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酒の肴は贅沢に

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優雅にグラスを傾けて金色の酒を飲む査定士に見られながら、弟の膝に股間を擦り付けて自慰を行う。屈辱的だ、金持ちの性奴隷といったところか──そんなふうにされたことがあるのに興奮する俺は、とんでもない変態だ。弟まで巻き込んで身体の芯を熱くして、まさに淫魔だ。

「はぁっ、はぁっ……」

シャルの椅子の肘置きに尻尾を偶然ぶつけてしまった時、陰嚢をシャルの膝に擦るよりも強い快感を覚えた。俺がやるべき自慰はこっちだ。

「……っ、ひぁああんっ!」

尻尾で思い切り肘置きを叩く。ビリビリと電撃のような快楽が尻尾を伝わって脊椎を駆け上がり、脳を痺れさせた。

「ん……ふっ、ふぅっ、はぁあっ……しっぽいい……しっぽ、きもちぃ……」

もう一度やりたいけれど、快楽の雷に打たれた尻尾は上手く動かない。へろへろと持ち上がり、ぺちんと肘置きを叩く。

「ぁんっ! んぅう……足りない、もっと……強くっ、したいのにぃ…………ぁ、そぉだ……」

シャルの膝に股間を押し付けるのをやめ、股を通した尻尾を机に乗せる。机の縁と自分の腹で尻尾を挟む。

「んっ、んんぅっ……! ふぅうっ……ぅ、あっ、あぅっ……! ぅうっ……!」

腹が柔らかいと尻尾を圧迫できないので、めいっぱい息を吸って腹を膨らませ、息を止めて身体を揺らし、ぐりぐりと尻尾を責める。

「んぅうぅっ……やっぱ足りないぃっ、もっとぉ……」

何か硬いものはないかと机の周りを見回していると、査定士が手を叩いた。パンという音に注目して静かになる俺はまるで犬だ。

「とても可愛らしいけれど、思ったよりも恥ずかしがってくれないねぇ。自分でやるなんて……とその可愛い顔を羞恥に歪めてくれると思ってたんだけど。快楽に夢中なサクもいいけれど、今の気分は違うんだよねぇ」

「え……? ぁ……ごめん、なさい……?」

「あぁ、謝らなくていいんだよ。サクは可愛い。私の気分の問題さ、すまないね面倒な男で」

「……俺、どうすればいい?」

査定士は俺を恥ずかしがらせるのが好きだ、だが俺は羞恥プレイを重ねるごとに恥辱に慣れていく。彼の期待にいつか答えられなくなるのではないかと思うと怖い。

「そうだね…………シャル、君に手伝ってもらいたい。いいかな?」

「兄さんに触れるのなら何だってしますよ」

「そうかい、仲が良くて可愛いねぇ。それじゃあ早速、サクは尻尾を弄るのが好きなようだから……尻尾を軽く扱いてあげなさい」

震える尻尾をシャルの前へ伸ばす。きゅっと握られ引っ張られ、ピンと伸びる。

「ひゃんっ……シャルぅ、お願い……」

振り返ってシャルを見つめてねだっていると、査定士が再び手を叩いた。パンという音に反応するペットじみた行為に俺が興奮しているのが分かっているのか、彼は笑顔だ。

「サク、私の方を向いていてくれるかい?」

「え……? うん、分かった……」

「いい子だね、ありがとう。シャルもすまないね、サクの視線を奪ってしまって」

「…………いえ」

声が低い、かなり頭にきてるな。丸くなる前のシャルなら、相手が査定士でなければ、もうとっくに殺していただろう。

「私をじっと見て……そう、可愛い目だね。私が君を肴に酒を飲んでいるとよく理解するんだ、頭でも心でも同じように」

「うん……?」

「私の視線をよく理解するんだよ。君のどこが、どういった仕草が、私の酒を進ませているのか……ちゃんと意識しなさい」

「おじさんの、視線……」

査定士とは常に目が合うわけではない、だが彼は俺を見つめている。目以外のどこを見つめているのだろう。

「おじさん……」

俺が着ているのは肩と臍を出す丈の短いシャツ、査定士はそんな俺の露出した肩を見つめている。

「……ぁ」

肩を見つめられていることに気付くと、査定士の視線に込められた感情がじんわりと伝わってくる。彼はもう少し俺の近くにいれば、俺の鎖骨や肩を舐めしゃぶっていただろう。いや、今視線で舐め回している。そろそろ立ち上がって実行するかもしれない。
髪と目の色が違うだけでほとんど同じ見た目のシャルをいつも見ているから分かる、首筋から鎖骨のライン、掴みやすい華奢な肩の色っぽさ。大抵の男は欲情する。

