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学生証の写真で一興 (水月+ハル・カンナ・シュカ・リュウ)
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六時間目の後のホームルーム、担任がダンボール箱を抱えて教室に入ってきた。説明を聞いたところ、この間撮った写真を使った学生証が完成したので配布するということだった。
「呼ばれた奴から取りに来いよー」
出席番号順に学生証が配られた後、いつも通りのホームルームが始まる。それが終わると俺の周りには自然と美少年四人が集まった。
「撮るって知らなかったからさ~、前髪ばっちりやっててさぁ~、それ無理矢理崩したからこの写真やなんだよね。知ってたらデコ出しの髪型にしてきたのにさ~」
ハルは学生証を見ながら写りの悪さをボヤく。前日のホームルームでしっかりと告知されていたとは言わないでおこう。
「前日に知らされていたはずですよ」
「そんなの聞いてないもん」
シュカが言ってしまった。しかし俺の学生証は美しいな、輝いて見える。
「みっつん写真どーぉ? うわイケメン、ムカつく」
「俺もそない変わらんで」
「あっそ。しぐしぐ~、アンタは写真どうだった?」
リュウをあしらったハルはカンナに絡む。
「……っ!? や……!」
「何、見せてよ。俺も見せるって、ほら前髪ブス」
カンナは学生証を握り締めて手を震わせている。そんなに嫌なものなのかと疑問を抱いた直後、撮影の際に前髪を上げるよう言われて嫌がっていたことを思い出す。
「ハル、カンナ嫌がってるから……な?」
「何、俺別に悪いことしてないし、写真見せてっつっただけじゃん」
それとなく間に入ってカンナを背に庇うとハルは不機嫌を示すために頬を膨らませた。似合っているが、そんなあざとい真似をされると興奮で脳の動作がおかしくなりかける。
「カンナは前髪どかしたとこ見られんの嫌いなんだよ。そう不貞腐れるな」
「みっつん、アンタしぐしぐの顔ちゃんと見たことある?」
「……ないな」
「気になんない?」
ならない訳がない。だが、見たくないという思いもある。隠れているからこそいい、でもやっぱり見たい……その葛藤もまたメカクレの魅力だ。
「めっちゃブスかもよ?」
「……っ!」
「ハル、やめろ。カンナは可愛いよ」
「顔見てないのに?」
綺麗な形の鼻に小さな口と艶やかな唇、この組み合わせを見て美少年だと思わない方がおかしい。この下半分の整った顔があって上がどうなっていればブサイクだと言えるんだ、一重も俺は好きだし眉なんて整えればいい。
「カンナは可愛いよ。このちっちゃい口とか、恥ずかしがりな話し方とか、すぐ顔真っ赤になるとことか、俺と手繋ぎたがるとことか……意外と嫉妬深いところも、何もかも可愛い」
「…………」
「ふーん……ふふ、やっぱイイ男だねーみっつん。ま、それはそれとしてしぐしぐの顔は見たいんだけどぉ……そんなに嫌がられちゃね~」
俺の背に隠れて縮こまり、微かに震えているカンナ。その様子を見てハルはカンナの顔を見るのは諦めたようだ。
「カンナ、大丈夫だ。お前が嫌がることは俺が誰にもさせないからな」
振り返ってそう言うとカンナは満面の笑みを浮かべ、俺の胸に飛び込んできた。
「……なんかさー、俺悪者って感じ。俺悪いことしてないよね?」
「せやな、アホなだけや」
「りゅー、アホっていうのは自分より頭の悪いヤツに使う言葉だよ」
「俺ぁこん中で一番賢いわ!」
ハルとリュウが喧嘩を始めた。仲裁したいが、抱きついているカンナを今移動させることはできないし、このまま仲裁するのも難しい。焦った俺はシュカにアイサインを送った。
(シュカ殿ー! シュカ殿ぉー! 仲裁してくだされ!)
