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トゥルーエンド条件達成の気配

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たった今まで糸で操られ活発に動いていた手足は俺の意思には従ってくれない。カタラも俺の下で脱力しており、俺を持ち上げてくれたりはしない。

「はぁ……はぁ……かた、らっ……」

挿入されたままのカタラの陰茎は萎えているのに、腸壁は柔らかいそれを揉みしだくようにうねっている。そんなことをされては絶頂に次ぐ絶頂で痙攣している身体が快楽から逃れられない。

「サク」

「へ……? ぁ、あるま……」

「…………本当に淫らな子だ」

もう食事は終わったらしく、全員がソファの周りに集まっていた。そういえばここは夕飯を食べている部屋だった、カタラとの行為中の声は彼らの夕飯のBGMになっていたのだ。

「そこから降りてこっちへ来てくれないか? サク」

「ぁ……ご、ごめん。手足、力入んなくて」

「たったの今まであんなに情熱的に腰を振っていたのにか?」

「あ、あれはっ……カタラの術で……ひぁあんっ!?」

アルマは俺の胴を掴んで片手で軽々と持ち上げ、萎えた陰茎を俺から抜き、絶頂し続けて未だにひくひくと震えている腸を外側から押し潰した。

「あっ、ぁーっ……! お、なかっ……きもち、ぃ……あるまぁ……」

「お、おいっ! 雑なんだよオーガ!」

カタラがネメスィの手を借りて立ち上がり、服を整えてソファを乗り越え、アルマの前に立つ。

「いつ見てもそうだ、オーガ! お前の抱き方、っていうかサクの扱い、雑なんだよ! 嫁の扱いとは思えない、愛してるなんて嘘だってみーんな思ってるぞ」

「みんな? そうなのか?」

自分の体に俺をもたれさせ、腹から手を離し、尻を鷲掴みにして俺を持ち上げたままにする。カタラが近くに居るせいで少し下腹が疼いているし、力強く掴まれている尻肉に被支配欲が膨らむ。

「他人の心情を考える気はない」

「私は彼はちゃんとサクを愛していると思うよ」

ネメスィと査定士はカタラの意見に賛同しない。

「はぁ!? あ、あんな雑に掴んでんだぞ!?」

「種族を考慮するべきだ。オーガは非常に力が強く、また加減も苦手とされている。あの変わった掴み方も爪を触れさせないためだろう」

査定士の話を納得していないような顔で聞いているカタラを他所に、アルマは俺の尻の感触を楽しんでいる。

「んっ、ぅ……ぅ、あぁ……」

「……サクは全身気持ちいいな」

尻肉を揉みしだきながら爽やかに微笑む。その笑顔と新たに頬に触れた手に胸がときめく。爪を触れさせないようにと緩く握った拳で、指の背や手の甲で頬や首を撫でられる。

「イチャつきやがって……!」

「……結局、ただの嫉妬か」

「違う! ネメスィ、お前はサクがあんな乱暴に扱われてていいのかよ」

俺はアルマの愛撫からは丁寧さと繊細さしか感じないのだが、傍から見ると乱暴に見えるのだろうか。擁護した査定士の言い分も「オーガという種族を考慮すれば」だった。大柄だと損なことも多いな。

「サクの気持ちを尊重する」

「俺みたいに優しく抱かれたいに決まってる! な、サク」

「サクは尻を叩かれただけでイくような奴だ、優しくしてやってもイき狂ったがな」

「……サクを叩いたのか?」

愛撫が止まり、床に下ろされる。外れたままだった尻尾下の留め具をはめ、丸出しになっていた尻を布の下に隠した。

「あぁ、言ってなかったか? この前も叩いた」

「前にサクが叩いてとねだったことがあったが……お前のせいか」

「ねだった? それで? 叩いたのか?」

アルマは無言で拳を握る。俺はそっとその拳を両手で包もうとしたが、両手でもアルマの大きな拳には足りず、ただ添えただけになった。

「そうだ、お前がサクをパンパン叩いてんのも気に入らないんだよ。お前も、お前も、サクを痛がらせて喜んでる……そんなの最低だ」

「魔術でサクの身体を操っている奴が言えたことか? さっきの糸、俺に見えないとでも思ったか?」

「…………夫は俺だ、サクが選んだのは俺だ、少し黙っていろ間男共」

「さ、て……私はお皿を片付けてくるよ、あまり物を壊さないでくれよ」

雰囲気が険悪になっていく。査定士は食器を片付けるという大義名分を持って逃げた。

「アルマ……仲良くして」

「向こうにその気があるのなら俺は仲良くするつもりだ」

「同じく」

俺も含めた三人の視線が黙っているカタラに向く。彼は深いため息をついて頭を掻き毟り、銀髪を揺らしてキラキラと輝かせた。

「カタラ……カタラ、お願い、仲良くして」

アルマの傍を離れてカタラの手を掴む。深い青色の瞳に不安そうな顔の俺が映り込む。

「……なぁ、サク。お前乱暴にされるの好きなのか? ネメスィは友達だし、旦那も良い奴なんだろうなーとは思う、お前の弟はちょっとキツイけど……仲良くするのは俺も賛成だ。でもなサク、サクがもし痛いのとか辛いの我慢してるなら、俺は」

