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神無きゅんご機嫌ナナメ (〃)

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鳥待とりまちにはトイレに行くと言い訳し、朝から一階の階段裏でカンナとイチャつく。

「かーんなっ、あぁ……可愛いな。お前と居ると癒されるよ」

「…………」

まずは唇にキス、教わったばかりのディープを試すのは数回のキスの後だ。

「……ん?」

目を閉じて唇が触れたのは頬だった、唇にしようとしたのにカンナが顔を背けてしまったらしい。

「カンナ、どうしたんだ?」

「…………っ」

顎に手を添えて顔を上げさせようとしても、首を振って俺の手から逃れてしまう。

「カンナ……? 俺、何かしたかな」

カンナはぶんぶんと首を横に振る。自身のシャツを掴む手は震えている。

(まずいですぞまずいですぞ、絶対わたくし何かやらかしましたぞ! カンナきゅんが反抗期ですぞ~!? なんで!? 昨日はラブラブで、今朝会った時もご挨拶キスかまして、ずっと腰抱いて……何が悪かったのか検討もつきませんぞ!? まずい……まずすぎですぞ)

心の中は大混乱、けれど表情には一切匂わせもせずに軽いスキンシップを繰り返す。

「カンナ……もし俺がカンナを傷付けてしまったなら教えてくれ、癒したい……教えてくれないと改善できない。俺はカンナのこと大好きだから、これからもずっと一緒にいたいし、傷付けたくないんだ……」

親指でそっと撫で上げた頬は濡れている。泣いていたのだ。

(まずいまずいまずいまずいっ……! バッドエンドの危機ですぞ!? なんとか機嫌を取るのでそ!)

まずは涙を拭い、昨晩母に教わった通り下顎の関節横の窪みに手を添える。軽く圧迫し、強引に顔を上げさせて唇を重ねる。

「んっ、ん……!? ん、ぅ……!」

カンナの閉じた唇を唇で優しく噛み、舌で舐め回してぷるんとした感触を楽しむ。

「……カンナ、口開けて」

唇の間に押し入り、前歯を舌先でつつく。ようやく開いてくれた口内に舌を突っ込み、まず上顎を撫でる。

「ん、んんっ……!」

口内まで大人しいカンナへの愛おしさを示すように舌を動かす。ほとんど動かない小さな舌に絡めて持ち上げ、舌同士で愛撫し合う。たどたどしいながらも二枚の舌は互いの味を覚えていく。

「ん、むぅっ……ん、んん……みぃ、くんっ……!」

「ん、んっ……かんな……」

顔を離すと互いの口が唾液で繋がっていた。唾液の糸を切り、カンナの頬を撫でる。

「……俺が何をしてしまったか教えてくれるよな?」

カンナは躊躇うように俯き、落ち着きなく首を横に振る。

「カンナ……頼むよ、俺はカンナのこと傷付けたくない、教えてくれ。今度から絶対しないから」

「ゃ……言った、らっ……ぼく、嫌いに……なるっ」

「…………ならないよ、なるわけない。こんなに可愛いカンナを嫌う奴がどこに居るんだ」

「い、ぱい……いるっ……! ぼく、かわい、くっ……ないっ!」

「可愛いよ……」

ポロポロと流れてくる涙を拭いながら根気よく愛情を示し、何に機嫌を悪くしたのか尋ね続けると十分以上かかってようやく頷いてくれた。

「話す気になってくれたか……!」

「ぅ、ん……」

「何が原因なんだ?」

「ぁ、さ…………みぃくんっ、と……はな、せな……かたっ……」

朝、俺と話せなかった?

