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沐浴の後は夕飯
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薄暗い沐浴場でネメスィと抱き合って唇を重ねる。ネメシスの鋭い視線を感じて居心地が悪くなり、キスをやめてネメスィから一歩離れる。
「……なぁサク、また今度チョーカーを手に入れてきたら……着けてくれるか?」
「うん、ネメスィが着けてくれたら大事にする」
焦げた黄色い宝石を袋に入れ、再び頭羽に引っ掛ける。この袋の中には先輩がくれた指輪も入っている、どちらも大切な贈り物だ。
「僕もサクに何かずっと着けて欲しいな」
「何かくれるのか?」
「……何欲しい?」
「ネメシスが俺に似合うって思ってくれたもの」
ネメスィは黄色いハートの宝石が俺に似合うと思ってくれた。黄色はネメスィの髪や瞳、ハートは俺がインキュバスだからだろう。そういった熟慮が察せるところが愛おしい。
「今度装飾品の店一緒に探そうよ」
「俺はサクが居ない時に買った。サクの姿を頭の中で完璧に再現できるからな、サクに試着させて確かめなくても似合うかどうか分かる」
「僕だってそれくらい出来てる! サクにも色んなアクセサリー見て欲しいんだよ。僕は僕で選ぶけど、サクだって自分で何か選びたいよね?」
「俺は別に……服もアクセも興味ないし」
生憎とそういった乙女心は持ち合わせていないのだ。
「それより、喧嘩しないでくれよ。あっ、そうだ二人とも、アルマとカタラは髪伸びてたけどさ、お前らは伸びないのか?」
喧嘩を止めたくて強引に話を変える。分かりやすすぎる話題転換だったろうに二人は素直に答えた。
「俺はこまめに切ってる」
「僕は伸びないよ」
「へぇ……」
伸びる伸びないの差は人間の細胞の再現度の違いだろうか。
「ネメスィはその短髪が一番って感じするけど、ネメシスは長い髪も似合いそうだよな」
「伸ばしてみようか?」
「できるのか? 大変じゃないならやってみてくれよ」
ネメシスは濡れた手で自身の髪を撫で付ける。その手を追うように金色の髪が腰まで伸びて水に浸かり、水面に柔らかく広がる。
「わ……! 綺麗……っていうか、なんか魔神王さんに似てるな」
「僕の見た目は僕の父に寄せてあるからね。僕の父は魔神王様と兄弟だ、そりゃ顔も似るよ」
「あ、そっか……特に目元とか似てる。丸っこいツリ目……猫目ってやつ? あ、髪触っていいか?」
ふわりとした金髪に触れると見た目通り柔らかく、手で梳いて一本一本を傍で見るとまるで金糸ように美しい。
「サラサラふわふわ……すごいなぁ」
「長い髪の方が好き?」
「男のロン毛は苦手な方だったんだけど……やっぱり美人ってどんなのでも似合うよな」
「……僕はしばらくこの髪でいるよ」
「いいかもな。でも邪魔なようならやめてもいいからな?」
案外と健気なネメシスの髪を梳いているとネメスィが仏頂面になってきた。
「えっと……そろそろ上がろっか」
二人の手を引いて沐浴場を後にする。ネメスィはバスローブを、ネメシスは自前のローブを、俺はシャルに作ってもらったインキュバスの制服のような露出度の高いいつもの服を着た。
「サク、この服無防備すぎるよ」
「ひぁっ!?」
肩と臍を出す丈の短いシャツの下側からネメシスの手が入ってきた。しっとりとした素肌同士が擦れ合い、皮膚の下の体温を共有し始める。
「そうだな、無防備だ」
ネメシスは背後から俺の胸をまさぐっている。俺達の戯れに気付いたネメスィは俺の前に回り、脇腹を四本の指で優しく撫でた。
「んっ……ぅ……ネメスィ、くすぐったい……ネメシスっ、ぁっ……乳首、だめっ……ひ、ぅっ、あぁっ」
人差し指の腹で乳頭をトントンと叩かれて甲高い声が盛れる。ネメスィは親指の腹で探るように俺の臍の周りに触れ、不意に俺の腹をぐっと押して体の外側から前立腺を抉った。
「ひぐっ……!?」
二本の親指がぐりゅっ、ぐりゅっと前立腺を弄ぶ。ぷっくりと膨れたそれをわざとズラし、追いかけるフリをして再び逃がし、計算済みの逃げ場をまた押して逃がして──そうやって潰し切らずに焦らして絶頂を安易には手に入れさせない。
