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アイドル勉強会
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腰の高さほどのCDラックは半分ほどCDで埋まっており、もう半分にはぬいぐるみやアクリルスタンドが飾られている。
「……最近そんなCD集めてる子なんてあんまり居ないのに、すごいな」
「ハマってから出たのは全部買ってるよー。特典付きのも多いからさ~……それにさ、あんま考えたくないし、まずないとは思うけど……カミアが何かやらかして曲が配信停止とかになったら聞けなくなるじゃん?」
「ストアとかで買った曲まで止まることはかなり稀だと思うけどな」
「姉ちゃんが推してたアーティストがそんな感じになったんだよねー。だからCDは出たら即買い!」
なるほどなと感心する俺の前にハルは何組かのCDを並べた。どうやら明日のライブで演奏予定の曲が収録されているらしい。
「じゃ、順番に流してくね~」
曲についての軽い説明を終えるとハルはCDプレーヤーにCDをセットした。流れ出した音楽は聞き慣れないものだが、歌声を聞くとカンナの顔が目に浮かんだ。
(やっぱりカンナたそに歌声そっくりですな)
カンナが声を僅かにしか出さず、非常に聞き取りにくい話し方をするのはカミアと双子だとバレないようにするためだったりするのだろうか。いや、俺と二人きりの時も変わらないから、やっぱりただの照れ屋かな。
「写真集見よ~」
また俺の足の上に座り、自分の頭越しにカミアの写真集を見せてくる。ウキウキとした様子のハルはとても可愛らしい。
「……めちゃくちゃ可愛いな」
「でしょ~!? 最っ高だよねー、マジ神! どの角度から見ても超絶可愛い!」
はしゃぐハルの肩に顎を乗せてカミアの写真を見る。ふわっとした柔らかそうな黒髪、間近で見つめ合えば瞬きの度に風を感じさせそうな長い睫毛、大きく丸い煌めく瞳、どれを取っても素晴らしい。
「お、シャワーの写真もあるのか……大丈夫かコレ、児ポだろこんなもん」
「げーいーじゅーつぅー! 変なこと言わないで!」
上半身だけだし乳首すら見せていないとはいえ、濡れた髪と水を弾く肌の艶やかさは十八禁に相応しい。
「……すごいな」
きっと数十人の大人が関わって作られたのだろう写真を見て、俺は俺のスマホの写真フォルダにあるカンナのヌード写真を思い出していた。
プロがセットした照明、部屋、家具、服、小物……そしてプロが施したメイク。それらを引いてポージングや目線の上手さだけで考えると、カミアとカンナに差はほぼない。何年も撮られ慣れているカミアと、写真を忌避してきただろうカンナに、差がないのだ。
(目力が一緒なんですよなぁ、カンナたそには睫毛がないので目のサイズが違うように見えますが……人を惹きつける魔力と言いますか、そういうのはカンナたそも失っていないように思いますぞ)
練習なんてしていないだろう歌もカンナは上手かった。元から彼の方が器用だったのだろうか? 揃ったところが見たい、明日は頑張らなければ。
(双子丼やりてぇでそ……)
真の欲望を心の底に押し殺し、俺はカミアの人間性について知るためにハルに尋ねた。
「可愛いのは分かったよ、どんな子なんだ? バラエティとか出るのか?」
「たまに出てるよー。ちょっと天然でマジ可愛いの!」
「天然……へぇ」
「インタビューとか見る? 切り抜いて置いてあるんだ~」
ハルは変わらずウキウキとした様子でインタビュー記事を見せてくれた。カミアについて載っているところだけを雑誌から切り抜いたもののようだ。
「なんかズレてること言ったりして超可愛いの!」
インタビュー記事を何個か読ませてもらったが、家族について言及しているものは少なかった。あっても母がマネージャーをしていた時期があるという話くらいだ。
「……この写真なんでウサギの耳つけてるんだ?」
ウサミミ飾りが付いたカチューシャを着けたままインタビューに答えている記事があった。
「あぁ、パニッシュバニーボーイって歌出した時のヤツだからバニースーツ着てんの。衣装可愛いんだよ~。えっとね、これこれ」
全身写真が載っていたが、俺が期待していたバニー服とは形が違った。
(バニースーツとか言っといて短パンですらないとかもはや詐欺でそ。ただの燕尾服じゃありませんか。網タイツ見たかったでそ……)
露出の少ないバニーの格好に初めは憤ったが、しばらく見ていると「これはこれでエロいな」と考えを変えた。特にコルセットで強調された細い腰がたまらない。
「カミアってウサギ好きらしいんだよね」
「へぇ? 飼ってたりするのか?」
「うーん……聞いたことないなー、飼ってないと思うよ」
そういえばカンナが飼っているウサギはカミアに贈られたと話していたなとぼんやり思い出す。
「……カミアって兄弟とか居るのか?」
ハルはかなりのカミアファンのようだが、ジュニアアイドル時代のことは知らないのだろうか。その時から推していたとは年齢的に考えにくいけれど、ハマったならネットで調べたりするだろうし、苗字を変えたカミアとは違い苗字はそのままのカンナに一切反応しないのは不自然だ。
「さぁ……お母さんのことしか話さないしぃ、分かんない」
「調べたりしないのか?」
「俺、カミアかカミアの事務所が出した情報以外は取らないようにしてるんだよね~。検索とか絶対しない」
「ふーん……まぁ、その方がいいかもな。変なデマとか見ないだろうし」