何度もウインクをし、カンナを抱き締めたまま人差し指を立てて喧嘩中の二人を指差す。
「……?」
シュカは首を傾げながらも微笑んだ。
(違うそうじゃない。でもナイス! 可愛いからOKです)
さっきの休み時間で少し絆を深めたのが効いているのだろう、表情が柔らかくなっていた。
「この中で一番賢いのは多分しゅーだよ! メガネだし!」
ハルに突然指を差されてシュカは僅かに目を見開く。可愛い。
「ほんだら中間テストで勝負や!」
「いーよ望むところだ! しゅーには勝てなさそうだけどアンタには勝てる!」
中間か、五月の中頃だっけ? まだまだあるな、俺も勉強しておかないと。留年になんてなったら悲劇だ。
「合計点での勝負ですか?」
「ぃや、それやったら俺ボロ負けや。一教科でいくで、一番高い点取ったやつだけで勝負や」
「はぁ? 何それ…………ううん、待って、それなら俺しゅーに勝てるかも」
リュウもハルも特化型なんだな、シュカはバランス型な感じがするから一教科なら勝てそうだと思うのも分かる。俺? 俺は全部ほどよくダメだ。
「俺は合計でも一教科でもあんまり自信ないなぁ……一週間前になったら勉強会とかしようか」
「打ち上げはカラオケね! あ、しゅーってカラオケ行っちゃダメとか家で言われてない?」
「……しゅーって私のことですか? 別に言われてませんけど」
勉強よりも歌の練習をするべきだな、アニソンやエロゲソンばかりじゃとてもではないがカラオケになんて行けない。最近流行りの歌を探そう、歌える歌を作っておこう。
「呼ばれた奴から取りに来いよー」
出席番号順に学生証が配られた後、いつも通りのホームルームが始まる。それが終わると俺の周りには自然と美少年四人が集まった。
「撮るって知らなかったからさ~、前髪ばっちりやっててさぁ~、それ無理矢理崩したからこの写真やなんだよね。知ってたらデコ出しの髪型にしてきたのにさ~」
ハルは学生証を見ながら写りの悪さをボヤく。前日のホームルームでしっかりと告知されていたとは言わないでおこう。
「前日に知らされていたはずですよ」
「そんなの聞いてないもん」
シュカが言ってしまった。しかし俺の学生証は美しいな、輝いて見える。
「みっつん写真どーぉ? うわイケメン、ムカつく」
「俺もそない変わらんで」
「あっそ。しぐしぐ~、アンタは写真どうだった?」
リュウをあしらったハルはカンナに絡む。
「……っ!? や……!」
「何、見せてよ。俺も見せるって、ほら前髪ブス」
カンナは学生証を握り締めて手を震わせている。そんなに嫌なものなのかと疑問を抱いた直後、撮影の際に前髪を上げるよう言われて嫌がっていたことを思い出す。
「ハル、カンナ嫌がってるから……な?」
「何、俺別に悪いことしてないし、写真見せてっつっただけじゃん」
それとなく間に入ってカンナを背に庇うとハルは不機嫌を示すために頬を膨らませた。似合っているが、そんなあざとい真似をされると興奮で脳の動作がおかしくなりかける。
「カンナは前髪どかしたとこ見られんの嫌いなんだよ。そう不貞腐れるな」
「みっつん、アンタしぐしぐの顔ちゃんと見たことある?」
「……ないな」
「気になんない?」
ならない訳がない。だが、見たくないという思いもある。隠れているからこそいい、でもやっぱり見たい……その葛藤もまたメカクレの魅力だ。
「めっちゃブスかもよ?」
「……っ!」
「ハル、やめろ。カンナは可愛いよ」
「顔見てないのに?」
綺麗な形の鼻に小さな口と艶やかな唇、この組み合わせを見て美少年だと思わない方がおかしい。この下半分の整った顔があって上がどうなっていればブサイクだと言えるんだ、一重も俺は好きだし眉なんて整えればいい。
「カンナは可愛いよ。このちっちゃい口とか、恥ずかしがりな話し方とか、すぐ顔真っ赤になるとことか、俺と手繋ぎたがるとことか……意外と嫉妬深いところも、何もかも可愛い」
「…………」
「ふーん……ふふ、やっぱイイ男だねーみっつん。ま、それはそれとしてしぐしぐの顔は見たいんだけどぉ……そんなに嫌がられちゃね~」
俺の背に隠れて縮こまり、微かに震えているカンナ。その様子を見てハルはカンナの顔を見るのは諦めたようだ。
「カンナ、大丈夫だ。お前が嫌がることは俺が誰にもさせないからな」
振り返ってそう言うとカンナは満面の笑みを浮かべ、俺の胸に飛び込んできた。
「……なんかさー、俺悪者って感じ。俺悪いことしてないよね?」
「せやな、アホなだけや」
「りゅー、アホっていうのは自分より頭の悪いヤツに使う言葉だよ」
「俺ぁこん中で一番賢いわ!」
ハルとリュウが喧嘩を始めた。仲裁したいが、抱きついているカンナを今移動させることはできないし、このまま仲裁するのも難しい。焦った俺はシュカにアイサインを送った。
(シュカ殿ー! シュカ殿ぉー! 仲裁してくだされ!)
何度もウインクをし、カンナを抱き締めたまま人差し指を立てて喧嘩中の二人を指差す。
「……?」
シュカは首を傾げながらも微笑んだ。
(違うそうじゃない。でもナイス! 可愛いからOKです)
さっきの休み時間で少し絆を深めたのが効いているのだろう、表情が柔らかくなっていた。
「この中で一番賢いのは多分しゅーだよ! メガネだし!」
ハルに突然指を差されてシュカは僅かに目を見開く。可愛い。
「ほんだら中間テストで勝負や!」
「いーよ望むところだ! しゅーには勝てなさそうだけどアンタには勝てる!」
中間か、五月の中頃だっけ? まだまだあるな、俺も勉強しておかないと。留年になんてなったら悲劇だ。
「合計点での勝負ですか?」
「ぃや、それやったら俺ボロ負けや。一教科でいくで、一番高い点取ったやつだけで勝負や」
「はぁ? 何それ…………ううん、待って、それなら俺しゅーに勝てるかも」
リュウもハルも特化型なんだな、シュカはバランス型な感じがするから一教科なら勝てそうだと思うのも分かる。俺? 俺は全部ほどよくダメだ。
「俺は合計でも一教科でもあんまり自信ないなぁ……一週間前になったら勉強会とかしようか」
「打ち上げはカラオケね! あ、しゅーってカラオケ行っちゃダメとか家で言われてない?」
「……しゅーって私のことですか? 別に言われてませんけど」
勉強よりも歌の練習をするべきだな、アニソンやエロゲソンばかりじゃとてもではないがカラオケになんて行けない。最近流行りの歌を探そう、歌える歌を作っておこう。
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