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お兄ちゃんは独占欲強め

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触手を突っ込んで食道の調子を探るネメスィの案は却下され、すっかり元気になったカタラは自分を心配するネメスィを無視してネメシスに驚いていた。

「お前……確か、前にも会ったよな、ネメスィの弟かー…………何年も一緒に居たけど、兄弟の話なんて聞いた覚えねーなぁ」

「兄弟が居るなんて知らなかったんだ、話せるわけないだろう」

反論するネメスィを無視し、カタラはじぃっとネメシスを見つめる。

「魔神王の使いっ走りってわけか」

「そんなとこ。魔神王様はこの島の王国としての復活を願ってるから、復興まではここに住まわせてもらうよ」

「復興の手伝い、ねぇ……? そんなこと言って、サクと一緒に居たいから魔神王に頼み込んだんだろ」

ネメシスは何も言わずに笑って俺を抱き寄せる。

「つーかよ、復興って……人間はもう俺とおっさんしか居ねぇぞ? 魔物の王国か?」

「人間が王様やってた島なんてここだけだよ」

「ふーん……で? 王家の血は途絶えたわけだけど、どーすんだ? 復興させたら俺が王様になっていいわけ?」

カタラの絹糸のように綺麗な髪の上にちょこんと王冠が乗るのを想像し、おかしさと可愛らしさに笑ってしまう。

「魔王はサクと弟さんだよ。魔神王様直々のご指名だ。サクの魅力で住民の一体感を作って、弟さんの力で島を守る。双子の王様の誕生を魔神王様は心待ちにしている。もちろん、カタラさんやお兄様もそれなりの地位についていい」

役目が重すぎて憂鬱になる。俺もシャルも王の器ではないだろうに、魔神王の采配はどうかと思う。

「へー! 魔王様かぁ、すごいじゃねぇかサク。魔王の処女を奪った男として俺の銅像でも立ててくれよ」

「……裸で勃ってる姿でよければ」

「やっぱいいわ。ぁ、それよりネメシス……だったよな? ネメシス、俺にさん付けしたりネメスィをお兄様って呼んだり……お前そんな奴なのか?」

「ほぼ初対面で何を……僕は歳上に敬意を払ってるだけだよ。お兄様とほとんど同い年だろ?」

「正確な年は分かんねぇけど、多分な。癖ならいいけど、無理してさん付けしなくていいぞ」

ネメシスは金色の瞳を丸くする。こうして見るとネメスィよりも黒目がちだと分かりやすい。ネメスィの方が切れ長かな……なんて二人の顔を見比べているとネメスィの腕が肩に乗った。

「……俺が気になるのか? サク」

「ぁ……いや、顔はあんまり似てないなって」

ネメスィが俺に引っ付いているのに気付いてかネメシスが俺の腰を強く引き寄せる。

「では、カタラと」

「おぅ、よろしくなー」

「カタラ、体調が悪いと聞いたけど……僕は多くの種族の医術に精通している、体の内側に潜り込まなくても具合が分かるかもしれない。診ても?」

「そういやお前、前はサク調べに来たんだよな……んー、平気だと思うけど、腹ん中突っ込まれねぇならいいや、やってくれ」

ネメシスは俺を離すとカタラの腹に手のひらを当てた。

「……内臓の運動がちょっと鈍いかな、消化に悪いものはまだやめた方がいい」

触れただけで分かるものなのか? 手が少し溶けていたし、聴診器のような役割でも果たしていたのだろうか。

「ほー……すごいな、ありがとよ」

「喉も診ておくよ。オークを食べたんだよね? 腫れてるかも」

この診察方法は俺の前世でも馴染み深いな。

「…………俺の時は口を開けなかったくせに」

ネメスィが不機嫌そうにしている。抱きつくと二人を睨むのをやめ、俺の髪にキスをした。

「ちょっと荒れてる。染みるものや熱いものは避けた方がいい」

「ん、ありがと。いやぁ、頼りになるな! ネメスィより気ぃ利きそうだし、キレっぽそうでもないし」

「ありがとう。以前敵対してしまったから仲良くしてくれるか少し不安だったんだよ」

ネメスィがまた二人の方を睨んでいる。子供達の手前、あまり過激なことは出来ないが彼の機嫌は直してやりたい。

「………………カタラ!」

抱きつく力を強めたり、尻尾を足に絡めたり、色々としてみたがネメスィの意識は俺に向かなかった。

「カタラ、俺が頼りにならないとでも言いたいのか? 俺が居なかったらお前は何度死んでいたか分からない、昨日だって一昨日だってお前の看病をしてやった! 俺のどこが気が利かないと言うんだ!」

「なんだようるせぇな。ネメシスの方が細かい作業得意そうなのは事実だろ。今までのことも看病してくれたことも、ちゃんと感謝してるって」

「……なら、いい」

「いいって顔してねぇな。拗ねんなよ」

カタラに意識が向いている隙に……とでも言うようにネメシスが俺の腰に腕を回す。俺が引き剥がされそうになるとネメスィは俺を抱き締める。

「…………あまりサクに触れるな、新顔のくせに」

「弟に大して酷いね。少しは譲ってよお兄様」

「サクもカタラも俺のものだ! なんなんだ、俺に成り代わるつもりか!?」

「喧嘩するなよ! ネメスィ、ネメシスはお兄ちゃん大好きって言ってたぞ。早く馴染みたいだけだよ」

「サク……!? い、言わないでって言ったよね!」

口止めされていたことを今思い出した。軽く謝るとネメシスはため息をつき、ほのかに赤くした顔を隠すように俯いたままネメスィを瞳だけで見上げた。

「もぉ……サクってば…………あれ、って言うか……カタラ、カタラお兄ちゃんの恋人なの?」

「は!? 気持ち悪ぃこと言うなよ。ネメスィは仲間とか仲良い奴のこと俺のもんって言って囲おうとするだけだ」

「ふぅん……? あの、お兄ちゃん……サクについてはそのうち奪いたいとは思ってるけど、今はみんなと仲良くなることだけ考えてるんだ。お兄ちゃん大好きってのも……まぁ、本当だよ、受け入れてくれたの嬉しかった。よければ僕もお兄ちゃんのものにしてくれないかな」

ネメスィに対しては生意気な態度が多かったのは兄弟らしくしたかったからだったりするのだろうか?

「……お前は俺の弟なんだろ。弟は生まれたその時から兄のものだ」

「ふふ……何、その理論。全然分かんないけど、ありがとうお兄ちゃん」

「ネメスィさん、僕は分かりますよ。兄弟というのは特別なもので……ぁっ、切り過ぎた」

「シャ、シャル……頼む、集中してくれ」

兄と弟の話と聞いてアルマの髪を切っているシャルが反応した。

「……散髪の邪魔をしてはいけないな。シャルはサクが居ると集中が乱れる。来い、サク」

奪い取るように俺を抱き締めたネメスィは俺を城の中へと連れ込もうとする。

「ネメスィ……? す、するのか?」

「シャルにもカタラにも既に抱かれたんだろ? 次は俺の番だ。メインディッシュは最後まで取っておくものだ……まぁ、前菜で腹いっぱいになることもあるがな」

切れ長の金眼はアルマの方を見つめ、アルマに似た色の視線を返されて視線を逸らす。

「旦那の許しが出た。好きに抱かせてもらうぞ」

ネメスィが俺を抱きたがっているのだと意識すると自然と下腹がきゅんきゅんと疼く。俺は小さく頷いて彼の歩幅に合わせて歩いた。
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