「ぁ、あぐっ、ぅあっ……はぅっ、ぅ……! はぁっ、はぁ……」
絶頂させないままネメスィの手は離れ、ネメシスの手も胸から離れる。
「今のはお兄ちゃんの勝ちだね、認めたくないけど」
「俺は力強さが魅力だとサクに言われた。お前は繊細な作業が得意なんだろう、乳首を選ぶのは正解だった」
「……ふふ、お兄ちゃんっぽいこと言うじゃん」
兄弟仲がいいようでなによりだが、俺の責め方で仲良くなられるのは少し不愉快だ。
「な、なぁ……もうちょっとやってくれよ」
乳首も陰茎も勃起しているのに放置されている。内と外から弄られると信じて膨らんだ前立腺も、指か肉棒の侵入を心待ちにして蜜を垂らす後孔も、二人を求めている。
「もうちょっとって言われても、ねぇ……お兄ちゃん」
「サク、俺達の番はもう終わったんだ。メインディッシュが待っているぞ」
「え……おあずけ? そんなぁっ……」
疼く身体は歩いただけでも一歩一歩の振動を性感帯に伝え、欲情を深めて尻尾を揺らす。淫猥に尻尾をくねらせながら二人の後を歩き、みんなが夕飯を食べている庭へ着いた。
「もう暗くなってたんだな……」
見上げると前世で住んでいた都会では考えられない美しい満天の星空が広がっていた。星座には元々詳しくないが、異世界だと星座も違うのだろうか。
「カタラ、ちゃんと噛んで食べろよ。まだ腹は本調子じゃないんだろ」
「言われなくても分かってるよ、ガキじゃないんだから」
「……お前、髪がだいぶ短くなってないか? 魔力貯蔵量が少し増えるから伸ばすと言っていたくせに」
「鬱陶しくなったんだよ、いっつも同じ理由で伸ばすのやめちゃってるけどさ、マジで長髪って面倒くせぇんだよ」
カタラの髪型は現在ベリーショート……僅かに刈り上げも入っているようだ。
「カタラ、イメージ変わったな」
「おっ、サク。シャルのやつ髪切るの上手くなってるぜ、お前も髪型変えたい時はシャルに頼めよな。ま、尊い犠牲は忘れてやるなよ」
堪え切れないと笑い出したカタラの視線の先にはアルマがいる。一見、俺が覚えている短髪のようだが、アルマは俺に気付くと前髪を手で隠してしまった。
「アルマ? 髪どうしたんだよ」
「……笑わないって約束してくれるか?」
頷くとアルマはあっさり手を離し、眉の上でパッツンと切られた赤い前髪を晒した。身構えてはいたが思わず吹き出してしまう。アルマは即刻約束を破った俺から目を逸らした。
「ごめんなさい兄さん……やってしまいました。修正しようとしたんですが、これ以上切っても変になりそうで……伸びるのを、待つべきかと」
アルマの影から今にも死にそうな顔で落ち込んだシャルが顔を出す。気にするなと慰め、アルマの髪型を見て吹き出し、震える声で「いつ修正できるのかと尋ねた」
「髪に樹液を染み込ませていますから明日までにはどうにかなりますよ。髪は怪我ではないので魔力が潤沢にあっても上手く修復してくれないんですよね……」
「そっかぁ……」
「すまないがサク、今日は……」
「うん、今のアルマ見てたら笑っちゃうし……またね」
はっきりとは言わないものの今日の夜にアルマに抱かれるとは思っていた。アルマも他の者達もそう思っていた。ネメスィ達の半端な愛撫で疼かされたまま放置されている身体はどうすればいいのだろう。
「ママ! ぴーぅぅっ」
ひくひくと疼く下腹を撫でて落ち着かせようとしても逆効果だ。しかし疼きが気になって触れてしまう。そんな俺を呼ぶのは無邪気な黒いドラゴン。
「きゅうぅっ……ママ? ママ!」
純白のドラゴンも俺に気付いた。巨体の彼らはドラゴン同士で固まって食事中だったようだ。そちらに行ってやると他のドラゴン達も俺に気付く。
「にぅ……ママ?」
スライムのような身体の黒いドラゴンは俺に舌を伸ばす。舐められてやると頭のてっぺんから爪先までぐっしょりと濡れた。
「まま、ままぁ……みぃぃ、まーまぁ」
他のドラゴン達と比べても大きな赤いドラゴンは巨体に似合わない可愛い声で俺を呼んでいたので、辛うじて手が届く後ろ足を撫でてやった。くるぶしの辺りだろうか?
