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義兄弟デート
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今日はシャルとアルマと出かける日。始めにシャルと手芸用品でも買いに行こうと話し、次にアルマを誘った。そのことは昨日、シャルに話さなかった。
「……二人きりだと思ってました」
ホテルを出たところでアルマを待っていると、むくれたシャルが小さな声で呟いた。
「兄さんと二人きりがよかったです」
「シャル……ごめんな、人が多い方が楽しいかなって思ったんだ、お前も社交的になってきたし」
シャルは俺をとても愛しているからか、俺が謝ると自分の方が悪かったと謝り返すことがよくある。けれど、今はだんまりだ。相当ショックだったらしい。
「……今度また二人きりででかけよう、なっ?」
「…………絶対ですよ」
「あぁ、今日は下見だと思ったらいいさ」
「なるほど……それ、いいかもしれません」
少し機嫌が戻った。自分で自分を褒めているとアルマがやっと来た。
「アルマ! おはよ、ちょっと遅かったね」
「すまない、ホテルの中で迷ったんだ」
「シャルと話してたし別にいいよ、ホテル広いもんな。さ、行こっ」
アルマの腕に腕を回し、シャルに手を差し出す。シャルは俺の腕に両腕を使って抱きつき、肩に頭を寄せてきた。
「どこに何があるとかは分かっているのか?」
「一応ネメシスに地図もらっておいたよ」
市販品らしい地図にはネメシスが書き加えた「治安がいい」「治安が悪い」「近付くな」の文字と対応する箇所を囲った丸が幾つかあった。
「……治安がいい、のところだけにしようか。服屋はあるか?」
「手芸用品店も探してください」
三人で地図とにらめっこし、前世で言うデパートだろう大きな建物に行こうと決めた。治安がいい場所の真ん中だ、誰も異論はないだろう。
「……本当に色んな種族が普通に暮らしてますね」
「俺の島もこんなふうにしたいよなぁ」
「…………気のせいか、注目されているような」
俗に言うエルフ耳。先端が尖った長い耳は通り過ぎて行く人々が俺の黒髪やシャルの紫髪に言及していると容易に分かった。
「兄さん、頭の羽を少し下げてください」
シャルに従うと魔力で作ったばかりらしいフードを被せられた。
「僕もお揃いですよ」
「本当だ、可愛いな。ありがとうシャル」
髪に気付かれることがなくなったのは当然、優れた聴覚が拾ってしまう音の範囲が狭まった。変わりにアルマに対する「二匹もインキュバス連れやがって」「いいご身分だな変態」「羨ましい」の声が聞こえるようになる。
「……少し不愉快ですね。僕は兄さん一筋ですのに」
シャルは自分とアルマの関係を邪推されているのが嫌なようで肩に触れている頬を少し膨らませた。
「サク、シャル、疲れたら俺に乗ってくれて構わないからな」
「この程度、歩いたうちに入りません」
「俺もいいや。ありがとうなアルマ」
アルマは俺達が歩くのをあまり好んでいないらしく、複雑そうな笑顔を返した。彼はインキュバスを実際以上に脆いと考えている節がある。
「ここか……大きな建物だな、何階建てなんだ?」
「ほんとにデパートみたい……」
辿り着いた総合商業施設を見上げ、つい前世を思い出して呟いてしまう。慌てて二人の様子を伺い、俺の独り言に反応を示していないのを確認した。
「一階はご飯を食べるところみたいですね、オーガ用の洋服屋は二階で……えっと、手芸用品店は三階にあるみたいです」
「じゃあアルマからでいいな、シャル」
「……アルマさんが一人で服を見に行って僕達は二人で他の店を見て回るというのは」
「シャル」
「…………冗談ですよ、ごめんなさい」
フードの上からシャルの頭を撫で、階段を上って二階へ。様々な店が並んでおり、騒々しい。通路から見える店内、見慣れない形の服──本当に様々な種族が居るのだと痛感する。
「……どの種族向けの店でも店員はインキュバスやサキュバスばかりだな」
オーガやオークなど立っているだけで他種族を怯えさせる者達や、毛が舞ってアレルギーを引き起こすことがある獣系の種族などは向かないのだろう。淫魔と揶揄されるほどに異種族も惹き付けるインキュバスやサキュバスの魅力は販売員にはピッタリだ。
「顔採用なんだろ」
「確かに美形揃いだが……やはり、サクは格別だな。どの子よりも輝いて見えるよ」
「アルマ……もぉっ」
しかし、インキュバスやサキュバスが接客をしていると普通の店でも風俗店っぽく見えるな……この島、その辺はまだ緩いのかな?
