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宴もたけなわ

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机の下に潜り込んだ恋人が自分の足の間から顔を出し、精液が欲しいと言い出したら──どう思うのだろう。
ネメスィのように興奮して支配欲を膨らませ、乱暴な行為に及びたくなるのは普通……とまではいかなくとも、まぁある思考なのか?

「好きにしていーよ」

口を開けるとネメスィは自らズボンの留め具などを外して陰茎を取り出し、俺の頭を掴んだ。

「……いいんだな?」

「いいってば。何? らしくないな、ネメスィには気遣いなんかないもんだろ」

「お前、俺を何だと……」

「うそ。優しいのは知ってるよ、でも乱暴で色々ちょっと雑で……ふふ、そういうとこも好きだし、喉もちゃんと気持ちいいから好きにして」

インキュバスの喉は性感帯だ、ネメスィへの気遣いではなく本当に気持ちよくなれる。

「…………サク、愛してる」

やろうとしている行為には合わない発言だ。いや、だからこそか。ちゃんと愛情があると主張しているんだな、そんなこと分かっているからわざわざ言わなくてもいいのに。

「ん……」

押し付けられた陰茎を口に含む。ネメスィの両手がしっかりと頭を掴んだので息を止め、喉を抉られる瞬間に備えた。

「ぅぐっ……! んっ、んゔっ、ん、ふっ……!」

はち切れそうに膨らんだ陰茎が喉の内壁を削るように擦る。

「……っ、はぁ……サク、サクっ……!」

喉奥を強く突かれ、粘膜壁にカリを引っ掛けて抉るように抜かれる。嗚咽する暇も与えられずにそれが繰り返され、視界が涙でボヤけ始める。

「んぐっ、んぅっ、ゔ……ふゔっ、ぅ、んんっ……」

「最高だ……サクっ、お前のその苦しそうな顔も、涙も、たまらないっ……!」

「ん、んんっ……」

自身が勇者で俺が魔物であるという葛藤から解放され、比較的素直に愛情表現をしてくれるようになった。しかし、彼はそもそもサディストなのだ。俺を深く愛し、俺を泣かせることに罪悪感を覚えてもいるが、それでも虐めたいという欲はなくならないらしい。

「サク、サク……ここか? ここだな」

「んぐっ!? ん、ゔっ……ぅえっ……」

喉奥に亀頭をぐりぐりと押し付けられ、俺の意思ではどうしようもない嘔吐感を発生させ続けられる。

「ん、んゔぅっ……!」

涙が勝手にポロポロと溢れてくる。逃れようと抵抗してしまうが、ネメスィの力は強く手を振りほどけない。

「逃げたいのか? ふ……ダメだ、俺が出すまでな」

涙と抵抗がネメスィの嗜虐心をくすぐったようだ。彼は椅子から立ち上がり、更に俺の喉奥深くへと陰茎を押し込んだ。

「ふ、ぅゔぅっ……!」

虐められるのも好きだし、性感帯である喉を抉られるのは苦しいけれど気持ちいい。抵抗に意味がないと思い知らされるのも好きだからあえて抵抗したし、これからもするつもりだった。

「ぅ、あ……」

だが、口を大きく開かされて陰茎を咥えさせられて、鼻をネメスィに押し付けさせられたらもうダメだ。垂れていた頭羽が勝手に揺れてしまう、ネメスィの手を剥がそうとしていた手を彼の腰にしがみつくのに使ってしまう。

