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目元は絶対領域 (水月+カンナ・ハル・シュカ・リュウ)
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メカクレの目を無理矢理見ようとする、これはメガネキャラのメガネを外す行為に匹敵する大罪だ。しかしそれはオタク界の話。
「──ってわけで、こいつらはカンナの顔を見ようとしただけなんだ」
まぁ大したことじゃない。人によっては座り込んで泣いているカンナの方を責めかねない内容だ。
「痛っ!?」
さて、そろそろカンナを立たせて仲直りさせて──というところでリュウが三人のうちの一人のスネを蹴りつけた。
「こ、こらリュウ! 蹴るな!」
「離せや! まだ二人蹴ってへん!」
「ダメだってば! シュカ、頼む」
リュウを羽交い締めにする役をシュカに引き継ぎ、俺はカンナに手を差し出した。
「カンナ、立てるか?」
「み、くん……? ぅん……」
「あーぁ、後ろボサボサだな。櫛なんか持ってないぞ」
カンナの前髪は不動だ。おそらく何かで固めてある、それを両腕で守った結果横や後ろの髪がボサボサになったのだろう。
「……GO!」
「っしゃあ! 死ねっ!」
俺がカンナにかかりきりになった隙にシュカがリュウを解放し、残り二人もスネに蹴りをくらった。
「甘い! いいですか、ローキックはもっと……」
「ローキック教室始めるな! 大丈夫かお前ら、リュウがごめんな。リュウ! やめろって言っただろ」
「るっさいわ! 自分しぐがどんだけ顔見られんの嫌なんか知らんのか!」
「お前、ちょっと前は見ようとしてたくせに……いや、うん……カンナが前髪触られるの嫌がるのは知ってるよ。でも蹴るのはよくない」
リュウにはカンナを送るよう頼んだことが二回ほどあった、その時に仲良くなったのだろうか? 暴力的なのはいただけないが、カンナのために怒る姿は微笑ましいな。
「しぐ、大丈夫やったか?」
「……てん、くん? ぅん……ぁ、り…………と」
「自分、駅で待っとき。俺と水月で毎朝迎え行ったるわ。なぁ水月、ええやろ?」
「あ、うん……俺はもちろん」
「…………ぁ、り……がとっ……」
唇を震わせながらもカンナは微笑んだ。愛らしい子だ、きっと綺麗な目をしているだろうに何がそんなに嫌なんだろう。
「リュウ、カンナと仲良くなってたんだな」
「……は!? べ、別にそんなんとちゃうわ!」
「カンナ、見た目と口調はちょっと怖いけど、リュウは優しい奴だろ?」
「優しないわ! って見た目も口調も別に怖ないやろ!」
スネを抱えてうずくまった三人の男子生徒を置いて四人仲良く学校へ。余裕を持って到着するはずだったが、始業時間が近い。
「リュウ、トイレは次の休み時間な」
「へ? ぁっ、あぁ……せやな。もぉ……そんなん授業前に言われたら気になってまうやん」
顔を赤くしたリュウは自分の席についた後ももじもじしている様子で、遠目に見ていてもとても愛らしかった。
「ハル、おはよう」
「おっはよー、みっつん。今日は遅いね」
ハルは机に鏡を置き、メイク道具が詰まった鞄を広げ、目元にペンを走らせていた。
「あぁ、ちょっとカンナが絡まれててさ……何やってるんだ?」
「アイライナー引いてんの。ほら、目おっきく見えるっしょ」
分かんない。
「……本当だ、元々可愛いのにますます可愛くなったな。あのさ、カンナが髪ボサボサになっちゃったんだ、櫛持ってないか? 持ってたら貸してくれ」
「えー? 持ってるし別にいいんだけどさぁ……そういうの、普通本人が言わない?」
ハルは鞄から取り出した薄い櫛をウェットティッシュで拭きながら俺をじとっとした目で見上げた。
「いや、そう言わずに……ぅ、分かったよ。カンナー、カンナ、おいで」
カンナは後ろ髪はボサボサのままでも構わないようなので、櫛を借りようとしたのは俺の独断だ。しかしハルとカンナの仲は微妙だし、この機会に歩み寄ってもらおう。
「…………?」
「ハルが櫛持ってるんだ、貸してもらっておいで」
「…………」
頷いた。第一関門突破だ。カンナはハルの机の横に立ち──しばらくすると首を傾げ、俺の方を向いた。
「い、いや……カンナ、貸してもらう時は何か言わなきゃ。俺が話つけたわけじゃないから……」
「…………!」
先に言え、みたいな反応をしたカンナはハルの肩をつついた。
「何? しぐしぐ」
「かす……くん」
「カス!? なんで俺急に罵られたの!?」
「ち、違うんだハル! カンナは霞染くんって言ったんだ、声が小さいからカスしか聞こえなかっただけだ!」
「あぁ……もう紛らわしいから下の名前で呼んで。初春っての、ハルでいいよ」
おっ、これは仲良しフラグでは?