「ぅ……!」

そんな服を着て俺は日々を過ごしている。夫の前ではしゃぎ、弟とスキンシップを楽しみ、子供の世話をしている。男を誘うような服で。

「…………素晴らしい。すごいよ、サク……想像以上だ」

羽と尻尾があるから露出が高い服を着なければならない、そんな言い訳は羞恥心の前に脆くも崩れ去る。羽は腰に生えているから、肩を出す意味は本当にないし。

「私の言葉を真に受けて……ふふ、真っ赤だね」

「……っ、この服慣れてたのにぃっ、変なこと意識させないでよっ! シャル、なんで肩出してるんだよこの服……! 肩出す意味ないじゃん別に!」

「し、知りません! 生まれた時から着てた服を模しているので……それに肩は出ていた方が可愛いですよ」

可愛さなんてどうでもいい、今はとにかく恥ずかしい。

「……シャル、サクの服を消しなさい」

「えっ? は、はい……」

シャルが指を鳴らすと俺が着ていた服は消え去った、脱着の権利が他人に握られているということを実感し、もし往来で同じことをされたらと思うと寒気がした。

「……こちらへおいで、サク。どこも隠さずに」

「や、やだっ……恥ずかしい」

「…………おいで。可愛い顔を見せておくれ」

シャルに軽く背を押され、裸足で床を擦りながら少しずつ査定士の元へ歩む。勃ってしまっている陰茎を手で隠して、俯いて、査定士の前に立った。

「顔を上げて、手を頭の上に」

「ぅ……うぅう~っ……!」

頭の後ろで手を組み、涙目で査定士を睨む。羞恥心のあまり、俺の身体をじっくりと眺める査定士の視線に触れられている気になって、ゾワゾワと鳥肌が立った。

「見ないでぇっ……」

「……君は本当に可愛らしい。シャルは私より君を優先するのだから、彼に強く言って服を戻させて、私の言うことなんて聞かずに逃げればいいのに……私は強制なんて出来ないのに、君はどうして言うことを聞くんだい?」

「へ……? そ、それは……今日は、おじさんを楽しませようって……」

「本当にそれだけが理由かい?」

グラス片手に、もう片方の手で査定士は俺の脇腹を撫でる。

「……君は私に辱められるのが好きなんだろう? 嫌だ嫌だと言っているのに、強制されている気になって楽しんでいる……変態さんだね」

「ち、ちが……」

違う、とは言い切れなかった。理由は単純、違わないから。虐められるのも辱められるのも、こうやって自分の趣味を改めて自覚させられるのも、大好きだから。

「…………トロトロ溢れてきてる」

査定士の手の甲が反り返った陰茎を撫で上げ、肌のハリを失って筋が目立つ手の甲を汚した俺の先走りの汁を俺に見せつける。

「……甘美だよ。このお酒といい勝負だ」

「な、舐めないでよそんなのっ……!」

「美味しいよ」

インキュバスの体液は甘く、媚薬効果がある。何度か教えられた言葉が頭の中をグルグルと回る。

「……っ、う、ぅ……おじさぁんっ、お願い、もぉいじめないで……」

「あぁ、可愛いね。もう虐めたくない、守ってあげたい……同時にもっと虐めてあげたくなったよ」

「そんなぁっ……」

身体の芯が熱い、もう触れて果てさせて欲しい。けれど、まだまだ虐められたい。矛盾した欲望は俺にもある。

「……後ろを向いて、お尻を開いて見せなさい」

「え……」

太腿まで腸液が垂れてしまっているのに、後孔を見せるなんて──羞恥プレイに関しては査定士の右に出る者は居ないな。

「恥ずかしい……あんまり、見ないでね……? ちょっとだけ、だから……」

羞恥心に震えながら、辱められる喜びに震えながら、査定士の言う通りに後ろを向いた。
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