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遊戯には一家言あり
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ルールブックを眺めながら査定士と知らない男の対戦を観戦。魔力属性や種族を扱う戦略ゲーム……まぁ、多分将棋みたいなものだ。将棋やったことないけど。
「……分厚い」
ルールブックはかなり分厚い。しかも文字ばかりだ、読む気が失せる。
「頑張れおじさーん」
三分の一ほど読んで飽き、丸めてメガホン代わりにして査定士を応援する。査定士に微笑みを返され、周りの野次馬に陰口を叩かれる。
インキュバスは人間より知能が低いという俗説は辺りなのかもなと考えたが、シャルはちゃんとルールを覚えそうなので、俺がバカなだけだなと種族を巻き込むのをやめた。
査定士は微笑みを絶やさず、対戦相手の男は時々眉を歪ませ、俺は椅子を借りて机に肘をついてルールを知る気もないゲームを眺めていた。
「ふわぁ……」
たくさん寝たはずなのに、なんだか眠いな。
「……ク、サク、起きて、サク……サク」
肩を揺すられて目を覚ます。
「ん……ぁ、俺、寝てた? ごめん、おじさん……」
「いや、つまらないゲームをしてしまったかな。君が見るには耐えなかったかい? すまないね」
「んー……ルールよく分かんなかったから。おじさん勝ったの?」
査定士はにっこりと笑う。その笑顔が答えだ、俺は彼を称えるために無知のまま抱きついた。
「運が絡まないゲームはつまらないね、いくつかある戦術を覚えてしまえば終わりだ。相手が何をする気か分かってしまう」
「おじさん頭いいね」
「いやいや、サクも楽しめるゲームを選べなかったんだ、愚か者だよ。サク、ルールが分かるゲームはあるかい?」
ざっと見た感じでは前世でも経験のあるゲームと思われるものでも差異があるようで、ちゃんと楽しむにはルールを理解する時間が必要そうだ。
「……あれ」
なのでややこしいルールのなさそうなもの、体を使うもの、ダーツっぽい何かを選んだ。
「あれだね? 分かった。ふふ……懐かしいなぁ」
円形の標的から一定距離に立ち、手のひらに収まるサイズの矢を持つ。ダーツは確か端っこが高得点だったり、刺す順番があったり、やっぱりややこしいルールがあったけれど──この異世界のダーツのようなゲームはどんなルールがあるのだろう。
「私の息子……使用人として雇っていた彼がね、得意なゲームだったんだよ。私はあまり得意ではないんだけれど……あの子は器用だったからねぇ」
使用人……あの粗雑な男か。正直言って苦手だったが、悪い人ではなかった。寂しそうな査定士に俺が言えることは何もない。
「真ん中狙えばいいの?」
「あぁ、ローカルルールは色々あるけれど……初めてだろう? シンプルに中心に近いほど高得点ということにしようか。矢は交互に五本ずつ投げて、的に当たっても落ちれば得点なし、いいね?」
単純なルールだ、これなら覚えられる。問題はどう投げれば真っ直ぐ飛ぶのか分からないことだが、まぁ五本もあるなら最初の二本くらいは試しと調整でいいだろう。
「よっ!」
矢を投げる。的には当たらず、壁に当たって落ちた。
「もうちょい上かぁ……」
「山なりになると刺さりにくいよ。手が下がる前に離さないと」
「理屈は分かるんだけどさぁ……おじさんお手本見せてよ」
査定士は矢を床に刺した。
「……理屈は分かっているんだけどねぇ」
「おじさん手先器用なのにね」
「貴重品ばかり扱ってるから、投げる器用さは磨いていないよ」
俺の番だ。中心からは遠いが、一応的には当たっ──たけど刺さらず落ちた。査定士の番……また床だ、さっきよりは的に近い。二人とも進歩しているな。
「えいっ……やった、刺さった!」
「上手いよ、サク。おや……後ろに投げてしまった」
「ていっ……刺さっ、ぁあまた落ちた!」
「残念。私の番……あぁ、壁に刺さったね」
どんぐりの背比べな投げ合いが続き、最後の一投。俺も査定士も一応的には刺さった。集計の結果は俺の勝ち、俺は二本刺さって査定士は一本しか刺さらなかったのだから当然だな。
「やったぁ! 俺の勝ち!」
「おめでとう、サク。何か欲しいものはあるかい?」
「欲しいもの……お腹すいたな」
「おやおや、ふふふ……ダメだよ、サク。このホテルはそういう建物じゃないからね」
そういえばこのホテル内では性交禁止だったな。インキュバス棟には乱交用の娯楽室があったが、アレは彼らが勝手にやっていたのか? それとも許されるのはあの部屋でだけなのか?
