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たくさんは飲まされていないのに

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ベッドの上で猫が伸びをするような姿勢になり、後孔を尻尾で拡げ、突き上げた尻を軽く振る。

「おじさん……はやく」

「焦らないの。お尻を振ってくれるのは可愛いけれど、止まってくれないと出来ないよ」

腰を揺らすのをやめ、腰と頭の羽をバタバタと振り回す。犬の尻尾のように感情を表現する羽を見て査定士はクスクスと笑い、俺の尻を撫でた。

「本当に……可愛いねぇ、君は。可愛いよ……」

すりすりと尻の右側を手の甲で撫でられ、ゾワゾワとした快感が腰周りに広がる。

「……君は私の全てだ。帰ってきてくれてありがとう。またこうして私に甘えてくれて嬉しいよ。一度君を売ってしまったこと……本当に、後悔したんだ。なのにまた君を手放して…………二度も帰ってきてくれたね、もう……今度こそ、君を離したりしたいよ」

「ん……ぅっ……」

尻と太腿の境目を指先でくすぐるように愛撫され、穴を拡げていたはずの尻尾をピンと伸ばしてしまう。

「く、ぅぅんっ……!」

気持ちいいとくすぐったいの中間に閉じ込められて、シーツにしがみつき歯を食いしばり、ねだることも満足に出来ない。

「んっ、ふぅっ……んんぅ……」

査定士が指を止めなければ俺はきっと話せない、口を開けられない。
指を止めて欲しい、もっと強い快感をねだらせて欲しい。
指を止めて欲しくない。このぬるま湯のような快感の中にずっと居させて欲しい。
矛盾した想いが俺のおねだりの言葉を封じる。

「ふふ……お尻を上げて、尻尾を伸ばして、まるで猫だね」

「んぁっ……はぁっ、はぁ……おじさん……」

手が離れた。けれど俺はまだおねだりをするかどうか迷ってしまっている。もう査定士に任せてしまおうか、強い快楽ではなく甘い快感に留まってみたい。

「……濡れてるね」

査定士の指が会陰をたどる。後孔から溢れた潤滑剤としての体液を指で拭われる。

「人間はね、雄はこんなふうになってくれないんだよ。インキュバスはいいね、ぐしょ濡れで……君が期待してくれてるのがよく分かる」

査定士は俺の尻の割れ目に指を挟んで会陰から背中側へとつぅっと動かしていく。後孔に指の背が触れて、思わず声が漏れる。

「んっ……」

「普通のインキュバスには羞恥心がなくてね、セックスを食事としか思っていない。前戯は好まないし、精液を搾ったらさっさと逃げてしまう。はっきり言ってつまらない」

快感を欲しがった後孔が査定士の指に吸盤のようにちゅうっと吸い付いてしまう。はしたない身体を恥ずかしく思い、様子を伺おうと査定士の顔を見上げる。俺の視線にすぐに気付いた彼に微笑み返され、更に恥ずかしくなって顔をシーツに押し付ける。

「君は違う……何度も言うけれど、君の恥ずかしがる姿が私はとても好きなんだよ」

「……っ、ふ、ぅ……ん…………んぁっ!」

査定士は俺の後孔が吸い付いている指を細かく動かし、穴の縁を丁寧に刺激する。しっかりと吸い付いた指を離すとちゅぱっと恥ずかしい音が鳴り、声も上げてしまった。

「ふふ……ぱくぱく開いて、とろとろ愛液が溢れてきてるよ」

「言わないでぇっ……! 恥ずかしがらせたりするのやだっ、おじさんのいじわる……」

「…………サク、あのね……可愛い声で「いじわる」なんて言いながら涙目で睨まれたら、大抵の男は興奮してしまうんだよ。私も例外じゃない、本当にやめて欲しいなら……そんなやり方いけないよ?」

「ひぁっ! ぁ……ゃ、あっ」

二本の指が第二関節程度まで入り、穴をくぱっと拡げる。それだけでも顔が熱くなるのに査定士が穴の奥を覗いているのに気付いてしまい、俺はシーツに爪を立てて声にならない声を上げた。

「……中、すごく動いてる。こんなのに入れたら男はひとたまりもないよ、二度と他の子を抱けなくなるね。ふふふ……サク、君は身体の中まで可愛いよ。健気に扱いてくれるつもりなんだね」

「や、だ……見ないでよぉっ、恥ずかしい……そういうのやだって言ったじゃんっ」

頭羽を大きく広げて威嚇しながら査定士を睨む。そうすると査定士は口角を上げて歪な笑いを見せ、すぐに口を覆った。

「すまない……下品な顔を見せたね。ふふ……けど、ふふふっ…………いけないと言ったのに私を煽るということは、サクは恥ずかしいことをして欲しい変態さんだってことだよね?」

「え……? あっ、ち、ちがう……」

違うのか? 本当に? 前立腺を刺激されたわけでもないのに太腿まで濡らすほど愛液を垂らしているのは、羞恥を与えられるのに興奮している証拠じゃないのか?