「……お、あったな。オーガの服屋」
「でっかいなぁ。アルマどんな服が似合うかな」
フォーマルウェアが似合わないことだけは確信がある。
「いらっしゃいませー」
デパートのようなこの施設には店ごとの扉はない。床の模様の変わり目が店の区切りになっており、そこを越えると店員が頭を下げる。濃いピンク色の髪のインキュバスだ。
「……なんか、服の露出度低くないか?」
「そういう店じゃないってことじゃないですか?」
「え……じゃあ何、俺らインキュバスから見ても露出多いの」
「都会で働くインキュバスからすればそうかもしれません」
アルマの背に隠れてヒソヒソと話す。
「……まぁ、セックスしなきゃ死ぬもんな野生は」
「インキュバスが働く理由ってなんでしょう」
「まぁ……他種族と違って飯代はいらねぇだろうけど、家とか日用品買う金はいるだろ」
森で生まれて社会と関わらず生きてきたシャルにはピンと来ないようで首を傾げている。シャルからすれば俺が社会的な感覚を持っている方が不思議なのだろう。
「自分達がお金を使うなんて未だに実感湧きません」
「あー……そうだなぁ」
「兄さん、前に人間のフリをして働いたことありましたね」
「あぁ……まぁ、金が目的じゃないけどな」
森に居るのは危険だし不衛生だしで嫌だったけれど、いざ文明に戻るとなると憂鬱だ。労働はもう嫌だ。魔王という立場を与えられたから、前世のように使い潰される方ではないとはいえ、魔神王という上司はいるわけで……
「サク、シャル、服選びも手伝ってくれないか?」
「あ、ごめん」
「お義兄さんはどんな服着たいとかあるんですか?」
「うーん……サクの気に入ったものを着たいな」
前世の世界とはまた違ったファッション、前世から疎かった流行、それらを加味してアルマに似合う服を選ぶのは難しそうだ。
「アルマ……アルマはダボッとしたの着ると太って見えそうだから、上はタイトな方がいいのかな……下はぴっちりしてない方がいいかも」
「脚線美じゃありませんもんね。筋肉を魅せるにしても足は……形を浮かせない方がいいと僕も思います」
「ズボンは作業着風か、半ズボンのがいいかも。そういうのあるかな」
「……やはりファッションに関しては二人の方が上手のようだな。その調子で頼むよ」
前世でも筋肉質な人はタンクトップを着ている印象が強い。しかし、アルマは種族的に筋肉質なだけで特別肩や腕の筋肉が発達しているわけではない。オーガ用に作られた服なら袖があっても不格好ではない。
「無地と柄物どっちがいいかな……シャル、花柄は絶対ダメだろ。アルマに似合うわけない、返してきなさい」
「はーい……もう無難に白にしておきましょうよ」
「一つめはそれがいいよなぁ。アルマ、ちょっと合わせてみてくれ」
無難な白いシャツをアルマに渡し、体の前面に合わせてもらう。少し肩幅が足りないように見える。
「ちょっと小さいみたいですね」
「俺達なら二人で着てもかなり余りそうなのに、流石に大きいなぁ」
店の奥の方にいた店員を呼び、もう少し上のサイズがないか尋ねた。
「お客様のご希望サイズは?」
「あぁ……すまないが、自分がどのくらいなのかよく分からなくて」
「なるほど。測らせていただいても構いませんか?」
アルマが頷くと店員は羽を揺らして浮かび、アルマに抱きついた。
「……っ!? あ、あの……」
店員は胴に抱きつくのをやめると肩や腕をぺたぺたと触る。
「大きめですね。いい筋肉です……服越しじゃなく、直接触れてみたいです。ベッドの中で……」
採寸の範疇を超えていると判断し、店員の足を掴んで空中から引きずり下ろす。
「俺の! 夫なんですけど!」
