上 下
15 / 1,971

通学路でおなかいっぱい (水月+リュウ・シュカ・カンナ)

しおりを挟む
学校最寄りの駅で降り、人波をかき分けていく。他人がリュウにぶつかって欲しくないので俺が半歩前を歩く。

「リュウってさ、出身関西の方だよな」

「せやけど……えっ、なんで分かったん?」

「いや、誰でも分かると思うけど……いつこっち来たんだ?」

「こないだ……えー、中三? おとんの仕事の都合でなぁ」

「そうか、受験大変だっただろ」

引っ越してすぐに名門校に合格とは案外頭がいいのかもな。

「優遇あったから楽やったで、勉強ほとんどしてへん」

「えっ……なんで? スポーツ特待生ってやつ?」

「は? いや……数学得意やからやけど。俺あんまスポーツ得意やないで」

得意科目が数学? そうは見えない。いや、人を見た目で判断してはいけない、デブスから超絶美形になった俺は特に。

「数学に優遇とかあるのか?」

「あー……なんか、検定? 取ってんねん」

「へぇ……数学にも検定なんかあるんだ、漢字と英語しか知らなかったよ」

「数学はなんかオモロいから好きやねん、他のん嫌い。水月みつきは得意科目なんなん?」

「現文かな……」

「あー俺それ苦手やわ、テストん時カンニングさせてな」

テスト勉強に付き合ってくれ、くらい言ったらどうだ。

「委員長! 委員長……おや、天正てんしょうさんも一緒でしたか」

信号待ちで鳥待とりまちに声をかけられた。髪と眼鏡に遮られて見えにくいが、彼の左目には刃物で縦に切ったような傷跡がある。理由が知りたいが、あまり仲良くなれていないのに聞くのも躊躇われる。

「今朝は仲がよろしいんですね」

「んなわけあれへんやろ! こんっなクソカスと一緒に登校なんかやってられんわ、死ね!」

突然不機嫌になったリュウはまだ信号が赤なのに走っていく。

「リュウっ! 危ない!」

慌てて背後から抱き締めるように捕まえると、彼のすぐ前を乗用車が走っていった。直後、信号が青に変わる。

「リュウ、大丈夫か?」

「み、水月ぃ……」

「天正さん、赤信号に突っ込んでいくなんて何を考えているんですか?」

「……いつまで触っとんねんはよ離せや変態!」

リュウは俺の腕を振り払って走っていく。ここから学校までに信号はもうない、きっと大丈夫だろう。

「委員長、大丈夫ですか? 無礼な奴ですね」

「鳥待……いや、悪い奴じゃないんだよ。ただちょっと素直じゃないだけだ」

二人きりの時はあんなに甘えてきてくれたのに、どうして鳥待が来た途端に不機嫌になったんだ?

(ツンデレなんでしょうか……普段ツンツンたまにデレではなく、ツンツンしながらデレるのでもなく、みんなの前ではツンツン二人きりではデレデレ…………ツンデレのニュアンス多過ぎてややこしいですな)

二人きりになれる時間を作らないとな。カンナも二人きりじゃないと話してくれなさそうだし、俺の彼氏達は手間がかかるなぁ、可愛い。

「そうだ、委員長。今日の放課後は各クラスの委員長副委員長が収集されていますが、聞いていますか?」

「え? 聞いてない……」

「そうですか、ホームルームが終わり次第第一多目的室に集合だそうです」

やはり委員長なんてやりたくなかった。今日はカンナと帰れないじゃないか、あぁ可愛いカンナ……早く会いたい。

「……おや?」

俺の歩幅に合わせていた鳥待が足を早め、電柱の影を覗く。

「何をしてらっしゃるんです」

「鳥待? 猫でも居たのか?」

小走りで追いつき、鳥待の後ろから覗き込む。すると小さく縮こまって震えるカンナが居た。

「カンナ……! あぁ、これは可愛い仔猫ちゃんだな。カンナ、どうしたんだ? ん?」

「…………!」

「委員長が聞いてるんですよ、早く答えたらどうです。やましいことでも?」

「鳥待、悪いけど少し下がっててくれ。かーんーなーっ、どうした~?」

ドMへの対応を考えて疲弊していた頭脳と精神が癒されていく。ぷにぷにほっぺの感触を楽しみながら、昨日の朝を思い出す。

「あぁ、挨拶を忘れてた。おはよう、カンナ」

左手の指先に唇を触れさせ、ちゅっと音を鳴らす。

「……っ! ぉ、は……よ…………みー、くん」

「俺のこと待っててくれたんだな?」

コクリと頷いたカンナの腰に腕を回す。俺のシャツをきゅっと握る手が可愛い。

「よし、じゃあ行こうか。鳥待、悪かったな、解決したよ」

「何だったんですか?」

「俺待ちだって。なぁ、カンナ~? よしよし、可愛い奴だよお前は」

「通学路で人を待つのはあまり感心しませんが……随分仲がよろしいんですね」

まずい、鳥待も落としたいと思っている。カンナにばかり構いすぎるわけにもいかない。

「俺は鳥待とも仲良くしたいと思ってるよ」

「…………!?」

鳥待の腰にも腕を回す。これぞ両手に花だ、二人とも腰が細くて劣情を煽られてしまうな。

「おや、それはそれは……光栄です」

腰を抱いても嫌がらない、しかし顔が赤くなってもいないので一切意識されていない危険性がある。なので周りの目を気にしつつそっと尻を撫でてみる。

「私も委員長とは仲良くしたいと思ってますよ」

鳥待は涼しい顔で俺を見つめたまま自分の尻を撫でている俺の手に手を重ね、指を絡めてきた。なるほど、真面目な見た目に反して大人の付き合いが出来そうだ。

「…………!」

「ん? どうした、カンナ」

シャツを強く引っ張られてカンナの方を向いたが、彼は俯いている。話したいわけじゃなかったのか?

「……あ、そうだ鳥待」

じゃあ、鳥待と話していようかな。カンナの好感度は十分上がっているはずだし、今は鳥待の好感度を上げていきたい。
しおりを挟む
感想 440

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...