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爪先からじっくりと

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査定士は俺の正面に屈んだが、鏡に映る俺の身体が隠れてしまうことに気付いてか横に移動した。

「サクは鏡を見ているんだよ、いいね?」

「……うん」

査定士の手が脛を撫でる。皮膚のハリが減り骨と筋肉の動きが見えやすくなり、くっきりと血管が浮いた手には他の男達にはない色気がある。

「ん……」

左手でふくらはぎを揉みながら足を持ち上げ、右手で脛を撫で回す。ただ足に触れられているだけなのに呼吸が不規則になっていく。

「……っ、ふ……ぅ……ぁ…………はぁっ、はぁ……」

ちゅ、と音を立てて査定士の唇が膝に触れる。左手が膝の裏をくすぐる。皮膚の薄い膝の裏はふくらはぎよりも敏感で、足をピクピクと跳ねさせてしまう。

「サク、君が見るのは鏡だよ」

鏡の中の自分を観察する。足を撫で回されているだけなのに唇を噛んでまで声を押さえ、切なげな瞳をする黒髪のインキュバスは酷く情けない男に思えた。

「…………っ、お、おじさん……? 何してるんだよっ、そこ……汚い」

査定士の唇はいつの間にか足の甲に移動していた。

「……ん? 大丈夫だよ、サク。君は裸足で外を走り回ったりしていないんだから」

「さっきまでブーツ履いてたから口つけないで! そういうことするなら、ちゃんと洗って消毒して、それから……!」

「あのブーツは魔力を実態化させたものだ、埃が溜まったりなんてしないんだよ」

査定士の唇は足の甲の上をゆっくりと滑って足の指にたどり着く。

「あ、汗かいたからっ……」

「……そのようだね、少し蒸れていたみたいだ。ブーツの素晴らしいところだねよ」

汗をかいたと伝えたのに、蒸れていると査定士自身も気付いたのに、彼の舌は俺の足の指の間を舐めた。

「ひぁっ……!? な、何してるんだよぉっ、そんなとこ絶対ダメ……ゃ、あっ」

足の小指をぱくっと咥えられ、慌てて足を引くがしっかりと掴まれていて逃がせられない。ぎゅうっと掴まれた太腿とふくらはぎがじんわりと快感を覚え、足の力を抜いた。

「は、ぁっ……足、舐めるなんてぇ……」

ぬるぬると足の裏を這い回る査定士の舌。はむはむと小指を挟む査定士の唇。爪先全体を温める査定士の吐息。

「…………足を舐められて君はどんな顔をしているのかな? 私の顔なんて見ずにもっと可愛い顔を見ていなさい」

査定士に言われて鏡を見る。
頬は欲情して赤く染まり、瞳はとろけて次の快感を期待し続け、口は呼吸のためにだらしなく開いていた。

「自分の顔なんか見てたくないよぉ……おじさんの顔のが見てて楽しい」

「こんなおじさん見てどうするの」

査定士はクスッと困ったように笑う。

「……おじさん、綺麗な顔してる。鼻高いし……目綺麗だし、歳の分……なんか、色気とか包容力あって、甘えたくなるし」

「…………ふふふっ、なら甘えてごらん」

土踏まずをれろんと舐められ、くすぐったさで指が反る。

「んぁっ……お、おじさん…………指の方、して欲しい」

指を吸われると爪が浮く感覚があるのだが、それをもう一度味わいたくなった。

「どの指を吸って欲しいんだい?」

ちゅ、ちゅっと足の親指の先端を軽く吸いながら上目遣いで尋ねられ、彼の口の器用さを思い返し、陰茎が疼く。

「ゆ、指の間がいいな……」

指を吸って欲しかったはずなのに、いつの間にか数秒前の欲望すら忘れている。

「舐めるのかい? いいよ、どこだい?」

「親指と、親指の間……」

「親指と親指の間……?」

親指は足の内側に、左右に一本ずつある。つまり親指の内側とは足の間のこと、性器のことだ。

「……な、舐めて? おじさん……吸って欲しいし、舐めて欲しい……ダメ?」

鏡の中の俺を見る。
下品に開脚してぷるんと陰茎を揺らし、査定士がしゃぶってくれる未来を愚直に信じてニヤニヤと笑っている。

「もちろんいいよ、可愛いサクの頼みならなんだって聞いてあげたくなる。私に出来ることならね」

査定士は俺の足の間に挟まり、正座のような体勢で手を使わずに俺の陰茎を舐めた。その姿勢は非常に支配欲をくすぐるもので、落ち着いた中年である査定士でなければ俺は頭を掴んでしまっていただろう。

「ぁ……んっ……んぁ……すごい、れろれろって、裏のとこ……ひっ、ゃ、ぁあ……や、ばっ」

舌先がくすぐるように裏筋を撫でている。小さな快感が積み重なっていく感覚もとても尊いものなのだが、やはり査定士の頭を鷲掴みにして喉奥までしゃぶらせてやりたくなる。

「ん、んっ……ぁあ……はぁっ…………おじ、さんっ……もっと強くぅ……」

シャルやネメシスへならイラマチオを頼んだりもしていただろう。しかし、査定士には頼みにくい。この歳の男にとって髪が抜けかねない行為はご法度なのだ、査定士が髪に困っているかどうかは知らないけれど。

「もっと強く? 物足りなかったんだね、ごめんね。どんどん言ってくれていいよ、全部や無理だろうから、かわいくおねだりしてくれた順だね。何をしたいか何をされたいか、しっかり説明するんだよ」

「ぅんっ……んんっ、あぁ……さ、先っぽの方……もっと」

舌先が亀頭へ移動し、鈴口の周りでくるくると円を描く。

「ひっあぁああっ……! ぁ、ぁあぁ……ひぅんっ!? んんんぅっ……!」

舌先が鈴口に沈む。先走りの汁を垂らしているところを塞がれ、思わず仰け反る。

「んっ、んんんぅっ……先っぽ、先っぽ吸ってぇ……!」

査定士の唇が亀頭を挟む。ちゅうっと吸われながらチロチロと亀頭を撫で回され、あっという間に絶頂へ押し上げられる。

「はぁっ、あぁあっ……出そう、おじさんっ、出ちゃいそぉっ……!」

査定士は俺の亀頭を咥えたまま頷き、ぢゅううっと先端を強く強く吸った。

「んひぁあんっ! 出る、出ちゃうっ、出るってばぉっ、ぁ、あっ……! でりゅぅっ……」

査定士の口内に勢いよく発射してしまった。しかし彼は意に介さない。ごくりと俺の精液を飲むんでしまった。

「はぁっ、はぁ……ぁひっ! ひんっ、んぁあああっ……!」

絶頂したばかりの亀頭を細かく責められて再び腰が揺れ始める。二度目の射精を迎えてベッドにぐったりと横たわるまでそう時間はかからなった。
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