冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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衝撃の事実 (水月+レイ・リュウ)

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当初はドM用の対応が厄介で、リュウが最も手のかかる彼氏だと思っていた。だが、実は一番まともなのではないだろうか。

「このめん、えらい泣いとったし水飲んどきや、脱水なんで」

「ご心配ありがとうございますっすリュウせんぱい、後でコンビニ行くっす」

「バイト頑張ってなぁ水月ぃ、ほなな」

「あぁ、また月曜日」

改札を出て本屋へ向かう。レイはコンビニに行くようなので、一旦別れた。

(さーて労働のお時間ですぞ)

着替えを終えた頃、バックヤードにレイが入ってきた。手にはフルーツの絵が描かれた缶が握られている、ジュースだろうか?

「レイ、本があるから店では飲むなよ? ここでだけな」

「分かってるっす」

フード越しにレイの頭を撫でて店へ出る。本棚の整理に在庫確認、お客様の質問に答えて──めっちゃシャッター音聞こえる。

「……レイ」

「せんぱい、お仕事中は構ってくれないんじゃなかったんすか?」

「ちょっと手が空いたからな。あんな熱い視線送られちゃ無視は出来ないよ」

「嬉しいっす。せんぱい、せんぱいが重いもの運んでる時の腕、筋浮いてめちゃくちゃよかったっすよ」

レイは撮ったばかりの俺の写真を自慢げに見せてくる。肘下まで袖はまくってあるので、レイの言う通り腕の筋がくっきり浮いている。美しい筋肉だ、流石俺……と母の筋トレメニュー。

「……あのさ、レイ。好きにしていいとは言ったけどな、そんなにシャッター音鳴らしちゃお客さん気になるだろ。この本屋、写真撮影禁止だしな?」

「撮ってるのは本の中身じゃなくてせんぱいっすよ?」

「紛らわしいし、うるさい。店長に怒られるだろうから先に注意してるんだ、レイが怒られるなんて嫌だからな」

「せんぱい……」

「……俺の写真ならまた今度好きなだけ撮らせてやるから、店では我慢しような」

ほのかに赤みが差した頬を撫で、前髪越しの額にキスをした。

「鳴雷くーん、ちょっといいー?」

「はい! じゃあな、レイ」

店長に呼ばれて小走りでバックヤードに戻る。当然レイも着いてきた。

「どうしたんですか?」

「……歌見うたみくん覚えてる?」

「当たり前ですよ、先輩忘れるほど薄情じゃありません」

「彼、配達の帰りに事故しちゃって……大した怪我じゃないし、もう病院出たみたいなんだけど。それで──」

俺の彼氏候補である歌見が事故だって? そんなこと聞いたら仕事に集中できなくなる。

「──今日まだ配達残ってて、どうしようかなーって。水月くんバイクの運転できる?」

「俺まだ十五なんで……」

「そう……木芽このめくんは?」

童顔と低身長と話し方のせいで歳下らしさがあるが、バイトをしているのだから俺と同い年くらいだろう。早生まれなら免許を取れるが、レイがバイクに乗っている様子は想像できない。

「お、俺っすか? 俺、その……さっき……」

レイは恐る恐る先程飲んでいたジュースの缶を店長に見せた。

「チューハイ? 飲んだの? 店で飲まないでよ……」

「す、すいませんっす。今日俺シフト入ってないしいいかと思って」

「ちょっと待て! 酒飲んだのか? 店でとかそういう問題じゃないでしょ店長!」

未成年飲酒はいけない。童顔のくせにどうやってコンビニで買ったのかも気になるが、とにかく叱らなければ。

「レイ! お前まだ十五か十六だろ? 身体も小さいのに酒飲んでいいと思ってんのか!」

「え? 木芽くんはにじゅ」

「わーっ! わーっ! 言わないでくださいっす店長! すいませんっすせんぱい魔が差したんす、ちょっと大人の階段登ってみたかったんすよぉ!」

「にじゅ……? え、店長…………レイ、え……まさか……未成年じゃ、ないのか?」

レイはその場に崩れ落ち、店長と俺は困惑する。

「聞いてなかったの? 木芽くん二十三歳よ? バイクも大型の免許持ってるし、普通車の免許も持ってるのよね、木芽くん」

「…………はぁ!? 二十三!? 結構歳上!? 嘘だろ……おいレイ! いや……レイ、さん……?」

「嫌ぁあ呼び捨てしてくださいっすせんぱい! バイト的には俺が後輩なんすから! 嫌っす嫌っす歳上扱いやめてください!」

駄々をこねる姿も年齢を加味すると可愛くなくなって──いや、逆にイイな。いつまでもガキな大人キャラも俺は好きだ。

「わ、分かった。分かったから落ち着け……二十三、二十三か……」

「え……? まさか歳上だからってフったりしませんよね!」

「フラないよ。歳上だろうと下だろうと可愛いものは可愛いし。でも……レイ、お前……お前って言うのなんか…………はぁ……お前、通信で高校行ってるって言ってなかったか?」

態度を変えるなというのも難しい話だ、いくら見た目は歳下とはいえ敬語を使いたくなる──見た目若過ぎないか? すごいな。

「高校とは言ってないっすよ」

「……大学?」

「いえーす、っす」

「二十三で……本屋でバイトしていいのか? ちゃんと就職した方がいいんじゃ……」

「本業ちゃんとあるっすよ! フリーランスっすけど、これでも稼いでるんすから!」

なんかもう色々と衝撃だ、歌見の事故が昨日の出来事のようだ。一応本業が何か聞いておこうか。

「どの筋なんだ?」

「……言いふらさないでくださいっすよ? 顔出しはしてないんで」

絶対に言わないと約束するとレイは不満げながらもスマホでSNSアカウントを見せてきた。

「イラストレーターコノコノ……コノコノ先生!?」

「……知ってたんすね、割とマイナーなのに」

「あ、当たり前だ……BLゲームのパッケージ描いてた頃から推してる! なんで最近エロいの描かないんですか先生!」

「名義変えてるのに補足してるとこガチファンみたいで嬉しいっす」

「あの……あなた達、歌見くんが怪我したこと覚えてる?」

推しイラストレーターを見つけてしまった喜びを店長の言葉で慌てて歌見への心配で塗り潰した。
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