「乱暴はやめてくださいよぉ……いいじゃないですか一晩くらい貸してくださいよ」
店員は不満そうに頭羽を垂らす。これがインキュバスの普通の倫理観なのだろうか。
「ダメに決まってるだろ! 客にセクハラしておいて何ぶーたれてんだよ反省しろ!」
「店員もお持ち帰り可能ですよお客様、こんな凶暴なインキュバスより抱き心地はいいと思いますが……」
「い、いや……悪いが、俺はサク一筋だ」
「そうですか……残念です。あ、この服のワンサイズ上でしたね、すぐにお持ちします」
店員は小走りで店の裏へと引っ込んだ。アルマは気まずそうに俺を見下げる。
「サク……」
「…………最終的にキッパリ言ったからいいけどさ、最初の方随分デレデレした顔してなかった?」
「まさか、そんな……俺はサク一筋だよ」
「ベタベタ触られて喜んでましたよね。ニヤニヤしてました」
「シャ、シャルまで何を……」
店員に抱きつかれた際にアルマがにやけていたのは俺の見間違いではなかったようだ。
「所詮アルマも男か。エロい子に引っ付かれたらデレるんだ」
「サクぅ……」
ちゃんと断ってくれたし、もうそこまで不愉快に思ってはいないのだが、オロオロと困るアルマが可愛らしくてつい拗ねてしまう。
「兄さん兄さん、僕は本当に兄さん一筋ですよ」
「お前はそうだろうなぁ……よしよし」
拗ねた俺を宥めるため、いや、単に漁夫の利を狙ってきたシャルをこれみよがしに撫でてやる。
「サク……サクぅ……すまない、サク……」
大型犬のような落ち込み方をするアルマが可愛い、しかしいい加減に罪悪感が大きくなってきたので許し、今度はパァっと明るくなる表情を楽しんだ。
「……二人きりだと思ってました」
ホテルを出たところでアルマを待っていると、むくれたシャルが小さな声で呟いた。
「兄さんと二人きりがよかったです」
「シャル……ごめんな、人が多い方が楽しいかなって思ったんだ、お前も社交的になってきたし」
シャルは俺をとても愛しているからか、俺が謝ると自分の方が悪かったと謝り返すことがよくある。けれど、今はだんまりだ。相当ショックだったらしい。
「……今度また二人きりででかけよう、なっ?」
「…………絶対ですよ」
「あぁ、今日は下見だと思ったらいいさ」
「なるほど……それ、いいかもしれません」
少し機嫌が戻った。自分で自分を褒めているとアルマがやっと来た。
「アルマ! おはよ、ちょっと遅かったね」
「すまない、ホテルの中で迷ったんだ」
「シャルと話してたし別にいいよ、ホテル広いもんな。さ、行こっ」
アルマの腕に腕を回し、シャルに手を差し出す。シャルは俺の腕に両腕を使って抱きつき、肩に頭を寄せてきた。
「どこに何があるとかは分かっているのか?」
「一応ネメシスに地図もらっておいたよ」
市販品らしい地図にはネメシスが書き加えた「治安がいい」「治安が悪い」「近付くな」の文字と対応する箇所を囲った丸が幾つかあった。
「……治安がいい、のところだけにしようか。服屋はあるか?」
「手芸用品店も探してください」
三人で地図とにらめっこし、前世で言うデパートだろう大きな建物に行こうと決めた。治安がいい場所の真ん中だ、誰も異論はないだろう。
「……本当に色んな種族が普通に暮らしてますね」
「俺の島もこんなふうにしたいよなぁ」
「…………気のせいか、注目されているような」
俗に言うエルフ耳。先端が尖った長い耳は通り過ぎて行く人々が俺の黒髪やシャルの紫髪に言及していると容易に分かった。
「兄さん、頭の羽を少し下げてください」
シャルに従うと魔力で作ったばかりらしいフードを被せられた。
「僕もお揃いですよ」
「本当だ、可愛いな。ありがとうシャル」
