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あの人は確かに死んだ

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アルマに腕枕をさせて、シャルに腕枕をしてやって、家族三人でゆっくりと眠る。

「ん……にぃ、さん……ふふ」

幼子を寝かしつけるように背を叩いてやったからかシャルの寝入りは早かった。俺を呼びながら、幸せそうに微笑みながら、その可愛い瞳を瞼の下に隠した。

「…………先輩」

シャルとアルマはぐっすりと眠っているが、俺は眠気すら感じていない。シャルの枕を俺の腕からアルマの手首に変えさせて、先輩に手を引かれてベッドから抜け出した。

「ありがとうございます先輩、一人で起き上がるのちょっと厳しい体勢だったんで助かりました」

染めているらしいピンク色の髪に手を伸ばす。耳の上辺りに触れるとセンパイはくすぐったそうに片目を閉じ、俺の指に合わせて髪を揺らしながら微笑んだ。

『なんだよサク、くすぐったいって』

歳相応の笑顔だ、俺のイメージ通りの先輩だ。

「先輩……さっきまでどこに居たんですか?」

『お前らが始めてから気まずくてちょっと離れて、でも興味はあったから見てたけど』

アルマとの行為中、ネメスィとシャルの姿はたまに見えた。査定士は常にベッド脇に居た。騒がしくて眠れないからとウォークインクローゼットに入ったカタラは見えなくて当然だ。この部屋に居たはずの先輩を見た覚えがない。

「どの辺で見てました?」

『そこ』

先輩はベッドの足側を指差す。ここならアルマが邪魔で俺の視界に先輩は入らない。

「……そう、ですか」

ボコボコとした縫い目が目立つ先輩の首に触れる。一瞬複雑そうな表情をしたが、すぐに微笑む。

「温かい……温度も感触もある。先輩、生きてる……ねぇ先輩、他の人とも話して仲良くなってくださいね?」

『分かってる、ちょっとずつ馴染んでいくつもりだよ』

先輩は確かにここに居る。存在している。先輩は生き返った。部屋から出る自由を失う代わりに先輩の命を得たんだ、それは正当な取引だ。

「サークー、旦那とのは終わったか?」

カタラがクローゼットから出てくる。起きたばかりなのか銀髪には寝癖がついている。

「珍しいな、今日は旦那の方がぶっ倒れたのか。インキュバスの搾精本能だっけ? とんでもないな」

「……そう言われるとなんか恥ずかしいな」

一度解放された本能がまた眠り始めたのか、局部を丸出しにした逆バニー姿が恥ずかしくなってくる。裸の方がマシだ。

「…………カ、カタラ。この服脱ぎたいんだけど」

「なんで? 可愛いじゃん」

青い視線が俺の胸や股間に向いているのに気付き、慌てて手で隠す。もこもこの白い毛皮で出来た手袋が素肌に触れるととても心地いい。

「裸より恥ずかしい……」

「ふーん? ま、元は魔力だから俺にも壊せると思うけど」

「えっ、こ、壊す……? 脱ぐの手伝って欲しいだけなんだ、その……せっかくシャルが作ってくれた物だし」

手足だけを隠すふざけた格好ではあるが、みんな褒めてくれた。

「弟に甘すぎるんだよサクは。ま、いいことだけどな。ほら、腕伸ばせよ」

分厚い手袋のせいで自力で服が脱げない。まずは手袋から脱がしてもらう。

「……んっ」

とんっ、とカタラの手が下腹に触れた。

「サク?」

「な、なんでもない」

経った今までセックスをしていたせいだろうか、あんなので感じるなんて……

「靴下の方は自分で脱げるよ」

「そうか? あ、なぁ、このカチューシャ俺の方が似合うんじゃないか?」

白ウサギを模したウサミミカチューシャは確かに銀髪のカタラによく似合う。

「本当だ……カタラ着けておく?」

「いやいや、似合うけどキャラじゃねぇって」

ウサミミカチューシャと手袋、そして靴下を脱いで部屋の隅に置く。洗濯のための道具を後で取り寄せなければ。

「……そういえばお風呂あったっけ?」

「あのドアの向こうシャワールームだったぞ。どこから水が来てるのか、どこに水が流れていくのか……全然分からないけどな」

「不気味だけど機能には問題ないだろうし、俺入ってくるよ」

「いってら。終わったら俺と……な?」

抱き寄せられて腰を撫でられ、下腹が疼く。ついさっきまでアルマに抱かれていたくせにまた男根が欲しくなる。

「う、ん……カタラと、するっ」

「とろっとろの顔して、ほんっと可愛いな。シャワー終わってからだぞ?」

「うん……」

自分の淫乱さは分かっているつもりだったが、その理解は甘かったようだ。腹が減るから仕方なくセックスしているんだなんて思っていた時期もあったけれど、もう認めよう。俺は男に抱かれるのを至上の悦びとする変態だと。

『サークっ、俺も一緒に入っていいか?』

「先輩……はい」

ふらふらとシャワールームに向かっていると先輩が腕を組んできた。顔を覗き込む幼い仕草が愛おしい、生き返らせられてよかったと心から思う。彼の笑顔のためなら自由を引き換えにしてもお釣りがくる。

「サク? 何か言ったか?」

「へ? いや、別に」

「……気のせいかな」

カタラは居眠りしている査定士の傍に積まれていた本を拾い、ベッドの端に腰掛けて読書を始めた。

『なんかさ、俺ってこの中じゃ新参者って感じだよな』

「まぁ、そうですね」

『だから何となくサクにも触りにくくてさ』

シャワールームで二人きり、服を脱いだ先輩は湯を被るよりも早く俺を背後から抱き締めた。

『……せっかくこうして再会できたんだから、もっとサクと触れ合っていたいんだ』

一度失われた体温が嬉しくて、俺は目を閉じて彼の腕に手を添えた。腰羽を反らせて彼の腰に触れさせ、尻尾を太腿に巻き付け、機嫌よく頭羽を揺らした。

『……にしても驚いたよ、サクがインキュバスだって分かった時は』

「すいません、騙して……」

『どんな男の子よりもエロ可愛いの納得だよ』

俺を抱き締めていた先輩の手がほどけ、胸をまさぐる。

「せ、先輩……その、体洗いながらしませんか?」

先輩は二つ返事で了承してくれて、一旦離れてそれぞれ湯を浴びた。石鹸を泡立てながら不意に鏡を見てみると、俺の下腹にはっきりとハートをモチーフにした模様が浮かび上がっていた。

「カタラっ……やっぱり、いくらなんでもおかしいと思ったんだ」

少し触れられただけで下腹が疼いたのは淫紋のせいだ。カタラに仕込まれたこの魔力の刺青は彼の気分次第で俺を発情状態に陥らせる厄介なものだ。

『サク、どうしたんだ?』

「先輩……早く、洗いっこしましょう」

先輩と向かい合い、泡だらけの手で彼の胸から腹までを撫で下ろす。

「抱き合って、すりすりって……しましょ、先輩」

彼の首に腕を回すと彼の腕は俺の腰に回る。体の前面が触れ合い、先輩の体温と肌のなめらかさを感じ、昂った俺は先輩に陰茎を擦り付けた。
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