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丁寧にとろかされて眠る

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俺が離れた時と全く同じ体勢で眠るシャル、その隣に腰を下ろすと査定士は床に屈んだ。

「シャルはまだおねむかな……仕方ない。サク、足を抱えて足を開いて私に全てを見せなさい」

「は、はい……」

言われるがままに膝の裏に腕を通してM字に開脚する。

「下を脱いで」

「え……? で、でも、穴は出てる……」

「私は全てを見せなさいと言っただろう?」

上品ながら嗜虐的なメガネの奥の瞳の輝きに地下のSM道具を思い出す。あれらはやはり彼の趣味だったのだと納得した。

「今、脱ぐ……」

上は着たまま下半身は一糸まとわぬ姿に──

「靴は履いて」

「へ? ぁ……はい」

──訂正。デニムパンツだけを脱ぎ、靴下と靴は履いたままの姿になる。何故か裸より恥ずかしい。改めてM字に開脚すると査定士はにっこりと笑った。

「うん、いいね。穴はもちろん、蟻の門渡り、性器……尻尾の生え際も分かるね。見れば見るほどこの尻尾は不思議だ、君は淡褐色種の色白個体……つまり、肌が白いんだよ。けれど色素が薄い訳ではない」

「…………よく分からないんだけど」

「あぁ、ごめんね。ただ……色白の肌と真っ黒い皮に包まれた尻尾の境目がくっきりとしているのが、生き物としては不思議だと思ってね。皮膚と尻尾の皮では硬さも手触りも違う……まるで取ってつけたようにも思える」

すりすりと尻尾の生え際を撫でられて身体が熱くなっていく。

「そもそもインキュバスは人間の解剖学に反した生命体だからねぇ。内臓の数も、筋骨の密度も……一番不思議なのは羽だよ、インキュバスの飛行は魔術で、羽はいらない……何に使うんだい? この羽」

「飾り……?」

「ふむ、確かに……鳥だとかにはあるね、繁殖期にのみカラフルな尾羽が生えるとか。求愛に使うのかい?」

頭に意識を集中し、頭羽をパタパタと動かしてみる。

「…………可愛いねぇ。求愛行動だよこれは、間違いない」

どうでもよくなったんだな、この人。

「ふふ、猫や犬のピクピク動く耳も可愛らしいからね。そういった人間の心理を分かって生やしているのかもしれない……だとしたら人間に馴染みのある犬猫の耳ではなく、蝙蝠タイプの羽というのは不思議だけれどね」

