。

「自分しょっちゅうカミアカミア言うとんなぁ。そういや昨日ライブ行ったんやったっけ?」

「そうそうそうそう聞いて聞いて聞いて聞いて!」

「あぁもうなんやねん聞いとるわ鬱陶しいのぉ」

「握手してもらったんだけどね、カミア、前も来てくれた子だよねって言ってくれたの~! 覚えててくれたんだよすごくない!? 認知嬉しい~!」

「……前のライブの会場限定グッズ持ってたからじゃ」

カミアに足を踏まれた。余計なことを言うなということか……まぁいいだろう、認知はしただろうし。

「幸せ過ぎるぅ~……」

「……言い出しっぺがこの調子じゃ勉強会はまた今度ですね」

「ほな今日は何もなしか、つまらんの。のぅ水月、今日家行ってええか?」

「ごめんね、てんくん。ぼく先約」

「そーなん……」

カンナとの約束はしていないし、カミアにも何も言われていない。

「……ごめんなリュウ、また明日な」

「んー……」

しゅんと落ち込んでいるリュウの顔を両手で挟むようにし、頬をむにむにと揉んでやる。やがてチャイムが鳴り、俺の彼氏達は散り散りに席に戻った。

「……放課後、一緒にお兄ちゃんのとこ行こうね。これ絶対☆」

「はいはい……」

慣れないゲームや初めてだろう生配信をやらされて、カンナはさぞ憔悴していることだろう。癒してやらなければな。
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