「母様、今晩は美しイ夜ですね」
はっきりと喋った薄紫色のドラゴンに驚かされた。喋るのは知っていたが、他の子達が鳴くばかりだったから失念していたのだ。
可愛い我が子であるドラゴン達と話しているうちに夜は更け、眠る時間になった。
「カタラ、今日は別の場所で寝よう」
「ん? 別にいいけど」
ネメスィとネメシスが俺の考えを伝えてくれて、みんな城で眠るのはやめて壊れていない家を探すことになった。
「ぴぃ、おやすみママ」
「きゅうぅん、ママ、またあした」
「にぅぅ……おや、す……み」
「みぃ? おやす、みぃ……まま」
「ゆっくリおやスみくださイませ、母様」
「あぁ、おやすみ! また明日な~!」
拙い言葉での挨拶に大声を返す。頭が高い場所にあるドラゴンには普段の声量では聞こえにくいだろうと考えたのだ。また「おやすみ」「おやすみ」と返ってくるが、キリがないので手を振りながら離れることにした。
「サク、今晩はみんな各々で寝床を見つけるようだね。ご一緒してもいいかな?」
査定士に声をかけられて下腹がきゅんとときめく。セックスの誘いに違いないと心身共に騒ぎ立てる。
「おじさん……はい、一緒に」
すぐに彼の腕に絡みつき、彼の足に尻尾を絡め、眠る子供達から離れ夜の無人街へと向かった。
「……なぁサク、また今度チョーカーを手に入れてきたら……着けてくれるか?」
「うん、ネメスィが着けてくれたら大事にする」
焦げた黄色い宝石を袋に入れ、再び頭羽に引っ掛ける。この袋の中には先輩がくれた指輪も入っている、どちらも大切な贈り物だ。
「僕もサクに何かずっと着けて欲しいな」
「何かくれるのか?」
「……何欲しい?」
「ネメシスが俺に似合うって思ってくれたもの」
ネメスィは黄色いハートの宝石が俺に似合うと思ってくれた。黄色はネメスィの髪や瞳、ハートは俺がインキュバスだからだろう。そういった熟慮が察せるところが愛おしい。
「今度装飾品の店一緒に探そうよ」
「俺はサクが居ない時に買った。サクの姿を頭の中で完璧に再現できるからな、サクに試着させて確かめなくても似合うかどうか分かる」
「僕だってそれくらい出来てる! サクにも色んなアクセサリー見て欲しいんだよ。僕は僕で選ぶけど、サクだって自分で何か選びたいよね?」
「俺は別に……服もアクセも興味ないし」
生憎とそういった乙女心は持ち合わせていないのだ。
「それより、喧嘩しないでくれよ。あっ、そうだ二人とも、アルマとカタラは髪伸びてたけどさ、お前らは伸びないのか?」
喧嘩を止めたくて強引に話を変える。分かりやすすぎる話題転換だったろうに二人は素直に答えた。
「俺はこまめに切ってる」
「僕は伸びないよ」
「へぇ……」
伸びる伸びないの差は人間の細胞の再現度の違いだろうか。
「ネメスィはその短髪が一番って感じするけど、ネメシスは長い髪も似合いそうだよな」
「伸ばしてみようか?」
「できるのか? 大変じゃないならやってみてくれよ」
ネメシスは濡れた手で自身の髪を撫で付ける。その手を追うように金色の髪が腰まで伸びて水に浸かり、水面に柔らかく広がる。
「わ……! 綺麗……っていうか、なんか魔神王さんに似てるな」
「僕の見た目は僕の父に寄せてあるからね。僕の父は魔神王様と兄弟だ、そりゃ顔も似るよ」
「あ、そっか……特に目元とか似てる。丸っこいツリ目……猫目ってやつ? あ、髪触っていいか?」
ふわりとした金髪に触れると見た目通り柔らかく、手で梳いて一本一本を傍で見るとまるで金糸ように美しい。