ジュニアアイドル硫酸男襲撃事件は調べればすぐに出てくるだろうけど、俺も調べたくないしハルには知って欲しくない。ハルが応援しているのは今のカミアだ、ハルがそう選択しているのだからそれでいい。
「……最近そんなCD集めてる子なんてあんまり居ないのに、すごいな」
「ハマってから出たのは全部買ってるよー。特典付きのも多いからさ~……それにさ、あんま考えたくないし、まずないとは思うけど……カミアが何かやらかして曲が配信停止とかになったら聞けなくなるじゃん?」
「ストアとかで買った曲まで止まることはかなり稀だと思うけどな」
「姉ちゃんが推してたアーティストがそんな感じになったんだよねー。だからCDは出たら即買い!」
なるほどなと感心する俺の前にハルは何組かのCDを並べた。どうやら明日のライブで演奏予定の曲が収録されているらしい。
「じゃ、順番に流してくね~」
曲についての軽い説明を終えるとハルはCDプレーヤーにCDをセットした。流れ出した音楽は聞き慣れないものだが、歌声を聞くとカンナの顔が目に浮かんだ。
(やっぱりカンナたそに歌声そっくりですな)
カンナが声を僅かにしか出さず、非常に聞き取りにくい話し方をするのはカミアと双子だとバレないようにするためだったりするのだろうか。いや、俺と二人きりの時も変わらないから、やっぱりただの照れ屋かな。
「写真集見よ~」
また俺の足の上に座り、自分の頭越しにカミアの写真集を見せてくる。ウキウキとした様子のハルはとても可愛らしい。
「……めちゃくちゃ可愛いな」
「でしょ~!? 最っ高だよねー、マジ神! どの角度から見ても超絶可愛い!」
はしゃぐハルの肩に顎を乗せてカミアの写真を見る。ふわっとした柔らかそうな黒髪、間近で見つめ合えば瞬きの度に風を感じさせそうな長い睫毛、大きく丸い煌めく瞳、どれを取っても素晴らしい。
「お、シャワーの写真もあるのか……大丈夫かコレ、児ポだろこんなもん」
「げーいーじゅーつぅー! 変なこと言わないで!」
上半身だけだし乳首すら見せていないとはいえ、濡れた髪と水を弾く肌の艶やかさは十八禁に相応しい。
「……すごいな」
きっと数十人の大人が関わって作られたのだろう写真を見て、俺は俺のスマホの写真フォルダにあるカンナのヌード写真を思い出していた。
プロがセットした照明、部屋、家具、服、小物……そしてプロが施したメイク。それらを引いてポージングや目線の上手さだけで考えると、カミアとカンナに差はほぼない。何年も撮られ慣れているカミアと、写真を忌避してきただろうカンナに、差がないのだ。
(目力が一緒なんですよなぁ、カンナたそには睫毛がないので目のサイズが違うように見えますが……人を惹きつける魔力と言いますか、そういうのはカンナたそも失っていないように思いますぞ)
練習なんてしていないだろう歌もカンナは上手かった。元から彼の方が器用だったのだろうか? 揃ったところが見たい、明日は頑張らなければ。
(双子丼やりてぇでそ……)
真の欲望を心の底に押し殺し、俺はカミアの人間性について知るためにハルに尋ねた。
「可愛いのは分かったよ、どんな子なんだ? バラエティとか出るのか?」
「たまに出てるよー。ちょっと天然でマジ可愛いの!」
「天然……へぇ」
「インタビューとか見る? 切り抜いて置いてあるんだ~」
ハルは変わらずウキウキとした様子でインタビュー記事を見せてくれた。カミアについて載っているところだけを雑誌から切り抜いたもののようだ。
「なんかズレてること言ったりして超可愛いの!」
インタビュー記事を何個か読ませてもらったが、家族について言及しているものは少なかった。あっても母がマネージャーをしていた時期があるという話くらいだ。
「……この写真なんでウサギの耳つけてるんだ?」
ウサミミ飾りが付いたカチューシャを着けたままインタビューに答えている記事があった。
「あぁ、パニッシュバニーボーイって歌出した時のヤツだからバニースーツ着てんの。衣装可愛いんだよ~。えっとね、これこれ」
全身写真が載っていたが、俺が期待していたバニー服とは形が違った。
(バニースーツとか言っといて短パンですらないとかもはや詐欺でそ。ただの燕尾服じゃありませんか。網タイツ見たかったでそ……)
露出の少ないバニーの格好に初めは憤ったが、しばらく見ていると「これはこれでエロいな」と考えを変えた。特にコルセットで強調された細い腰がたまらない。
「カミアってウサギ好きらしいんだよね」
「へぇ? 飼ってたりするのか?」
「うーん……聞いたことないなー、飼ってないと思うよ」
そういえばカンナが飼っているウサギはカミアに贈られたと話していたなとぼんやり思い出す。
「……カミアって兄弟とか居るのか?」
ハルはかなりのカミアファンのようだが、ジュニアアイドル時代のことは知らないのだろうか。その時から推していたとは年齢的に考えにくいけれど、ハマったならネットで調べたりするだろうし、苗字を変えたカミアとは違い苗字はそのままのカンナに一切反応しないのは不自然だ。
「さぁ……お母さんのことしか話さないしぃ、分かんない」
「調べたりしないのか?」
「俺、カミアかカミアの事務所が出した情報以外は取らないようにしてるんだよね~。検索とか絶対しない」
「ふーん……まぁ、その方がいいかもな。変なデマとか見ないだろうし」
ジュニアアイドル硫酸男襲撃事件は調べればすぐに出てくるだろうけど、俺も調べたくないしハルには知って欲しくない。ハルが応援しているのは今のカミアだ、ハルがそう選択しているのだからそれでいい。
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