冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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温度差で風邪引きそう

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授業が始まった静かな校内。ゆっくりと階段を降りていると、不意にハルが立ち止まった。何も言わずに彼を見上げ、微笑みかける。

「…………それから俺、援交やめたんだ。中にはブチ切れたおっさんも居てさぁー……街中で絡まれて、何回も金積んできゃヤれると思ったのにって怒鳴ってきたおっさん居てさぁー……そん時俺、吐いちゃったんだよねー……おっさんが怖くてとかキモくてじゃなくて、お父さん思い出しちゃって」

俺は相槌すら打てずにハルをただ見つめた。

「それから……学校のせんせーも、同級生の男子も……お父さんと似た体格のヤツ見ると、泣いたり吐いたり震えたりしちゃって。お母さんが気ぃ遣ってさぁー……この辺に引っ越してきたんだよね、姉ちゃん達も居るから遠い田舎とかは無理だけど、知り合いの多い町よりマシだろって」

「そっか……その時住んでたところが横浜だったんだな?」

「うん……それで、お母さんの実家が京都。離婚するまではそこ住んでて、離婚のゴタゴタでおばあちゃん達と仲悪くなったからお母さんの転職ついでに引越した。盆とかには帰るけど」

「そっか。じゃあ夏休みにも帰るんだよな? 京土産欲しいなぁ、お金は渡しとくからハルのセンスで俺に何か買ってきてくれよ」

「……ふふっ。うん、いーよ。みっつんに似合うの何か見繕ったげる」

上手く誘導出来た、ようやく笑ってくれた。教室に帰っても暗い顔のままじゃ他のクラスメイト達に何か聞かれて、余計な辛い思いをするかもしれない。いつも通りを装えるくらいの元気を取り戻させてやらないと。

「いいなぁ、行ってみたいな……バイト代貯めておこうかな? 電車代にしてさ。もし行けたら案内してくれよ」

「いーよ、みっつんどういうとこ案内して欲しい?」

「京都って歩くだけでも楽しそうだよなぁ」

「んふふ、そだねー、うろうろデートしよっか」

「なぁ? ふふ……楽しみだな」

「夏休みの前にカミアのライブだけどね!」

手を繋いで笑い合いながら教室の扉を開けた俺達は、その態度のせいで俺の委員長パワーも通じず叱られてしまった。



そして二時間目と三時間目の隙間の休み時間。ハルの話を聞いたばかりで勃たないのと、先程叱られた反省の意を込めて教室に留まることにした。

「水月ぃ、さっきはえっらいどやされとったなぁ」

「ねー。もうちょいシンミョーな感じで入ってきた方がよかったかなー?」

「仲睦まじく当然のように遅刻してきましたものね」

話題は俺達の遅刻で持ちきりだ。当人のハルまで一緒になって俺をからかっている。俺の腕に抱きついているだけのカンナがとても可愛く思えてきた。

「ほんまな。何話しとったん?」

「あぁ、夏休みの話だよ。ハルはお盆に京都に帰るらしいから、遊びに行こうかなーとか……旅費貯まるかは微妙なんだけどな」

「へぇ、気が早い。期末テストで赤点を取ると夏休みがなくなると聞きますから、せいぜい頑張ってくださいね」

「ぅえー、二週間後に中間なのに期末の話なんてやめてよー」

「期末は中間の一ヶ月と一週間後ですよ、ちゃんと考えておきなさい」

メガネに似合う優等生ムーヴ、見事な仮面だな。そういえば本物の優等生は彼氏にしていなかったな、真面目過ぎてセックスまで持ち込むのが大変だ……って感じの彼氏、欲しいなぁ。

「水月水月ぃ、夏休みやったら俺も大阪帰んねん。近いんやから俺んとこにも来てぇな」

「あぁ、もちろん……リュウも帰省か?」

「ぉん、俺ん家神社やねんで。おとん次男やから継いでへんねんけどな。来てくれたら……せやなぁ、御守りタダでやるわ」

「神社!? へぇー、大層な名前してると思ってたけど、まさかそんな由緒正しい産まれだとは……その髪と態度からは想像も出来なかったよ」

「名前も髪も態度も関係あれへんやろ」

ムッとした様子のリュウの頭をぽんぽん撫でる。さて、他二人の帰省状況も聞いておかなければ。

「カンナは帰省とかするのか?」

「でき、な……母さ、見つか……ちゃ……」

「そっか……じゃあ俺とどっかデート行こうな」

「……! うんっ」

幼い頃は秋田に居たとか聞いたけれど、その家は母親の実家なのか。双子の兄であるカミアの評判のため、母親はカンナを邪魔者扱いしているらしいから……帰れなくても仕方ないな。北の方にも行ってみたかったんだけどなぁ。

「シュカは……」

「しませんよ、私が帰ったら抗争が起きるじゃないですか。引っ越しまでして真面目に生きようとしているのに、水月は酷いことを言いますね」

帰省一つで抗争が起きるような過去を持ってるヤツの方が酷いと思う。

(歌見パイセンの実家はややこしそうですし、レイどのも……あの髪色、男遍歴、歳下詐欺などなどを踏まえまして帰省とかするタイプじゃなさそうなんですよな。まともな家で育ってなさそうというか、ご家族との折り合い悪そうというか)

夏休みに遊びに行けそうなのはハルの家とリュウの家だけだな。近畿までの旅費を稼がないと。夏休み前半にバイトを増やそうかな?

「ってか夏休みより期末より前に中間だよねー。あ、ねっ、ねっ、みんなで集まって勉強会とかしよって言ってたよね。いつにする?」

「勉強せぇへんヤツやん」

「乱交大会ならテスト後にしましょう」

「永遠に開かんわそんな大会」

重たい過去を聞いたり思わぬ実家の話を聞いたり夏休みに思いを馳せたりと色々したが、すっかり友人関係を築いている彼氏達の微笑ましさでメンタルリセット完了だな。

「テスト前の一週間はバイト休んでいいって言われてるんだよな」

「おや、優しいお店ですね。一週間前と言いますと、学校も午前までになりますし……」

「時間取れるね! カラオケ行こカラオケ!」

「カラオケは打ち上げ。勉強会な。勝負するんだろ?」

元気そうなハルに呆れと安心のため息をつく。

「そや、勝負やったな。いっちゃんええ点取った教科だけでの勝負や。絶対勝ったんで」

「意気込みはいいけど、優勝賞品とかあるのか?」

「生ハメ中出しセックスでいいのでは?」

「急にド下ネタぶち込むな、俺が優勝した時のことも考えてくれ、お前いつもヤってるだろ」

「水月、ツッコミは一個に絞らなアカン」

「ツッコミしたつもりないから!」

こうやって話していると会話になかなか参加しないカンナが気になる。疎外感を覚えてはいないだろうか?

「カンナ、カンナは優勝賞品何がいいと思う?」

「……! みん、に……おめ、と……言って、も……う」

「みんなにおめでとうって言ってもらう? そりゃいいな、最高の賞品だ」

「みんなの前で? なるほど、公開生ハメ……」

「言わせねぇよ! お前ここ教室だぞ! 最近節操なくなってきたぞ真面目に生きるんだろもっと頑張れよ!」

「水月ぃ、ツッコミくどいて」

「俺はツッコミの修行してねぇの!」

カンナにほっこりさせられたりシュカの下ネタに焦ったりリュウの──何? 何今の、ボケ? に……何したの俺、ツッコミ? 知らない間にツッコミ修行させられてるの? みんなに突っ込みたいけどツッコミスキルは別に上げたくないんだけどなぁ……
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