髪に気付かれることがなくなったのは当然、優れた聴覚が拾ってしまう音の範囲が狭まった。変わりにアルマに対する「二匹もインキュバス連れやがって」「いいご身分だな変態」「羨ましい」の声が聞こえるようになる。
「……少し不愉快ですね。僕は兄さん一筋ですのに」
シャルは自分とアルマの関係を邪推されているのが嫌なようで肩に触れている頬を少し膨らませた。
「サク、シャル、疲れたら俺に乗ってくれて構わないからな」
「この程度、歩いたうちに入りません」
「俺もいいや。ありがとうなアルマ」
アルマは俺達が歩くのをあまり好んでいないらしく、複雑そうな笑顔を返した。彼はインキュバスを実際以上に脆いと考えている節がある。
「ここか……大きな建物だな、何階建てなんだ?」
「ほんとにデパートみたい……」
辿り着いた総合商業施設を見上げ、つい前世を思い出して呟いてしまう。慌てて二人の様子を伺い、俺の独り言に反応を示していないのを確認した。
「一階はご飯を食べるところみたいですね、オーガ用の洋服屋は二階で……えっと、手芸用品店は三階にあるみたいです」
「じゃあアルマからでいいな、シャル」
「……アルマさんが一人で服を見に行って僕達は二人で他の店を見て回るというのは」
「シャル」
「…………冗談ですよ、ごめんなさい」
フードの上からシャルの頭を撫で、階段を上って二階へ。様々な店が並んでおり、騒々しい。通路から見える店内、見慣れない形の服──本当に様々な種族が居るのだと痛感する。
「……どの種族向けの店でも店員はインキュバスやサキュバスばかりだな」
オーガやオークなど立っているだけで他種族を怯えさせる者達や、毛が舞ってアレルギーを引き起こすことがある獣系の種族などは向かないのだろう。淫魔と揶揄されるほどに異種族も惹き付けるインキュバスやサキュバスの魅力は販売員にはピッタリだ。
「顔採用なんだろ」
「確かに美形揃いだが……やはり、サクは格別だな。どの子よりも輝いて見えるよ」
「アルマ……もぉっ」
しかし、インキュバスやサキュバスが接客をしていると普通の店でも風俗店っぽく見えるな……この島、その辺はまだ緩いのかな?
「……お、あったな。オーガの服屋」
「でっかいなぁ。アルマどんな服が似合うかな」
フォーマルウェアが似合わないことだけは確信がある。
「いらっしゃいませー」
デパートのようなこの施設には店ごとの扉はない。床の模様の変わり目が店の区切りになっており、そこを越えると店員が頭を下げる。濃いピンク色の髪のインキュバスだ。
「……なんか、服の露出度低くないか?」
「そういう店じゃないってことじゃないですか?」
「え……じゃあ何、俺らインキュバスから見ても露出多いの」
「都会で働くインキュバスからすればそうかもしれません」
アルマの背に隠れてヒソヒソと話す。
「……まぁ、セックスしなきゃ死ぬもんな野生は」
「インキュバスが働く理由ってなんでしょう」
「まぁ……他種族と違って飯代はいらねぇだろうけど、家とか日用品買う金はいるだろ」
森で生まれて社会と関わらず生きてきたシャルにはピンと来ないようで首を傾げている。シャルからすれば俺が社会的な感覚を持っている方が不思議なのだろう。
「自分達がお金を使うなんて未だに実感湧きません」
「あー……そうだなぁ」
「兄さん、前に人間のフリをして働いたことありましたね」
「あぁ……まぁ、金が目的じゃないけどな」
森に居るのは危険だし不衛生だしで嫌だったけれど、いざ文明に戻るとなると憂鬱だ。労働はもう嫌だ。魔王という立場を与えられたから、前世のように使い潰される方ではないとはいえ、魔神王という上司はいるわけで……
「サク、シャル、服選びも手伝ってくれないか?」
「あ、ごめん」