「ぁ、むっ……ん、んん、んんぅ……!」

「……っ!? サク……?」

快感と興奮が虐められるのを楽しもうという気持ちを超えてしまった。ここからは本能だ、もう俺が陰茎にしゃぶりつくのは彼の射精でしか止められない。

「…………卑しいな、流石はインキュバスだ」

乱暴な扱いで俺を虐められなくなったネメスィは俺の発情に対して言葉で責める方針に転換した。

「兄さんも喜んでいるので兄さんを貶めるのは仕方なく見逃しますが、僕を巻き込まないでくれませんか?」

「……巻き込んだつもりはない、口を挟むな」

「僕は自制心のあるインキュバスなんですよ」

「お前が特殊なんだ、もう黙ってろ」

種族として淫乱なのは事実だし、言葉責めに使われるのも仕方ないのだが、シャルは不愉快だったようだ。

「まぁ……サク、お前の弟ほど優れた自制心を持たない並のインキュバスでも、お前ほどの淫乱ではないな」

「んんぅ……」

「嬉しいんだろう? 俺に喉を犯されるのも、こうやって見下されるのも」

割とそうだから屈辱でも何でもなくて、逆に興奮出来ないな……Mは開き直っちゃダメだな。

「精液が欲しいんだろう、ほら……しっかり舐めろ、奉仕しろ」

「ん……んっ、ん、んん……」

限界まで咥えさせられたまま奉仕を強要される。喉を締め、舌を絡みつけて扱く。

「……っ、とんでもないな……インキュバスは、口も性器か」

その通りだ、人間と同じ口をしているが人間の食事は食べられない。人間を興奮させるために同じ形をしているだけで、口も後孔も本物の性器、それがインキュバスだ。

「…………お前の弟は聞き分けはいいらしいな、大人しく黙ってるぞ」

事実だから口挟まないだけじゃないかな。

「……っ、ん……サク、そろそろ出すぞ」

喉の内壁を蠢かせ、鈴口を擦ってやる。そうすると多量の精液が食道に直接流し込まれる。少しは舌で味わいたかったなと残念に思いつつも、胃を満たす美味に目を閉じる。

「ん、んっ……んん……」

尿道に残った分も吸い出していると頬を手の甲で撫でられる。目を開ければ金眼が嗜虐心を消して優しい眼差しを俺に向けていた。

「……お前は本当に美味そうに飲むな」

「ん……おいしぃ、もん。ごちそうさま、ネメスィ」

陰茎を離して手を合わせ、笑顔で食後の挨拶を済ませるとネメスィは無言で俺の頭を撫でた。

「………………えへへ」

たった今まで乱暴だったネメスィの優しい手つきに照れてしまい、俯く。するとネメスィは俺の顔を上げさせて涙を拭った。

「……ありがとう」

お返しとしてズボンを整えてやり、俺達は行為を始める前の姿へと戻った。

「ネメスィさん、ラストオーダーだそうですけど……何か頼まます?」

「……パイをもう一つ」

「おじさーん、パイ一つ追加ですー」

ラストオーダーということは、そろそろ宴も終わりか。人気店らしいし時間制限があるのは仕方ないな、何時間も予約出来た査定士がすごいのだ。

「……シャールー、みんな食べ終わるまでしりとりでもしようぜ」

「ぜひ、やりましょう」

「うんっ、お前はお兄ちゃん想いだなぁ、可愛いぞ」

「ぞ……ぞ…………そでもいいですか? ありがとうございます……そんなことありませんよ、兄さんの方がお可愛らしいです」

しりとり会話、結構難しいな……
遊んでいるうちに宴は緩やかに終わりを迎える。

「よーし、宴会の締めは俺がやるぞー! ちゅうもーく! えーっと……こういう時何言うの、おっさん」

「好きにやればいいよ、堅苦しい宴ではないのだから」

「……えんかーい、終わりっ! 撤収だぁ野郎ども!」

「カタラは少し酔ってるみたいだねぇ。ネメスィ、ちゃんと面倒見てあげるんだよ」

俺の食事で汚してしまった絨毯などは店側で処理してくれるらしい。それも含めた料金なのだと査定士に説明された、インキュバスOKの店が割高なのはそういうことだとも。

「みんな酔ってるだろう、階段は気を付けるんだよ」

地下の店を出て地上へ戻りながら、俺は顔も知らぬ店員が俺の淫らな体液を掃除することを考えて恥ずかしくなり、黙り込んでしまう。

「……サク? 大丈夫かい?」

恥ずかしがっていたのを元気がないと勘違いされてしまった。

「だ、大丈夫大丈夫、ちょっと……あの、掃除されるの恥ずかしいなって」

「おやおや……ふふ、こっちへおいで、もっとちゃんと顔を見せて……」

地上へ出た後、俺の羞恥に歪んだ顔を見たがった査定士に抱き寄せられる。

「はーっ……なんか飲み足りないな。ネメスィ、ホテル帰ったら酒場行こうぜ。お前も飲めよ」

「……ありがとう」

ネメスィとカタラはすっかり仲直りしている。女神を倒してから何もかもが上手くいっている。このままいつまでもこんな優しい日々が続けばいい、満月を見上げながらそう思った。
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