「俺を心配してくれてたのか?」

いつも大きな帽子を被っているからだろう、その鍔を掴んで引っ張り、顔を隠すような手の動きをした。眼鏡をかけていない時に眼鏡の位置を直そうと鼻をつつくようなものだ、微笑ましい。

「俺、叩かれるの好きなんだ。痛いけど……いや、痛いのがいいんだ、気持ちよくってさ…………それにアルマは優しいよ、デカいから雑に見えるのかもしれないけど、触られたら分かる。アルマはすっごく気を遣ってくれてる」

「……本当か?」

「アルマもネメスィも本当に優しいし、俺は痛いのも虐められるのもまぁまぁ好きだよ」

「そう、か……痛いの……うん、好きだよな、サクは。分かったよ、サクが望むプレイしてるだけなら文句つけない。仲良くしてやるよ」

三人全員が仲良くする意思を持ってくれた。前世でプレイしてきたゲーム風に言えば、トゥルーエンド条件達成の気配がする。

「ありがとうカタラ! アルマも、ネメスィも……大好き、愛してる!」

人生のエンドなんて死しかない気はするけれど、ゲーム風に言えば俺はハーレムエンドを目指しているのかな?
たった一人になんて絞れないし、絞ろうとすれば真っ先に身を引きそうなネメスィを思えば全員を愛している優柔不断な心のままに行動するべきだと思えてくる。

「……じゃあ、決まりを作るか」

「決まり?」

ネメスィは俺から順に全員と視線を交わし、大きく息を吸った。

「条約と呼ぶべきかもな。俺達の間での喧嘩は禁止、サクとのセックスを邪魔する行為も禁止……そんなものだ、作っておいた方が楽だろう」

「……それじゃサクが物みたいじゃないか」

「どうする? サク、俺達はお前の意見を最優先する……だよな?」

金色の視線に首を横に振る者は居ない。
物扱いとは感じないし、平穏のために必要なら作っておいていいかもしれない。

「俺は別にいいけど……喧嘩しないとか当たり前だろ、わざわざ決めることか?」

「男の嫉妬は怖いからな」

お前のことだ、とそれぞれ視線を送り合う。

「喧嘩しない以外になんかあんの?」

「誰といつセックスするかはサクが決める、他者がそれを妨害するのは禁止。サクが誰でもいいと言った場合、決定権は……アルマ、夫であるお前が持て」

「じゃあ何、俺はサクがしたいって言わない限りできないわけ?」

「誘うのは自由だ、無理矢理は禁止……別に今までと変わらないだろう」

「……まぁそれもそっか」

大の男三人が顔を突き合わせてセックスについて話し合ってるの、なんか面白いな。

「この前のように誰かが窮地に陥った場合、ライバルが減るなんて考えずに必ず助ける努力をする。みんなサクの笑顔を見たいだろう?」

「当然だ。いくら恋敵でも死にかけている者を見捨てるほど落ちぶれたつもりもない」

「おっとこらっしー」

「茶化すな、カタラ。オーガ、たった今からお前は俺の仲間ということになる。俺は仲間を自分の所有物と考える、俺の許可なく死ぬことも俺から離れることも許さない。いいな?」

「所有物……というのは気に入らないな。だが、そこの銀髪を見ている限り尊重されないなんてことにはならなさそうだ、構わない」

「……なぁ、いい加減にさ、種族とか特徴とかで呼び合うのどうにかしたら? みんな俺はサクって名前で呼んでくれるじゃん」

三人の視線が集中し、身が強ばる。彼らは俺を何より大切にしてくれる、俺を愛してくれている、そう分かっていても俺の元来の性格のせいか、か弱いインキュバスの本能なのか、緊張はする。

「それもそうだな。じゃあ、ネメスィにカタラ、改めてよろしく頼む」

「旦那は旦那でよくねって気はするけど……ま、いいや。よろしくな、アルマ」

「アルマ、よろしく。ところで弟は……シャルはいいのか?」

「勝手に決めたのどうかと思うけど大したことじゃねぇし、寝てるしなー。ま、いいんじゃないか? こいつもこいつなりに打ち解けようとしてるみたいだし」

「そうか。一番の不安材料だったが問題ないならいい」

やはりネメスィもシャルを危険視していたのか。いい子だけれど思い込みが激しくて、警戒心が強くて、攻撃的で──いい子なんだ。誰よりも純粋なだけだ。

「シャルは一歳にもなってないんだから優しくしてやってくれよ」

まだ人間関係が分からないだけ、知らないことが多過ぎるだけ、時間をかければ落ち着いてくるはずだ。
お前もシャルと同い年だろうと一斉に突っ込まれ、転生したからと言い訳することも出来ず笑って流した。
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