「お義兄さんはどんな服着たいとかあるんですか?」
「うーん……サクの気に入ったものを着たいな」
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「アルマ……アルマはダボッとしたの着ると太って見えそうだから、上はタイトな方がいいのかな……下はぴっちりしてない方がいいかも」
「脚線美じゃありませんもんね。筋肉を魅せるにしても足は……形を浮かせない方がいいと僕も思います」
「ズボンは作業着風か、半ズボンのがいいかも。そういうのあるかな」
「……やはりファッションに関しては二人の方が上手のようだな。その調子で頼むよ」
前世でも筋肉質な人はタンクトップを着ている印象が強い。しかし、アルマは種族的に筋肉質なだけで特別肩や腕の筋肉が発達しているわけではない。オーガ用に作られた服なら袖があっても不格好ではない。
「無地と柄物どっちがいいかな……シャル、花柄は絶対ダメだろ。アルマに似合うわけない、返してきなさい」
「はーい……もう無難に白にしておきましょうよ」
「一つめはそれがいいよなぁ。アルマ、ちょっと合わせてみてくれ」
無難な白いシャツをアルマに渡し、体の前面に合わせてもらう。少し肩幅が足りないように見える。
「ちょっと小さいみたいですね」
「俺達なら二人で着てもかなり余りそうなのに、流石に大きいなぁ」
店の奥の方にいた店員を呼び、もう少し上のサイズがないか尋ねた。
「お客様のご希望サイズは?」
「あぁ……すまないが、自分がどのくらいなのかよく分からなくて」
「なるほど。測らせていただいても構いませんか?」
アルマが頷くと店員は羽を揺らして浮かび、アルマに抱きついた。
「……っ!? あ、あの……」
店員は胴に抱きつくのをやめると肩や腕をぺたぺたと触る。
「大きめですね。いい筋肉です……服越しじゃなく、直接触れてみたいです。ベッドの中で……」
採寸の範疇を超えていると判断し、店員の足を掴んで空中から引きずり下ろす。
「俺の! 夫なんですけど!」
「乱暴はやめてくださいよぉ……いいじゃないですか一晩くらい貸してくださいよ」
店員は不満そうに頭羽を垂らす。これがインキュバスの普通の倫理観なのだろうか。
「ダメに決まってるだろ! 客にセクハラしておいて何ぶーたれてんだよ反省しろ!」
「店員もお持ち帰り可能ですよお客様、こんな凶暴なインキュバスより抱き心地はいいと思いますが……」
「い、いや……悪いが、俺はサク一筋だ」
「そうですか……残念です。あ、この服のワンサイズ上でしたね、すぐにお持ちします」
店員は小走りで店の裏へと引っ込んだ。アルマは気まずそうに俺を見下げる。
「サク……」
「…………最終的にキッパリ言ったからいいけどさ、最初の方随分デレデレした顔してなかった?」
「まさか、そんな……俺はサク一筋だよ」
「ベタベタ触られて喜んでましたよね。ニヤニヤしてました」
「シャ、シャルまで何を……」
店員に抱きつかれた際にアルマがにやけていたのは俺の見間違いではなかったようだ。
「所詮アルマも男か。エロい子に引っ付かれたらデレるんだ」
「サクぅ……」
ちゃんと断ってくれたし、もうそこまで不愉快に思ってはいないのだが、オロオロと困るアルマが可愛らしくてつい拗ねてしまう。
「兄さん兄さん、僕は本当に兄さん一筋ですよ」
「お前はそうだろうなぁ……よしよし」
拗ねた俺を宥めるため、いや、単に漁夫の利を狙ってきたシャルをこれみよがしに撫でてやる。
「サク……サクぅ……すまない、サク……」
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