あ、ちゃんと考えてた。確かに羽よりはケモ耳の方が需要ありそうだな。

「この長い耳は……やはり音を聞くためかな、人間よりも音に敏感なのか……人間よりも脆い体だから、そりゃ警戒心は必要だろうけれど……ふーっ」

「ひぁっ!? み、耳に息吹きかけないでぇ……」

「……まぁ、理由で言えば一番可愛らしいのは尻尾だね」

両手できゅっと尻尾を握られ、持ち上げられて先端にキスをされる。ハート型の先端は査定士の唇の間に挟まり、ゆっくりと彼の口内に隠されていく。

「ぁ、あっ……そ、こっ……舐めたらっ……!」

ハート型の先端と紐状の尾の境目、皮が薄くなったそこを舌先でくりくりと弄られる。

「ん……脊椎が伸びているんだってね。快楽を得るためだけの器官だ、全く素晴らしいよ、君という生き物は」

「……俺がして欲しいのは、耳とか尻尾じゃなくて」

「分かっているよ。ここだね」

食い気味に答えた査定士の中指が穴の縁を擦る。

「人間よりも大きな前立腺を、私の指で、ぐりぐりと弄って欲しいんだね?」

「ぅん……いっぱい、イかせて」

「ふふ、ごめんね待たせて」

中指がゆっくりと挿入される。指を歓迎してぎゅうぎゅうと締め付ける腸壁をこじ開け、期待に膨らんだ前立腺にぶつかる。

「ぁ……! そ、そこ、そこっ……!」

「うん、教えてくれてありがとう。サクはいい子だね、なでなでしてあげようね」

指の腹が優しく前立腺を撫でる。触れるか触れまいかも曖昧な愛撫だ、もっと強く押し込んで欲しい心が腸壁の締め付けの強さになって現れるが、査定士は涼しい顔で抵抗する。

「んっ、く、ぅぅうっ……!」

「よしよし、よしよし……いい子いい子、気持ちいいね?」

「もっと、強くぅっ……! こんなのっ、指紋まで感じちゃう……!」

「こんな微かな凹凸まで? すごいね、敏感なんだ」

膝の裏に通した腕を使えばいいのに、俺は何故か手を足から離してはいけない気がして、尻尾を査定士の腕に巻いて前立腺を強く責めることを求めた。

「よしよしやだ……ぐりぐりがいい」

「……尻尾を巻いちゃダメだよ、ほら、離しなさい」

もう片方の手に簡単に外され、その手に捕まって親指で撫でられる。ハート型の先端をクリクリとこね回される。

「あぁああっ……尻尾、尻尾ぉっ……!」

「尻尾に触られるとどんな気分になるんだい? 人間にはない器官だからね、私には想像もつかないよ」

「せ、なかっ……ゾクゾクって、してぇっ! ぁ、はっ、は、ぁ……! とにかく、きもちくてっ、しゅごいのっ……しっぽ、すきぃっ!」

「丁寧にありがとう。やっぱり脊椎の快楽神経だけが伸びたものなんだね」

尻尾の先端を丁寧にこね回され、前立腺を優しく撫で回され、俺は絶頂の寸前でさまよっていた。まどろみに近いだろうか、達しきらない心地良さがあった。

「は、ぁっ……ぁああ……ふわふわ、するっ……これ、好き……」

「みんな君が大好きだからね、めちゃくちゃにイかせたいんだ。若い彼らは自分の性欲もあるからね……こんなふうにじっくりゆっくりとはしてくれないだろう?」

「ん……あなた、はっ……自分、は……?」

「私はもう歳だからね。射精したい、孕ませたい、そんな欲望はあまりないんだよ。ただただ愛玩していたい、それだけさ」

ふわふわ、ゾクゾク、ぽかぽか、そんな擬態語で表せる不思議な快楽の中をさまよう。

「君にはこうやって性的な快楽を与える愛撫をしているけれど、シャルにするみたいに頭や背への愛撫も好きだよ。人ならざるものの人肌というのがいいのかな……シャルは最初、私を疑っていたんだよ。性欲なく触れたいなんて……と、でも、眠った私の深層を覗いて信用してくれた」

「しん、そぉっ……?」

「……心の底からシャルに敵意を抱かないこと、それだけがシャルに警戒されない条件だ。だからきっと……あの三人に懐くのは」

やはり難しいのかと少し落ち込んだ瞬間、査定士の舌が会陰に触れた。後孔と陰茎の間のそこには何もない、そのはずなのに舐められると変な気分が広がっていく。

「ぁ……ん、ん……そこ、何もない……」

尻尾と前立腺への責めは全く変わらない。

「ん、ん、ぅ……」

後孔の縁から会陰を通って陰嚢の生え際まで舐め上げられる。

「ぅ、あ……んんっ……! そろそろ……イかせてよ、ずっと……ふわふわして、飛びきらないの……これ好きだけど、もっとぶっ飛ぶのがいい……」

またしばらく焦らされるのだろうと斜に構えていた。しかし俺がねだった瞬間、中指は穴の中で曲がってぐぢゅっと前立腺を押し込み、尻尾はぐりっと責められ、会陰を舐めていた口は亀頭を咥えた。

「ひあぁんっ!?」

当然それだけでは終わらず、ぐちゅぐちゅと音を立てながら前立腺を激しくえぐり、尻尾はぐりぐりと指の間ですり潰すようにされ、鈴口を舌でほじくられる。

「イくぅうっ! ぁあっ……! イった、イったのぉっ……! まらイぐぅぅっ! ぁ、ひっ、ひぁあんっ、んぅうっ! イぐっ、ずっとイぐっ、きもちぃっ、ぜんぶきもちぃっ!」

何度も何度も射精のない絶頂を迎え、ガクガクと腰を揺らしているのに査定士の手は緩まない。とうとう射精すると査定士はようやく手を止め、口を離した。

「はぁっ、はぁ……すご、かった…………ん? んっ、ぅ……!」

唇を重ね、査定士が口に溜めていた自分の精液を飲まされる。粘ついたそれが喉を滑り落ちていく感覚にはいつもとは違った不快感が混じっていた。

「自分の、やだ……」

「仕方ないだろう? 射精し過ぎると死んでしまうんだよ、君は」

「それはそうだけど」

「ほら、そろそろシャルを起こしてお風呂にしよう」

頷いてシャルを起こそうと肩を揺らす、頬を叩く、耳元で叫ぶ──全く起きない。不思議に思った査定士がシャルの瞼を指でこじ開けた。

「……目、ぐるぐるしてる」

「夢を見ているみたいだね」

瞼を戻し、頭を撫でる。

「……インキュバスのシャルが夢を見ていて起きない。サク……これは、まずいんじゃないか?」

「へ? 何が?」

「いや、私もインキュバスには詳しくないからね、ただの勘だよ。杞憂かもしれない、それを分かった上で聞いてくれ。夢を操る魔物が夢を見ていて起きないなんて……夢の中に閉じこもっているみたいじゃないか?」

インキュバスは夢を自在に操る魔物だ、俺はかなり苦手だがシャルは得意だ。見たい夢を見ていて起きてこない、ありえない話じゃない。

「ど、どうしよう……あっ、そ、そうだ! 俺が夢に入って起こしてくるよ、前も夢で会話したことあるし……多分いけるはず」

「サク……危険じゃないのか?」

「シャルの夢の中になんの危険があるんだよ、シャルが俺を危ない目に遭わせるわけないって……行ってきます、すぐ戻るよ」

「サク、せめてズボンを履いて眠りなさ……あぁもう」

シャルの額に額を当て、しっかりと抱き締めて眠る。上手く夢の中に入れないこともある、失敗しないよう気を引き締めなければ。
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