「じゃ、していいとこ行こ? お腹すいた……」
「はいはい。サクは食いしん坊さんだねぇ」
査定士を他のインキュバスに触られたくないし、俺も他人に触られたくない。乱交部屋は使えたとしても使いたくない。
俺達は羨望の眼差しを背に娯楽室を去り、ホテルからも出た。娯楽室の夜の雰囲気に反して外はまだまだ明るい。
「まだお昼か……」
「おじさんご飯食べた?」
「君に会う前に食べたよ」
軽食後に娯楽室へ向かう予定だったのか、なら気を使う必要はないな。
「どこ行こっか」
アルマとシャルと行ったようなラブホ風の建物があれば楽なのだが、人間の査定士と共に治安の悪い区域へ行くのは怖い。
「何度か出かけているからね、場所は頭に入っているよ。おいで」
「うんっ」
査定士の腕に抱きついて、肩に頭を置いて、目を閉じていても歩けるくらいに査定士に身を任せる。彼は治安の悪い区域へ行くことはなく、街の中心にほど近い建物の地下へと進んだ。
「……暗い」
「インキュバスは夜目がきくんだったね」
「シャルはそうっぽいけど……俺はあんまり」
「そう。私も全然見えていないんだ、ゆっくり歩こうね」
暗い階段を降りて分厚い鉄の扉をくぐると、聞き慣れない音楽が聞こえてきた。人が大勢いるようだ。
「立ち飲み専門の酒場だよ。少し飲んでもいいかな?」
「う、うん……」
前世の世界に当てはめるとクラブって感じかな? いや、音楽はそう激しくないし、踊っている者も見当たらないな、見えないだけか? ただの暗いバーという認識でいいのだろうか。
「……おじさん」
査定士の顔も見えない暗闇の中、人の多さと場の奇妙さに不安を覚えた俺は査定士の腕に強く抱きついた。
「あぁ、もう少し待って……ん、飲み終わったよ。しようか」
「へ……? こ、ここで? 人いっぱいいるのに……」
グラスを一杯飲み干したらしい査定士はカウンターから離れ、壁際に俺を追い詰めた。カウンター以外にも机があるらしく、大勢の者が立ったまま酒を飲んでいる。
「……大丈夫、暗いから……ね?」
尻尾を出す穴の真下の留め具を外されると布がぺろんとめくれ、尻が露出する。
「ぁ……お、おじさん……ここ、本当にしていいとこ?」
「ここはね、存在しないとされている店なんだよ。ここで起こったあらゆることは、地上へ出たらなかったことになるんだ」
麻薬の売買だとかをするための場所か? 異世界にもそういった違法なものはあるのか?
