冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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爪が綺麗な子はハキハキ喋る

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電話はたっぷりしたものの、やはり直接カンナの反応が見たい。ウキウキしながら眠り、普通なら憂鬱な月曜日、俺にとっては心待ちにしていた月曜日の朝。

「……っ!? お、おはよう……レイ」

「おはようございますっす、せんぱい。土日ほとんどせんぱいが部屋に居なくて寂しかったっすよ」

俺は今日も俺の起床を待っていたレイに驚き、朝っぱらから心臓をバクバクと騒がせる。

「くまさんに映ってくんなかったお詫びとして、ちゅー欲しいっす」

「……はいはい」

歳下らしくねだる歳上の男の顎にそっと手を添え、寝転がったまま上体を少し起こして唇を重ねた。唇を舐められて求めを察し、舌を絡める──盛り上がり、肩に腕を回してベッドに引き込む。

「あっ、やばい早く飯食わないと下げられる! また後でなレイ!」

「あっ……はーい、待ってるっすせんぱい」

服の中に手を入れようとしたところでスマホのアラームのスヌーズ機能が働き、俺を正気に戻した。

「……ってことがあってさ、危なかったよ」

「そのうち遅刻するんちゃう」

「かもな。そういえばお前いつも俺が来るまで待ってるけど、もし俺が遅れたり休むつもりだったりしたらどうする気なんだ?」

「そら頃合いみて電話かけたりなんなりするがな」

レイが毎朝来てくれるから寝過ごす心配はないし、今日のように朝からサカってもリュウからの電話があるから大丈夫だな。

「気持ち早めに頼む」

「おー……ぁ、そろそろ降りな」

カンナと待ち合わせをしている駅に着いた。一旦三人で降り、いつも自販機の影に隠れているカンナを探す。

「あれっ……? あ、居た。カンナ、おはよう。今日は座りたい気分だったか?」

ベンチでスマホを弄っているカンナを発見、声をかける。口元しか見えないけれど、笑顔を浮かべて駆け寄ってくる。

「おはようっ、みーくん」

「あぁ、おはよう……ん?」

おはようの挨拶として手にキスを──何だ? この違和感。カンナの手……か? これ。いや、そうだ、カンナの手だ。

「……どうしたの?」

「いや……カンナ、昨日一日中鉄棒とかしてたか? ちょっと手のひら硬いぞ」

「硬い……」

「あ、いや、そんなに気にしなくていいぞっ? カンナはいつだってふにふにで可愛いからな」

落ち込ませてしまったかもしれない。カンナはスキンシップで割と簡単に機嫌が治るから……と頬を揉んでみる。

「あれ、いつもよりすべすべだなぁ、化粧水でも使ったか?」

「……うん、試供品もらった」

「へー? 気に入ったか? 商品名教えてくれよ」

肌に合ってカンナ自身も気に入って、あまり値が張らないようならプレゼントしてやってもいいかもな。
いつも通りにシュカと出会い、シュカとリュウの軽い小競り合いを楽しみ、レイと別れ、校門を抜ける。今日は何故かカンナが腕に抱きついてこない、カミアの件でスキンシップが激しくなると予想していたのだが……俺への感謝と愛が爆発しそうで気を付けている、とか? 可愛いヤツだ。

(早速階段裏に呼び出したいところですが、今日は時間割変更で一時間目から体育がありますからなぁ……残念でそ)

テスト一週間前の午前授業なのにどうして体育をぶち込むのか理解に苦しむ──というシュカの談に心中頷きながら、柔道着に着替えた。

「今日から柔道……普通、テスト前に新しい分野を始めますか?」

「まぁまぁ、先生方にも色々と事情があるんだよ。カンナ、参加するのか? 大丈夫か? ほら……はだけたり、とか」

にっこりと口元だけで微笑んだカンナは黒い長袖の肌着を俺にだけ見せてくれた。

「あぁ、下着てるのか。先生それでいいって? そっか、よかった。あ、でも頭は……まぁそう簡単には取れないよな? 柔道は初日だし、そんな激しいことはしないと思うけど……一応気を付けておけよ、ペア組とかあったら俺とやろうな」

「…………ありがとう、優しいね」

「そう……か?」

今日のカンナは随分はっきり喋るなぁ……聞き取りやすいからいいけど。


予想通り早速組手なんかはやらされず、まずは受け身の練習を取ることになった。一応ペアを組まされたし教え合えという指示はあったが、普段の体育からしてこんな感じなので多分教師の個人的な方針だ。

「後ろに倒れて、両手で床叩く……か。よしっ……痛っ! やっぱり頭打つなぁ、後頭部腫れそうだよ。カンナは頭大丈夫か?」

「みーくん頭後ろにし過ぎなんだよ。帯見るように意識するといいと思うな」

「なるほど…………ぉおっ! 頭打たなかった、すごいなぁカンナ。頭いいな。手のひら痛いのはどうにもなんないよな……」

衝撃を殺すために床を手のひらでバンと叩くのだが、慣れていなせいかかなり痛い。もう手のひらが真っ赤になっている。

「ずっと受け身だけって暇ですねー……ちょっと投げていいですか?」

「嫌や。俺まだ受け身も微妙やねん、他の経験者探せや」

「見た感じ居ませんよ、温室育ちのお坊ちゃまばっかりなんですねこの高校。ところで私が一番得意な柔道の技は足の間を思い切り蹴り上げることなのですが、披露しても?」

「よぉ知らんけど絶対反則やん! 嫌や! 水月にやったらされてもええけど」

アイツら二人だけの時も漫才やってるんだな。

「ふわぁ……」

「霞染さん、起き上がらないけど……どこか痛い?」

「ん~……ちょっと寝不足でさー、だるくて~……今先生こっち向いてないしぃ~、あんま動くと髪崩れるしぃ~……あ、先生こっち向いたら教えてねー」

俺はあまり話したことのない、名前もはっきりとは覚えていないクラスメイトとペアを組んでいるハルはサボっていた。
一通り彼氏達を見回し、新しい授業でもいつも通りだなと思わず笑みが零れる……きゅ、と左手を握られ、慌ててカンナの方に向き直る。

「ぎゅってしたら痛くなくなる……とか、流石にちょっとあざといかなぁ」

「……いや、痛みが吹っ飛んだよ。こっちの手も頼む」

右手を両手で握ってもらい、俺よりも一回りほど小さいカンナの手をじっと見つめる。健康的に伸びた爪は綺麗に丸く整えられている、妙にツヤツヤしているのは何か塗っているのかな?

「…………あのさ」

「んー? 痛みなくなった?」

「……カンナの真似するならもうちょい話し方とか研究しないと、俺以外にもバレちまうぞ」

「…………何言ってるの? みーくん」

「金曜日見た時、カンナの右手薬指の爪には白斑があった。お前の爪は綺麗なピンクだな」

「うーん……初春くん、君ちょっと気持ち悪いね」

実は朝からずっと違和感があった。初春くんと呼ばれてそのモヤモヤが晴れ、気持ち悪いと罵られたばかりなのに奇妙な爽快感を味わった。
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