「違うのかい? 勘違いしてすまないね……なら、さっさと済ませてしまった方がいいのかな? サクも他のインキュバスと同じに、前戯は嫌いで本番だけがいいんだね」

「ぁ……ち、ちがう…………ちがう、おじさん……お、俺っ……おじさんにいじわるされるの、好き……おじさんがゆっくり丁寧に気持ちよくしてくれるの、すごく好き……」

失神するような絶頂ではなく、甘く優しい絶頂。査定士が与えてくれるそれが今欲しくてたまらない。

「お、お願い……おじさんっ、俺の恥ずかしいとこ可愛がって、いじわるなこといっぱい言って、俺にやだやだ言わせて、たくさん甘イキさせて……?」

「…………そんなふうに言われて断れるわけないだろう? 分かったよ、素直で可愛い変態さんなサク。君のお願いは何でも叶えてあげたいからね」

「ひぁっ……! ぁ、うっ……んん……」

二本の指が閉じて穴の奥へ進んでいく。根元まで入るとまた開き、穴を拡げてくちくちと水音を立てる。

「すごいよサク、君の愛液……糸を引いてる。粘性が高い方が興奮しているように思えるけれど、実際どうなんだろうね」

「ゃあ……そんなこと、教えなくていいからぁっ……」

「…………から?」

査定士の指は閉じたり開いたりを繰り返して愛液の音を俺に聞かせるだけで、前立腺に触れてはくれない。腸壁を甘く刺激して半端な快感を与えるだけだ。

「俺の弱いとこ、もっと……ぐりぐりしたり、して欲しい……」

「弱いところ、か……どこだろう、まずは探さないとだね。可愛いサクのお顔を見ながら、しらみ潰しにしていかないと」

査定士の視線を感じて見上げると彼はじっとこちらを向いていた。ぎゅうっと目を閉じると上品な失笑の声が聞こえ、更に顔が熱くなる。

「んっ……ぅ、あ……ひぁ、あっ……ぁん……んん」

くちゅ、くちゅ、くちっ……と水音を立てて腸壁を丁寧に愛撫される。査定士の指に吸い付いては剥がされ、切なさが穴全体を支配し、感度が高まっていく。

「ぅっ……んん、ぅ、あっ……ぁっ……もう、ちょっとぉ……そこっ、そこの、奥ぅ……」

前立腺に指が近付いてきた。期待と興奮で呼吸が荒くなっていく。

「ふぅっ、ふっ、ふぅっ、ふぅぅっ…………ひぁあっ!」

「……見つけた、かな」

ぷくっと膨れた前立腺に査定士の指が触れた瞬間、静電気が腹に走ったような錯覚があった。

「随分と肥大してるね、インキュバスでもここまで大きく膨らませてるのは珍しい……えっちなことが大好きって証拠になるんだよ、サク」

「ゃんっ、んぁっ……あぁっ!」

「ふふ、表面はぷにぷにしてて触るのも楽しいよ。可愛い可愛い」

「ひぅうぅぅっ……! よしよし、らめぇっ……」

査定士の指の腹が前立腺を優しく撫で回す。指紋を覚えてしまいそうなくらいに敏感になっているのに、査定士はなかなか強く刺激してくれない。

「ここも膨らんできたね。触って欲しいのかな?」

査定士のもう片方の手が会陰に触れる。後孔からの愛液でぐしょ濡れになったそこは撫でやすいのか、細かく素早く表面だけを擦られる。

「……っ、うぅっ、んんぅっ……ひぅっ、うぁぁっ……!」

「ふふ……腰が揺れてるよ、サク。尻尾もピンと伸ばしちゃって……可愛い」

「んゃあぁっ……! んんっ、んぅうっ……!」

「甘イキさせて欲しいって言っていたかな? 甘イキ……よく分からないけれど、激しいのじゃないんだよね? ふふ、私に求めるべきものがよく分かっているね、えらいよ」

腰をガクガクと揺らしてしまっているのに査定士は前立腺や会陰を強く押してしまうことなく優しく撫でる、腰の揺れに完璧に手を追いつかせているのだ。そんな人間離れした器用さを持つ彼が与える快楽から逃げるなんて不可能だ。

「うぅっ……ぁんんっ……ひっ、ぅ、あっ……イく、イっちゃうぅ……!」

「あぁ、待ってサク、ちゃんとコップに受けないと」

査定士は会陰を撫でる手を止めて二つ目のコップを取り、俺の性器にあてがった。

「……っ、イ、くぅぅっ!」

「…………うん、上手にイけたね。零してもない、えらいよサク」

ぷしゅっと少量の精液を吹き出し、俺は甘やかな絶頂を迎えた。とろんとした頭で査定士の優しくて低い声を聞き、内容もよく分かっていないのに嬉しくなった。
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