「私達のようなことをする者もいるけれど、もちろん褒められた行為ではないからね……周りに気付かれてはいけないよ、あまり声は出さないようにね。こういうの……興奮しないかい?」
査定士の息が熱い。彼はこういうプレイが好きなのか、なら応えたい。
「……する」
「じゃあ、いいね?」
「……うん。んっ、ぁ……」
挿入しやすいように尻だけが露出する卑猥な仕組みのジーンズ。丸く切り取られたように布がめくれ、素肌が露出している尻。査定士はそれを無視して両手を俺の上半身に這わせた。
「ん、んんっ……!」
上を向いて口を手で押さえる。査定士は構わず丈の短いシャツから出ている臍の周りを撫で、俺の下腹の疼きを促した。
「……分厚い」
ルールブックはかなり分厚い。しかも文字ばかりだ、読む気が失せる。
「頑張れおじさーん」
三分の一ほど読んで飽き、丸めてメガホン代わりにして査定士を応援する。査定士に微笑みを返され、周りの野次馬に陰口を叩かれる。
インキュバスは人間より知能が低いという俗説は辺りなのかもなと考えたが、シャルはちゃんとルールを覚えそうなので、俺がバカなだけだなと種族を巻き込むのをやめた。
査定士は微笑みを絶やさず、対戦相手の男は時々眉を歪ませ、俺は椅子を借りて机に肘をついてルールを知る気もないゲームを眺めていた。
「ふわぁ……」
たくさん寝たはずなのに、なんだか眠いな。
「……ク、サク、起きて、サク……サク」
肩を揺すられて目を覚ます。
「ん……ぁ、俺、寝てた? ごめん、おじさん……」
「いや、つまらないゲームをしてしまったかな。君が見るには耐えなかったかい? すまないね」
「んー……ルールよく分かんなかったから。おじさん勝ったの?」
査定士はにっこりと笑う。その笑顔が答えだ、俺は彼を称えるために無知のまま抱きついた。
「運が絡まないゲームはつまらないね、いくつかある戦術を覚えてしまえば終わりだ。相手が何をする気か分かってしまう」
「おじさん頭いいね」
「いやいや、サクも楽しめるゲームを選べなかったんだ、愚か者だよ。サク、ルールが分かるゲームはあるかい?」
ざっと見た感じでは前世でも経験のあるゲームと思われるものでも差異があるようで、ちゃんと楽しむにはルールを理解する時間が必要そうだ。
「……あれ」
なのでややこしいルールのなさそうなもの、体を使うもの、ダーツっぽい何かを選んだ。
「あれだね? 分かった。ふふ……懐かしいなぁ」
円形の標的から一定距離に立ち、手のひらに収まるサイズの矢を持つ。ダーツは確か端っこが高得点だったり、刺す順番があったり、やっぱりややこしいルールがあったけれど──この異世界のダーツのようなゲームはどんなルールがあるのだろう。
「私の息子……使用人として雇っていた彼がね、得意なゲームだったんだよ。私はあまり得意ではないんだけれど……あの子は器用だったからねぇ」
使用人……あの粗雑な男か。正直言って苦手だったが、悪い人ではなかった。寂しそうな査定士に俺が言えることは何もない。
「真ん中狙えばいいの?」
「あぁ、ローカルルールは色々あるけれど……初めてだろう? シンプルに中心に近いほど高得点ということにしようか。矢は交互に五本ずつ投げて、的に当たっても落ちれば得点なし、いいね?」
単純なルールだ、これなら覚えられる。問題はどう投げれば真っ直ぐ飛ぶのか分からないことだが、まぁ五本もあるなら最初の二本くらいは試しと調整でいいだろう。
「よっ!」
矢を投げる。的には当たらず、壁に当たって落ちた。
「もうちょい上かぁ……」
「山なりになると刺さりにくいよ。手が下がる前に離さないと」
「理屈は分かるんだけどさぁ……おじさんお手本見せてよ」
査定士は矢を床に刺した。
「……理屈は分かっているんだけどねぇ」
「おじさん手先器用なのにね」
「貴重品ばかり扱ってるから、投げる器用さは磨いていないよ」
俺の番だ。中心からは遠いが、一応的には当たっ──たけど刺さらず落ちた。査定士の番……また床だ、さっきよりは的に近い。二人とも進歩しているな。
「えいっ……やった、刺さった!」
「上手いよ、サク。おや……後ろに投げてしまった」
「ていっ……刺さっ、ぁあまた落ちた!」
「残念。私の番……あぁ、壁に刺さったね」
どんぐりの背比べな投げ合いが続き、最後の一投。俺も査定士も一応的には刺さった。集計の結果は俺の勝ち、俺は二本刺さって査定士は一本しか刺さらなかったのだから当然だな。
「やったぁ! 俺の勝ち!」
「おめでとう、サク。何か欲しいものはあるかい?」
「欲しいもの……お腹すいたな」
「おやおや、ふふふ……ダメだよ、サク。このホテルはそういう建物じゃないからね」
そういえばこのホテル内では性交禁止だったな。インキュバス棟には乱交用の娯楽室があったが、アレは彼らが勝手にやっていたのか? それとも許されるのはあの部屋でだけなのか?