「サラサラふわふわ……すごいなぁ」
「長い髪の方が好き?」
「男のロン毛は苦手な方だったんだけど……やっぱり美人ってどんなのでも似合うよな」
「……僕はしばらくこの髪でいるよ」
「いいかもな。でも邪魔なようならやめてもいいからな?」
案外と健気なネメシスの髪を梳いているとネメスィが仏頂面になってきた。
「えっと……そろそろ上がろっか」
二人の手を引いて沐浴場を後にする。ネメスィはバスローブを、ネメシスは自前のローブを、俺はシャルに作ってもらったインキュバスの制服のような露出度の高いいつもの服を着た。
「サク、この服無防備すぎるよ」
「ひぁっ!?」
肩と臍を出す丈の短いシャツの下側からネメシスの手が入ってきた。しっとりとした素肌同士が擦れ合い、皮膚の下の体温を共有し始める。
「そうだな、無防備だ」
ネメシスは背後から俺の胸をまさぐっている。俺達の戯れに気付いたネメスィは俺の前に回り、脇腹を四本の指で優しく撫でた。
「んっ……ぅ……ネメスィ、くすぐったい……ネメシスっ、ぁっ……乳首、だめっ……ひ、ぅっ、あぁっ」
人差し指の腹で乳頭をトントンと叩かれて甲高い声が盛れる。ネメスィは親指の腹で探るように俺の臍の周りに触れ、不意に俺の腹をぐっと押して体の外側から前立腺を抉った。
「ひぐっ……!?」
二本の親指がぐりゅっ、ぐりゅっと前立腺を弄ぶ。ぷっくりと膨れたそれをわざとズラし、追いかけるフリをして再び逃がし、計算済みの逃げ場をまた押して逃がして──そうやって潰し切らずに焦らして絶頂を安易には手に入れさせない。
「ぁ、あぐっ、ぅあっ……はぅっ、ぅ……! はぁっ、はぁ……」
絶頂させないままネメスィの手は離れ、ネメシスの手も胸から離れる。
「今のはお兄ちゃんの勝ちだね、認めたくないけど」
「俺は力強さが魅力だとサクに言われた。お前は繊細な作業が得意なんだろう、乳首を選ぶのは正解だった」
「……ふふ、お兄ちゃんっぽいこと言うじゃん」
兄弟仲がいいようでなによりだが、俺の責め方で仲良くなられるのは少し不愉快だ。
「な、なぁ……もうちょっとやってくれよ」
乳首も陰茎も勃起しているのに放置されている。内と外から弄られると信じて膨らんだ前立腺も、指か肉棒の侵入を心待ちにして蜜を垂らす後孔も、二人を求めている。
「もうちょっとって言われても、ねぇ……お兄ちゃん」
「サク、俺達の番はもう終わったんだ。メインディッシュが待っているぞ」
「え……おあずけ? そんなぁっ……」
疼く身体は歩いただけでも一歩一歩の振動を性感帯に伝え、欲情を深めて尻尾を揺らす。淫猥に尻尾をくねらせながら二人の後を歩き、みんなが夕飯を食べている庭へ着いた。
「もう暗くなってたんだな……」
見上げると前世で住んでいた都会では考えられない美しい満天の星空が広がっていた。星座には元々詳しくないが、異世界だと星座も違うのだろうか。
「カタラ、ちゃんと噛んで食べろよ。まだ腹は本調子じゃないんだろ」
「言われなくても分かってるよ、ガキじゃないんだから」
「……お前、髪がだいぶ短くなってないか? 魔力貯蔵量が少し増えるから伸ばすと言っていたくせに」
「鬱陶しくなったんだよ、いっつも同じ理由で伸ばすのやめちゃってるけどさ、マジで長髪って面倒くせぇんだよ」
カタラの髪型は現在ベリーショート……僅かに刈り上げも入っているようだ。
「カタラ、イメージ変わったな」
「おっ、サク。シャルのやつ髪切るの上手くなってるぜ、お前も髪型変えたい時はシャルに頼めよな。ま、尊い犠牲は忘れてやるなよ」