「……は、くん」
「うん、何?」
「ぼく…………み、ぼ……さ……」
「……聞き取れないんだけど」
俺が翻訳してしまっては仲直りイベントを潰すことになる。俺に出来るのは二人とも頑張れと応援することだけだ。
「うん……うん? うん……あぁ、髪ボサボサになったって言ってんのね、で?」
「なん……か…………して」
「何とかしてって……アンタね。ほら、櫛貸したげる、これでいいんでしょ」
「あ、り……とっ」
礼を言われたハルはほんのりと顔を赤らめて「別に……」と呟き、カンナは機嫌良さそうに髪を整える。とても微笑ましい光景だ。
「よかったな、カンナ」
「…………! み、くん……あり、が……とっ」
カンナはにっこりと笑って大きく頷き、俺にも礼を言ってくれた。
「──ってわけで、こいつらはカンナの顔を見ようとしただけなんだ」
まぁ大したことじゃない。人によっては座り込んで泣いているカンナの方を責めかねない内容だ。
「痛っ!?」
さて、そろそろカンナを立たせて仲直りさせて──というところでリュウが三人のうちの一人のスネを蹴りつけた。
「こ、こらリュウ! 蹴るな!」
「離せや! まだ二人蹴ってへん!」
「ダメだってば! シュカ、頼む」
リュウを羽交い締めにする役をシュカに引き継ぎ、俺はカンナに手を差し出した。
「カンナ、立てるか?」
「み、くん……? ぅん……」
「あーぁ、後ろボサボサだな。櫛なんか持ってないぞ」
カンナの前髪は不動だ。おそらく何かで固めてある、それを両腕で守った結果横や後ろの髪がボサボサになったのだろう。
「……GO!」
「っしゃあ! 死ねっ!」
俺がカンナにかかりきりになった隙にシュカがリュウを解放し、残り二人もスネに蹴りをくらった。
「甘い! いいですか、ローキックはもっと……」
「ローキック教室始めるな! 大丈夫かお前ら、リュウがごめんな。リュウ! やめろって言っただろ」
「るっさいわ! 自分しぐがどんだけ顔見られんの嫌なんか知らんのか!」
「お前、ちょっと前は見ようとしてたくせに……いや、うん……カンナが前髪触られるの嫌がるのは知ってるよ。でも蹴るのはよくない」
リュウにはカンナを送るよう頼んだことが二回ほどあった、その時に仲良くなったのだろうか? 暴力的なのはいただけないが、カンナのために怒る姿は微笑ましいな。
「しぐ、大丈夫やったか?」
「……てん、くん? ぅん……ぁ、り…………と」
「自分、駅で待っとき。俺と水月で毎朝迎え行ったるわ。なぁ水月、ええやろ?」
「あ、うん……俺はもちろん」
「…………ぁ、り……がとっ……」
唇を震わせながらもカンナは微笑んだ。愛らしい子だ、きっと綺麗な目をしているだろうに何がそんなに嫌なんだろう。
「リュウ、カンナと仲良くなってたんだな」
「……は!? べ、別にそんなんとちゃうわ!」
「カンナ、見た目と口調はちょっと怖いけど、リュウは優しい奴だろ?」
「優しないわ! って見た目も口調も別に怖ないやろ!」
スネを抱えてうずくまった三人の男子生徒を置いて四人仲良く学校へ。余裕を持って到着するはずだったが、始業時間が近い。
「リュウ、トイレは次の休み時間な」
「へ? ぁっ、あぁ……せやな。もぉ……そんなん授業前に言われたら気になってまうやん」
顔を赤くしたリュウは自分の席についた後ももじもじしている様子で、遠目に見ていてもとても愛らしかった。
「ハル、おはよう」
「おっはよー、みっつん。今日は遅いね」
ハルは机に鏡を置き、メイク道具が詰まった鞄を広げ、目元にペンを走らせていた。
「あぁ、ちょっとカンナが絡まれててさ……何やってるんだ?」
「アイライナー引いてんの。ほら、目おっきく見えるっしょ」
分かんない。
「……本当だ、元々可愛いのにますます可愛くなったな。あのさ、カンナが髪ボサボサになっちゃったんだ、櫛持ってないか? 持ってたら貸してくれ」
「えー? 持ってるし別にいいんだけどさぁ……そういうの、普通本人が言わない?」
ハルは鞄から取り出した薄い櫛をウェットティッシュで拭きながら俺をじとっとした目で見上げた。
「いや、そう言わずに……ぅ、分かったよ。カンナー、カンナ、おいで」
カンナは後ろ髪はボサボサのままでも構わないようなので、櫛を借りようとしたのは俺の独断だ。しかしハルとカンナの仲は微妙だし、この機会に歩み寄ってもらおう。
「…………?」
「ハルが櫛持ってるんだ、貸してもらっておいで」
「…………」
頷いた。第一関門突破だ。カンナはハルの机の横に立ち──しばらくすると首を傾げ、俺の方を向いた。
「い、いや……カンナ、貸してもらう時は何か言わなきゃ。俺が話つけたわけじゃないから……」
「…………!」
先に言え、みたいな反応をしたカンナはハルの肩をつついた。
「何? しぐしぐ」
「かす……くん」
「カス!? なんで俺急に罵られたの!?」
「ち、違うんだハル! カンナは霞染くんって言ったんだ、声が小さいからカスしか聞こえなかっただけだ!」
「あぁ……もう紛らわしいから下の名前で呼んで。初春っての、ハルでいいよ」
おっ、これは仲良しフラグでは?
「……は、くん」
「うん、何?」
「ぼく…………み、ぼ……さ……」
「……聞き取れないんだけど」
俺が翻訳してしまっては仲直りイベントを潰すことになる。俺に出来るのは二人とも頑張れと応援することだけだ。
「うん……うん? うん……あぁ、髪ボサボサになったって言ってんのね、で?」
「なん……か…………して」
「何とかしてって……アンタね。ほら、櫛貸したげる、これでいいんでしょ」
「あ、り……とっ」
礼を言われたハルはほんのりと顔を赤らめて「別に……」と呟き、カンナは機嫌良さそうに髪を整える。とても微笑ましい光景だ。
「よかったな、カンナ」
「…………! み、くん……あり、が……とっ」
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