「じゃ、していいとこ行こ? お腹すいた……」
「はいはい。サクは食いしん坊さんだねぇ」
査定士を他のインキュバスに触られたくないし、俺も他人に触られたくない。乱交部屋は使えたとしても使いたくない。
俺達は羨望の眼差しを背に娯楽室を去り、ホテルからも出た。娯楽室の夜の雰囲気に反して外はまだまだ明るい。
「まだお昼か……」
「おじさんご飯食べた?」
「君に会う前に食べたよ」
軽食後に娯楽室へ向かう予定だったのか、なら気を使う必要はないな。
「どこ行こっか」
アルマとシャルと行ったようなラブホ風の建物があれば楽なのだが、人間の査定士と共に治安の悪い区域へ行くのは怖い。
「何度か出かけているからね、場所は頭に入っているよ。おいで」
「うんっ」
査定士の腕に抱きついて、肩に頭を置いて、目を閉じていても歩けるくらいに査定士に身を任せる。彼は治安の悪い区域へ行くことはなく、街の中心にほど近い建物の地下へと進んだ。
「……暗い」
「インキュバスは夜目がきくんだったね」
「シャルはそうっぽいけど……俺はあんまり」
「そう。私も全然見えていないんだ、ゆっくり歩こうね」
暗い階段を降りて分厚い鉄の扉をくぐると、聞き慣れない音楽が聞こえてきた。人が大勢いるようだ。
「立ち飲み専門の酒場だよ。少し飲んでもいいかな?」
「う、うん……」
前世の世界に当てはめるとクラブって感じかな? いや、音楽はそう激しくないし、踊っている者も見当たらないな、見えないだけか? ただの暗いバーという認識でいいのだろうか。
「……おじさん」
査定士の顔も見えない暗闇の中、人の多さと場の奇妙さに不安を覚えた俺は査定士の腕に強く抱きついた。
「あぁ、もう少し待って……ん、飲み終わったよ。しようか」
「へ……? こ、ここで? 人いっぱいいるのに……」
グラスを一杯飲み干したらしい査定士はカウンターから離れ、壁際に俺を追い詰めた。カウンター以外にも机があるらしく、大勢の者が立ったまま酒を飲んでいる。
「……大丈夫、暗いから……ね?」
尻尾を出す穴の真下の留め具を外されると布がぺろんとめくれ、尻が露出する。
「ぁ……お、おじさん……ここ、本当にしていいとこ?」
「ここはね、存在しないとされている店なんだよ。ここで起こったあらゆることは、地上へ出たらなかったことになるんだ」
麻薬の売買だとかをするための場所か? 異世界にもそういった違法なものはあるのか?
「私達のようなことをする者もいるけれど、もちろん褒められた行為ではないからね……周りに気付かれてはいけないよ、あまり声は出さないようにね。こういうの……興奮しないかい?」
査定士の息が熱い。彼はこういうプレイが好きなのか、なら応えたい。
「……する」
「じゃあ、いいね?」
「……うん。んっ、ぁ……」
挿入しやすいように尻だけが露出する卑猥な仕組みのジーンズ。丸く切り取られたように布がめくれ、素肌が露出している尻。査定士はそれを無視して両手を俺の上半身に這わせた。
「ん、んんっ……!」
上を向いて口を手で押さえる。査定士は構わず丈の短いシャツから出ている臍の周りを撫で、俺の下腹の疼きを促した。
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