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自己中メガネ (水月+シュカ・リュウ・カンナ・ハル)

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三人で教室に戻ってから時計を確認したが、後五分くらいの余裕はある。少し話そうかな。

「あ、みっつんおかえり……色々してきた感じ? えっと……俺、そういうのイヤかも。休みの日に出かけるくらいがいいなっ、だから……えーっと、そこんとこよろしく」

一方的にプラトニックラブを宣言し、ハルは自分の席に戻って手鏡を見始めた。またメイク直しか? 一日に何度やるんだろう。

「水月、俺教科書取りに行かな。水月は?」

「俺は朝全部取って机入れとくタイプだから」

この学校には教科書を入れておくロッカーが教室の外にあり、休み時間中にそこを使って授業の準備をする。まぁ、高校ならどこもそんな感じだろう。

「そーなん、ほな一人で行くわ」

「……! 待っ……!」

「リュウ、待った。カンナ、どうした?」

リュウを呼び止めるとカンナは俺の腕からリュウの腕に移った。突然ぎゅうっと腕に抱きつかれたリュウは目を白黒させている。

(ふぉぉ……! 百合ですな、薔薇で作った百合の造花! 大切にしなければ……)

気配を殺して二人の様子を間近で観察する。

「……な、なんや? どないしたんやしぐ。なんや言いたいことあるんやったら言うてみ」

「ぼ、くも……ろっか……行く」

「おぉ、そーなん。ほな一緒に行こか」

「……ん、で……ぼく、に……聞い……くん、な……た、の」

蚊の羽音よりも小さなカンナの声をリュウは聞き取れたかな? 俺には「なんで僕には聞いてくれなかったの」と聞こえた。つまりリュウが俺だけにロッカーに行くかどうか聞いたのがカンナは気に入らなかったのだ、カンナの嫉妬心は俺専用ではないのか……ちょっとショックかも。

「ん……? 行こか」

リュウは聞き取れなかったようだが、構わずカンナを連れて行った。まぁ、それもいいだろう。

「さ、て…………シュカ、ちょっといいか?」

一人になった俺は優等生らしく座っているシュカに近付いた。

「おや、委員長。どうされましたか?」

「どうされましたかじゃないだろ、寸止めで置いていきやがって……先にイってこれ以上やりたくなくなってもさ、手でしたりしないか?「普通」」

「普通? ふふ……昨日まで童貞だったあなたが普通を語りますか、委員長にはお笑いの才能がありますよ」

シュカは上品な表情のまま下品な内容で俺を煽る。

(めっちゃ煽ってきますぞこのメガネ。顔見せないわ声出さないわ自分がイったら教室帰るわ、自分勝手にもほどがありますぞ。これは理解さ分からせる必要がありますな。二度と生意気なこと言えないようにイかせまくる分からセックスのお時間ですぞ!)

余裕そうに微笑んでいるシュカを見つめ、エロ同人誌のような妄想をし、ふと我に返る。

(いや元不良のヘッドに分からセックスとか無理過ぎて草生える)

性行為の経験の差、単純な筋力差だけではない力の差、その差から来る余裕に俺は既に負かされている。

「……とにかく、俺は物じゃないんだからあんな扱いは困るよ。一方的なセックスは嫌だ。感じてる顔見たいし、もっとちゃんと声も聞かせて欲しい、シュカは自分勝手だよ」

「せからしい…………はぁっ、あのですね委員長、私がいつあなたの彼氏になって仲良くセックスすると言いました?」

「昨日四人目の彼氏になってやるって言っただろ」

シュカはレンズの奥の目を丸くする。俺を丸め込もうとしていた訳ではなく、本当に失念していたようだ。

「言いましたか……でも仲良くセックスする約束はしてません。あなたは私がたくさん持っていた舎弟生ディルドの代わりなんですよ、分かったら席にお帰りなさい」

「嫌だ、彼氏になるって言ったんだから彼氏らしくしてもらう」

「恋愛ごっこは他の彼氏と楽しみなさい、私は身体だけです」

「シュカ……」

食い下がろうとしたがチャイムが鳴ってしまい、俺は仕方なく席に戻った。



五時間目の授業が終わると俺はすぐにシュカの元へ向かった。ロッカーに教科書をしまっている彼の隣に立ち、ロッカーを閉めたタイミングを見計らって腕を掴んだ。

「シュカ、ちょっと話がある」

「……人前では難しい話ですか? 構いませんよ」

シュカの手を引いて人気のない物陰へ共に潜む。薄暗いそこでシュカを壁に押し付け、強引に唇を奪う。

「ん……」

特に抵抗はされず、それどころか首に腕を回された。ずっとキスしていたいほどに心地いいが、舌を絡め合うだけで十分しかない休み時間を使い切る訳にはいかない。

「……なんですか? 話と言ったくせにいきなりキスなんて。相変わらず下手ですねぇ」

口を離した後、切れ長の瞳を余裕そうに細めるシュカの腰に腕を下ろす。その細い腰を両手で掴み、親指を臍の下にぐっと押し込む。

「……っ、なん、の……つもり、ですか?」

「…………別に」

「はぁ……?」

親指は綺麗に割れた腹筋の段差を感じ取り、脱力した際の柔らかさも力を込めた際の硬さも覚えた。ずっと力を入れておくのは疲れるようで、シュカは諦めて腹を揉ませてくれる。

「……私の腹がそんなに気になりますか? あなたのものが入った場所ですよ、委員長。まさかあなたが童貞なんて驚きましたが」

「水月だ」

「…………なんですか?」

「委員長委員長って……まぁ、普段はいいよ。でも二人きりの時とか、セックスの時くらい名前呼んでくれよ、俺の名前ちゃんと覚えてくれてるだろ?」

真っ直ぐに目を見つめていたがシュカがそっぽを向いてしまったので、頬に唇を寄せて囁いた。

「み、つ、き……だ。呼んでみてくれ、頼むよシュカ。シュカの色っぽい声が俺の名前呼ぶところ、聞いてみたいんだ」

シュカは俺の彼氏達の中で一番声が低い。少し掠れているのもイイ、男の色気に溢れた声だ。

「シュカ、俺はシュカが好きなんだよ。四人の中の一人とか、身体だけとか、そういうのじゃない……シュカが好きだ。だから……そんなにつれなくされると辛いんだよ」

無言を貫くシュカの頬や耳に何度も何度もキスをして、冷酷だろう彼には効きそうにない泣き落としを試してみる。同時にシュカの腹を揉んでいるからムラムラしてくれるはずだ、セックスしたさに少しは譲歩してくれるはずだ。
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