堪え切れないと笑い出したカタラの視線の先にはアルマがいる。一見、俺が覚えている短髪のようだが、アルマは俺に気付くと前髪を手で隠してしまった。
「アルマ? 髪どうしたんだよ」
「……笑わないって約束してくれるか?」
頷くとアルマはあっさり手を離し、眉の上でパッツンと切られた赤い前髪を晒した。身構えてはいたが思わず吹き出してしまう。アルマは即刻約束を破った俺から目を逸らした。
「ごめんなさい兄さん……やってしまいました。修正しようとしたんですが、これ以上切っても変になりそうで……伸びるのを、待つべきかと」
アルマの影から今にも死にそうな顔で落ち込んだシャルが顔を出す。気にするなと慰め、アルマの髪型を見て吹き出し、震える声で「いつ修正できるのかと尋ねた」
「髪に樹液を染み込ませていますから明日までにはどうにかなりますよ。髪は怪我ではないので魔力が潤沢にあっても上手く修復してくれないんですよね……」
「そっかぁ……」
「すまないがサク、今日は……」
「うん、今のアルマ見てたら笑っちゃうし……またね」
はっきりとは言わないものの今日の夜にアルマに抱かれるとは思っていた。アルマも他の者達もそう思っていた。ネメスィ達の半端な愛撫で疼かされたまま放置されている身体はどうすればいいのだろう。
「ママ! ぴーぅぅっ」
ひくひくと疼く下腹を撫でて落ち着かせようとしても逆効果だ。しかし疼きが気になって触れてしまう。そんな俺を呼ぶのは無邪気な黒いドラゴン。
「きゅうぅっ……ママ? ママ!」
純白のドラゴンも俺に気付いた。巨体の彼らはドラゴン同士で固まって食事中だったようだ。そちらに行ってやると他のドラゴン達も俺に気付く。
「にぅ……ママ?」
スライムのような身体の黒いドラゴンは俺に舌を伸ばす。舐められてやると頭のてっぺんから爪先までぐっしょりと濡れた。
「まま、ままぁ……みぃぃ、まーまぁ」
他のドラゴン達と比べても大きな赤いドラゴンは巨体に似合わない可愛い声で俺を呼んでいたので、辛うじて手が届く後ろ足を撫でてやった。くるぶしの辺りだろうか?
「母様、今晩は美しイ夜ですね」
はっきりと喋った薄紫色のドラゴンに驚かされた。喋るのは知っていたが、他の子達が鳴くばかりだったから失念していたのだ。
可愛い我が子であるドラゴン達と話しているうちに夜は更け、眠る時間になった。
「カタラ、今日は別の場所で寝よう」
「ん? 別にいいけど」
ネメスィとネメシスが俺の考えを伝えてくれて、みんな城で眠るのはやめて壊れていない家を探すことになった。
「ぴぃ、おやすみママ」
「きゅうぅん、ママ、またあした」
「にぅぅ……おや、す……み」
「みぃ? おやす、みぃ……まま」
「ゆっくリおやスみくださイませ、母様」
「あぁ、おやすみ! また明日な~!」
拙い言葉での挨拶に大声を返す。頭が高い場所にあるドラゴンには普段の声量では聞こえにくいだろうと考えたのだ。また「おやすみ」「おやすみ」と返ってくるが、キリがないので手を振りながら離れることにした。
「サク、今晩はみんな各々で寝床を見つけるようだね。ご一緒してもいいかな?」
査定士に声をかけられて下腹がきゅんとときめく。セックスの誘いに違いないと心身共に騒ぎ立てる。
「おじさん……はい、一緒に」
すぐに彼の腕に絡みつき、彼の足に尻尾を絡め、眠る子供達から離れ夜の無人街へと向かった。
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