「と、とりっ……くん、いた……から、みぃくんとっ……はな、せなくてっ……さ、さみ、し……くてっ……」

粒が大きくなった涙を指で受け止め、しょっぱい頬に何度も口付ける。

「なんでっ、みぃくんっ……鳥待くんと、一緒なのって……なんで、ぼくの方……向いてくれないのって……ずとっ、思ってて……そんなこと思っちゃう、ぼくが嫌で、こんなぼく……嫌われちゃうって思、たら……!」

「…………嫌わないよ。そっか、寂しかったんだな、妬いてたんだ……そういうところも可愛いよ」

「う、そ……ぼく、めんど……て、うっとうし……てっ、言う……」

「言わない。可愛い」

面倒臭さも鬱陶しさも可愛さが内包するものだ。全く妬かない子なんて寂しいじゃないか。

「本当に可愛いって思ってるよ」

「う、そ……」

「嘘じゃない。大好きだよ、心の底から」

「……ほん、と?」

「愛してるよ」

カンナはようやく口元を緩め、ふにゃりとした笑顔を見せてくれた。目元が見たい欲はあるけれど、今は口元だけで我慢しよう。

「うれ、し……」

(あぁぁよかったぁフラれたかと思ったぁ! ちょっと話さなかっただけで寂しがって嫉妬して泣き出すとか可愛すぎますぞカンナきゅん! 萌え萌えですぞ!)

「みぃくんっ、すき」

(死にました! 今わたくし萌え死にました!)

心の中で大騒ぎしながら表情は優しい微笑みのまま愛を伝え返し、唇を重ねた。

「みーくん……すき、すき、すき」

ホームルーム開始まではまだ時間があるのでもうしばらくここに居ようと思っていたが、これ以上ここに居たら本当に萌え死にしてしまう。

「そろそろ教室に帰ろうか」

「うんっ……」

カンナと手を繋いで教室へ戻り、一時間目の授業の準備をして待つことにした。



一時間目の授業が終わり、二時間目の授業の準備をしていると机を蹴られた。

「……水月みつき、ツラ貸せや」

リュウだ、ちょうど話したいと思っていた。教科書と机の隙間に指を挟んでしまってとても痛かったことは忘れてやろう。

「分かったよ」

心配そうに焦るカンナに微笑みを送り、教室を出てリュウに着いていき、人気のない男子トイレに入った。

「リュウ、なんで呼び出したんだ?」

「…………水月ぃ」

個室に入ると同時にリュウは抱きついてきた。

「ごめんなぁ水月ぃ、ほんま堪忍なぁ? 助けてくれたんほんま嬉しかってん、ありがとぉ言いたかってん、せやのに咄嗟に言われへんかってん、堪忍なぁ、嫌わんといて、水月ぃ……」

「リュウ……」

今朝、赤信号なのに飛び出した彼を捕まえた時の礼──いや、礼を言わないばかりか罵ったことへの謝罪か。やはり素直になるとリュウもとても可愛いな。

「水月ぃ、ほんまになんでもするから嫌わんといて」

「……リュウ、大丈夫。分かってた、お前は素直じゃないもんな。嫌いになったりしてないから安心しろよ」

「…………なんでもするから許してぇな」

「だから怒ってないって、許すも許さないもないよ」

俺の言葉が本気だと伝わらないなら顔を見て話そうか。肩を掴んで押し、少し距離を取ると不満そうな顔のリュウと目が合った。

「……お詫びにする、言うてんねんけど」

「う、うん……? だから、怒ってないから…………ま、まさか、虐めて欲しいとか思ってるのか?」

「べぇーつぅーにぃー、謝りたかっただけやし、それネタに嫌々虐めてもらおなんて思ってへんよ」

「…………本音は?」

「………………生意気な態度取ってしもたから、めっちゃ虐めてくれるわ思ててん……せやけど謝りたかったんはホンマやで? アレは虐めて欲しいからわざとやったってわけとちゃうし」

二人きりでないと素直な態度が取れないだなんて面倒な奴だ、だがそこがいい。俺はあまり人の思いを察するのが得意ではないので、カンナのように本心を隠そうとはしないだけよかった、度し難いドM心理は厄介だけれど。

「学校ではちょっとキツイだろ」

「八方美人やもんな」

「否定はしねぇよ。だから明日まで我慢しとけ、放置プレイは嫌いか?」

「…………めっさ好き」

サービスとして額を指で弾き、口角を上げたまま額を押さえるリュウを置いて教室に戻った。
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